ITコンサルとは何者か 後編〜急成長中の新興ITコンサルと伝統的ファームの対応〜
2021/11/14

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前回の記事では、ベイカレントコンサルティングをはじめとする新興のITファームを主な対象として、業界内での立ち位置や成功の秘訣について解説をしました。新興ITコンサルの登場により、コンサル業界に地殻変動が起こっていることは前回ご紹介した通りですが、伝統的ファーム各社も対応を迫られているのが実態です。

後編となる本記事では、新興ITコンサルの具体的な企業の特徴と、この流れに対する伝統的ファームの対応について解説していきたいと思います。

シリーズ【ITコンサルとは何者か】(押すと開きます)

シリーズ【ITコンサルとは何者か】

草分けのベイカレントから新興ファームが続々誕生 必ず抑えたい新進気鋭のファーム群

具体的にどういった新興ファームが登場しているのでしょうか。まず、新興ファームと呼ばれる具体的なファーム名とそれらが有している特徴について解説します。

ベイカレントコンサルティング

ベイカレントコンサルティングは、1998年に誕生した、比較的新しいコンサルティングファームです。

設立時はシステム構築、ITアウトソーシング事業を中心としたSIerとして創業していることもあり、ITコンサルティングに強みを持っているコンサルティングファームです。上述の客先常駐モデルをコンサル業界に定着させたのはベイカレントである、とも言われています。

ベイカレントコンサルティング自身が日本企業だからこそ理解できる、価値観や文化を織り込んだコンサルティングサービスを提供できることを、大きな強みとしています。

また近年は、戦略コンサルティング機能の強化を積極的に行っており、戦略系ファームからジョインする方が増えている成長著しいファームです。SCEPと呼ばれる、難度の高い戦略案件に携わるメンバーを選抜するための研修が四半期に一度行われており、ワンプールだからこそ誰でも戦略案件に携われる可能性があるようです。

ビジョン・コンサルティング

ビジョン・コンサルティングは2014年に設立されたファームで、大手コンサルティングファーム在籍時、「コンサルティング業界の負の側面を徹底的に変えたい」と感じた佐藤大介氏によって創業されています。

担当している案件は戦略策定からデジタル領域の実装フェーズまで多岐に渡り、案件のリピート率が非常に高いようです。純粋にコンサルティングに従事するコンサルタントに加え、営業活動やコンサルタントのサポートを行うビジネスプロデューサーが存在している点が大きな特徴です。

ビジョン・コンサルティングについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

ライズ・コンサルティング

ライズ・コンサルティングは2012年に設立されたファームです。

社是として『Produce Next』を掲げており、顧客企業の次の未来を創造し、日本の再生にコミットすることを目指しているファームです。

社内ではワンプール制が導入されているほか、「New Tech」「地域振興」「M&A」などの重点施策チームと呼ばれるチームが複数存在しており、希望すれば加入できるといった制度も存在しているようです。

上場を目指しているほか、海外へも事業を拡大すべく中国拠点設立の準備も進んでおり、勢いのあるファームです。

ライズ・コンサルティングについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

ノースサンド

ノースサンドは2015年に設立されたファームで、経営陣の多くはベイカレント・コンサルティング出身のファームです。コンサル業界には珍しい、理念経営を行うファームであり、「人間力」に重きを置いているのが他社との差別化ポイントと言えるでしょう。

社内ではワンプール制が導入されているため多様な業界を経験できる上、「人」を大事にする社風があるため、未経験の方にとっても働きやすい環境があるようです。

日本における「働きがいのある会社」ランキングに 2021年も選出され、4年連続でベストカンパニーに選出されているのもコンサル業界にしては異例とも言えます。

プロジェクトの性質としては、クライアントに常駐しPMOを行うようなプロジェクトが多いようです。

ディルバート

ディルバートは2018年に創業し、2021年3月時点ですでに300名以上の社員を抱えている、成長著しいファームです。

世界と比較し不遇な環境にある日本のエンジニア・コンサルタントを取り巻く世界感を変え、日本再起の起点となる場を形成ことを目指して金山 泰英氏によって創業されました。

従来のITコンサルティング業務に加えて、インキュベーション事業にも注力しており、従来のコンサルの枠組みに囚われないファームとして、今後の成長が見込まれるファームです。

規模拡大か少数精鋭か 岐路に立たされた伝統的ファームの対抗策は千差万別

では、本記事でここまで紹介してきた新興ITコンサルの動きに対して、伝統的なコンサルティングファームはどのような対抗策をとっているのでしょうか。

以下では

  • ①デジタル化の波に乗っている大手戦略ファーム
  • ②実行支援には手を伸ばしつつも、少数精鋭で勝負するブティック系戦略ファーム
  • ③規模や多様性で対抗するBIG4、アクセンチュア

