UCLAに行けない!? 日本で送ることになった大学院生活の実態――米国大学院進学への道(2)

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こんにちは。2020年の9月にUniversity of California, Los Angeles(カリフォルニア大学ロサンゼルス校、以下UCLA) Department of Chemistry and BiochemistryのPh.D.課程に進学しました勝山湧斗と申します。前回は、「米国大学院に進学するメリット」と「進学のハードルの高さ」について書きました。

今回は、いったん米国での大学院生活について書こうと思ったのですが、なんと新型コロナウイルスの影響で渡米できなくなってしまいました。

そのため、最初の学期は“日本から”UCLAの講義をすべて受講しました。日本に住みながら米国大学院のPh.D.課程に進学した人はきっと多くないと思いますので、今回はその実際のところをお伝えします。

〈Profile〉
勝山湧斗(かつやま・ゆうと)
東北大学工学部化学・バイオ工学科卒業。在学中の留学をきっかけに、以前より興味を持っていた再生可能エネルギーについて研究するため、米国大学院進学を目指す。カリフォルニア大学ロサンゼルス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校、マサチューセッツ工科大学を受験し、そのうち2校に合格。2020年秋より、カリフォルニア大学ロサンゼルス校に進学した。
▶Twitter:@yullyullyu
▶Blog:https://yuto-k.com/

※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門などを代表するものではありません。


【目次】
・なぜ米国に渡れない? “バーチャル留学”が決まるまでの経緯
・時差のせいで何度も「退学」が頭をよぎった。つらかった大学院生活のスタート
・“バーチャル留学”最大の壁。研究ができない
・意外に悪くない? 日本にいながら米国大学院に進学するメリット
・正直日本から遠隔で参加しても問題ないのか。 新時代の留学とは

なぜ米国に渡れない? “バーチャル留学”が決まるまでの経緯

新型コロナウイルスの流行で、アメリカ政府の留学生に対する対応は二転三転していました。何度も対応が変わることにへきえきしていたところ、やっとポリシーが定まり、留学生は渡米できることが決定、ビザも無事取得できていました。

ところが、忘れもしない渡米予定日の2日前、2020年9月16日。UCLAから突然「留学生はアメリカに来られなくなりました」との連絡が入りました。

ロサンゼルス保健局が突然、「対面授業を受ける予定のない留学生は入国禁止」と定めたのです。同じ年にアメリカの大学院に進学する友人のほとんどがすでに米国に飛んでいましたが、ロサンゼルスの大学院に進学する私だけ日本に残ることに。

そこから、大学の講義が始まるまで4日くらいしかなかったので、かなり慌ただしく準備を進めました。すでに申し込んだアメリカでの予定をキャンセルしたり、日本で講義を受けるための環境を整えたりしなければいけなかったからです。

たとえば、住民票の海外転出届を取り消す、国民保健に入り直す、航空券やアメリカでの寮の契約や保険をキャンセル、渡航費を支援していただいている財団に連絡を入れて返金手続きを行う、空港で迎えを頼んでいた友達に取り消しの連絡をする、実家で講義を受けられるようにする……そうしている間に4日間はあっという間に過ぎ、UCLAでの最初の学期が幕を開けました。“バーチャル留学”の始まりでした。

時差のせいで何度も「退学」が頭をよぎった。つらかった大学院生活のスタート

この時期、渡米の準備で私は茨城県の実家にいたため、昔私が使用していた部屋にパソコン類をセットアップし、なんとか講義が受けられる状況を作りました。

渡米ができなくなって落ち込んだ気持ちを奮い立たせて、参加したオンラインオリエンテーションですが、すぐに出鼻をくじかれました。

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オンラインオリエンテーションは、いわゆる授業の受け方や履修コースの説明、卒業単位数などの基本的な情報、UCLAの学生としての考え方(例えばセクシュアリティー、人種などの多様性に関するもの)を教わることや、ティーチングアシスタント(TA)になるための講義や模擬授業が含まれます。

