「テクノロジー×ビジネスが必須スキルに」。BCG出身のAIベンチャー創業者が語る、ハイクラス人材のキャリア論
2021/06/28

sponsored by Laboro.AI description

「これからはデジタルやテクノロジーが、ビジネスに欠かせないスキルセットになる」――そう語るのは、Laboro.AI(ラボロエーアイ)代表取締役CEO(最高経営責任者)の椎橋徹夫氏だ。椎橋氏は、ボストン コンサルティング グループ(BCG)からアカデミア発のAI(人工知能)系スタートアップを経て、AIベンチャーを起業。コンサル出身者として、異色の経歴を歩んできた。

なぜ同氏は、テクノロジーがビジネスに欠かせないスキルになると考えるのか。スキルとして身に付けるにはどうすべきなのか。同氏の歩んできたキャリアと、そこで得た考えをひもときながら、ハイクラス人材が目指すべきキャリアについて語ってもらった。

〈Profile〉
椎橋徹夫(しいはし・てつお)
株式会社Laboro.AI 代表取締役CEO。
米国州立テキサス大学理学部物理学/数学二重専攻卒業。2007年にボストン コンサルティング グループ 東京オフィスに参画。ワシントンDCオフィスへの出向を経て2014年、当時最年少でプリンシパルに昇進。社内のテクノロジーアドバンテージグループのコアメンバーとして、ビッグデータ活用チームの立ち上げをリード。同年退職し、東京大学発スタートアップ・PKSHA Technologyの初期メンバーとして参画。AI事業部の立ち上げをリード。また同年東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻松尾豊研究室グローバル消費インテリジェンス寄付講座ディレクターを兼任。2016年、AIを活用したソリューション開発などを手掛けるLaboro.AIを創業。


サイエンス×ビジネスで、社会に大きなインパクトを与えたい

――BCGから、アカデミア発のテクノロジー系スタートアップへのキャリアチェンジは珍しいと思いますが、どのような経緯があったのでしょうか。

椎橋:大学時代は数学や物理を専攻し、金属の中で原子がどうなっているのかといった、サイエンスの中でも特に物性物理に関心を持って取り組んでいました。それも好きだったのですが、以前からサイエンスやテクノロジーで世の中にインパクトを与える、あるいは複雑な社会を解明することに興味があり、社会や経済にもう少し影響を与えられることがしたいと考えていました。

数理的なアプローチを使って社会学や経済学を研究することも考えたのですが、一度社会に出てみた方が、世の中の様子を肌感覚としてつかめるのではと思いました。そこで、世の中のリアルな問題を分析的なアプローチから解決するコンサルの仕事に就こうと思い、2007年にBCGへ入社したんです。

入社当初は3年ほどで大学院に戻ろうと考えていましたが、結果的にはBCGに7年ほど在籍し、サイエンスやテクノロジーに関連するプロジェクトを担当しました。

――7年働く中で、当時最年少でプリンシパルに昇進するなど、輝かしい実績を残しています。そんな中、転職を考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

椎橋:仕事はとても面白かったのですが、どうしてもビジネス側の視点に寄った内容になります。例えば、ビッグデータをテクノロジー視点から見たときに、それがどれだけ最先端の取り組みになっているのか。一度サイエンス領域に身を置き、そういったことを見てみたいと考えるようになっていました。

思ったよりも長くBCGにいたので、学生に戻る選択肢はあまりないと感じていました。望ましいのは、学生ではない立場で最先端の技術に自らハンズオンで触れられて、かつ世の中へのインパクトも出せるポジションです。

すぐには見つからないだろうと思いながらも模索していたあるとき、東大の松尾研究室で、産学連携の仕組みづくりや企業との共同研究の統括ができる人を探しているという話をもらいました。松尾研究室は、近年ディープラーニング(深層学習)の研究で有名になりましたが、当時はまだあまり知られていませんでした。ただ、そのときから産学連携の推進を強く志向していました。

松尾研究室が産学連携で目指していたのは、最先端のデータサイエンスを使ってビジネスで価値を出すこと。私のやりたいこととも非常に近く、ビジネス前線のバックグラウンドと情報系の技術の素養という人材要件も私に合っていたことから、またとない機会だと思い、転職を決めました。

