「総合商社が暇だった。40歳まで待てなかった」 ー私はこうして総合商社から外資系投資銀行に転職した
2019/09/06
#投資銀行につながるキャリア
#総合商社から飛び出す戦略
#新卒内定者必須コラム

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人の入れ替わりが激しく、激務高給と言われている投資銀行業界。Liigaの読者の皆様でも、現在投資銀行への転職をご検討されている方や、入社後のキャリアについて気になる方が、多くいらっしゃるかと思います。

今回は総合商社から2回の転職を経て、現在外資系投資銀行のIBDにて勤務されているQさんから、投資銀行転職の戦略から、IBD入社後のネクストキャリア事情まで、幅広くお話を伺いました。



【目次】
・総合商社マンの人間力はすごいが、ハードスキルは身に付かない!?
・外資も日系も、業務内容や働く人のレベルはあまり変わらなかった
・バンカーとしてのテクニカルスキルが高くても、受かるわけではない
・バンカーに人気のネクストキャリアは、ファンドではなくベンチャー

総合商社マンの人間力はすごいが、ハードスキルは身に付かない!?

ーー本日はよろしくお願い致します。現在の業務内容を教えて頂けますでしょうか。

外資系投資銀行の投資銀行部門に所属しており、カバレッジバンカーとして日々業務をこなしています。 具体的にはM&Aや資金調達のお手伝いをしています。

ーー新卒はどちらの業界に入られたのでしょうか。

新卒では総合商社に入社しました。総合商社では生活産業系の部署にいました。

総合商社に入社した理由としては、自分で商売を作る経験をしてみたいという思いと、投資をプリンシパルとして行いたいと考えていたためです。

実際働いている中で、将来志望していた仕事を挑戦出来るとは思ったのですが、そのような業務に自分が主体として挑戦できるのは40歳を過ぎてからという現実を目の当たりにし、タイムスパン的に長すぎるな、と感じました。加えて仕事がかなり暇であったことに不安を覚える日々でした。飲み会はすごかったのですけどね。人生であんなにお酒で早く潰されたことはありません。

また、投資に取り組んでいる上司の仕事を見ても、財務三表がどういう風にできているか、項目ごとの関連等、詳細なことは殆どわかっておらず、「ノリ」で投資をしている方が多いなと感じました。

もちろん皆様人間力はすごかったので、そこは尊敬しています。投資と事業開発をする上でも彼らの人間力は活きるとは思います。

しかし、それだけで本当によいのか、総合商社マンのハードスキルの現実を目の当たりにした結果、私は一旦ハードスキルを身に付けたいと考え、投資銀行業界への転職を考えました。

ーーそこから転職活動を通して外資系投資銀行に移られたのですか。

いえ、最初の転職活動で入社した会社は日系の投資銀行でした。

1回目の転職を考えていた際、まず転職エージェントの方とお話をしたのですが、「投資銀行業界への転職は経験者でないと厳しい」と言われてしまい、エージェントからはFASへの転職を勧められました。

確かに外資系投資銀行は投資銀行やFAS出身者でないと転職は厳しいですが、日系はより採用基準が緩やかなハウスもあり、知り合いで総合商社から直接日系投資銀行のIBDに転職されている方もいることを知っていました。そのため、エージェントに言われたことに納得がいかず、自力で転職活動をしようと決めました。

エージェントといっても保有している情報やキャッチアップできる内容には限界があるものですし、また自分の手持ちの案件だけで転職してもらいたいという事情もあるので、闇雲に転職エージェントを使わなくてもいいのではないかと考えております。

ーーなるほど、エージェントを用いず直接応募したのですね。面接はどのような形だったのでしょうか。

面接回数は9回でした。面接の中で志望動機については、必ず以下のように伝えておりました。

「投資をやりたいから総合商社に入社したが、キャリア形成に非常に時間がかかることとハードスキルが身につかないという現状に不満がある。」 「投資銀行ではアドバイザーという立場になるため、プリンシパルとして投資に関わることはできないが、意思決定の一助になるようなスキルを早い段階で身につけることが出来る。だからこそ投資銀行業務を行いたい。」

回答に少し苦しんだのが、面接の中で「シニアになるまで会社に残って欲しい」と聞かれたことですね。そこはうまく答えることができず「とりあえず頑張ります」と答えていましたね。苦しい答えでしたが何とか採用していただくことが出来ました(苦笑)。