時差のため、日本で講義を受けるには午前12時から午前8時まで起きていなくてはいけません。授業の受け方など基本的な情報の部分以外は、ほとんどの講義にディスカッションが行われるため、外が暗い中、なおかつ英語で議論をし続ける生活は、ストレスがたまり、精神的に大変つらいものでした。

こんなにつらい思いをしてまで、この時期にアメリカの大学院に進学したかったのだろうか? と私は私自身の決意に疑問を抱き、何度も「退学」という言葉が頭をよぎりました。

このときの私を支えてくれたのは家族でした。家族と一緒にご飯を食べたり、散歩に行ったりすることで、私はなんとか平常心を保つことができました。

UCLAは4学期制で、秋、冬、春、夏学期があります。ですが通常、短期留学生以外は夏学期は休みなので実質3学期制で講義を受けます。秋学期は10週間あって、オリエンテーションはウイーク0にあたり10週間にカウントしません。履修科目はウイーク1~2の間に決めることになっています。

そのため、ウイーク1以降は、日本が明るい時間に受講できる講義を選択したり、録画される講義を選択したりしたため、まともな生活ができるようになりました。

秋学期に履修した理系の講義は、例えば私が受けたものに関して言うと、electrochemical system(電気化学システム)、nano technology、TAになるための訓練の講義、研究発表を聞くといったものがありました。

日本で明るい時間に受講できる講義は、アメリカ時間の午後に行われています。アメリカ時間で午後2時の授業が、当時は日本時間で午前6時だったので、午前5時に起きて準備すれば間に合います。基本的に毎日5時には起きて、10時ごろまで授業を受けていたので、むしろ時差のおかげで健康的かつ生産的な生活が送れたと思います。

また、アメリカ時間の午前中に行われる、リアルタイム受講のみ可とシラバスに書いてある授業でも、担当の先生に連絡すると「録画でもOK」ということもありました。ですから、こういった場合でも念のため、担当の先生に聞いてみることをお勧めします。

“バーチャル留学”最大の壁。研究ができない

生活が落ち着いてきた3週目あたりで、仙台に引っ越しました。というのも、このまま実家にいては博士研究を進めることが難しかったからです。

私は材料科学の中でもエネルギーデバイスの研究をしています。再生可能エネルギーとなりうる、太陽、風、波、地熱などの自然エネルギーをためる電池を実用に適したものにすることを目指しています。

当たり前ですが、私のような実験を必要とする学生は、設備がなければ研究を進めることができません。渡米できないと分かったあと、オリエンテーションの間は研究をどう進めるかを考える余裕がありませんでした。講義が始まったウイーク1あたりからUCLAの教授と相談しながら、日本で研究させてもらえそうな大学の候補を考えはじめました。

東京大学や東京工業大学も考えたのですが、冬学期から渡米できる可能性があったので、秋学期の3カ月だけでは装置の使い方を習得するだけで終わってしまいます。

結果として、私が以前所属していた東北大学の先生が、私の博士研究をUCLAと東北大の共同研究として進めることを受け入れてくださいました。そのため再び仙台で研究することができるようになりました。

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意外に悪くない? 日本にいながら米国大学院に進学するメリット

講義を受ける態勢が整ってからも、友達作りには苦労しました。というか半年たった今でも苦労しています。

現地にいる学生同士であれば、話せる時間が多いですし、外で会ったりもできますが、異なるタイムゾーンにいると、話せる時間が限られているので、親密になりにくいです。もちろん会うことはできません。課題を助け合って一緒に行なったり、試験を乗り越えてきたりして、半年たつころにようやく仲良くなってきました。

また、英語力の不足にも苦しんでいます。やはり現地ならば、英語に囲まれた環境に身を置くので、英語力の成長が早いと思いますが、日本にいると、講義や研究以外では英語を使わず、日常生活は日本語なので、英語力が向上しにくいと感じました。

