投資銀行マンのリアルな転職事情#02 「投資銀行から戦略コンサルへの転職」
2020/10/20
#投資銀行から広がるキャリア
#戦略コンサルにつながるキャリア
#新卒内定者必須コラム

はじめに

投資銀行業界の転職事情に詳しく、現在も外資系企業に勤めるオカメさんからコンサル業界への転職はどうなっているかのコラムを寄稿していただきました。ご質問を受け付けていますのでご連絡お待ちしております。

コンサルへの転職はできるのか

投資銀行からコンサルへの転職は異業種転職を語る上で「王道」とされてきました。

おそらく、投資銀行業務でも戦略コンサルティング業務も、論理的思考能力に長け、複雑な案件をこなすチームワークを持ったバンカーやコンサルタントが、顧客である企業のためにさまざまな定性的・定量的分析を行ってサポートする業務を行うという点で非常に親和性が高く、その業務から学べるスキル・ノウハウについてもキャリア上相互補完の関係にあるはず!と世の中では思われているためでしょう。

私個人の体験から実際は投資銀行から戦略コンサルへの転職はどうなのか解説いたします。

主要なコンサルティングファーム一覧

日本において有名な投資銀行については第一回のコラム「投資銀行業界でのよくある転職パターン その①日系から外資系へ」で例示させていただきましたが、戦略コンサルについては今規模の大小を含め、さまざまな企業が存在します。

企業先を検討する際の優劣は個人の選好によりますのでここでは述べませんが、一般的に投資銀行業界から転職する場合、以下のようなプレーヤーが転職市場では人気のようです。

ちなみに「FAS系の戦略コンサルや、IT系コンサルティングチームを有する企業は厳密には戦略コンサルではない!」という方もいらっしゃるのですが、厳密な定義は非常に曖昧ですので、ここでは広めの定義にて書かせていただきます。

外資系戦略コンサル

・マッキンゼー・アンド・カンパニー ・ボストン・コンサルティング・グループ ・ベイン・アンド・カンパニー ・A.T.カーニー ・ローランド・ベルガー ・アーサー・D・リトル ・KPMG ・デロイトトーマツコンサルティング(米モニター・デロイト含む) ・PwC / Strategy&(旧ブーズ・アンド・カンパニー) ・アクセンチュア など

日系戦略コンサル

・野村総合研究所 ・三菱UFJリサーチ&コンサルティング ・コーポレイト・ディレクション ・ドリームインキュベータ など

これらのトップファームへの転職を目指すのであれば、しっかり企業に入って何をするのか、その後何がしたいのかを含めて網羅的に準備をしておくことをおすすめいたします。

では今回も、筆者がここ数年の転職マーケットの現場で感じた、ぶっちゃけの投資銀行から戦略コンサルへの転職の現場についてみてみましょう。

前回同様、以下のコメントは口コミや経験に基づくものですので、あまり大きなハズレはないとは思うものの、統計や企業からの公表情報等があるわけではありませんので、あくまでご参考までに。

①戦略コンサルは年次の浅いバンカーも採用している

投資銀行(特にIBDやM&Aアドバイザリーを行う部署)に入社した後、ある程度のトラックレコードを得て少しは語れるようになってきた3年目〜7年目あたりのバンカーが大半を占めているのではないでしょうか。

Vice PresidentからDirectorあたりの年次についても、自分の業界知識を十分に得たり、市場でのある程度の知名度をもって転職することがありますが、どちらかというとそうした方々は他人と評価比較されながらというよりは、ヘッドハント・個別採用枠に近いイメージで採用されます。

また、最近は多くの戦略コンサル(例えば、BCGやAccenture)は第二新卒枠を募集しています。

そのため、投資銀行に入社したポテンシャルの高いバンカーが、年次でいうと1年目〜3年目あたりで募集枠に殺到しています。倍率は高いですが、選考も長めになっています。

特に外資系投資銀行(特にリーグテーブル上、上位と考えられている欧米有名ファーム; GS、MS、BoAML、Deutscheなど)からの出自は、履歴書上の見栄えも実際のポテンシャルも、採用すべき人材として大手戦略コンサルからは望ましく捉えられる傾向があるようです。

