医療コンサルタントとは医療分野の組織の課題解決を手助けする仕事です。ここでは、医療コンサルの志望者向けに、仕事内容や必要なスキルと資格、年収について、実際の求人情報をもとに解説します。

医療コンサルタントの役割

医療（ヘルスケア）コンサルタントとは、病院や介護施設、製薬会社など、医療分野の組織の課題解決を手助けする職業です。
ここでは、医療コンサルタントの役割を、病院や介護施設を対象とした「医療機関向けコンサルティング」と、医療機器メーカーや製薬会社を対象とした「医療関連企業向けコンサルティング」に分けて解説します。

医療機関向けコンサルティング

医療機関向けのコンサルティングでは、個人病院の開業支援や大規模病院の経営改善などを行います。
病院や介護施設などの医療機関では経営に関する専門性を持った人材が不足していることから経営課題に直面することが珍しくありません。ときには地域にとって重要な医療機関であっても、職員の大量退職に伴う人手不足などが原因で経営危機に陥ることもあります。

医療コンサルタントは、こうした医療機関からの依頼を受けて病院の経営課題を洗い出し、資金調達や集客、業務システムの導入、人事・教育制度の改定などの支援を行います。 クライアントとなる医療機関には公的機関も多く、ときには病院の再編や診療報酬など地域や国全体の医療に関わるテーマに携わることもあります。

医療関連企業向けコンサルティング

医療関連企業向けのコンサルティングでは、医療機器メーカーや製薬会社などを対象に、売上拡大のための販売戦略の提案や販路開拓のための支援を行います。

医療機器メーカーや製薬会社のクライアントとなる病院には公的機関も多く、医療コンサルタントには集客やマーケティングの面で業界特有の慣習や医療分野の知識が必要になります。

また、近年では医療・ヘルスケア領域に新規参入を計画している企業の支援をすることもあります。医療分野の新規参入には法律面や技術面で様々な課題があるため、医療コンサルタントの知見が必要とされています。

医療コンサルタントの仕事内容

医療コンサルタントの具体的な仕事内容は、所属するファームの規模や事業内容、その人のポジションなどによっても異なりますが、ここでは、医療コンサルタントの仕事のイメージを掴みやすくするために、医療コンサルタントが扱う事の多い業務をいくつか解説します。

開業支援

開業支援ではクライアントとなる病院の開業支援を行います。経営戦略の策定から開業時の物件選び、資金調達、医療機器の購入、集客、スタッフの採用までをトータルでサポートします。開業後も消耗品の購入や人材教育、集客支援などの形で付き合いが続いていくため、一つの病院と長く付き合いを続けていきます。

経営支援

病院を対象に黒字化などを目的とした経営支援を行います。各部署との関係の構築から課題の洗い出し、経営戦略の立案、業務フローの改善、コストカットの提言など、扱う業務は多岐に渡ります。近年では新型コロナウイルスの流行に伴い、保健所とのシステム連携や給付金関連の支援業務も行っています。

IT導入・運用支援

近年では、病院の人手不足の解消や患者の利便性向上を目的として「スマートホスピタル」の導入が盛んに進められています。
スマートホスピタルとは、IT技術を使うことで病院の業務を効率化し、医療従事者の業務負担の低減や医療の質向上を図る施策のことです。
具体的には、受付予約の自動化や遠隔診療の導入、ビックデータの活用などを行うことで、遠隔からでも質の高い医療を受けられたり、医療従事者の業務負担量を減らしたりすることを目的としています。

ほとんどの医療機関ではIT分野の知見を持ったスタッフがいないため、スマートホスピタル実現のために必要なシステムの導入を手助けすることも医療コンサルタントの役割です。
一口にスマートホスピタルと言っても、求められる機能は病院ごとに異なるため、コンサルタントには院内の各部門へのヒアリングはもちろん、市場調査やシステム会社の選定、見積もり徴取、契約締結時の支援などを行うことも求められます。

医療コンサルタントになるには

近年では医療機関から寄せられる相談が多様化していることから、各コンサルティングファームでは様々な経歴を持った人材を採用することが質の高いサービス提供につながるという認識が広まりつつあります。 そのため、各ファームでは大学の研究室やバイオベンチャー出身の人材も積極的に採用するようになり、以前よりも多彩な人材が医療コンサルタントとして活躍しています。

