ITコンサルとは何者か 前編〜その仕事内容、職位、転職と選考について~
2021/11/12
#ITコンサルの仕事内容
#ITコンサルとは何者か

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ITコンサルティング業界は、新卒入社時から中途採用に至るまで、ハイレベル層から人気のある業界です。近年、コンサル経験の無い方がITコンサルに転職する事例が増えています。

では、コンサル未経験の方がITコンサルに転職するためには、どのようなスキルや経験が必要なのでしょうか。そして、転職活動に不可欠なエージェントをどのように選び、活用すれば良いのでしょうか。

本記事をお読みいただくことで、未経験からITコンサルに転職するためにこれからどのような準備をしていくべきか、ご理解いただけると思います。

シリーズ【ITコンサルとは何者か】(押すと開きます)

シリーズ【ITコンサルとは何者か】

“単なるシステム導入屋さん”ではない。顧客の経営課題を解決に導くITのスペシャリスト

ITコンサルタントは、顧客企業のIT関連分野全般におけるコンサルティング、およびシステムの導入支援を行うコンサルタントを指します。

担当している業務についてですが、一言にITコンサルタントといっても担当業務は様々です。

IT戦略の立案から、システムの開発と導入支援、さらにはシステム構築プロジェクトのマネジメント、システムの動作検証、さらには業務改善まで、ITコンサルの担当業務は多岐に渡ります。

システム開発や導入、システムの動作検証についてはSEと協業するファームもありますが、上流から下流まで一気通貫でプロジェクトを請け負うファームもあります。

一言でITコンサルタントの果たす役割を言うと「顧客企業の業績をITを活用することで上げていくこと」となるでしょう。

なお、よくSE(システムエンジニア)と混同されますので、この違いについてここで解説しておきます。SEは、決められた要件に沿って正確にシステムを開発し、構築したシステムで企業を支援します。SEが所属するシステム開発会社はSIerと呼ばれます。

一方の、ITコンサルタントは、顧客のニーズを汲み取った上でシステム構想を策定し、経営課題の解決を目指して実行支援までを行います。

両者は、プロジェクト内で携わるフェーズが異なります

ITコンサルタントはクライアントが抱える経営課題や業務課題に基づいて、システムを構想するフェーズから携わっているという点が大きな違いです。

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世界的ファームから新興のベンチャー系まで 群雄割拠のITコンサル

次に、ITコンサルティングファームとして代表的な企業とその特徴について解説していきたいと思います。

なお、ここで紹介しているファームはITコンサルティングをメインの事業として展開しているファームです。

昨今のトレンドとして、一般的に戦略コンサルティングファームや総合コンサルティングファームと呼ばれるファームでも、ITコンサルティングに力を入れ始めており、これらのファーム内でもITコンサルタントとして活躍するチャンスは大いにあります。

アクセンチュア

世界最大規模の経営コンサルティングファームと言われており、業界内でのプレゼンスは絶大です。株価は2000年の上場から10倍以上に成長しており、従業員数も6年間で3倍に増やしているファームです。

各業界、並びに各IT技術に深い専門性を持ったコンサルタントとエンジニアを幅広く抱えているため、ITコンサルティングから実際のシステムのデリバリーまでを一気通貫で対応することができる体制になっています。

また、アクセンチュアには「人」を大切にする文化が根付いており、成果を出そうと努力しているメンバーに対しては、惜しみなく投資をする社風があります。ワークライフバランスの改善や、女性にも働きやすい職場環境づくりにも積極的であることも特筆すべき点と言えるでしょう。

日本アイ・ビー・エム

日本アイ・ビー・エムは、世界170カ国以上でビジネスを展開しているグローバルITカンパニーであるIBMのメンバーファームです。

IBMの最先端技術を駆使したコンサルティングを展開していることが大きな強みであり、世界中のナレッジを生かすことができるのが特徴です。また、他のコンサルティングファームと比較しても、しっかりとした研修制度が整備されているようです。

また、社風としては外資系と聞いてイメージされるような「ドライ」な企業風土ではなく、社員同士の仲が良く、仲間で楽しく仕事をしようとする意識が強いようです。

アビームコンサルティング

アビームコンサルティングは、日系のファームで、主にアジアを中心とした73拠点もの海外ネットワークを構築しており、各地域に根ざしたコンサルティングを提供しているのが特徴と言えるでしょう。

