有識者3人に聞く、データ分析系職種で就職すべき企業、すべきでない企業

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データ分析に強い人材を採用する企業は増えているが、問題は「どこに就職すべきか」だ。まだ新しい領域だけに、他職種より内情に関する情報は限られ、就職ミスマッチも多いと聞く。

特集「データサイエンティストとは何者か」第7回の主題は、就職先の選び方。データサイエンスについて知見を持つ森正弥さん、マスクド・アナライズさん、石井大輔さん(それぞれ詳細はProfile欄を参照)に、お勧めの企業とそうでない企業、そしてデータサイエンスに注目が集まる“DSブーム”に対する見解を聞いた。

「“社内コンサル”だと、データサイエンティストのポテンシャルが引き出されにくい」「歴史ある大企業は、データ分析担当にとって難しい環境になりがち」「人材市場は想定以上に弱肉強食」など、歯に衣着せぬコメントも飛び出す本記事。特集内の若手データサイエンティストのインタビュー記事と併せて読むと、少なからぬ“気づき”があるはずだ。【藤崎竜介】

◇本記事の目的は、ユーザーに多様な角度からの意見・視点を提供することであり、特定企業への就職を推薦・否定するものではありません。

◇「外資就活ドットコム」にも同じ内容の記事を掲載しています。


 

“社内コンサル”や“便利屋”だと、データサイエンティストの力が引き出されにくい

〈1人目Profile〉
森正弥(もり・まさや)
デロイト トーマツ グループ 執行役員・パートナー
Deloitte AI Institute所長。
外資系コンサルティングファームの技術リード、日系IT大手の執行役員・研究所代表を経て現職。日本ディープラーニング協会の顧問も務める。
▶Twitter:https://twitter.com/emasha
▶note:https://note.com/masayamori


データ分析系の職種で就職する場合、どんな企業だと望ましいですか。
クロスファンクショナル(機能横断的)な環境がいいと思います。つまりビジネス系、エンジニアリング系、デザイン系といった多様な人たちがいて、そこにデータ分析をする人も加わる環境ですね。そういう多様性のある部門もしくはプロジェクトのメンバー編成がなされる企業なら、いわゆるデータサイエンティストらしい仕事をしやすいと思います。
最近だと、データ分析人材が集まる部門を設ける企業は多いですよね。それだとよくない、ということでしょうか。
必ずしもそうではなくて、データ分析の部門があっても、プロジェクトはクロスファンクショナルな環境で進む企業もあります。

問題はデータ分析部門の独立性が高く、いわゆる“社内コンサル”とか、“便利屋”みたいになっている場合ですね。それだと、次々と降ってくる仕事をひたすら打ち返すみたいな感じになりがちです。

大きな取り組みの「1工程」だけを担うことになるので、データサイエンティストのポテンシャルが引き出されにくくなります。

例えば、すごいパフォーマンスの出るモデルを作っても、依頼する側が「そこまでのパフォーマンスを想像も期待もしていなかった……」なんていう事態に陥りがちです。

クロスファンクショナルなチーム編成だと、どうなるのでしょうか。
ウェブサービスの例でいうと、データ分析をする人がUX(ユーザー体験)を検討するところから関わって「デザインをこうしたらもっとよくなる」「パラメーターをこう変えたらもっと改善する」といった仮説を、能動的に立てる機会が増えます。

データの専門家が自ら立てた仮説を基にアプローチを決めモデルを作ることになって、成果は出やすくなります。そしてチーム内のビジネス系の人を中心に、素早くその成果を検証することになるので、高速でPDCAが回ります。

クロスファンクショナルな環境にしている企業は近ごろ増えていますし、そうした企業はメディアなど何らかの形でそれをアピールしていることが多いので、注目したほうがいいと思います。

研究開発志向の人がDX担当データ分析ポジションに就くと、大変……

そのほか、就業先を選ぶ上で気を付けたほうがいいことはありますか。
ざっくりと「DX(デジタルトランスフォーメーション)をやりたいから、そのためにデータサイエンティストが必要」みたいなフェーズの企業だと、既存のプロセスやビジネスモデルを「変える力」が求められます。

一方、もっと進んでいてデータ分析の対象がある程度決まっている、つまりデータ利活用の戦略が定まっている企業なら、より深い知識・スキルが必要になるはずです。例えば深層学習の最先端の論文を理解して実装するとか、そういうレベルの話ですね。

人材需要のボリュームが大きいのは明らかに前者なので言うのですが、後者だと思って前者に入ってしまうと、大変だと思います。

前者はビジネス色が強く、後者は研究開発系ですよね。前者だと特にソフトスキル的な力が問われそうですね。
そう思います。ただ注意した方がいいのは、一つの企業内でも前者と後者の両方のポジションがあり得ることです。化学メーカーを例に取ると、「DX推進室」みたいな組織に所属すれば前者のイメージの仕事ですが、マテリアルズ・インフォマティクス(*)に関わる部署なら、ディープな知見が求められる後者の仕事になるはずです。
*情報科学を活用して材料開発を高度化する取り組み