の3つに分けて、それぞれの対応について解説します。

デジタル系プロジェクトに進出するマッキンゼー、BCG

戦略コンサルティングファームは、企業経営の上流〜中流にあたる領域に関するプロジェクトを担当することが多いファームを指します。中期経営計画の策定のような全社レベルでのプロジェクトや、マーケティング戦略・営業戦略などの事業レベルでのプロジェクトを主に担当するのが従来の姿でした。

しかし、上述の通りいわゆるCEOアジェンダと呼ばれる、戦略コンサルが得意としていたような上流のプロジェクトは減少傾向にあります。加えて、このようなプロジェクトは、1案件に対して投入されるコンサルタントの絶対数は多くなく期間も限定的で、多額のプロジェクトフィーを取ることができるわけではないのです。

こういった現状を踏まえた上で、一部大手ファームは現在のトレンドであるデジタル系のプロジェクトに進出してきています。

戦略コンサルのトッププレーヤーと言えるボストン コンサルティング グループやマッキンゼー・アンド・カンパニーは、デジタル系の関連会社を設立しています。加えて、デジタル系をはじめとしたより多くのプロジェクトに人員を投入すべく、採用を強化しているのです。

個の力で勝負をするブティック系 戦略策定に加えて実行支援にも手を伸ばす

戦略コンサルの雄である、マッキンゼーやBCGがデジタル系案件に手を伸ばす一方で、従来の戦略コンサルが得意としていたCEOアジェンダに引き続き注力し、規模の拡大を追わずに、少数精鋭で勝負をしようとしているファームも存在します。

例えば、A.T.カーニーは顧客ごとに異なる経営課題を解決に導く戦略を、オーダーメイドで1つ1つ作り上げていく方針を引き続き重視していく、としています。

また、日系の戦略ファームである、コーポレートディレクションズは同社Twitterで自社を”一部の世界で生き残っているシーラカンスのようなもの”であると自称しており、経営コンサルティングの『業界』化に一石を投じているのです。

しかしながら、旧来の『戦略だけ提示して実行は顧客企業まかせ』という方針では生き残りは難しいと考えるファームもあり、戦略の立案にとどまらず、実行支援にも手を伸ばし始めているファームもあります。

先述のA.T.カーニーは元々オペレーションにも強みを持つファームですし、MBBの一角であるベイン・アンド・カンパニーにも戦略立案にとどまらず、その実行フェーズにまで携わるプロジェクトも存在しているようです。

規模や多様性で対抗するBIG4、アクセンチュア

総合コンサル、経営レベルから現場レベルまで幅広いコンサルティングを行っています。経営戦略の策定はもちろん、ITシステム導入支援や業務改善、PMOまで、担当するプロジェクトのテーマは多岐にわたります。

総合コンサルは、デジタル系の大型プロジェクトを受注し、そこに大量の人員と時間を投入することによって、莫大なプロジェクトフィーを獲得するような方針に舵を取っています。

戦略コンサルよりも、コンサルタントの属人性を失わせ、多くの企業に対して有効なソリューションを提供することを目指すファームが多いのが現実です。

しかし、従来の大手ファームは独自の強みを活かして、新興ファームに対抗しています。

新興ファームとの差別化要素としては以下の2点が挙げられるでしょう。

①取れる案件の規模

Big4やアクセンチュアは、新興ファームにはとても担当できないような大きな案件を獲得し、高い再現性で成果を出すことに強みを持っています。

難度の高いプロジェクトでは、数年単位で数多くのコンサルタントが投入されることになります。これは結果的に多額のフィーを発生させることにつながり、収益の大きな柱としてコンサルティングファームの経営を支えているのです。

②人材の多様性

Big4やアクセンチュアは、グローバルファームということもあり、日本国内はもちろん、国外にも多くのメンバーが在籍しており、協働しながらプロジェクトに携わることができるのが特徴です。

2021年8月現在で、全世界で数十万人の社員を抱えているファームが多く、過去に数多くのプロジェクトを担当してきていることから溜まったナレッジを生かす風土もあります。

社内にエンジニアやデザイナー、会計士など多様な人材が協力しながら、大所帯ならではのダイナミックな課題解決が可能なのです。

おわりに

今回は業界内で大きな地殻変動を引き起こしている新興のITファームの特徴と、この流れに対する伝統的ファームの対応について解説しました。

コンサルティングファームと一口に言っても、方針や扱っているプロジェクトにはファームごとに大きな違いがあります。

また、将来性を考えてIT分野に強みを持つファームに目を向けても、各ファームの歴史も得意分野も大きく異なっているのが実情です。コンサルティングファームへの転職を検討している方は、それらの特色を十分に理解した上で選考に臨みましょう。

シリーズ【ITコンサルとは何者か】

コラム作成者
Liiga編集部
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