また、クライアントの「Real Partner」として中長期的な関係性も重視した息の長いコンサルティングを提供している点が特徴として挙げられます。チームワークを重んじる姿勢が企業文化として根付いており、ナレッジを共有するデータベースの活用や社員同士の勉強会が習慣化しているようです。また、勤続年数の長いコンサルタントが多いのも特徴です。

シグマクシス

シグマクシスは、三菱商事株式会社とRHJインターナショナルの共同出資によって、2008年に設立された新興のファームになります。

「人財の多様性」を強みとして掲げており、社内外の多様なステークホルダーと協力しながら、顧客の抱える複雑な経営課題を解決に導きます。

従来のコンサルティング業務に加えて、事業投資やインキュベーションにも注力しており、企業・業界・社会をつなぐ『アグリゲーター』としてクライアントの成長に貢献しています。

また、コンサルティングファームとしては珍しい、契約形態として「成果報酬型」のプロジェクトを展開しているのもシグマクシスの特徴であり、クライアントに変化が現れるまで徹底的にコミットをする姿勢が求められます。

フューチャーアーキテクト

フューチャーアーキテクトは、日系のITコンサルティングファームです。1989年の創業と同業他社と比較すると歴史のあるファームと言えるでしょう。前例をそのまま踏襲するようなサービスは行わず、独自の最適解をゼロベースの発想で創り上げ、解決策として提供することをポリシーとして掲げています。ITに関する知見のみならず、『経営』に関する知見も生かしたコンサルティングを提供している点が特徴としてあげらます。

業界の常識にとらわれずに、常に新しい挑戦をできるようなコンサルタントが多く在籍しており、既存の枠にとらわれない姿勢を持ち合わせた人材が求められています。

シンプレクス

シンプレクスは、外資系金融機関出身者が1997年に設立したファームであり、主に金融機関に対するITソリューションを提供するようなプロジェクトが多いです。大きな特徴として、上流工程から下流工程までを一気通貫体制で担当している点が挙げられ、深い業務知識と専門性に基づいた高品質のサービスを提供しています。在籍するコンサルタントは、プロジェクトのマネジメントを行いつつ、最新技術や金融工学を熟知した上でコーディングまで行うことができる、稀有な人材です。

スカイライトコンサルティング

スカイライトコンサルティングは、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)出身のマネージャーにより、2000 年に設立された日系のITコンサルティングファームです。顧客はグローバル企業からベンチャー企業まで多岐に渡り、中立で徹底した顧客志向のサービスにより、リピート率8割という高い顧客満足度を得ているようです。

また、新サービス開発や投資事業など、コンサルティングというビジネスの枠を超えた取り組みも行っている点が大きな特徴です。

ベイカレントコンサルティング

ベイカレントコンサルティングは、日系の総合コンサルティングファームで、1998年に誕生した、比較的新しいコンサルティングファームです。

設立時はシステム構築、ITアウトソーシング事業を中心としたSIerとして創業していることもあり、ITコンサルティングに強みを持っているコンサルティングファームです。日系のファームだからこそ、日本特有のビジネスカルチャーを深く理解した上で、きめ細やかな対応を行うことができる点に強みがあります。

近年は、戦略コンサルティング機能の強化を積極的に行っており、戦略系ファームからジョインする方が増えている、成長著しいファームです。

また、ここで紹介しているファーム以外にも従来のコンサルティングファームの枠組みに囚われないような新興のファームが登場してきています。元々コンサルティングファームに在籍していたコンサルタントの方が独立して新しいファームを立ち上げるケースが出てきているのです。こちらのファーム群については、中編後編で詳しく紹介しますので、そちらをご参照ください。

計画から実装まで、経営課題から逆算し、最適なソリューションを徹底的に追求する

では、ITコンサルタントの具体的な仕事内容はどういったものなのでしょうか。

以下では、全社的な仕事内容と、一個人としての仕事内容に分けて解説していきたいと思います。

まず、全社的な仕事内容についてですが、上述の通りITコンサルは、ITの活用を通して顧客企業の経営課題・業務課題を解決することを主たる業務としています。

ITコンサルティングファームの一連の支援の流れを整理すると以下のようになります。

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① 企画

まず、顧客企業が抱える経営課題や業務課題を解決するために、顧客企業が置かれている状況や、市場環境について整理します。整理した結果、経営課題を解決するためにはITの活用が必要か否かを判断します。