もちろん日系投資銀行出身者も大手ファームに入社することはありますが、書類選考や経歴という観点からはやや間引いて考えられがちで、入社年次は外資系投資銀行出身者と比べてやや上になりがちです。

②4年未満の戦略コンサルへの転職はほぼ新入社員扱いになりがち

ポジションのタイトルは、投資銀行業界と戦略コンサル業界で異なりますので、厳密にディスカウントというものを推し量ることはできませんが、新卒年次が2年目から4年目あたりは戦略コンサル業界でいうBusiness Analyst、Junior Associateのポジションに入ることが一般的です。

社内での取り扱いは、ほぼ新入社員と同等に扱われ、基本的に上司の論理詰めとパワポ&ピボットテーブル&ドキュメントセンター地獄に遭います。

最初はエクセルのモデリング技術より、IEやChromeのショートカット技術が物調べに役立ちます。

社会人歴が5年以上(目安でいうと、投資銀行におけるタイトルがAssociate以降)の年次であれば、そのままAssociateという形か、あるいはSenior Associate・Consultantといった取り扱いになるのが一般的です。

社内ではこの年次あたりが「中途採用組」として見られ、特にファイナンスサイドの実力や知見、人とのコネクションが非常にシビアに評価されます。

中途採用の厳しさを、採用人数度合いの感覚から判断するとすれば、圧倒的にMcKが頭ひとつ抜けている印象です。

BCGについては定期的に第二新卒採用枠を設けるなど、やや門戸の広さというところを加味するとMcKの次点にあたります。

その他とはいえども、Bain&CompanyやA.T.Kearney、Roland Berger等、外資系ファームは超難関企業ということで業界認識は合致しています。

外資系の中で、Accentureだけは採用人数も多く、面接における詰め具合もマイルドなのであまり難易度は高くありません。

FAS系各ファームについては、通期にわたって比較的採用枠を設けていることが多いため、難易度は高いものの上記ファームと比較するとそこまで激選ではありません。

なお、日系についても決して簡単ではなく、野村総研やDIなどはその認知度もあって大人気ファームとなっているかと思います。

特に、三菱UFJR&Cなどの銀行系コンサルファームは近年競争激化に対応するために非常にアクティブな組織改革をしており、中小規模M&AアドバイザリーとPMIの専門部隊をコンサルチームに設置するなど、投資銀行出身者からすれば取っ組みやすく、今後人気が出そうです。

こうした新興・進化中のファームでは、報酬水準も日系投資銀行よりは、成果報酬型に近くなってきています。

報酬水準については、若い年次での転職の際は基本的に1,000万円には全然満たないことが普通です。

よって、特に外資系投資銀行や年俸評価制度を採用している日系投資銀行からの転職時には、オファーレターをもらう前に年収アップは諦めてください。

だからといって夜の帰りが早まるであるとか、心身の苦労が楽になるかというと、そうでもありません。負担がどちらかというと「心」側によるイメージです。

③選考の特徴を公開

転職エージェント経由の方が面接に呼ばれる確率は高い

基本的には転職エージェント経由か、企業のコーポレートサイトを通じた直接応募で採用プロセスは進みます。ただ、営業トークや履歴書では説明しづらい経歴のプッシュが効くという意味で、個人的には名のきいた転職エージェントを通じて応募したほうが書類選考通過率は高いと考えます。(筆者も応募するときは転職エージェント経由で複数応募し、すべてインタビューに呼ばれました。) 転職エージェントは、アクセスがあった複数の候補を実際吟味して、受かりそうな人から大手ファームに積極的にぶつけていきます。

評価ポイント

基本的に企業に評価されるポイントは、以下の6点が基本要件です。筆者がオファーをもらった大手戦略コンサルファームの方からのクチコミが含まれていますので、結構参考になるかと思います。

