sponsored by PKSHA Technology
「未来のソフトウエアを形にする」というミッションを掲げ、アルゴリズムの力で社会課題の解決を目指すPKSHA Technology(以下、PKSHA)。企業をジャンル分けするなら、外部の人はAI(人工知能)ベンチャーだと認識するだろう。
しかし、同社でプロジェクトマネージャーを務める石田武氏は「捉えどころが曖昧なAIというバズワードは、ここでは使わない」と話す。新卒で外資系コンサルティングファームに入り、デジタル領域へのコンプレックスをばねにして、あえて最先端の研究開発を進める企業へ転職した石田氏。
テクノロジーの本質を重視する同社で出会った価値観とは何だったのか。転職直後の大きな挫折体験も交えて語ってもらった。
「絵に描いた餅」ではないはずなのに、その戦略は実行フェーズでしぼんでしまった
――石田さんがコンサルティングファームからベンチャーへの転職を決断した理由は何だったのでしょうか。
石田:外資コンサル時代は、充実した日々を送っていたと思います。魅力的な人たちが集まる環境で、仮説思考や構造的にものを考える力が身に付きました。給与水準も高く満足していました。ただ、あるときから、コンサルタントとして生きていくことに、自分の中で限界を感じるようになったのです。
きっかけは、関係性の深いクライアントとの食事の場で衝撃的な話を聞いたこと。その方とはプロジェクトを一定期間ともにしていて、いわゆる腹を割って話ができる相手でした。そのため、一緒に苦労して作り上げた戦略の「その後」を教えてもらうことができたのですが、そこには僕が知らなかった現場の事実があって……。
立案した戦略そのものは新奇性があり、絵に描いた餅ではないという自負もありました。しかし実際のところ、現場の人たちの間には「これまで通りの路線でやっていきたい」という思いが渦巻いていたのです。実行フェーズに入ると、戦略はどんどん角が取れて丸くなっていってしまい、各部門のそれぞれの立場で意訳され、当初に目指していたものとはまるで違う方向へ進んでいました。
そんな話を聞いて、「これは自分が本当にやりたかった仕事なのだろうか」と考えるようになりました。もちろん僕自身の実力不足もあったのでしょう。しかし当時は、ただ戦略を描くだけではなく、むしろ事業の現場へ入って人を動かしたいという気持ちが大きくなっていきました。
――新天地としてデジタル、かつ現在の世の中で最先端と目されている領域を選んだのは、業界や事業に対する知見があったからですか。
石田:いえ、真逆です。僕の場合はむしろデジタル領域にコンプレックスを持っていたと思います。
前職でコンサルタントとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)のプロジェクトに携わることもありましたが、表面的な部分にしか関われておらず、自分自身のインプットも不足していると感じていました。
これからの社会で絶対的に必要とされ、伸びていく領域なのに、自分はまだまだ疎い。だからこそ最先端の企業へ飛び込みたいと考えたのです。
「ビジネスサイドでは負けない」との自負は早々に打ち砕かれた
――転職先としてPKSHAを選んだ経緯を教えてください。
石田:実は、僕はPKSHAの前にもう1社、別のベンチャーを経験しています。機械学習などを活用したソフトウエアを作っている会社です。魅力的なSaaS(サービスとして提供されるソフトウエア)のプロダクトがあるものの、プロダクトに縛られてしまうが故に、決まった枠組みの中でしか提案できないもどかしさがありました。
それまでコンサルタントとしてフルカスタマイズのサービスを作ることに慣れていたので、余計に息苦しく感じたのかもしれません。そこで、既にプロダクトを持ちつつも、同様に新たなプロダクトの種を自ら探索できる企業を探してPKSHAに出合いました。
――どのような魅力を感じたのか、詳しく知りたいです。
石田:PKSHAはエンジニア出身者が立ち上げた会社で、技術を形作るための部品に当たるアルゴリズム・モジュールの研究開発を日々続けています。
それを起点に、個々の企業へ課題解決策を提案するアルゴリズム・ソリューション(AGS)と、業界ごとに共通する課題に対して解決策となるプロダクトを提供するアルゴリズム・プロダクトの2軸で事業を展開しています。
いわばセミカスタマイズで、徹底的に磨き込んだ部品同士を組み合わせて問題を解決していけるため、ビジネスサイドから提案できる幅はものすごく広いのです。ここなら、前職で満たされなかった提案の自由度があると感じました。
――実際に入社してみて、そのイメージにギャップはありましたか?