ITの活用が必要であると考えられる場合、ITを中長期的な目線でいかに活用していくべきか、『IT戦略』の策定を行います。

また、BPR(Business Process Re-engineering)と呼ばれる、顧客の経営課題を解決するために、企業活動や組織構造、業務フローの再構築を行います。BPRは業務フローとシステムアウトプットの現在の状態と、理想の状態を具体化していく、ITコンサルの腕の見せ所とも言えるフェーズになります。

② 計画・要件定義

次に、顧客企業が抱える経営課題や業務課題を解決するために必要なITツールについて提示し、それを顧客企業に導入していくためのプロジェクトの計画を行います。加えて、必要な機能や要求をわかりやすくまとめていく要件定義を行い、最終的なアウトプットのイメージを擦り合わせていきます。

③ 設計・開発

前のフェーズで、顧客企業が抱える経営課題や業務課題を解決するために、必要なITツールの全体像を明確にしました。その次は実際にITツールを設計・開発していくフェーズになります。このフェーズにおいては、外部ベンダーと協業するファームもあれば、設計・開発も自社内で完結させているファームも存在します。いずれの場合でも、ITコンサルタントは顧客視点でプロジェクトを管理し、問題が生じた場合は早期に発見・解決をすることで、プロジェクトを円滑に進めていきます。

④ 実装

最後に、開発したツールを顧客企業に円滑に導入していくための支援を行います。ツールを導入したことによる効果測定を行い、プロジェクトの成果を可視化します。このフェーズにおいても、外部ベンダーと協業するファームもあります。

なお、近年は複数のファームで特定の専門領域に特化したチームが登場してきています。例えば、AIやサイバーセキュリティに特化したチームがITコンサル部門からスピンアウトして出てきています。

それに伴って、ITコンサルが携わるプロジェクトの性質も、従来のウォーターフォール型のシステム開発にとどまらず、クライアントが抱える幅広いテーマの課題解決を行うようになってきています。

特定のテクノロジーに精通している方は、専門性を生かしてこのような特定のチームで活躍する、というキャリアパスも出てくるでしょう。

次に一個人としての仕事内容についてですが、職位に基づいて業務の役割が決まっています。

各ファームによって細かな職位の差は存在しますが、基本的に4つの職位に分けることができます。その4つの職位と担当している業務内容については以下の通りです。

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①アナリスト

アナリストの役割は、同じプロジェクトにアサインされたコンサルタント・マネージャーの指示に基づいて、プロジェクトに関連する情報を収集・分析し、報告資料を作成することです。ITコンサルの場合、業務フローの作成やプログラミングのコーディングを任されることもあります。コンサルタントとして活躍するための基礎力である、リサーチ力・ドキュメンテーション力・資料作成能力を身につける期間と言えるでしょう。

②コンサルタント

コンサルタントの役割は、プロジェクト内に幾つか存在するパートを担当し、プロジェクトを推進することです。プロジェクト全体を統括するマネージャーのもとで、論点ごとに設けられたパート(例えば全社改革PJなら売上向上パートやコスト削減パート等)を担当します。

ITコンサルの場合、クライアントにとってどのような業務プロセスが最適であるかを考え抜き、それをもとにどういったシステムが顧客にとって必要なのかを検討します。

③マネージャー

マネージャーの役割は、プロジェクトの責任者として、コンサルタントやアナリストを統括することです。プロジェクトが滞りなく円滑に進むように、的確な指示を出してマネジメントできる能力が必要不可欠になります。また、クライアントとの交渉やプロジェクト予算の管理なども担当することになります。

また、マネージャーになると、よりクライアントとの接点が増え、意見交換や成果報告を日常的に行うようになります。

④パートナー

パートナーの役割は、顧客開拓と自社の経営です。

顧客開拓については、潜在的に顧客になり得る役員・経営層に対してアプローチし、提案書を作成しプロジェクトを受注します。一般的な営業活動に加えて、セミナーの実施や書籍の執筆など、顧客開拓のための手法は多岐にわたります。

自社の経営については、共同経営者として今後どういった形で自社が成長を遂げていくのか、決定するという役割を果たします。

論理的思考力や特定領域の専門性は大前提。 周りを惹きつける”人間力”で差をつけよ

ここまで、ITコンサルとはそもそも何か、そして ITコンサルの仕事内容について解説してきました。事業会社とは違った特徴をご理解いただけたかと思います。

ここからは、 ITコンサルに転職するための具体的な方法について解説していきます。必要な経験・スキルに加えて、選考内容やエージェントの活用法についても詳細にお伝えします。

