「外資就活ドットコム」及び「Liiga」の会員から、エンジニアのキャリアに対する悩みや疑問を経験豊富な社会人にぶつけてもらう「エンジニアキャリア相談室」。今回は、メーカーでデータサイエンティストとして働くLiiga会員からの相談だ。このままデータサイエンティストとしてキャリアを積んでいきたいが、異動などで望んだキャリアを歩めなくなったときのために、転職の準備をしておきたいという。
回答者は「外資就活ドットコム」のQ&Aサービス「外資就活相談室」で活動している、J.Kさん。外資系企業を経て、現在はアメリカで機械学習エンジニアとして働くJ.Kさんはどのようにキャリアを積んできたのか。勉強方法や転職の考え方についてアドバイスしてもらった。【南部香織】
※インタビューはオンラインで実施
1.エンジニアリングか理論か。自分が進む道を決めれば、勉強内容の比率が決められる
2.アメリカに行くことを前提にキャリアを考えた。エンジニアとして選択肢が広がるから
3.転職するなら汎用性のある技術と、年次に合わせたスキルセットを持つこと
4.常に自分が何をしてきたか、何ができるかを把握し、転職に備える
エンジニアリングか理論か。自分が進む道を決めれば、勉強内容の比率が決められる
今日は私の経験やキャリアを踏まえた考え方が、三浦さんのご相談の参考になれば幸いです。まずはこれまでのご経歴を教えてください。
商品に関する統計データを分析・活用、あるいは機械学習を用いて、新規ビジネスの提案をしたり、市場での使われ方を把握して耐久年数をあげるべきかどうかなどを設計にフィードバックしたりしています。
また、しばらくはデータサイエンティストとしてキャリアを積んでいきたいのですが、日本企業の場合、突然の異動によって望んだキャリアを歩めない場合もあると思うんです。そういったときに転職も視野に入れたいと考えています。
そこで、J.Kさんはどういった観点で転職を考えられたのか、教えていただきたいです。外資系企業へ転職する難易度や、米国本社へ転籍する方法なども含めてお聞かせください。
データサイエンティストや機械学習に携わるエンジニアは、ソフトウエアエンジニアリングに強い人と、数学や統計など理論に強い人がいます。三浦さんは数学を学ばれていたので後者でしょうか。もちろん両方に強いスーパーマンみたいな人もいますが。まずは自分でどういったところを目指すかを決めることが重要だと思います。
例えば、理論のほうが強いので100%そちらに振っていくキャリアもあるだろうし、ディープラーニングモデルをトレーニングするレベルのコードは書けるけど、実運用したり本番のシステムを作ったりすることには詳しくないというキャリアもあるでしょう。もっと開発側に寄って、理論についてはそこまで強くないものの自分一人いればモデリングからデプロイまでできる状態を目指すというのもありです。
私の場合は、コーディングをはじめシステム開発の経験を土台に、機械学習や統計の知識もあるという状態を目指しています。
それが決まると、コーディングと機械学習の勉強をどのくらいの比率でやればいいのか決められるのではないかと思います。その上で、足りない部分、やりたい部分をチーム内でアピールしてそういった仕事をもらうか、それが難しそうであれば、最悪チームを移る、あるいはそこで転職を考えるのもありだと思います。
アメリカに行くことを前提にキャリアを考えた。エンジニアとして選択肢が広がるから
外資系企業は日本企業に比べると社員の平均勤続年数が短いです。4~5年もいると長いと扱われることもあるくらいです。同じ会社にずっと居続けることはあまり考えていませんでした。
とはいえ、ソフトウエアエンジニアの転職先として、国内の外資系企業はそう多くない。ポジションを移りたい場合も、希望職種や入りたい開発チームは、本社にしかないということはよくあります。ですから、いずれはアメリカで働いてみたいと思っていました。
それに実際に同じチームで働いていたシニアの人の経歴を見ると、1度は米国で働いている場合が多いということもありました。米国で得るものがあるから生き残れるのではないかと。
転職するなら汎用性のある技術と、年次に合わせたスキルセットを持つこと
それから、その年次に求められているスキルセットを持っていることも重要です。例えば、8~9年目で転職しようと思ったら、技術的な能力だけではなく、プロジェクトをある程度1人でリードできるかどうかというところも見られます。
それからコーディングインタビューの準備もしておいた方がいいでしょう。それができなければエンジニアとして能力がないというわけではないのですが、どこのIT企業も採用にそういった手法を取っているので、対策せざるを得ないんです。実際の業務とはちょっと違うスキルセットですしね。
常に自分が何をしてきたか、何ができるかを把握し、転職に備える
TOEICが600あれば面接を受ける価値があると、よく私はお伝えしています。1社目の私の開発の同期は実際にそのくらいで入社しているからです。
実際働く上で、どのくらい必要かは会社によります。チームメンバーによるといってもいいかもしれません。日本人が多ければ、英語で話す部分は少なくなりますし、ほとんど外国人なら必然的にすべて英語になります。
普段使わないのになかなか難しいと思いますが、面接に通るだけの部分はなんとか勉強しましょう。実務では必要にかられれば話せるようになるものです。私も定期的に時間を取って勉強したわけではなく、仕事をしていくうちに話せるようになったので。
そうしておけば、面接を受けることになってもパッと答えられます。上司と面談の時にも、足りない部分を補う仕事をしたいといった相談もできます。
とはいえ、日本企業にお勤めで、外資系に移りたいんだったらなるべく早いほうがいいです。当然のことながら、若いほうがポテンシャルを見てもらえるからです。年を重ねるほど、日本企業と外資系企業ではキャリアパスに隔たりがでてくるでしょうし、それなりのスキルセットが要求されるからです。