そこで半分は産学連携の仕組みづくりのディレクターとして、もう半分は松尾研究室から設立されたPKSHA TechnologyというAIスタートアップのメンバーとして、AIテクノロジーのビジネス活用に携わりました。

description

――椎橋さんのように、テクノロジーにハンズオンで携わっていく魅力とは何でしょうか。

椎橋:最近よくいわれるように、デジタルやテクノロジーは、もはや一つの分野ではなく、ビジネスをやっていく上で欠かせない知識領域になっています。コンサルにおいても、デジタルやテクノロジーのスキルセットがなければ、大きなインパクトが出せなくなっているのが現状です。

しかし今の世の中で、そのスキルセットを身に付けられる機会はごく限定的です。今後ビジネスやイノベーションに関わっていくにあたって、その前提となるスキルセットが身に付けられるのは、大事なことだと思います。

特に重要なのは、テクノロジーを使って真摯に価値あるソリューションを設計する経験を持つこと。そのためには、レベルの高いエンジニアと一緒にタスクを組み、深く関わりながら、何をつくってどう使うと、どんなビジネスインパクトが出せるのか、試行錯誤する必要があります。

ビジネスで価値を生むAIを設計するためには、やはりビジネス経験を通して実践的な感覚知を身に付けるしかないのです。これは車を運転するときの車両感覚のように、教科書的な知識だけではない、実際にやってみなければ分からない感覚的な要素に近いと考えています。

テクノロジーを使ったイノベーションのプロチームをつくりたい

――創業した経緯を聞かせてください。

椎橋:もともとは、サイエンスやテクノロジーで世の中にインパクトを与えることがしたかったとお話ししましたが、例えば、戦略コンサルなら戦略のプロフェッショナルといったように、テクノロジーを使ってイノベーションを起こすことに特化したプロフェッショナルチームがあれば面白いのではないかと考えました。

しかし、戦略コンサルも大学の研究室もAIのスタートアップも、そのために必要な要素のかけらは持っている一方で、全てを兼ね備えているものはないと感じたんです。

戦略コンサルは、ビジネスの重要なアジェンダに取り組む点でイノベーションに近いと思いますが、エンジニアと一緒にモノをつくってビジネスに実装することが決定的に欠けています。

研究室は、最先端のテクノロジーを扱い、産学連携でビジネスの課題に取り組むという点ではイノベーションに近いのですが、学術成果を出して論文を書くことがゴールなので、我々とは目指すところが異なります。

AIのスタートアップは、プロダクトをつくって、それを売っていくことにフォーカスするのが王道です。PKSHA Technologyもアルゴリズムのサプライヤーだと言っていて、テクノロジーの供給に努めています。

そう考えたときに、それぞれの欠けているところを補うような形で、最先端のテクノロジーをキャッチアップしながら、いろいろな企業の経営レイヤーと業界や企業を変えるようなテーマに取り組み、AIを起点としたソリューションを実装することができれば、本当の意味でのイノベーションを高いレベルで実現できるのではないかと思い、Laboro.AIの創業に至りました。

テクノロジーとビジネスの両面を理解し、事業に踏み込んで価値を出す

――改めて、貴社が掲げるビジョンはどのようなものですか。

椎橋:ミッションは二つ。一つは、「すべての産業の新たな姿をつくる」です。これはテクノロジーを単に供給するだけでなく、その企業のビジネスにまで踏み込んで一緒に産業や企業の新しい姿をつくること。加えて、業界に限らずイノベーションが起こせる、異なる領域同士をつなぐという思いもあります。

もう一つは、「テクノロジーとビジネスを、つなぐ」。営業などのビジネス側のメンバーもテクノロジーと深く関わり、頭の中で高いレベルでテクノロジーとビジネスをつなげられる状態をつくって、両者を真に理解しながらつなげられる立ち位置になっていくことを目指しています。