ただし、各ファームの主な採用者は、依然として医療関連業界出身者やコンサルティング経験者が多く、年齢は20代後半から30代の人が中心です。実際に2022年12月時点の求人を調査したところ、各コンサルティングファームでは医療コンサルタントの応募条件として、下記のいずれかを必須としているところが大半を占める結果となりました。

一部の医療系ベンチャー企業では未経験者も行っているところもありますが、医療業界には他業界にはない、独自の慣習なども多くあるので、未経験者が応募する場合は自分の適性を見るためにも、一度、医療業界で勤務した後に転職するのが良いでしょう。
現在の自分の経歴で医療コンサルタントになれるかを、より具体的に知りたい方は転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。

Liiga｜転職エージェント

医療コンサルタントに必要なスキル

医療コンサルタントとして必要なスキルはファームやポジションによって異なりますが、どのような現場でも共通して論理的思考力やマルチタスクスキル、高い当事者意識の3点が求められます。

論理的思考力

医療コンサルタントの仕事では、通常のコンサルタントと同じく、問題を構造的にとらえる力や複雑な物事に道筋を立てて解決に導く能力が必要となります。医療分野では民間と行政の両方が関わるため、それぞれのプレイヤーの立ち位置やルールをよく理解し、解決策を提示できることが求められることを押さえておきましょう。

コンサルティングファームの選考では、志望者の論理的思考力を確かめるためにSPIなどの筆記試験に加えて、ケース面接が行われます。「フェルミ推定」や「ビジネスケース」のどちらの問題も解けるように準備しておきましょう。
特に、医療関連業界からコンサルタントに転職する場合は、医療分野の知識に加えてコンサルタントとして成長していけるだけの能力や意欲があることを見られるため、入念な対策が必要なポイントです。

マルチタスクスキル

医療コンサルタントは複数のクライアントを同時並行で進めるのが一般的です。一つのクライアントには週数日から月数回顔を出し、各地を転々としながら仕事をすることも珍しくないため、複数のプロジェクトを代わる代わるこなしていく能力も求められます。

高い当事者意識

医療コンサルタントは、医療という人の生き死にに携わる仕事であるため、高い当事者意識も求められます。 特に、これまで医療にかかわってこなかった人が転職をする場合は、医療やヘルスケア領域への熱意や理解が十分にあるかといった点も面接で確認されるポイントです。 面接で自分の原体験となった出来事を話せるようにしておくのはもちろん、その実現のために具体的にどのような努力をしているのかについても説明できるようにしておきましょう。

医療コンサルになるために必要な資格

医療コンサルタントになるために必須の資格はありません。 ただし、グローバルファームや戦略ファームでは、MBAや一定以上のTOEICスコアの取得を必須としているところもあるため、大手のファームに応募する場合は事前に条件をよく確認しておくようにしましょう。

また、「医業経営コンサルタント」や「情報化認定コンサルタント」、「医療経営士」といった資格については、必須としているファームが少なく、必ず取得しなければいけない資格というわけではありません。
これらの資格については医療分野やヘルスケア領域に対して高い関心があることや、一定の努力をしてきたことを面接でアピールしたいときに取得するのが良いでしょう。

医療コンサルタントの年収と労働環境

医療コンサルタントの年収は以下が相場と言われています。 ポジションごとのより詳しい年収や医療コンサルタントの労働環境が知りたい方は以下の記事からご確認ください。

【徹底解説】ヘルスケアコンサル転職志望者から寄せられる定番質問7選。PJ例、年収、WLB（シリーズ前編）

まとめ

医療コンサルタントとは、病院や介護施設、医療機器メーカーなどの課題解決を手助けする仕事です。近年では医療機関側のニーズが多様化していることから各ファームとも様々な業界出身者の採用を行っており、医療業界やコンサル未経験者でも活躍できる環境が整いつつあります。

現在の自分の経歴やスキルで医療コンサルタントに転職できるかどうかをより具体的に判断したい場合は、転職エージェントに相談してみるのがおすすめです。
Liigaでは実際の利用者の口コミを見ながら転職エージェントを選べるので、利用を検討してみてください。