ITコンサルに転職するために必要な経験・スキル

ITコンサルタントに必要なスキルとしてまず挙がるのは、業務に必要なITの最新かつ専門的な知見でしょう。例えばERPの導入経験、どのプログラミング言語の扱いに長けているか、セキュリティ知識、などが挙げられます。

また、必須というわけではありませんが、ITストラテジスト試験やITコーディネータといった資格を保有していると、専門知識やスキルを持っていることを示すことができるでしょう。

加えて、論理的思考力はITコンサルタントに必須です。

収集した顧客企業に関するデータから、課題解決に必要な要素を論理的に導き出し、具体的なシステムの要件に落とし込んでいくことが、ITコンサルタントには期待されています。

加えて、顧客に対してプロジェクトの成果を適切かつ論理的に伝えられる必要があります。

また、プロジェクトをマネジメントする能力もITコンサルタントには重要です。プロジェクト計画の作成、必要となる要員や資源の確保、予算・スケジュール・品質などの計画に基づきプロジェクトを実行・管理する能力が求められます。

クライアントといかに良い関係性を保ちながら、必要な情報を引き出しつつ、提案/交渉を進め、プロジェクトを推進できるか。いわば”人間力”が、ITコンサルには求められているのです。

未経験からITコンサルタントになる上で、あると望ましいのは要件定義や基本設計など、SEとして上流工程を担当した経験です。

SEとして活躍した方であれば、特定のシステムに関する深い知識を有していることが期待される上、ベンダー側の視点でプロジェクトを眺めることが可能です。こういった人材は、 ITコンサルティングファームにおいて重宝されることでしょう。

また、IT業界出身でなくても、企業のシステム部における企画経験や、CRMの案件に参加した経験なども、ITコンサルタントとして活躍する上で大いに生きてくるでしょう。

ITコンサルの選考内容とその対策

では、具体的にITコンサルの選考はどういったフローで進んでいくのでしょうか。

戦略コンサルの選考は大きく分けて3ステップで構成されています。

  • ① 書類選考
  • ② 筆記試験
  • ③ 面接(ケース面接含む)

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以下、順を追って解説していきます。

① 書類選考

まずは、書類選考が行われます。履歴書と職務経歴書に加えて、志望動機書の提出が求められるファームが多いです。

職務経歴書では、これまでの経歴や仕事内容をブランディングし、ITコンサルタントとして求められる業務知識、プロジェクトマネジメントスキルや問題解決力をアピールすることが極めて大切です。

志望動機書では、 ITコンサルタントになりたい理由、中でもそのファームを志望する理由、入社後どのような形で貢献できるのかをアピールすることが求められます。特に、SE出身の方は、なぜベンダーではなくITコンサルタントとしてプロジェクトに携わりたいのかをしっかりと整理しておきましょう。

コンサルティングファームの募集状況や求職者の年齢などにも左右されますが、一般的に通過難易度は『高い』です。

② 筆記試験

無事に書類選考を通過したのちに待ち受けているのは、筆記試験です。

内容は、新卒採用でも求められるような「判断推理」「数的推理」などになります。ファームによっては、独自問題を課してくる場合もあります。

筆記試験は、求職者の基礎能力を測り、候補者を絞り込む目的で実施されており、いくら良い点数が出たからと言って後の面接が大きく優遇されるというものではありません。

しかし、面接の対策に注力するあまり、筆記テスト対策を疎かにして不採用になってしまう人も存在します。事前に入念な対策を行って臨むようにしましょう。

③ 面接

筆記試験を突破すると、待ち受けているのは面接になります。ファームや応募するポジションによって異なりますが、複数回の面接が課されることが多いです。

ITコンサルティングファームにおいて課される面接は基本的に、通常面接です。この面接では、『なぜ ITコンサルタントを目指したいのか』、『なぜこのコンサルティングファームを選ぶのか』などの志望動機から、『自身の強み・弱み』『転職後にどのようなポジションを望むのか』などを細かく聞かれます。聞かれることが予想される質問に対しては、前職の経験と絡めて答えられるようにしておくことが必要不可欠になりますが、それに加えて要点を抑えた簡潔な話し方で伝えられるようにしておくべきです。質問に対してストレートに答えず、的外れな回答をしてしまったり、結論の見えないエピソードを長々と語っていては、コンサルタントとしての適性がないと判断されてしまいます。

