「当たり前」を疑う視点の大切さ。PwCアドバイザリーの代表執行役が語る、D&I
2021/06/04

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「ダイバーシティー」という言葉が企業の間で関心を集めるようになった。さまざまなバックグラウンドを持つ人材を広く募り、企業の生み出す価値の質を高め、幅を広げるためにもダイバーシティーの推進は不可欠といえる。

M&Aや事業再編などの戦略策定、フィナンシャルアドバイザリー(FA)から実行推進、その後の事業価値向上まで、幅広いトランザクションに関わるサービスを担うアドバイザリーファームにおいても同様で、今回話を聞いたPwCアドバイザリー合同会社(以下PwCアドバイザリー)でも、D&I(Diversity & Inclusion)にまつわる取り組みを推進しているという。

国内でも注目されている女性活躍推進やD&Iを、どのように捉え実践しているのか、代表執行役の吉田あかね氏に語ってもらった。

〈Profile〉
吉田あかね(よしだ・あかね)
PwCアドバイザリー合同会社 代表執行役。
大手監査法人で東京証券取引所一部上場企業およびSEC(米証券取引委員会)に登録がある上場会社の法定監査、内部統制構築、IPO(新規株式公開)支援などを経て、2005年外資系大手広告会社にて国内グループ会社12社の財務統括業務に従事。2009年に現PwCアドバイザリー合同会社に入社、M&A部門に所属。M&A戦略の策定やデューデリジェンス、事業の一部譲渡、M&A後の経営統合、組織再編など、日本および外国企業のクロスボーダー取引に関するハンズオン支援を幅広く実施。2019年7月より現職。



アドバイザリー業務で感じた、ダイバーシティーの本当の意味

――吉田さんはこれまで、どのような業務を担ってきたのか教えてください。

吉田:大学在学中に公認会計士試験に合格し、卒業後は監査法人で10年間勤務しておりましたが、育児のために2005年に一度退職しました。

その後、新設されたあらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)で監査業務に戻り、育児の時間を取るために、クライアント業務を一時期離れて、広報やマーケティングといったミドルオフィスに移りました。

2008年頃、日本企業の海外企業買収を主としたM&Aが関心を集めるようになっていました。育児が落ち着き始めたので、クライアント業務に戻ることを考えていたのですが、経験のある監査業務に戻るのではなく、PwCアドバイザリーで心機一転、アドバイザリー業務に軸足を置くようになりました。

PwCアドバイザリーに異動後、一貫して取り組んできた仕事は、M&A後のバリューアップですね。買われた事業や企業をバイヤー側企業といかに統合し、事業価値を向上させるかの支援です。

――PMI(Post Merger Integration)に当たるフェーズですね。ここにフォーカスしていたのはどのような考え方からですか。

吉田:日本企業のM&Aが活発になり始めた初期段階では、せっかく良い企業を買収しても財務的にグループ化するだけで、親会社としてグループ会社のビジョンをうまく示すことができず、適切なコミュニケーションが取れていないことが多かったんです。そのために企業として本当の意味での統合はできておらず、人材が流出したり、価値向上がうまくできなかったりといった弊害が生まれていました。

価値向上のためには、その企業の従来のオペレーションや人事制度を丁寧に受け入れ、新たな親会社にも愛着を持ってもらうことが大切です。2012年ごろから増え始めたクロスボーダーM&Aでは、いくら海外の企業を買収しても、適切なPMIを実施しなければ、本当の意味での国際化は進まないということに気付いた企業が多かったですね。

買収した側の経営者が「私たちは共にシナジーを生み出す仲間である」というメッセージを意識的に送ることの大切さを考えた数年間でした。

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「当たり前」は存在しない。前提を疑う視点の大切さ

――貴社では、D&Iについてどのように考えていますか。

吉田:私たちの業務そのものと深く関わっていて、M&Aでは自分たちと違う何かを受け入れるということが起きます。つまり、事業買収においては必ずダイバーシティーが生まれます。ダイバーシティーをうまく受け入れることで事業は発展しますし、反対にうまく受け止めることができなければ失敗します。