データサイエンスに注目が集まり続ける現状を、どう見ていますか。
データ分析の仕事は、前よりずいぶん認知度が上がりました。ただそれは、ここ10年ほどの話です。ビジネスにおいて「ディスカッションする」「オペレーションを回す」といった機能がずっと前から存在するのに比べ、「データを使う」という営みはまだまだ発展途上だといえます。

だからこそ、この分野に興味を持つ若い人に対しては、その壮大な道のりに関わる意義深い仕事だと伝えたいですね。

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ITが主力じゃない企業は要注意……

〈2人目Profile〉
マスクド・アナライズ
AI(人工知能)、データサイエンスなどに詳しい自称「謎のマスクマン」。
AIベンチャーでAI導入・データ利活用支援に携わった後、独立。以後、執筆、イベント司会、企業向け人材育成など、多方面で活動を展開する。著書に「データ分析の大学」(エムディエヌコーポレーション)、「未来IT図解 これからのデータサイエンスビジネス」(同、共著)、「AI・データ分析プロジェクトのすべて[ビジネス力×技術力=価値創出]」(技術評論社、共著)などがある。
▶Twitter:https://twitter.com/maskedanl

データ分析に携わる人にとって、どんな職場がお勧めでしょうか。
上場しているくらいの規模のITベンチャーは、その意味で良い企業が多い印象です。そういう企業はIT系人材が集まりやすいということもあり、データ分析のチーム内でもさまざまな職種やポジションがあります。

例えばですが、分析を専門にする人、データベースなどインフラ担当の人、プロジェクトマネジメントを主にやる人みたいな形ですね。また同じ分析担当でも、文章データに強いとか画像データが得意とか、専門領域に多様性があって分担できているところはお勧めだと思います。

それ以外に、就職先を探す上で重視すべきことはありますか。
その人が、何を大事にするか次第でしょうね。例えば法律に強い関心があるならLegalTech系の企業に入るのはいいでしょうし、データを豊富に持っているからという理由でITプラットフォーマーにいくのも有りだと思います。技術を突き詰めたいなら、研究所を持つ大企業という選択肢もあるでしょうし。
では逆に“要注意”なのはどんな企業でしょうか。
ITが主力事業ではないところは、いい企業もありますが、注意して見極めたほうがいいと思います。
どういうことでしょうか。
どんな企業でも、ヒエラルキーみたいなものがありますよね。IT以外で稼ぐ企業だとIT系部門の立場が弱かったりするので、データ分析に基づく“正論”であっても、社内の力関係で負けてしまうことが往々にしてあります。

企業に「求められる」データサイエンティストと、それ以外の格差が拡大

要注意な企業を見極めるポイントとは。
完璧に見極めることは不可能ですが、やはり歴史ある大企業だと「ITは外注任せ」みたいな傾向があるので、データ分析担当にとって難しい環境になりがちです。特に多くの事業所が点在している企業だと、それぞれの部門や立場で主義主張が異なったりするため、全社的にデータ利活用を進めるのは簡単ではありません。

さらにいうと、メガバンクのように大型合併で今の形になっている企業は、人事的な派閥争いや、社内システムの複雑化による縦割りが生じやすいので、使えるデータを集めてインパクトを出すのはかなり難しいでしょうね。

見極めという意味で、募集情報ではどんなところを注視したほうがよさそうでしょうか。
技術要件について、しっかり書かれているかどうかは大事です。「分かっている人」が募集しているかどうか、というか。例えば、PythonのPが小文字になっていると、それだけで不安を感じる部分もありますし……。
なるほど。ところで、足元ではデータサイエンティストの求人がいたるところで見られ、いわゆるDSブームが続いている印象です。現状をどう見ていますか。
人材市場を見ると「求められる人」と「求められない人」の差が広がって、同時に企業側の「見極める力」も高まっている印象です。ブームは続いていますが、3~4年前の過剰な期待感が落ち着いて、悪くない状態だと思います。
ブームの“後”は、どうなりそうですか。
「データサイエンティスト」という職業やワードは、変わるかもしれません。ただ一方で、データの扱いに長けた人が求められる大きな流れは、今後も10年とかそういうレベルで続くでしょうね。
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飛び込むべき就職先は、包み隠しのない“ぶっちゃけてる”企業

〈3人目Profile〉
石井大輔(いしい・だいすけ)
株式会社キアラ 代表取締役。
伊藤忠商事で欧州勤務、新規事業開発を経験した後、2011年にキアラ(当時は別名)を創業。自然言語処理などを用いたAIソフトウエアを開発・提供するほか、AI・機械学習に特化したコミュニティー「Team AI」も運営する。著書に「機械学習エンジニアになりたい人のための本 - AIを天職にする」(翔泳社)、「データ分析の進め方 及び AI・機械学習 導入の指南」(情報機構、共著)などがある。
▶Twitter:https://twitter.com/ishiid