なお、戦略ファームでよく出題されるケース面接(※)については、出題される可能性は少ないです。

(※)ケース面接

ケース面接とは、与えられた問いに対して制限時間内に打ち手を提案する面接形式です。

例えば

  • 「仮設トイレの市場規模を求めよ」
  • 「ある自転車販売店の売上を1.5倍にするための施策を提案せよ」
  • 「リモートワークの普及によって衰退する産業はどこか」

といった問題が課されます。

“パイプの有無”も実力のひとつ。内定をグッと近づけるエージェントの見極め方

未経験からITコンサルへの転職を成功させる上で、転職エージェントを利用することは非常に有効です。

しかしながら、転職エージェントは数多く存在しており、どのエージェントを使えば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

ここからは、ITコンサルへの転職を考える際に活用できるエージェントの特徴について解説していきたいと思います。

ITコンサルの企業と太いパイプを持っていること

ITコンサルティングファームへの転職を成功させる上で、活用できるエージェントの1つ目の特徴は「パートナーや採用責任者クラスとの繋がりが強い」という点です。太いパイプを持っている場合、一般的な選考ルートとは違った特別なルートでの選考が可能になることがあります。というのも、コンサルにおいて、どんな人物を採用するのか最終的な決裁権限を持つのはパートナーや人事責任者だからです。

一般的な選考ルートや、他のエージェントでは不合格になってしまった方が、太いパイプを持っている別のエージェント経由で選考を受けて内定する、といった事例も実際に存在しているようです。

また、クライアントの採用戦略を熟知しているエージェントでは、その会社の状況に応じて新たなポストを創設することを提案しているケースもあります。特にITコンサルが対象にしている最先端のテクノロジーは日々進化を続けており、最新技術に関して深い知見を持っている人を外部から取りたいというニーズが生まれることも往々にしてあります。こういったポストは、一般に公開されていないケースが多く、エージェントを経由しないと応募できないようになっています。

このようにファームのパートナーや採用責任者クラスと強固な関係性を築き上げているエージェントは、そう多く存在するわけではありません。ご自身が利用を検討しているエージェントが、こういったコネクションがあるのか事前に把握しておくと良いでしょう。

ITコンサルの選考や内部情報に詳しいこと

ITコンサルへの転職を成功させる上で、活用できるエージェントの2つ目の特徴は「ITコンサルの選考や内部情報に詳しい」という点です。

ITコンサルの一般的な選考フローについては上述の通りですが、各ファーム、各ポジションによって大きな違いがあります。

面接の回数は何回なのか、そのうちケース面接が出題される可能性はあるのか、過去に面接ではどういった質問が聞かれたのか、時間配分はどれくらいだったのかなど、求職者では得ることが難しい情報をエージェントは保有していることもあります。選考を突破する上で、選考の具体的内容を知ることができるのは大きなアドバンテージになるでしょう。

また、ITコンサルに精通しているエージェントは、各ファームの求人ニーズのトレンドを理解しています。ITコンサル各社は近年、幅広いテーマに関する大規模プロジェクトを受注しており、人員不足の状況にあります。そして、各社様々な募集ポジションを設けています。

転職を成功させるにあたって、転職希望者の専門性と募集ポジションがフィットしているか否かは非常に重要です。良いエージェントは転職希望者の専門性とフィットしている募集ポジションを提示できるので、転職希望者は選考を通過できる可能性が高くなると言えるでしょう。

ITコンサルの選考や内部情報に詳しいエージェントを見抜くためには、各エージェントの転職実績を確認するのが良いでしょう。各ファームにどのような方が受かりやすいかという傾向を掴んでいると予想されるからです。

面接や書類選考のサポートが手厚いこと

ITコンサルへの転職を成功させる上で、活用できるエージェントの3つ目の特徴は「面接や書類選考のサポートが手厚い」という点です。

上述の通り ITコンサルの選考は難易度が高く、面接など独力での対策が難しい選考もあります。

書類選考に関して言うと、優れたエージェントは職務経歴書や志望動機書に目を通せば、内定が出やすいのかどうかを判断できます。各ファームが求めている人物像を熟知しており、どのような点を訴求すべきかを理解しているからです。

