常に高い水準の経営を行うために。ベンチャー取締役、マッキンゼーを経た男が“経営プロフェッショナルコミュニティー”を求めた理由
2021/06/10
#ポスト戦略コンサルの研究

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イグニション・ポイントはコンサルティングファームでありながら事業展開も行う企業だ。2020年、IGP Xはその100%子会社として生まれた(※現在は日本ユニシスグループの事業創造を目的とした戦略子会社Emellience Partnersも株主へ参画)。同社はオープンイノベーションを狙う大企業と組み、スタートアップ企業へ投資(カネ)と経営プロフェッショナル(ヒト)をセットで供給し、起業家のパートナーとして事業のグロースから組織づくりまでを担うことで、スタートアップ企業のバリューアップ実現を目指している。

松林尚史氏は、日本政策投資銀行、電通、マッキンゼー・アンド・カンパニー、地方のまちづくり会社設立を経て、2021年3月にIGP Xへ参画した。さまざまな経験を経た松林氏が、なぜ今、同社への参画を決めたのか。これまでのキャリアにおいて感じた自身の課題と、それを解消できる同社の環境や魅力について語ってもらった。

〈Profile〉
松林尚史(まつばやし・なおふみ)
IGP X株式会社 Director。
慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社日本政策投資銀行に入行。その後、株式会社電通にてプロモーションプロデューサーとして活動。エンターテインメント・マーケティング領域の合弁企業を設立し、自ら取締役として3年での黒字化を実現した。より広い日本経済への貢献を狙い、経営コンサルタントとしてマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に参画。戦略・マーケティング領域を強みに、企業・政府の事業開発を立案から実行まで支援した。その後、地方創生への思いから、北海道における官民協働のまちづくり会社の立ち上げを行う。経営プロフェッショナルによる日本のイノベーション活性化に向けて、2021年にIGP Xへジョイン。



大企業とスタートアップの齟齬(そご)を経験した電通時代。良いパートナーシップを築けなかった

――松林さんはさまざまな業界でキャリアを積まれてきたと思います。これまでの経歴について教えてください。

松林:大学卒業後、日本政策投資銀行に入行し、国内外企業への投融資を経験しました。その後、マーケティング領域を起点にしたビジネスデザインや生活者の価値提供に興味が湧き、電通へ転職しました。

当時の電通は、従来型広告事業にとどまらず、収益の多様化を狙い、新規事業を創ることに積極的でした。その環境を利用して、クライアントと組んで社内ベンチャーを立ち上げ、取締役として出向しました。

――どのような点が大変でしたか。

松林:従業員はほぼ全員電通グループからの出向者で、誰も経営経験がない中、事業戦略、営業、財務などさまざまなことをスピーディーかつ一定以上のレベルでやらなければいけなかったことです。

誰をターゲットにどんなサービスをつくるのかというところから、取り引き先への営業、イベントの実施、組織づくり、株主への説明や資金調達まで、手探りで進めていました。

当時は珍しかったコンサートなどのオンラインチケット販売を行う会社で、最初の2年は赤字でしたが、最終的に大規模なコンサートの案件をいくつか獲得するなどして、黒字化することができました。ただ、そのときに感じたのは、大企業発のスタートアップは運営が難しいということです。

――具体的にどういった点が難しいと感じたのですか。

松林:まず、そもそもの人員が出向者のみで固められていたため、経営のスペシャリストは一人も居ませんでした。経営経験やナレッジも無く事業をスタートしたため、戦略も人脈や現場の実行力頼みでしたし、人材を適材適所に配置して効率良く進めるなど、組織の適切な運営ができていなかったように思います。

また、電通側もスタートアップにどう関与し、シナジーを生めるか、あるいはバリューアップさせるためにどう支援していくかなどのビジョンや具体方針が乏しく、スタートアップとの目線や論点のずれが発生することで、意思決定や実行のスピードも遅くなっていたと感じます。

例えば、スタートアップ側の意思決定に対して、細かくネガティブチェックを行ったり、関連する各部署の意見を全て反映しようとしたりして、結果的に実行が遅れる。その一方で、オープンイノベーションの推進に向けてスタートアップを支援する人材や仕組みがないため、事業づくり・組織づくりはスタートアップ側にお任せというように、連携が不十分でした。

本来ならば、お互いの考えを理解し合いながら、スタートアップをバリューアップさせるために、一緒に事業アイデアを考えるなどの建設的なパートナーシップを組めればよかったですし、今思えば、スタートアップ側が電通のアセットを正しく把握してうまく活用し、積極的に働き掛けることが大切だったと思っています。