――ビジネス側のメンバーもテクノロジーを深く理解するのですね。その上で、貴社の事業内容はどのようなものですか。

椎橋:「カスタムAI」と銘打ち、オーダメイド型のAI開発を事業にしており、さまざまな業界やテーマに対して、機械学習のアルゴリズムをビジネスの中に組み込むことで価値を出していくことに取り組んでいます。また、そのための要素技術の研究開発も行っています。

取り組んでいるプロジェクトのタイプは三つ。一つ目は業務改善系で、例えば手書き文字をAIが読み取って電子化するように、人が行っていた作業を自動化するものです。これはニーズが多いため、他社のデジタルコンサルもよくやっていると思います。

二つ目は、製品開発系です。これは例えば、AIを製品の製造装置に組み込むことで、形も品質もバラバラの材料を適切に処理して次の工程に進むといったように、AIの活用で従来の製造装置や製造業にイノベーションをもたらすことを目指しています。

三つ目は事業開発系で、AIとデータを使って、まったく新しい事業やサービスをつくる取り組みです。例えば、とある食品メーカーと行っているプロジェクトでは、彼らが持っている栄養素や味の細かいデータを生かし、新しいレシピを提案するデジタルサービスを開発しています。

二つ目と三つ目の事業は、5~10年という長い期間をかけて取り組んでいくプロジェクトということもあって、他社で手掛けているケースが少なく、当社に独自性があります。市場ニーズの関係で、もともとは業務改善系の取り組みが多かったのですが、最近は製品開発系と事業開発系の取り組みも増えてきています。

――入社後は、どのようなキャリアを積むことになるのでしょうか。

椎橋:AIの知識とビジネス視点を併せ持つ「ソリューションデザイナ」として、プロジェクトに関わります。ソリューションデザイナとは当社オリジナル人材で、AIをビジネスで実用化する上で重要な役割を果たすポジションです。

当社では、ソリューションデザイナの一人一人がテクノロジーもビジネスも理解する方針なので、自分でテクノロジーに関する論文を読んだり、エンジニアが実装したプログラムに触ってチューニングや精度検証を行ったりすることもあります。

日々の業務では、エンジニアと密にコミュニケーションを取りながら、何をつくり、どうクライアントのビジネスにAIを組み込むかといった設計に頭を使い、価値を出していきます。

description

ソリューションデザイナを、キャリア選択の一つに

――貴社で活躍できる人は、どのような人だと思いますか。

椎橋:事業企画やコンサルなどのバックグラウンドを持ち、決められたものがない中で、自ら答えを出すことをやってきた人が望ましいです。逆に、確立された型通りにプロジェクトマネジメントをするといった、自分で考えて行動することに慣れていない人にとっては、なかなか大変な仕事かもしれません。

ただテクノロジーに関しては、デジタルやITに触れていた経験を求める程度で、あとは強い興味さえあれば問題ありません。実際に、現在のメンバーには前職で機械学習を専門にしていた人はいませんが、すぐにキャッチアップできています。

同時に、価値観も重視しています。ソリューションデザイナは新しいタイプのプロフェッショナル職を志向していますが、今の時点では未完成の職種ともいえます。

そのため、テクノロジーとビジネスの両方を理解しながら、再現性をもってイノベーションを起こすのを目指すことに共感できる人、そしてソリューションデザイナという職種そのものを自らの手でつくっていこうと思える人であれば、ぴったりだと思います。

――今後どのようなことに取り組みたいですか。

椎橋:まずは現在取り組んでいる、次世代の製品やサービス、事業をつくるテーマを長期で大きく花開かせていきたいと思っています。

その先には、例えば食に関する個人データと医療に関する個人データがどこかでつながるように、一つ一つの取り組みが企業や業界の垣根を越えてつながる未来がやってきます。そしてゆくゆくは、新しい世の中の仕組みができるところに貢献していきたいと考えています。

今後は、デジタルによってキャリア自体にもイノベーションが起こっていくと思います。これまで「王道」とされてきたキャリアラダーで本当にいいのかを、改めて考えるときです。その中で、ソリューションデザイナが新しいキャリアの一つの選択肢になっていくといいなと思っています。

description

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。