数多くの転職希望者を内定に導いてきたエージェントが添削を施すことによって、書類選考の通過率を飛躍的に上げることができるでしょう。

また、面接に関して言えば、募集ポジションにフィットしている人物であることをアピールすべく、前職の経験や持ち合わせているスキル、志望動機を語れるようにしておく必要があります。ITコンサルの中でも特に大手ファームであれば、数百名から数千名の規模であるため、ポジション別の採用になっており、応募ポジションによって、業務内容が大きく異なります。各ポジションの詳しい業務内容に関しても、転職支援の実績を豊富に持ち合わせているエージェントは熟知していますので、有効な対策が進められるでしょう。

加えて、コンサルタントとして相応しい話し方や振る舞いで、面接に臨むことが必要不可欠になります。エージェントと面接練習を繰り返すことによって、伝えるべき事項を簡潔に分かりやすく伝えることができるようになるでしょう。

まさに“引く手あまた” 身につけたポータブルスキルを武器に 事業をドライブする側へ

次に、ITコンサルとして実績を積み上げた後に、どういったネクストキャリアを歩むことになるのか、という点について解説していきたいと思います。

ITコンサルタントの市場価値は非常に高く、転職市場においてもしっかりと評価される傾向にあります。ネクストキャリアは非常に幅広く、事業会社やベンチャー企業の経営部門やIT部門への転職、他のコンサルへの転職、起業などが挙げられます。

事業会社への転職

ITコンサルのネクストキャリアとして、まず挙げられるのが事業会社への転職です。一言に事業会社といっても、大手企業の場合もあれば、新興のネットベンチャーの経営層としてジョインされる方もいます。企業活動の根幹にITが切り離せなくなっていることを踏まえて、ITの深い知見を持ち、顧客企業の経営課題を解決に導いてきた実績を持つITコンサルタントが重宝されるのです。

また、ITコンサルタントとしてプロジェクトの実績を積み上げていくうちに、顧客企業の課題を解決するのではなく、自分自身で裁量・責任を持って事業をドライブしていきたいと考えるようになる方もいらっしゃいます。こういった方々が、ITコンサルタントを必要としている事業会社にジョインするケースが増えています。

他のコンサルティングファームへの転職

ITコンサルのネクストキャリアとして、次に挙げられるのが他のコンサルティングファームへの転職です。

ITコンサルとしてプロジェクトに携わっていく中で、全社的な経営課題の解決にまで踏み込んたプロジェクトに携わりたい、と考える方もいらっしゃいます。このような方は、経営戦略・業務・IT・組織人事など多岐にわたるコンサルを手掛ける総合コンサルティングファームや、経営戦略を中心にコンサルを手掛ける戦略コンサルティングファームへの転職が選択肢に入ってきます。

加えて、コンサルティングに最新のITを掛け合わせたような、新興コンサルが最近は増えてきています。こういったファームの創業期にジョインする、という方もいらっしゃいます。

起業

ITコンサルのネクストキャリアとして、起業という選択肢も挙げられます。

コンサルタントとして、幅広い業界の顧客企業とプロジェクトを進めていく中で、解決したいと考えられるような社会課題を見出し、既存の会社でそれを実現できないと考える方は、起業という選択肢が視野に入ってきます。

それまで身につけてきたITに関する最新かつ深い知見を活かして、Web業界で起業をする方や、前述のようなコンサルティングに最新のITを掛け合わせたような、新興のファームを立ち上げる方も出てきています。

コンサルタントとしてプロジェクトを進めていく際に求められる能力と、起業家としてゼロから事業を作り上げていく際に求められる能力は必ずしも一致するわけではありませんが、ロジカルシンキングや資料作成のスキル、周囲を巻き込みプロジェクトを推進する力などは起業の際にも活きることでしょう。

おわりに

今回は、そもそもITコンサルとは何かという点からスタートし、その仕事内容や転職時の選考内容、そして活用できる転職エージェントの特徴の解説、さらにはポストキャリアについてまで解説をしてきました。

コンサル転職は一筋縄ではいかないものですが、近年の人員拡充を受けて、コンサル経験の無い方にも門戸が開かれています。入念な対策をして選考に臨み、ぜひ内定を掴み取ってください。

シリーズ【ITコンサルとは何者か】

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。