――ダイバーシティーを受け入れる姿勢が、企業カルチャーとして息づいているわけですね。D&Iの重要性はどのようなところにあるのでしょうか。

吉田:当社には外国人の社員も多く在籍していますが、こうした環境では、ある種「当たり前」と認識されがちな前提が、前提ではなかった、ということが突然判明することも珍しくありません。

国籍や性別、さらには社歴など、さまざまな属性の人々が集まると、日本のビジネスシーンで当たり前だと思っていた前提が「本当にそれでいいのか」と再検証されます。こうした「前提」を問い直す視点があることで、組織が健全に機能したり、効率改善ができたりといった変革も起きていきます。

変化を拒む人との向き合い方は、不安に寄り添うこと

――一方で、変革を起こそうとすると逆風が吹くことも少なくないのではと思うのですが、どのようにアプローチされるのでしょうか。

吉田:人間は本能的に安定を好み、変化を拒むものだといわれています。ですからある意味、自分の身の回りで起きている変化に反対するのは当然の反応と考えることもできるでしょう。であれば、「人は変わるのが嫌なものなんだ」と捉える方がスマートです。

なぜこの人は変化を拒むのだろう、何がこの人を不安にさせるのか……。その人の不安や恐怖に対して、「どのようなことを懸念しているのか」を丁寧に理解していくことが近道だと思います。

――何を不安に感じているのかを考え、その不安を解消する方法を一緒に考えるんですね。

吉田:そうですね。ただ、人間は変化を拒む一方で、企業には中長期計画があります。10年後、20年後、どうなっていたいか。そこから逆算して、企業のサスティナブルな成長に必要な変化であることを社員に理解してもらう努力も求められます。

そういった意味では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、企業に必要な変化を迫り、環境整備を進ませたといえるかもしれません。コロナ禍では多くの社員が自宅で仕事をし、リモートで会議を行うようになりました。

また、このようなワークスタイルが浸透する過程で、一人一人がお互いをより尊重し合えるようになったのではないでしょうか。国籍や性別といった属性のくくりではなく、個々が大事にする価値観や置かれている環境は違うんだ、ということが見えやすくなったからです。

一人一人が尊重され、そのパフォーマンスを発揮できる環境をつくることこそが重要なのだと、改めて強く感じています。

心理的安全性を担保することで、ダイバーシティーの真価が発揮される

――パフォーマンスを発揮できる環境というのは、どのような環境ですか。

吉田:PwCは一人一人が自分らしく、持っている能力を最大限に発揮し、協働できるインクルーシブ(包摂的)なカルチャーの醸成が非常に重要だと考えており、そのカルチャーが自分たちのDNAになるよう、誰もが発言しやすい環境づくりに日々取り組んでいます。

男性10人の課の中に、女性を1人だけを入れて「ダイバーシティーだ、女性活躍だ」と言っても、それは真の意味でのダイバーシティーとはいえないでしょう。彼女はおそらく、自分の意見を発信しにくいはずです。

それでは、彼女が意見を言いやすい環境をつくるにはどうすればよいのかというと、「心理的安全性」を担保すること。彼女が意見を言えないのは「少数派の意見は聞き入れてもらえないのではないか」という不安からです。この不安を取り除いて「意見を言ってもいいんだ」と安心して発信できる環境でこそ、ダイバーシティーは健全に機能するのではないでしょうか。

――ダイバーシティーについてPwCアドバイザリーの取り組みを教えてください。

吉田:まずは極端なマイノリティーをなくすための取り組みをしています。過去は男性主体の業界でしたので、男女比が偏ることも致し方ないこともあるのが現実です。しかし、それで「仕方ない」とは言っていられません。フィフティ・フィフティとは言わないまでも、「チームの中にたった1人」というような極端な比率にならないように体制づくりを進めています。

女性や外国籍の社員が1人ではなく2人いるというだけでも、本人たちにとっては心理的な負担が少し減ります。私も海外での会議に出席するとマイノリティー側ですから、同じ日本人が出席していると落ち着くこともあるんです。自分だけじゃないんだと思えることで、心理的安全性は大きく増します。

