【徹底解説】ヘルスケアコンサルタントになるには 他領域・未経験からの挑戦(シリーズ後編)
2022/04/22

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医療・ヘルスケア業界のコンサルタントを目指す方向けに、医療現場の業務とコンサルティングファームでの製薬業界プロジェクトの双方の経験を持つエージェントに徹底解説いただくシリーズの後半です。日々、戦略/Big4/外資製薬/ヘルステックベンチャーと採用ミーティングを行う中で感じる「業界の今」「求められる人材」を踏まえ、他領域・未経験からの挑戦を志す方からの質問に答えました。

〈回答者〉
中島 悠(なかじま・ゆう)
アクセンチュア株式会社にてライフサイエンス・ヘルスケア領域の事業会社支援に従事し、社内の「働き方推進プロジェクト」にも携わる。業界問わず30~40代から「コアスキルを活かしたキャリア相談」を多数受けている。理学療法士、両立支援コーディネーター。


【目次】
1.ヘルスケアコンサルにおける採用要件の傾向について教えてください
2.ヘルスケアコンサルの採用市場は、医療従事者(ヘルスケア領域からコンサルへの挑戦者)に需要があり、未経験者は難しいのでしょうか
3.「医療・ヘルスケア」という領域に分かれていても、ベースとなるのは経営コンサルティングの能力なのでしょうか
4.ヘルスケアコンサルティングファームへの転職を考えた場合、まずは何から取り掛かるべきでしょうか
5.ヘルスケアコンサルタントへの転職成功者の傾向について教えてください
6.ヘルスケアコンサルタントを経たネクストキャリアはどのようなものがあるでしょうか
おわりに

1.ヘルスケアコンサルにおける採用要件の傾向について教えてください

これは他の領域に通じる点ではありますが、社会的背景やDXなどクライアントニーズが細分化されたことにより、総じて各ファームは採用を強化しています。さらにマネージャー以上の役職者も戦略⇔総合ファーム間の転職も盛んに行われ、各ファームの特徴をより打ち出している状況です。

スキルや人物面では、製薬/医療機器メーカーなどのMRをはじめとした医療関連業界出身者ヘルスケア領域のコンサルティング経験者を中心に採用しています。また薬剤師、看護師、理学療法士などの「自分自身が現場で感じた課題を解決したい」といった有資格者も好まれる傾向もあります。

最近ではヘルステック企業やバイオベンチャー、大学教員などのバックグランドの方々も活躍しています。さらにBIG4などの総合ファームでは、他領域のコンサル経験者やITバックグランド、事業開発、マーケティング経験者などヘルスケア以外の知見を持っている人物の採用も積極的に行っています。

また戦略ファームやグローバルファームでは、MBA保有者やTOEIC○○点以上といった条件がある場合もあります。ブティックファームでは、臨床経験や研究職などの方々が多く活躍されている印象です。

2.ヘルスケアコンサルの採用市場は、医療従事者(ヘルスケア領域からコンサルへの挑戦者)に需要があり、未経験者は難しいのでしょうか

資格は必須ではないですが、「業界への関心や原体験」は必要かと思います。

英語やMBA、IT、ファイナンスなどの知見を活かすのであれば、一定以上の規模のあるファームを志望することが良いと思います。理由として、全社戦略やマーケティング案件は規模感の大きいファームに集まっているため、事業会社の経験やポテンシャルで医療やヘルスケア領域に関心がある候補者がよりフィットする印象があります。

一方、医療関連の資格を持っている方は、特化系への親和性が高い傾向にあります。また、特化系のファームでコンサルティングスキルを身に付けた後、総合ファームなどへ活躍の場を求めるといったキャリア構築も考えられます。

ヘルスケアコンサルティングファームを目指す方は中途(特に1社目で病院や製薬企業などで資格を活かした業務に従事し、2社目でコンサル志望)の方が多く、年齢的にも20代後半~30代の方が多いです。

その方々は今までの「スペシャリスト経験」をアピールされる方が多いです。これは資格を活かした同業他社への転職では有用かと思いますが、コンサルティングファームへの転職(特にポテンシャル採用)を考えると、「ジェネラリスト経験や志向」のアピールが併せて必要と考えます。

各ファームとも、戦略策定やIT、医療の専門性など経験のバリエーションが広いメンバーを揃えることが、より良いサービス提供に繋がるという認識が広まっている傾向があるため、採用の門戸が広がり、採用人数は増加しています。その結果、採用ハードルが高い認識はあるものの、今までの経験や尖った強みがある人をお持ちの人には、チャンスがあると言えるでしょう。

その上で個人的に身に着けておきたい視点としてお伝えしたいのは、「組織全体から俯瞰した目線」「仕組み化によるbefore/after」「クライアント目線」の大切さです。

コンサルタントとして個々のスキルの研鑽に励むことはもちろんですが、新卒からファーム出身者やエンジニア経験、外国籍など「入社後バックグランドが異なるメンバーと協働できるのか、上手くキャッチアップしオンボーディングできるのか」を面接時に判断されているファームも多くあります。