外資も日系も、業務内容や働く人のレベルはあまり変わらなかった

ーーそして日系投資銀行から2回目の転職をされた訳ですが、転職するに至ったきっかけを教えていただけますか。

たまたま知り合いからの紹介で外資系投資銀行のポジションの空きがあると紹介をされました。

日系投資銀行では社員の方とも仲良くさせていただいており、居心地は最高であったのですが、将来の自分の目標と照らし合わせた結果、外資系投資銀行にチャレンジしてみることを決めました。私は起業やベンチャーのCXOというポジションを考えており、その際にネームバリューはより重要になると打算的に考えての決断です。外資系投資銀行に移ることで箔も付きますし、加えて自身のスキルアップにもなるだろうと前向きに捉えておりました。

このお話は求人がオープンされる前にいただいたため、私としてはとても幸運でした。リファレンスの大切さが身に沁みましたね。

ーー実際に日系と外資系の両方の投資銀行で働かれて、両社にはどのような違いがありましたか?

業務内容は全く一緒です。中にいる人のレベルも、外資の方がシニアバンカーの資料の切り口が少し鋭いと感じるぐらいで、そんなに変わりません。前職の日系の先輩でも、現在の職場の方より優れている方も多くいます。

一方で違う点もいくつかあります。まず、パソコンを立ち上げた瞬間からOSが英語になっている点が一番違いますね。外資の雰囲気をすぐに感じましたね(笑)

また海外に情報調査部隊があり、24時間365日質の高いアウトプットを提供してくれるのが素晴らしいですね。

加えてプレゼンテーション作成チームも素晴らしいです。日系企業にもプレゼン作成チームはありますが、今の会社の方がクオリティや対応言語において圧倒的に優れていると思います。

これらを活用し、効率的に資料を作成することが出来るためお客様に提供できる情報の量と質ともに差が出てくると感じています。外資系に来てからの方が自分でグラフを作成したりする、いわゆる誰でもできる作業に費やす時間が大幅に減ったと感じています。

ただ英語力はすごく必要になりますね。そこは覚悟した方がよいと思います。

バンカーとしてのテクニカルスキルが高くても、受かるわけではない

ーー外資系投資銀行への転職の対策で行ったものはどのようなものがありますでしょうか。

準備としては、自らが担当した案件については面接で語ることが必須なので、自分の過去の業務を完璧に説明できるようにしました。

面接は10回以上行い、その中で、過去に携わった案件の質問以外では、主に、「人間性」を見る場合と、「テクニカルスキル」を確認する場合に大別できると思います。 そもそも面接官によって、テクニカルスキルのことを聞く役割の方と、人間性を見るために抽象的なことを聞く役割の方に分かれているようにも感じました。

テクニカルスキルを問う質問の例としては、例えば、「DCFモデル作成において永久成長率はどのように置きますか?その理由についてどう考えていますか?」とか、「LBOモデルの本質とは?」のような基本的な質問ですね。 テクニカルスキルを問う質問に関しては基本的なことしか聞かれないので投資銀行出身者の方なら問題なく回答できると思います。

人間性を見る例としては、「どういった覚悟でIBDの業務をやっているのか?」をひたすら掘り下げてガッツを見ることや通常の雑談だけをひたすらしてコミュニケーション能力を見る面接官もいました。

ーーテクニカルスキルを聞く意図は、どういった部分にあると思っていますか。

振り返ってみるとテクニカルスキルの質問には、「自ら仕事を率先して行なっていたかどうか」を見られていたのだと思います。

というのも、同じジュニアバンカーといっても人によって役回りが違います。

ガツガツしている人は仕事を進んで行うので、幅広い業務をこなすことができます。一方で、気が弱い人の場合、一応仕事はこなしているものの知識量などに差が生まれてしまうんですよね。そういった現象が起こっているので、質問をして確認をしているのだと思いますね。とはいえ、基本的な内容がほとんどなので通常のバンカーなら答えられると感じました。

ーー今後外資系投資銀行への転職を志望している方に、何かアドバイスはありますか?

まずはIBDと一括りに言っても、各自「目指しているキャリア」「目指している部署」によって、対策することや求められる素養は変わるということを意識した方がよいと思います。

例えば、将来的にCFOや大企業の経営企画室等を目指すために下積み期間としてIBDを目指すのであれば、将来的に働いてみたい業界を扱っている部署に行くべきです。

一方で、IBDで上位ポジションを目指したいと考えるのであれば、自分の特性から逆算してカバレッジやプロダクトを選択するべきだと思います。

また外資系投資銀行でMDになりたいのであれば、最初から新卒で外資系投資銀行に入社するべきです。なぜなら、日系から外資に転職するときに、出世前の時間がかかってしまうため、ある程度の覚悟は必要かと思います。

ーーなるほど。各部署によってどのような方が求められているのですか?