――その後、マッキンゼーに転職されています。

松林:経営の楽しさを知ったので、出向先から電通に戻って別の仕事をするのは違和感がありました。加えて、スタートアップで自分の経営に対する能力不足を感じていたので、戦略コンサルタントならば、そのノウハウを学べるのではないかと考えたのです。

マッキンゼーでは、課題を抽出する力やそれを構造的に整理して解決する力が養われました。いろんな企業の経営者の方々と向き合う中で、足下ではなく3年後、5年後を見据えた彼らの考え方を学べましたし、それを現場の従業員の皆さんに伝えていく橋渡しができたのが大きな財産になっています。 description

――マッキンゼー後の経歴が面白いですね。

松林:企業課題のみならず、日本の社会課題である「地方創生」にチャレンジしたい気持ちが芽生え始めたころ、北海道のある自治体にてまちづくり会社の設立及び経営を委任するポジションの公募を目にし、ご縁があって統括マネージャーとして就任する運びとなりました。“稼げる町”の仕組みをつくり、人口減少に歯止めをかけることを目指す試みです。

まちづくり会社では、「論理やビジョンだけでは人は動かない」、つまり他地域から来た新参者が住民の皆さんと信頼を築き、その上で実際に協力していただく難しさを感じました。

ステークホルダーは、その地域の住民全員といっても過言ではないので、利害関係もバラバラです。当然、まちづくりの方針やビジョンも違う。こちらが真剣に事業内容を考え、提示しても「それは分かっているし、正しいけれど、もっと腹を割った関係にならないと一緒にできない」などと言われたこともありました。

地域住民の皆さんをよく知り、私という人間も知ってもらうため、地域の祭りに参加したり、一軒一軒顔を出したり、できることから愚直に、いわゆる泥臭いことにも数多く取り組みました。

代表の言葉に引かれて入社。多様なバックグラウンドを持つ仲間たちから刺激を受ける日々

――まちづくり会社の任期を終えた後、IGP Xに入社しました。入社の理由を教えてください。

松林:代表の小寺規晶の誘い文句に引かれたというのが理由の一つです。経営をプロフェッショナルサービスとしてできるメンバーを集めて切磋琢磨し、会社としてプロ経営者のフォーマットをつくり、社会に経営プロフェッショナルを職業として定義したいと。

もともと、私は電通内で立ち上げたスタートアップで経営に携わったころから、漠然とプロ経営者に憧れを持っており、経営プロフェッショナルがスタートアップに参画すれば事業の成功率も高まるのではと思っていました。電通時代のスタートアップでは経営ナレッジがなく、組織運営が不十分だったことは前述の通りです。

その後、マッキンゼーで経営のノウハウについて学んだり、まちづくり会社で人を動かす難しさを経験したりして、どんな人だったら常に高い水準の経営ができるのかという課題を自分の中に抱え模索していました。

小寺の話を聞いて、自分のような大企業とスタートアップ両方を経験した人間がIGP Xに入ることで、大企業の事業のスピンオフ化や、大企業・スタートアップが連携した事業構築や変革の際に想定される課題の解決に貢献できるのではないかと考えました。

さらにIGP Xに参画すれば、プロ経営者を生業にできますし、かつ優秀なコミュニティーでその能力を高められるといった点も魅力です。まちづくり会社の経営時には、経営のPDCAが効率的に回せなかったのですが、IGP Xには同じ志を持った経営プロフェッショナルのコミュニティーがあるので、経営プロフェッショナルとして活躍する仲間に相談し、切磋琢磨できます。これはまさに私が求めている環境でした。

――入社してみて、イメージ通りでしたか。

松林:週1回、ディレクター陣で集まってミーティングを行っているのですが、同じパッションを持ったメンバーと話していると、学ぶところがたくさんありますし、何か化学反応が起こりそうだと感じます。経営プロフェッショナルとしての自分の強みと足りないところが、客観的に見られますし、緊張感を持ちながら、モチベーションも高いまま保てるハイレベルな環境下にあります。

IGP Xは、立ち上げからまだ1年強の会社なので、今ならIGP Xの経営をどうしていくかを話し合うなど、事業を一緒につくっていけることも魅力です。それも「今、参画する」大きなメリットですね。ゆくゆくは、それぞれが抱えている案件の悩みを共有したり、意見を交換したりする経営者コミュニティーの要素が強まれば、さらに面白いと考えています。