実際に半年たっても、未だにディスカッションの授業では苦労しています。ついていくために、ディスカッションが始まる前に、伝えたいことを英語の箇条書きで準備して対応しています。

では、“バーチャル留学”は悪いことばかりなのでしょうか。実は実際に大学院の講義が始まってみるとそうでもないことを実感しました。というのも、当たり前ですが「日本にいながらアメリカの大学院」に進学できているわけです。

それの何がよいかというと、まず家族のサポートを受けながら海外大学院に挑戦できます。本来なら、1人でアメリカに渡って、1人で生活を築き、どんなに講義で失敗して落ち込んでも慰めてくれる人がいない状態で過ごさなければならなかったはずです。また、どんなにヘビーな宿題が出ても毎日の家事はしなければいけなかったでしょう。

しかし、日本にいれば失敗しても家族が励ましてくれますし、忙しい時は家事も手伝ってくれます。アメリカに行くより低いハードルで海外大学院に挑戦できていると思います。

他の利点をあげると、日本にいればアメリカに行くよりお金がかかりません。ロサンゼルスは1ルームで月16万円くらいの家賃がかかりますが、仙台ならば、1LDKでも月7万円程度しかかかりません。アメリカに行く場合と比べてはるかに支出が抑えられます。

それから意外に重要なのは、おいしいご飯が食べられることです。日本なら簡単に口に合うラーメンや和食を見つけられます。

そして、最大の利点は研究のことです。ロサンゼルスは今コロナの感染状況が深刻で(2021年2月現在)、あまり研究活動ができません。研究室によっては「1週間に何時間までしか研究できない」といった具合に決められています。

しかし仙台にいれば、ロサンゼルスほどの厳しい研究規制はないため、研究により多くの時間を使うことができます。実験データ量だけを比較したら、ロサンゼルスにいる同期の学生より多く持っていると思います。

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結局「日本にいながら米国大学院進学」は問題ないのか。新時代の留学とは

ということは、多少の不都合はあれど、日本から遠隔で大学院に進学しても問題がないのではと感じた方もいると思います。しかしこれは、判断が難しいところだと感じます。

結局、その人が留学に対して求めているもの次第ではないでしょうか。現地の学生達と関わりながら英語で切磋琢磨し合いたい、と考えている人ならば、この状況はあまりよいとは言えないでしょう。

しかし、現地の憧れの教授から指導を受けたいというのであれば、その人の研究室に所属すれば日本にいてもそれは可能です。講義を受けることが目的ならば、それも日本でできます。しかし授業を通して現地の学生と仲良くなりたい、というのであれば(日本からでも時間をかければできるものの)現地に行った方が達成しやすいでしょう。

私の場合は現地の優秀で意欲的な学生たちと切磋琢磨して、ユニークな研究に取り組みたいと思っていました。なので、数多くの利点はあるものの日本からの“バーチャル留学”は正直物足りなく感じてしまいます。

一方で、こういう状況だからこそ、本当は離れ離れになるはずだった家族と一緒に暮らす時間もできました。授業も日本から受けることができていて、博士研究も問題なく進められています。

繰り返しになりますが、時差がある中で講義を受けるのは大変ですし、現地の学生とも仲良くなりにくいなど、大変なことも多いです。

ただ見方を変えれば、今年はコロナによって試験会場に集まることができないため、GRE(理系大学院に進学するために必要な共通試験)も免除されましたし、日本にいながらアメリカの大学院に挑戦できます。捉え方によっては例年よりも進学のハードルが下がったようにも思えます。

これらを踏まえると、約5年ある大学院生活の内、1年くらいならば日本にいてもいいかな、というのがこれまでUCLAで“バーチャル留学”してきた私の正直な感想です。

とはいうものの、今アメリカはコロナのワクチンの接種が進んでいて、3月後半からスタートした春学期では対面授業が始まっています。わたしも次の秋学期からは渡米の予定です。


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