【徹底解説】ヘルスケアコンサル転職志望者から寄せられる定番質問7選。PJ例、年収、WLB(シリーズ前編)
2022/04/21

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医療費の高騰や新たな技術革新などを背景に、国内外の医療・ヘルスケア領域のマーケットが拡大しています。2018年にまとめられた日本総合研究所の調査(経済産業省委託事業)によると、ヘルスケア産業(公的保険を支える公的保険外サービスの産業群)の市場規模は2025年には約33兆円、2030年には約40兆円規模に上るとみられています。

加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で業界のデジタルトランスフォーメーションが加速する中、コンサルタントの需要が伸びている領域でもあり、コンサル未経験者や他のインダストリーで活躍するコンサルタントが、ヘルスケアコンサルティングを新たなフィールドとして志望することも少なくありません。

そこでLiigaでは前後編に分けて、医療・ヘルスケア業界の転職事情について、医療現場の業務とコンサルティングファームでの製薬業界プロジェクト経験を持つエージェントに徹底解説いただきます。日々、戦略/Big4/外資製薬/ヘルステックベンチャーと採用ミーティングを行う中で感じる「業界の今」「求められる人材」を踏まえ、転職志望者から寄せられる定番質問7選にお答えします。

〈回答者〉
中島 悠(なかじま・ゆう)
アクセンチュア株式会社にてライフサイエンス・ヘルスケア領域の事業会社支援に従事し、社内の「働き方推進プロジェクト」にも携わる。業界問わず30~40代から「コアスキルを活かしたキャリア相談」を多数受けている。理学療法士、両立支援コーディネーター。


【目次】
1.ヘルスケア領域のコンサルタントが担う領域について具体的に教えてください
2.ヘルスケアコンサルのプロジェクト例について教えてください
3.ヘルスケアのインダストリー・強みを持つファーム・企業について教えてください
4.ヘルスケア領域に強いコンサルティングファームについて競合他社を比較する際、どのような観点が重要となりますか
5.ヘルスケアコンサルタントの年収について、一例を教えてください
6.ヘルスケアコンサルタントのワークライフバランスはいかがでしょうか
7.ヘルスケアコンサルタントのビジネスパーソンとしての市場価値、キャリア形成のパターンについて教えてください
おわりに

1.ヘルスケア領域のコンサルタントが担う領域について具体的に教えてください

本領域は多岐にわたるため、今回は大きく「ヘルスケア/ライフサイエンス領域」「医療領域」の2領域に分けて、特徴を説明したいと思います。

ヘルスケア/ライフサイエンス領域

主なクライアントとして、製薬や医療機器メーカーなどの医療関連企業が挙げられます。 日本市場における販売戦略や海外進出による戦略立案、M&A、PMI、研究開発領域のデジタル推進、アウトソーシングによるコスト削減、異業種の参入支援、データセキュリティ体制の構築などを行っています。

医療領域

主なクライアントとしては、官公庁や医療機関、介護施設が挙げられます。

少子高齢化や医療費削減、地域包括ケア、診療報酬など国全体に関わるテーマに即した案件の他、病院再編、人事/教育制度改定、医療従事者の働き方改革など、医療に関わる法人が抱える多岐にわたる課題に対し、アプローチしています。

また直近ではパンデミックの影響による給付金関連や医療機関と保健所連携のデジタル推進、システム導入などのニーズも高まっています。

いずれの領域でも、医療関連企業、医療機関、官公庁、保険者など様々なステークホルダーに対してサービスを提供し、コンサルティングのニーズも広がっているのがヘルスケアコンサルタントの特徴と言えるでしょう。

2.ヘルスケアコンサルのプロジェクト例について教えてください

クライアントの業種によってある程度プロジェクトの傾向がみられますので、業種ごとに説明しましょう。

医療関連企業向け(主に製薬/医療機器メーカーなど)向けサービス

新薬や医療機器の開発が市場優位性に直結する製薬/医療機器メーカーがクライアントの例です。事業戦略策定やマーケティング分野など他領域のコンサルティングに近い業務から、業界の特異性が色濃く専門性が高い研究開発やデジタルヘルス戦略まで幅広いプロジェクトがあります。

医療関連企業向けサービスの例

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官公庁・病院向けサービス

国の医療政策全体に影響を及ぼす調査研究や実証事業、医療政策に則って各病院の戦略策定に取り組んだりすることもあります。

官公庁・病院向けサービスの例

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異業種から参入するクライアントを支援するサービス

医療×DX、ヘルスケア×データサイエンスなど、技術や本業のアセットを掛け合わせることで新たなビジネスチャンスの創出が期待できることから、異業種からの参入が広がっています。一方、安全性などの担保や事業化への壁も少なくないため、医療・ヘルスケア領域への強みのあるコンサルタントの知見を求めているケースが多く見られます。

異業種から参入するクライアントへのサービスの例

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3.ヘルスケアのインダストリー・強みを持つファーム・企業について教えてください

近年の傾向はニーズが高まっており、それが顕著に現れているのが求人の募集件数と、公開されているプレスリリースやレポートの数です。

例えばBig4で言えば、ヘルスケアの領域だけで100名規模のコンサルタントを擁する会社もあり、他の会社もその数を目指して採用に注力している状況です。ヘルスケア分野は「2025年問題や少子高齢化、R&D領域の効率化」など数年前からニーズは拡大傾向でしたが、昨今のCOVID-19の影響も重なり、官公庁/民間企業問わずDX推進の波に拍車がかかっている状況です。この点からもプロフェッショナルサービスを提供するコンサルティングファームへの依頼が増加していく印象です。