――具体的に、メンバーからどんなことを学んでいますか。

松林:コンサルティングファーム出身だったり、事業会社経営を経験していたり、それぞれが持っているバックグラウンドが違うので、その知見を共有できるだけでも勉強になります。例えば、私は企業に対する投資の経験はまだないのですが、企業価値をどのように上げるかといった話について、経験豊富なメンバーの意見を聞けるのはとても面白いですね。

そもそも、メンバーの情報感度が高い。例えば、最新のテクノロジーについての情報、成功しているベンチャー企業の社長のインタビュー記事や推薦図書などを、皆で日々共有するため、知識のインプットスピードもより加速していると感じます。

――松林さん自身はどんな部分で貢献できていると感じますか。

松林:私は、大企業と一緒に事業を動かした経験をシェアできていると思います。電通時代や、マッキンゼー在籍時に携わった現場の実行支援の経験が役立っていますね。大企業、スタートアップ双方の思惑や、戦略立案時の具体的アプローチ、実行における「人を動かすために重要なこと、やってはいけないこと」を伝えていきたいと思っています。

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前向きなパッションを持った人に来てほしい。一緒に日本の経済を変えていこう

――現在携わっているプロジェクトについて教えてください。

松林:今私が携わっているのは、大企業の中に事業アイデアが存在する状態へ我々が入り、一から会社やサービスをつくり、一緒に企業価値を上げる、スピンオフモデルというものです。

――具体的にはどんなことをやっているのですか。

松林:パートナー先の大企業と組んで、木材業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)をテーマに、2021年5月に会社を設立しました。

――木材業界のDXというのは、イメージが湧きづらいです。

松林:CO2削減やエコの観点から、国産材の普及が社会的にも叫ばれていますが、その一方で、国産材がサプライチェーンの問題で使われにくいという現状があります。

例えば、木材を使って一戸建ての住宅を建てるとします。その際、切り落とされたばかりの木の価格と、住宅の材料になったときの木の価格には相当な差があります。複数の事業者が取り引きに絡んでいたり、取り引き自体もアナログだったり、非効率さがあることが要因です。

これらをデジタルの力で可視化・効率化することで、木材の価格を安定させ、流通を促し、そこに携わる事業者がサスティナブルに潤っていく。そんな姿を実現したいと考えています。

――松林さんの役割は、その会社の経営なのですね。

松林:事業化サービスをゼロに近い状態から考えています。つまり、今どんな課題があって、誰にどのような価値を提供することで、どんな世界を実現するのかといった事業の土台の部分からつくっています。

一般的に大企業内だけですと、「事業化して新会社を設立して運営していく」というノウハウや人材が乏しいので、経営経験のある私が行って、軌道に乗せるのがミッションです。

仮に外部から経営者を募集しても、これまでは会社やサービスがある程度できてからでないと興味を持ってもらいにくく、逆に会社が求める条件が具体化できていないこともあり、良い人材が来づらかったと思います。

IGP Xを使う利点は、事業化する前段階から、知識・経験が一定水準ある「経営プロフェッショナル」が参画して一緒に進められるところです。ただ、IGP Xはできたばかりの会社ですから、これから実績を築く中で信頼を積み上げていかなければなりません。「IGP Xの人に経営を任せれば安心だ」と思われるようになりたいですね。

――どんな人にIGP Xへ来てほしいですか。

松林:大前提として、前向きなパッションを持っている人が来てくれるとうれしいです。そしてロジカルな考え方ができる人。会社を経営するにあたって、往々にしてそのリスクからネガティブチェックを行い、評論家になってしまいがちです。

どんな逆境でも、すぐに諦めず、そこを乗り越えてルール・枠組みからつくり事業化できる。そのようなメンタルと冷静な処理能力、さらには人を巻き込む力が必要だと思っています。

IGP Xは、プロ経営者集団で日本の経済を変えていこうというビジョンを持っています。ここでなら、プロ経営者として自分たちで意思決定をし、その道筋をつくり上げる醍醐味(だいごみ)を味わえるし、そんな場所は他にはないでしょう。

これまで、コンサルティングファームでいろんなプロジェクトを経験したり、事業会社で経営に携わったりしてきた経験豊富な方はもちろん、経営者として走り出しているけれど、なかなかブレイクスルーし切れていない人も、「ぜひ一緒に高め合いながら、プロ経営者として日本を変えていきましょう」と伝えたいです。 description

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コラム作成者
Liiga編集部
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