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投資銀行部門のキャピタル・マーケット業務。それは、企業などが資本市場から資金調達のために発行する有価証券を証券会社が引き受ける業務だ。国内証券最大手、野村證券で引受業務を担う3人に、国内大手企業の大型資金調達案件の舞台裏を明かしてもらいつつ、企業の成長に欠かせない資金調達に関わる業務の魅力や、同社でしか得られない経験などについて語ってもらった。
――それぞれの業務内容を教えてください。
村上:私が所属するシンジケート部は、国内外の株式や債券の引受業務で、企業などの発行体とマーケット(投資家)を結ぶ橋渡しの役割を担っています。具体的には、株式や債券の市場環境を考慮し、適正な発行水準を決めるなどしています。
河村諭:資本市場部では、お客様である上場会社が株式や債券を発行して、資金を調達する際の引受業務を担当しています。当社の資本市場部の特徴でもあるのですが、バランスシートでいう右側全部、負債と資本の両方のご相談に乗るという意味で、債券と株式の両方を総合的に扱います。
最近では、案件が複合的で難解になっているため、株式はECM(エクイティ・キャピタル・マーケット)部、債券はDCM(デット・キャピタル・マーケット)部といった部署と連携して、サービスを高度化していくわけですが、資本市場部は、連携のハブとしての役割を担っています。
河村仁志:デット・キャピタル・マーケット部は、債券の引受業務を専門としています。お客様となる発行体は、政府系機関、地方公共団体、金融機関、海外の機関などです。また、電力会社や鉄道会社など、頻繁に債券を発行する事業会社もお客様となります。さらに、最近注目を集めている、いわゆるSDGs(持続可能な開発目標)債やESG(環境・社会・企業統治)債、円以外の通貨による債券引受も担当しています。
河村諭 資本市場部長
多様な資金調達の方法を同時に公表し、並行して引受業務を進める難しさ
――野村證券だからこそ、成立させることができた案件について、教えてください。
河村諭:国内大手企業のお客様が、株式と普通社債、一般債務者よりも債務弁済が後回しとなる劣後債、外債及びグリーンボンドなどを合わせて、大型の資金調達を立て続けに実行した案件です。これだけの多様な資金調達方法を用いた案件を一気に短期間でやるのは、業界はおろか当社でも珍しかったです。
多くの資金が必要だったのは、前年に、このお客様が、大型のM&Aを公表したからです。一般的に、買収に必要な資金は、銀行からも借り入れますが、負債が多過ぎると、企業の格付けが下がってしまうリスクがあります。株式、債券、銀行からの借り入れのバランスを、どのようにとるかが課題でした。
当社では、この案件の公表以前から、買収時の資金調達に関する議論を重ねてきたわけですが、上記の資金調達の方法を選択することになりました。
――バランスとは、具体的にどういう意味でしょうか。
河村諭:仮に1兆円超を銀行借り入れで賄ったとすると、企業規模にもよりますが、格付けが下がるリスクがあります。一方、全額を株式発行で調達すれば、発行済み株式総数が増えるため、1株当たりの利益が希薄化して、株価が下落する要因となることも考えられます。そこで、株式による調達の上限額を決めることにしました。
――その金額は、どのように決まったのでしょうか。
河村諭:格付けが下がるリスクや、株価が下がるリスクに加えて、数年後の企業の将来図も考慮しました。今後、買収した企業から上がってくる収益と、将来の成長投資に備えた資本の積み増しなどを議論して、株式による調達額を決めました。その結果、市場の賛同も得られて株価への影響は限定的でした。
――新型コロナウイルスの感染が拡大したため、資金調達に影響があったのではないでしょうか。
河村諭:新型コロナの感染拡大によって、多くの企業の業績に大きな影響が出ていました。そういった環境下での資金調達ですので、業績が悪化している状態で、計画している資金総額の調達がどのようにすれば可能となるのかなどを十分に議論しました。
理論上、調達したい金額、つまり調達すべき金額は、計算すれば出せます。ですが、それが、市場において実現可能かどうかを判断しなければなりません。販売可能性というのですが、これについての判断は、シンジケート部が担っています。
