細かい作業だらけ? 公認会計士の実態#01
2016/10/15
#公認会計士の本当のところ

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はじめに

通常の転職活動をしていると、公認会計士や弁護士といった職業の方々と会うことは少ないのではないでしょうか。

投資銀行や戦略コンサルだと、FA(Financial Advisor)として弁護士と並んで公認会計士と仕事をする機会もあるかもしれません。

今回は現役公認会計士の方に、普段触れることがない業務の実態について解説いただきました。

公認会計士になるまでが大変?

はじめまして。本記事では、筆者の実務経験に伴って公認会計士の業務について説明させていただきます。

業務説明に入る前に、公認会計士になるまでの道を簡単に説明いたします。

公認会計士になるための道は決して平坦なものでなく、決意してから公認会計士(修了試験合格)になるまで平均で7~8年位は要し、途中で夢破れる人が圧倒的多数であるシビアな道のりです。

その道のりの最初のステップである2次試験を合格すると、「準会員(旧会計士補)」になり、一定の実務経験を経たのち修了試験(旧3次試験)を合格すると晴れて「公認会計士」の資格を名乗れるようになります。

この一定の実務経験にはいくつかの要件が規定されているが、実際は監査業務の経験を要求しているに等しいため、大半の2次試験合格者は監査法人へ行くことになります。

キャリア出発点である監査業務は、シンプルに言うと、株主、取引先、金融業等の人たち(利害関係者という)が正しく会社の状態を判断できるように、会社の作成した決算書が全体的に正しいかどうかをチェックする仕事です。

これは公認会計士の独占業務になる部分です。詳しくは後述しますが、監査業務は後述する、残高監査と内部統制監査に大分されます。

※なお監査対象となる開示資料は、有価証券報告書、会社法計算書類、Ⅰの部(新規上場のための有価証券報告書)など専門的にはいくつかの種類があるが、ここでは簡便的に「決算書」とひとまとめに表現する。

エンロン事件が残した爪痕とは?

残高監査は、会社が作成した決算書が概ね会社の活動と正しいことを確かめる作業です。

経理部に所属している方であれば、会計ソフトのデータ、決算に関連する証憑一式およびネットバンキングのデータを渡すなどして、会計士との関係を一番密にする時期になると思います。営業部や購買部に所属する方の場合、会計士が選んだサンプルに関係する証憑(*「しょうひょう」と読む。注文書、納品書、受領書等のこと)を集め、経理部に渡した経験があるかもしれません。

エンロン事件(10兆規模の売上を誇っていた大企業エンロンが巨額の粉飾決算を行い破産した事件)を機に膨大なサンプル数をチェックするようになり、会社から(本音は会計士側も)不評を買っている手続きです。

これらの手続きは証憑の内容をチェックし(特に会社の外部から入手した証憑が重要)、それが会計データに正しく反映されそのデータをもとに決算書が適切に作成されている、という一連の流れをチェックするものです。

内部統制監査

上記の残高監査だけに頼ると監査業務は非常に膨大なサンプル地獄となってしまい、監査法人も会社も疲弊することになります。会社は業務をミスなく回るように内部の仕組み(内部統制)をつくるのものだから、この仕組みが正しければサンプル数の残高監査手続きを軽減しても大丈夫だろうと考え、内部の仕組みが上手く構築されているかどうかを評価するのが内部統制監査です。

対象とする部門は、重要度に応じて毎回監査する部門、時々監査する部門、ほとんど監査しない部門に分かれるので、所属部門によって会計士との接する頻度は変わることになるでしょう。

会計士がやって来て、「どんなフローで業務を進めているのか手順を教えてください。」という業務フローを聞くような質問をされた場合や、「ここに上長の印鑑がありません。」、「チェック証跡を残してください。」などとひどく形式的な事を言われてイラッとした経験がある方は、この内部統制監査で質問を受けたと思ってよいでしょう。

余談になりますが、会計士の監査を受けたことがあるとお分かりになるかもしれませんが、監査業務は基本的に同じ作業の繰り返しとなる上に建設的な作業でもないので、つまらないと感じる会計士が多いのが実態です。

したがって、4~5年で一通りのスキルを身に付けると、更なる高みを目指してステップアップを考える人があらわれ始めてきます。このため監査法人は、会計や内部統制のプロフェッショナルを育成し、事業会社やコンサル業界へ排出する役割人材供給会社としての側面もあります。

非監査業務

監査法人を卒業すると、その次のキャリアパスは下記に列挙するように幾つかに分かれていきます。

  • FAS系のコンサル(M&A、事業再生、財務コンサル)
  • 税務コンサル、確定申告書作成などの税理士業務
  • 事業会社の経理
  • ベンチャー企業のCFO
  • 独立開業
  • その他
  • コンサル業界は、会計のスキルやデューディリジェンス(M&Aや事業再生等で行われる調査)は監査経験が活かせるため、絶えず一定のニーズはあります。
  • 監査業務だけでは独立に向かずスキル不足は否めないので、税務の領域に踏み込む会計士は多くなります。確定申告書を作成することはもちろん、グループ企業の節税対策やオーナーの相続対策まで手掛けるが、対象となる会社は中小企業が中心となってくる。世間一般では公認会計士と税理士の区別がつかない方が散見されるが、これは公認会計士が税務業務も行うためであると考えられます。
  • 事業会社の経理ポジションは、需要がもっともあるのではないだろう。大量合格者を受け入れ人員余剰になった度監査法人がリストラを実施してことがあるが、そのとき監査法人をやめた多くの会計士は経理ポジションへ移ったそうです。
  • ベンチャー企業のCFOは、最近になって人気が出てきたポジションです。プロの経営者なる職業は、日本でも定着し始めてきたためです。IPOを目指すベンチャーにとり、管理系の仕事全般に知識があり、内部統制の構築もできる会計士は有り難い存在となります。
  • 監査法人からすぐに独立開業する者もいます。この場合、公認会計士というよりは町中の税理士として確定申告作成をメインにやっていくことになります。なお、現行の制度上公認会計士は届け出ることにより、税理士として登録することが可能になります。
  • その他のケースは、起業する人、アクチュアリーになる人、消息不明になる人等さまざまです。

筆者の個人的意見であるが、監査業務、税務申告、経理業は同じことを繰り返す作業が好きなタイプに向いています。対して、コンサルやベンチャーのCFOは絶えず頭を使いながら新しいことに挑戦することが好きなタイプに向いていると言えます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。公認会計士の業務を網羅的に、監査業務、非監査業務にわけて説明いただきました。

後編では、公認会計士の待遇や転職について伺いました。ご期待ください。

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コラム作成者
Liiga編集部
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