戦略系ファームとBig4はグローバル系のクライアント、特に近年では製薬会社の案件を多く取り扱うようになっています。とはいえファームごとに「守備範囲」の違いもあり、経営戦略策定のみでなくITやシステムの導入も関わる案件だと、総合系ファームへ依頼している事例が目立つ印象です。

日系ファームというくくりで見ると、総合系と特化系・ブティック系は、官公庁の他、病院などの医療現場を対象とした案件が豊富にある傾向が見られます。なお、特化系・ブティック系の創業の経緯を大きく大別すると、老舗ファーム出身者による創業例と、医師など医療の専門家、医療機器メーカーなど業界を知るビジネスパーソンによる例があります。

また、DXの推進を受け、医療関連のデータ分析を強みとするコンサルタントも増えています。それらの分野に特化した企業がコンサルティングを手掛ける傾向も、直近のトレンドとも言えるでしょう。

4.ヘルスケア領域に強いコンサルティングファームについて競合他社を比較する際、どのような観点が重要となりますか

自身が携わりたいテーマや将来像によるため、一概には言えませんが、 ・グローバルやクロスボーダー、民間企業の全社戦略に携わるなら、戦略/総合ファーム ・官公庁や医療、研究開発に携わるなら、ブティックファーム(特化系) など各ファームの強みを活かした案件が多い傾向にあります。

他のインダストリーと比較して、医療・へルスケアの専門性(例:医療従事者や臨床開発、研究職経験)を強みにして、特化系ファームに応募される候補者が多い印象です。また、医療やヘルスケアの領域は、公共性や社会課題と密接に関わっていることから、総合ファームではパブリック系のチームと協業するプロジェクトもあり、そのような働き方に興味がある人の志向性ともフィットするかと思います。

上記を参考に各ファームがリリースしているレポートに目を通したりセミナーに参加したりし、「ファームとしての特徴」と「ヘルスケアチームの特徴」、「パートナーが目指している世界観」などの情報に触れ、強みを理解することが大切かと思います。

5.ヘルスケアコンサルタントの年収について、一例を教えてください

ファームによって変動はありますが、ポジションごとの年収帯を記載します。

アソシエイト・アナリスト:400万円~600万円 コンサルタント:500万円~800万円 シニアコンサルタント:600万円~1100万円 マネージャー:800万円~1500万円 シニアマネージャー:1200万円~2000万円 ディレクター:1500万円~2500万円 パートナー:2500万円~1億円以上

年収テーブルの例

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ファームによってはポジション名称は異なりますが、マネージャー以上になると昇給幅が大きく、給与面では戦略/BIG4ファームは特化系より高い傾向にあります。

6.ヘルスケアコンサルタントのワークライフバランスはいかがでしょうか

元々、医療コンサルは全国の病院や地方自治体をクライアントとした場合、出張してプロジェクトを遂行する場面が多くありました。コロナ禍を受けたリモートワークの普及により「効率的に働く環境が整ってきている」という現役コンサルの声が多く聞かれるようになりました。また産休育休や時短勤務などを積極的に活用し、コンサルタントのライフステージに合わせた機会を提供するファームが増えている印象があります。

ただし、グローバルプロジェクトや納期が近い場合などには、時差のある中での不規則勤務や労働時間が増えることはあるため、その点に対する一定の理解と面接時や入社前に認識の齟齬が無いような自身での働きかけは必要となります。また入社後も定期的に上司との面談などで「身につけたいスキルや経験」「ライフステージの変化によるキャリアについて」を積極的に相談することが長期的に活躍するコンサルタントとして大切になるかと思います。

7.ヘルスケアコンサルタントのビジネスパーソンとしての市場価値、キャリア形成のパターンについて教えてください

仕事面だけではなく将来のありたい姿を考え「将来の世界、日本のヘルスケア/医療の発展に携わりたい」とオーナーシップを持って取り組む方はどの分野からも求められます。

その中で近い将来「自分の興味関心が最大限活かせること」「人生を通してチャレンジしたいこと」が今より明確になった時やライフステージが変化した際に、コンサルタントとして培った経験や実力が必ず生かせると思います。そのタイミングで自分にとって良い条件(収入や働き方)を手にすることができれば、キャリア形成の観点から捉えてもよい経験だと思っております。

おわりに

いかがでしたでしょうか。後編は他領域・未経験からの挑戦を志す方から寄せられる疑問に徹底的にお答えします。

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フォルトナ株式会社
BCGやBIG4出身の経験豊富なコンサル出身者をはじめ、日本一のヘッドハンターやトップコンサルタント達が在籍。外資系戦略ファームを筆頭に各種ファームやPEファンド/VCなどのハイクラス転職支援に強みを持つ。オールフォルトナと呼ぶワンチームで成果を創出するカルチャーを重視し、ご相談者への提供価値を最大化している点も特徴。スタートアップ支援に特化したフォルトナベンチャーズも急成長中。

コラム作成者
Liiga編集部
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