村上:そうですね。本案件に関しては、我々シンジケート部のアドバイスにも沿って、資本市場部などが周到に準備しました。お客様からの信頼も厚く、全てを任せていただきました。株式、債券、借り入れなどを同時に公表しながら、並行して進めていくという難度が高い案件を、お客様の期待に応えて、チームで仕上げることができたのは、非常に意義深いと思います。
当社の専門性を生かしたお客様への提案に対して、シンジケート部としても、販売、マーケティング、その時点の市場環境では、資金調達が、どのように映るかなどの助言を行い、側面的に支援しました。結果として、投資家から資金調達スキームも評価され、潤沢な応募がありました。
村上朋久 シンジケート部長
大型案件に対応できる組織、顧客と長期にわたり議論して得られた信頼
――野村證券だったから、成し得た案件は他にありますか。
河村仁志:あるお客様の、経営戦略遂行のための数兆円規模の資金調達ニーズに応じた、複数種類の通貨による大型の債券発行案件です。当社は全ての債券発行の主幹事として、これらをいずれも成功に導きました。
当社は、このお客様のグループ全体としての資金調達に、長期にわたって関わってきました。設備資金や長期運転資金、買収などに必要な資金を扱う資本市場からの資金調達や、株式上場やグループとしての在り方、などについて、経営陣と議論してきました。大型の資金調達という形で結実しましたが、グローバルでの質の高いサービス提供を継続的に行いながら、長期間、お客様とともに議論してきた当社だからこそできた案件です。
――議論には、決まった答えなどはないようにも思えます。
河村仁志:そうですね。それが最も苦しいことであり、楽しいこと、やりがいがあることでもあります。投資家の反応や、投資した企業の経営陣へ積極的に助言するアクティビストの動向、CSR(企業の社会的責任)など、資本市場に関する多様な観点から、ロジカルなアドバイスを行う必要があります。
村上:今回お話しした二つの事例は、買収といった大きなコーポレートアクションがあり、それに付随したファイナンスがありました。金額の大きさを含めて、これまでの実績だけでは分からない未知の世界の中で、「こうやればできるのではないか」ということをきちんとアドバイスできるのが我々の強みです。
――同業他社では、同様のアドバイスをすることは難しいでしょうか。
村上:例えば、我々は、貸付業務を行ってないため、お客様が資金を調達する時の方法として、貸付の提案に頼ることができません。これだけを見ると、弱点のようにも思えます。ですが、そうであるがために、お客様と資本市場に真摯に向き合う必要があります。それは、当社ではどんな案件でも求められる姿勢です。
河村諭:我々がマーケットの一部を担っているという自負もあります。お客様がやりたいとおっしゃっていることでも、市場の動向などを考慮すると、やるべきではない、とあえてアドバイスをすることもあります。
河村仁志:それは、お客様にとって、何が真にベストかを起点に考えているから、できることでもあります。
河村仁志 デット・キャピタル・マーケット部長
技能を磨く環境は全て提供できる
――どんな人と一緒に働きたいですか。
村上:向上心や好奇心が強い人です。また、チームで仕事をすることを好む人が望ましいです。引受業務においては、チームワークが重要です。お話ししたように、当社では、多種多様な案件に携わります。1人で、全てができるわけではありません。また、自分がやりたいことを正しくやりたいと思う人がいいです。資本市場やお客様と向き合い、こちらの見解や提案を丁寧に説明し、納得していただくような業務に魅力を感じる人と働きたいです。
河村諭:資本市場と正しく向き合い、技能を磨いていきたい人です。当社では、スキルを向上させる環境は全て提供できると思います。お客様の大小さまざまな案件に携わるというのは、ある意味、市場の公的な業務とも言えます。
河村仁志:グローバル化する資本市場と向き合うやる気と謙虚さとしたたかさを持った人です。資本市場とは、社会へ適切にお金を行き渡らせる仕組みです。社会のためになることを、腰を据えてやりたい人にとっては、当社は最適な環境だと思います。