そのため、ヘルスケアの専門性以外に「柔軟な思考や行動力を持っていること」、「プロジェクトワークへの理解を持っていること」、「アンラーニング思考」をアピールできると、結果的に良い結果に繋がると思います。そのため現職でこの点も意識して仕事に取り組むことも良いと思います。

3.「医療・ヘルスケア」という領域に分かれていても、ベースとなるのは経営コンサルティングの能力なのでしょうか

必要だと思います。しかしポテンシャル採用の場合は、現職で大規模なプロジェクトリードや実績をお持ちの方は少ないと思います。現職で「数字や仕組み化する力、ファシリテーション能力、ドキュメントスキル」など身につけているか、もしくは研鑽しているかが大切かと思います。コンサル経験者の場合は、プロジェクトワークや成果などの実績を面接時にアピールできると良いと思います。

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4.ヘルスケアコンサルティングファームへの転職を考えた場合、まずは何から取り掛かるべきでしょうか

仕事面では、与えられた仕事だけではなく、能動的に仕事を作り周囲を巻き込む体験をすることがよいと思っています。仮に成果が出ない場合でも「失敗体験」のエピソードを持つことも貴重な財産になるからです。

スキル面では、TOEICやドキュメントスキルなどを身につけることが良いと思います。さらに面接時に問われる「ケース」や「フェルミ推定」などのロジカルシンキングを学んでいく必要があります。

さらにマインド面では、「ヘルスケア業界への想い」や「当事者意識」をお持ちの方が入社後のギャップが少なく活躍されている印象です。

情報収集としては、「コンサルティング業界とは?」「各ファームの強みとは?」といった業界本や各ファームのレポートを読むことやセミナーに参加し「自分なりの各ファームの特徴」を把握することが大切かと思います。また、SPIやGABなど「Webテスト対策」も必要です。

5.ヘルスケアコンサルタントへの転職成功者の傾向について教えてください

業界問わずですが、きちんと準備し対策を行った方だと思います。

ポテンシャル採用の場合ですと、初めから「履歴書・職務経歴書」「Webテスト」「通常面接(志望動機/転職理由/将来のありたい姿)」「ケース/フェルミ推定対策」など全て完璧な方はいません。そのため1つ1つの理解を深めていく必要があります。現職と並行して準備することは大変ですが、きちんと時間を捻出し準備期間の中で「なぜコンサルタントになりたいのか」の解像度を上げていく方が良い結果を掴んでいると思います。

6.ヘルスケアコンサルタントを経たネクストキャリアはどのようなものがあるでしょうか

◆製薬/医療機器メーカー 海外子会社幹部/事業開発責任者/事業責任者/プロジェクトマネージャー

◆官公庁/医療 シンクタンク、官僚、病院・クリニック経営、事務長、医療従事者

◆上記以外 投資ファンド、ベンチャーキャピタル、ヘルステック/バイオベンチャー企業 保険会社などの新規事業責任者、起業

おわりに

いかがだったでしょうか。 世界中で新型コロナウイルスのパンデミックを受けた変化が起き、国内に目を向けると少子高齢化が加速する昨今、医療・ヘルスケア領域における変革の重要性は日に日に拡大しています。この情勢下、コンサルティングファームへ依頼される案件数も増え、コンサルタントの活躍の場はますます広がっていくでしょう。

自身も医療現場とコンサルファームでキャリアを重ねてきた中島さんに改めて「コンサルタントという選択肢を選ぶことの意義」を尋ねると、以下のようにお答えいただきました。

「医療現場の業務は、どうしても1人の患者さんの症状や状況への対応にフォーカスされますし、当然『医療知識を中心としたプロフェッショナルサービス』が求められます。一方、コンサルではヘルスケアや医療を俯瞰し、各コンサルタントや在籍企業が持つアセットを最大限活用してクライアント企業の価値をどう向上させるかを考え、売上向上や業務の効率化が求められています。 『ヘルスケア』に興味がある方々が現場以外の様々な領域で活躍することで、課題設定/解決能力と熱意を兼ね備えたコンサルタントが増えると思います。このことによって業界が盛り上がり、結果として患者さんの満足度や医療従事者の働き方に対してもポジティブな影響をもたらすことができると考えています。その結果、日本や世界のヘルスケア業界により明るい未来が来ると信じています」

また中島さんは、医療従事者の人はもちろん、ヘルスケア領域のバックグラウンドがなく今は「敷居が高い」と思っている方こそ、業界に新たな変革をもたらす可能性が高いと話します。人々の健康や社会課題を解決したいという思いのある方は、門戸が広がっている今、キャリアチェンジに挑戦してみるのはいかがでしょうか。

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フォルトナ株式会社
BCGやBIG4出身の経験豊富なコンサル出身者をはじめ、日本一のヘッドハンターやトップコンサルタント達が在籍。外資系戦略ファームを筆頭に各種ファームやPEファンド/VCなどのハイクラス転職支援に強みを持つ。オールフォルトナと呼ぶワンチームで成果を創出するカルチャーを重視し、ご相談者への提供価値を最大化している点も特徴。スタートアップ支援に特化したフォルトナベンチャーズも急成長中。

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。
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