部署によって求められている能力は全然違います。

カバレッジは客先に営業に行くなど、お客様と関係を築くタイミングが多いため人間性を重視している場合が多いと思います。 対してM&A部隊などを保有するプロダクトは、細かい点に詳しく気づくことができる人間かつ激務耐性がある人が求められると思いますね。プロダクトの場合、お客様を持つ訳ではないので分析できる人が求められていると思います。

そのため、自分が志望する部署で、どういった能力が求められているかを把握することが大切です。

例えば人間性を大事にしているカバレッジの部署の場合、どんなにテクニカルスキルが優れていても人間性が不十分であれば落ちてしまいます。過去の弊社の面接でお会いしたジュニアバンカーの方のお話ですが、その方は非常に高いテクニカルスキルをお持ちでしたが顧客と接した際にハレーションを起こしかねないという理由でその後の面接で落ちてしまった事例を何度も聞きました。テクニカルスキルが高ければ一概に外資に入れるわけではないとよく感じます。

ーーどういったキャリアを積んでいる方が外資系投資銀行のIBDに転職しやすいと思いますか。

現在、金融業界にいる方、それ以外の方という観点でお話します。

金融業界に現在いる方という意味では、まず現在日系IBDにいる方の場合はスキル面では問題ないと思います。実際の面接で聞かれると想定される質問としては、私の面接のようにおそらく「テクニカルスキル」を主に聞かれると思います。ですから、日々の仕事を改めて正確に把握し直すことや、従事した業務の「本質」を見極め直すことが大切だと思いますね。

一方で、現在金融業界にいる方でも、例えばリテールなど投資銀行の業務と遠い部署にいる方ですと、相応に対策が必要だと思います。なぜなら、ジュニアバンカーでは培っていた営業スキルを評価される機会はほとんどないからです。

ーー金融業界以外にいる方だと、入りやすいキャリアはありますでしょうか?

金融業界に現在いらっしゃらない方でも、例えば、商社の場合ですと管理系ポジションに配属されていた方はIBDに入りやすいと思います。

財務会計を一通り理解しているなど、投資銀行の業務と親和性があるため知識面では一定程度の評価を受けると思います。実際に、商社の管理系部門出身で投資銀行に転職してきた方の話ですが、エクセルでモデルを作る時などに前職の経験が活きているように感じます。

一方で総合商社で営業だけをしており他に何も知識を蓄えていないとIBDへの転職に限った話となりますが、有利にはなりません。商社に限らず、総じて財務知識がある方が投資銀行に転職しやすいと思いますね。

また、目指しているキャリアについては必ず色々聞かれると思います。「本当にIBDで仕事をしたいのか?なぜIBDで仕事をしたいのか?」、その理由は明確にしておくことをお勧めします。

バンカーに人気のネクストキャリアは、ファンドではなくベンチャー

ーー外資系投資銀行というと人の出入りが激しい印象ですが、どのようなキャリアに進む方が多いですか?

確かに、入社して3年以内に多くの方が転職していると感じますね。

最近はベンチャーのCFOに転職される方が一番多い印象があります。ベンチャーに転職して最初からいきなりCFOになれるわけではないですが、最終的にそのポジションに就くことを想定して転職しています。

ーーCFOが一番多いとは意外でした。ファンドや他のIBDへの転職は少ないのでしょうか?

もちろん、ファンドなどに転職する方や起業する方も一部いらっしゃいます。ただ、今はベンチャーが人気ですね。多くのバンカーが大小様々なフェーズのベンチャーに転職される方が多いと思いますね。

この理由に関しては、上司の言葉で妙に納得した言葉があります。

「結局IBDというお仕事は、既に何かあるものを分析して加工してお渡しすることをしているだけで、新しく何も作っていない。一方で、最近の若い人の傾向としては、お金を稼ぐよりも新しい何かを作る側に回りたい人が増えてきている。だから、ベンチャーに転職をする方が多いのではないか?」

というお言葉です。

確かにひと昔前ですと、世の中全体で、お金があって高級車に乗ることがひとつのステータスだとみなされてきました。しかし今は、娯楽も発展しお金をかけずに楽しめることが充実しています。ひとえにお金儲けが全てだと考える風潮ではなく、あくまで会社は「知識を学ぶための場所」としての機能が重要視されるようになっているのではないでしょうか。

余談ですが、各ハウスの上層部も今までは「やめる理由がわからない」と言っていましたが、最近だとこの新入社員の価値観の変化に気付き始めていて、会社の風土を変えようという動きも出てきているという話は耳にしますね。

コラム作成者
Liiga編集部
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