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個人に向き合うPwCアドバイザリーのD&I

――D&Iを推進するための具体的な施策としては何がありますか。

吉田:声を上げやすい環境づくりという面では、グループ内で匿名の「目安箱」を設け、社員から広く意見を募っています。やはりマイノリティー側から上がってくる意見は多いですし、先に述べたような「前提を疑う」内容も多く見られます。より良い方法で制度を改善できないかを考えるきっかけにもなり、非常に良い形で活用できていますね。

――それぞれの希望が異なるなど、多様な属性や価値観の人々を包括することに難しさはありませんか。

吉田:もちろん、異なるバックグラウンドから求めるものも異なることがあるでしょう。ただ、ダイバーシティーというのは「みんな違ってみんないい」という考え方なんです。人種や性別などによって分類するのではなく、社内にいる一人一人へのアプローチが必要になってきます。

例えば、お子さんを持つ時短勤務の社員がいて、責任を持って仕事に取り組みたいからと「夜中に少し仕事をしたい」と発言したとします。残業を防ぐ観点からいえば、これは控えていただきたいとなるでしょう。しかし、その社員にとってこれをNGにすることが本当に良いことなのかという疑問は残ります。

その社員が自分らしく責任感を持って仕事に取り組むためには、どうしても必要な時間かもしれません。個々の事情や希望を聞き取り、できるだけ理想に近い着地点を見つけることがD&Iの最も重要な点なのです。

D&Iにまつわる取り組みはさらに加速していく

――女性のキャリアについて、ご自身の経験などから感じることはありますか。

吉田:私がラッキーだったと感じるのは、キャリアにまつわる重要な判断の局面で、必ず相談できる人がいたことです。これも心理的安全性と通じるところがありますが、新しいチャレンジをしようというときに無条件で自分を応援してくれて、親身に相談に乗ってくれる人がいることはとても貴重です。

そうした人を「メンター」と表現してもよいかもしれません。自分の中長期的な成長を見ていてくれる人を見つけることは、女性だけでなく全てのビジネスパーソンがキャリアを築くために重要だと思います。

――今後、D&Iについて計画されていることはありますか。

吉田:現在、日本のビジネスや経済も大きく変化しています。これまでは当たり前だったことも、未来予想図を想定し、そこからバックキャストすべきことを考えたら、違った結論が出てくるかもしれません。

未来予想図の検討や、今取り組むべき課題の議論のために、ダイバーシティーに富んだチームでの議論を行おうと考えており、来期に向けて女性や外国人を入れた、新たなリーダーシップチームの編成に取り組んでいます。

――ファームでは、社歴の浅いメンバーだと経験を積むためにプロジェクトの基本業務から配置されることも多いかと思います。ダイバーシティーという観点では、ジュニアメンバーにも広くチャンスが与えられることはあるのでしょうか。

吉田:ジュニアメンバーをより高い視座からの業務に登用していくため、できるだけ早い育成に、今期から特に力を入れています。ジュニアメンバーは特定の業務にのみ特化し、一つの領域において時間をかけて育成するスタイルが従前には一般的でしたが、経営者のニーズを考えた際に、一つの専門性だけで課題を解決できるような仕事の依頼は限られています。

経営者が望んでいるのは、複雑で多様な経営課題そのものの解決がほとんどですから、その要望に応えるにはメンバーの専門性を組み合わせて、プロジェクトメンバーを構成させています。また、一人一人のメンバーも、単一の業務だけに関わり続けるのではなく、ディール全体を見渡せるレベルのスキルを身に付けられれば、ディールアドバイザリーとしての成長も早まるはずと考えています。

これらの取り組みは、既にアジア圏でのビジネスを通じて検証を進めています。ジュニアメンバーにもクライアントのCクラス(経営者層)の課題に着実にリーチしてもらい、ディールプロフェッショナルとしていち早く成長できるプランを整備していますので、スピード感のある成長を目指したい方には当社の門をたたいてもらえたらと思います。

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コラム作成者
Liiga編集部
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