石田:良い意味での、非常に大きなギャップがありましたね。
僕がイメージしていた仕事の姿は、ビジネスサイドの人間がクライアントのニーズをつかみ、必要なソリューションを考え、エンジニアに開発を依頼するという流れでした。
「ビジネスに関しては、あくまでビジネスサイドが動かしていくのだろう」と。だからこそ自分も価値を発揮できると思っていました。
しかし、PKSHAのエンジニアは、僕が想像していた以上にずっとビジネスの構造に詳しく、ビジネスそのものへのモチベーションも高いのです。技術だけを追い掛けてきたわけではなく、自身でプロダクトを立ち上げ、グロースを経験してきた人も多い。必然的にお金の流れやマーケティングなどにも鋭い知見があります。
コンサルタント出身者として「少なくともビジネスサイドでは負けない」と思っていた僕の自負は、早々に打ち砕かれることになりました。
ビジネスサイドは「上流」なのか、無意識に抱いていた偏見が消えるまで
――コンサル出身である石田さんが、ビジネス領域でエンジニアの方々から刺激を受けたというのはとても興味深いです。あえて聞きますが、そのギャップによって苦労した部分はありましたか。
石田:ありました。入社当初には人にうまく頼ることができずに、大きな失敗を経験しているのです。
僕はAGS事業本部のプロジェクトマネージャーを務めています。ファッションと食品業界を中心に、チャネル戦略やプライシング、人材配置など流通に関する課題へのソリューションを提案する仕事です。
入社したてのころは、「コンサル出身」の自負とプレッシャーを拭い去れず、クライアントの要望には全て自分が応えなければいけない、全てを自分で解決しなければいけないと思い込んでいました。本来なら、アルゴリズムや構造を考えるエンジニアと共に対応策を練らなければならないことも、自分だけで判断してしまっていたのです。
結果的に、僕がクライアントの要望に対して「できます」と返答していたことは、技術的に実現できない内容だと判明しました。社内のエンジニアからは「勝手に決めてこないでください」と言われるし、クライアントからは「この間はできるって言いましたよね」と詰められてしまう。当然ですよね。
――プロフェッショナルとして入社した自負が、本来あるべき連携を阻害してしまっていたのですね。
石田:今思えば、僕は技術サイドの人たちに対して、ある種の偏見を持っていたのかもしれません。あえて良くない言い方をするなら「技術サイドの人たちはあくまで技術屋さんなんでしょ」と。
実際に世の中には、そのような事例もあるのではないでしょうか。クライアントとの接点で課題をつかむビジネスサイドが「上流」を気取り、「下流」のエンジニアへ要望を流していくような……。
しかし、PKSHAは違いました。ビジネスを深く理解して、クライアントのために動くエンジニアが集まっています。それを知った今は、かつて持っていた無意識の偏見は消えました。技術サイドへの圧倒的なリスペクトの下、時には頭を下げて教えを乞いながら、ともにクライアントへ向き合っています。
Excelで解決できる課題にAIを絡める必要はない。コンサル由来の「本質思考」でクライアントを理解する
――挫折体験の一方で、コンサル経験が如実に生きていると感じる場面はありましたか。
石田:コンサル時代に身に付けた「本質思考」は生かされていると感じます。クライアントからはさまざまなリクエストが寄せられますが、「これは技術的に解決できる問題なのか」(=How)を考える前に、「そもそもこれは解決すべき問題なのか」という本質(=What)を考えることが大切なのです。
僕だけではありません。PKSHAでは「クライアントの要望であっても不要なものは不要だと言うべきである」というマインドが徹底されています。
――実際に、クライアントからの要望があるのに自社のサービスを提案しないこともあるのですか。
石田:たくさんありますよ。最近ではAIがバズワードになっているせいか、クライアント内で「AIを使うこと」が目的化していることもあります。「当社の課題をAIで解決してください」と言われるのですが、詳しく話を聞いてみると「その課題はExcelで対応した方が早く解決できますよ」というケースも。
クライアントの社内には、どんな背景があり、どのような組織事情があって、今回の相談にたどり着いているのか。そうしたクライアント課題だと思っていることと、本来の事業の課題、それに対する解決策を両にらみで考え、理解していくことがこの仕事には欠かせません。
本質を大切にする企業は「ぼんやりとしたバズワード」を安易に使わないはず
――かつての石田さんのように、プロフェッショナル領域からテクノロジーに強みを持つベンチャーへ移ることを考えている人は少なくないと思います。企業を選ぶ際には、どのような視点を持つべきだと思いますか。
石田:バズワードをぼんやりと掲げている企業と出合ったら、本質を注意深く見極めるべきだと思います。
以前の僕は、デジタル領域へのコンプレックスがあって「AIやDXに向き合わなければならない」と考え、バズワードに飛び付いていました。非テクノロジー系の会社にいて、いまいちデジタル領域を深耕できていないと感じている人は、同じような感覚があるかもしれません。
しかしPKSHAでは、社内でもクライアントと相対するときでも、基本的に「AI」という言葉を使いません。捉えどころが曖昧で、意味がぼんやりとしてしまうからです。
そのため、われわれは「アルゴリズム」「機械学習」「深層学習」など、クライアントへの価値提供や社会実装の文脈から、本質的に正しい言葉の選択をすることを特に重視するカルチャーがあると思っています。
同じように本質を大切にする企業は、バズワードを安易に使わないはずです。そうした視点を持てば、地に足の着いた取り組みをしている企業が見えてくるのではないでしょうか。
――石田さんは今後、どんなキャリアを歩んでいきたいと考えていますか。
石田:現在手掛けているソリューションの知見を増やし、プロダクトを生み出すことに挑戦したいと考えています。
僕が向き合っている業界では、各社に共通する課題が少なくありません。例えばファッション業界は需要予測が難しいことから、在庫過多に陥りがちです。一般的に商品の廃棄率は50%に上るといわれていて、最初の値付けで売れるのはごく一部です。
残った商品はセールやアウトレットに流すか、廃棄するしかありません。アルゴリズムを駆使して的確に需要予測と在庫最適化ができれば、こうした慢性的な課題を解決できるのではないかと思っています。
クライアント個社に対して実装したソリューションを、さらにプロダクトへ昇華させて広く業界にスケールできれば、社会全体へも大きなインパクトを与えられるはず。PKSHAでの仕事を通じて、より良い社会をつくる一翼を担いたいですね。