データ分析系の職種で就職する場合、どんな企業がいいと考えますか。
基本的には、モノづくりや車が好きなら製造業、株に興味があるなら金融といった具合に、単純に関心のある分野に目を向ける感じでいいと思います。その上で、ある意味「まじめ」な企業というか、データサイエンスに力を入れていて事例がたくさんあるところを選べるといいでしょうね。
その「まじめ」な企業かどうかは、募集情報などから見分けられそうでしょうか。
産業別にデータサイエンスに関わる大事なキーワードがいくつかあるのですが、それらが正しく使われて技術的な内容がしっかり書かれているかは、一つポイントになると思います。技術的内容が詳しく書かれている場合、他社のほぼコピペというケースがあるので注意も必要なのですが……。
産業別で重要なキーワードとは。
あくまで例ですが、FA(工場自動化)分野だったら「異常検知」「予防保全」といったワードです。

それからDXみたいなより広く使われるワードがある場合は、その意味が整理された上で書かれているかを、よく見たほうがいいと思います。

「とりあえずビッグワードを入れた」みたいな案件は避けたほうがよさそうですよね……。
そうですね。あとは当然かもしれませんが、募集情報だけで判断しないことも大切です。できれば、関連する技術面を統括する人と会って話すのがいいですよね。

仮に話せたとして、「とにかくウチの技術はすごいんです、信頼してください」みたいに言いつつ、技術の中身について聞くと「まだここでは教えられなくて……」といった感じで情報開示しない企業は、就職先としてあまりよくないと思います。

いろいろな意味で情熱のある人と働くほうが絶対によくて、その情熱ある人はたいてい“ぶっちゃけている”というか、物事を包み隠さない傾向にありますから。

データサイエンティスト不足の背景はウイスキー不足と同じ。充足まではあと5~10年……

石井さんはデータサイエンス・AI関連のコミュニティーも運営していますが、この領域の就職について、現状をどう見ていますか。
想定以上に、弱肉強食になっています。オファーが10件くらい来る人もいれば、「データサイエンティスト」になりたいけど、なかなかなれない人もいて……。

難しいのが、仕事の量と必要な担い手の数が必ずしもリンクしないことですね。

どういうことでしょうか。
データ分析ってデータ量が100倍になったら100倍の人が必要かというとそうでもなくて、極端な話、1人でも相当優秀なら100人分の仕事ができちゃうんです。

例えばバックエンドエンジニアだったら、仕事量と必要な人の数に、ある程度分かりやすい相関関係が生じますよね。データ分析の仕事は違っていて、パフォーマンスの個人差がもっと大きく出ます。

その意味でハイパフォーマンスを出せる人、特に先端技術に精通しつつ大きなプロジェクトを主導できるシニア層は、圧倒的に足りていません。データ分析の仕事はソフトスキル的な力がかなり求められて、経験が重要ということもあり。

今は、ウイスキーが国内で足りていないのと同じ状況ですね。データサイエンス領域全体で“熟成”が進んで本質的に充足するまでは、5~10年くらい待つ必要がありそうです。

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参考情報:本特集でインタビューを掲載する8社の採用関連ページリンク集(データサイエンスに関わりのある職種)
▽対象は2021年12月22日時点で各社の公式ホームページからアクセスでき、登録なしで閲覧可能な公開情報のみ(募集職種・チーム名をクリックすると別タブで開きます)

【メルカリ】
データアナリスト<新卒>
データアナリティクスチーム<中途>

【ボストン コンサルティング グループ(BCG)】
Data Scientist – Machine Learning<中途>
Data Scientist – Optimization<中途>

【Preferred Networks(PFN)】
機械学習・最適化・データサイエンスエンジニア<中途>

【花王】
マーケティング(日用品・化粧品)<新卒>

【freee】
データアナリスト<中途>

【Sansan】
研究開発職<新卒>
データアナリスト<中途>
マーケティングデータアナリスト<中途>

【NTTコミュニケーションズ】
AIサービス(NextAI)のサービス開発におけるデータサイエンティスト<中途>
データ分析・可視化(BIツール)エンジニア<中途>
データドリブンマネジメントのためのデータ分析・分析サポートエンジニア<中途>

【ALBERT】
【機械学習/統計】データアナリスト<中途>


【連載記事一覧】
【特集ページ】データサイエンティストとは何者か(全11回)
(1)新卒3年目が担う、月間2000万人の利用者を支えるデータ分析【メルカリ】
(2)「データ分析は“手段”でしかない」。若手データサイエンティストが戦コンを選んだ理由【BCG】
(3)データサイエンティストとデータアナリストの違いは?データ系職種のパターンを解説
(4)PFN2年目の若手が挑む、機械学習の“ツール作り”。大事なのは想像力―【PFN】
(5)消費財マーケのデータサイエンティストは、消費者の“本音”を探る仕事【花王】
(6)「当社ならではのデータ」を用いた、前例のないモデル構築【freee】
(7)有識者3人に聞く、データ分析系職種で就職すべき企業、すべきでない企業
(8)ニュース配信の最適化、データサイエンティストとして得た経験【Sansan】
(9)「顧客の要望」をデータ分析で把握、満足度を高める【NTTコミュニケーションズ】
(10)データ分析の専門会社は、「業界に縛られず技術的に面白い仕事ができる」【ALBERT】
(11)データ分析職の選考の裏側 。分析スキルは意外と不要!?


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