  • 学歴(東大・京大・旧帝・海外大学等であれば、とりあえず無問題。早慶トップ学部は職歴と浪人・留年歴を見る。ちなみに早慶の内部進学生も、留年なくそのままトップ学部に入っていれば無問題です。なお、いずれも理系院生だと通過率高い)

  • 投資銀行でどういった案件を手がけてきたのかや、事業計画の立案・モデリングに携わったり、他の経営戦略に関する議論に実際に携わったことがあるかどうか

  • 英語レベル(留学経験あればベター、TOEICだと900点超えで「できなくはないか」という感じ、何もなければビジネス会話経験があるか。外資系戦略ファームでは、内定後に英語試験があり、落ちるとオファーを取り消されたりするので、そもそも全然できない人は書類か一次の面接で落とす)

  • 年次がある程度上の人であれば、特定のセクターに関する専門性や知見はマスト

  • さらに年次がかなり上(VP以上)の人であれば、投資銀行の業界や、特定セクターの大物にまだ顔が効く人がいるか。著書などがあるか。

  • 履歴書やCV / レジュメに誤字脱字、見た目やインデントの処理が変なところがないか

選考段階

McKやBain&Companyなどでは、比較的若い年次の候補者の選考プロセスで筆記試験を実施することがあります。内容はGMATのような論理推理の問題や、グラフ・表等のデータ分析・類推、そして英語長文の読解などが一般的です。得点については言わずもがな新卒の時と同様の水準が求められますので、確実に通過したければ満点に近い水準が必要ですが、英語の試験については他の試験に比べて今後のポテンシャルが評価されやすい部分もあり、やや甘い印象です。

面接は5〜10人、企業によっては所属するであろうチームメンバー全員と会うこともありますが、はじめは現場のConsultantから始まり、次第にSenior ConsultantやProject Leader、Principalといったイメージで年次が上がっていくイメージです。

インタビューでの質問内容については、一般的な志望動機は所詮は戯言と捉えられるので適当に流されますが、矛盾したことを言うと指摘されます。

ただ、主たる関心は今までの職務経歴や企業の戦略立案に携わったことがあるかどうか、ファームに入社した後のキャリアプランをどう考えているのかですので、これについて主に質疑応答形式で丁寧に聞かれ、時に詰められます。

この詰めに何も動じることなく応じないと、最初の若いConsultantとの面接は通過したとしても、上位層のスーパービジネスマンに面接が推移するにつれて辛くなってきますので、面接が終わったら毎回質問内容と何と回答してきたかを反芻することが重要です。

ほとんどの戦略コンサルでは、新卒時と同様にケース面接が実施されます。トピックは、「優しい」ファームであれば単純なフェルミ推定の問題で終えてくれるのですが、ほとんどは上記の経歴説明やこれまで手がけてきた案件に絡めた出題となります。

例えば、通信会社のM&A戦略についてクライアントと検討したことがあれば、それに絡めて「日本の通信産業をもっと良くするにはどうしたらいいかな?」みたいな聴き方をニッコリとされます。検討時間は3〜5分で、ホワイトボードがない時もあります。なお、ケース面接で、回答は英語でやれと言われると悪夢となります。

選考プロセス

基本的には平日の夕方〜夜に1〜2時間かけて1人だけと面接を行うことが多いです。期間は、最初の書類応募からオファー面談まで2ヶ月弱かかるイメージとなります。

内定後の入社時期拘束が厳しい業界で有名ですので、もし受かりそうだと思ったら、社内イントラで退職関連の手続きの確認と、机の上にあるA4裏紙の山や私用キーボードを持ち帰りはじめましょう。

投資銀行の人は、基本的に平日時間がありません。そうした事情は戦略コンサルの方も理解してくれるのですが、配慮はしてくれません。(土日祝日に面接をやってくれるのは、自分の記憶の限り先述の大量採用をしているコンサルティングファームくらいでした。)

そのため、面接へ向かう方法として、以下のようにスケジュールにしている方を目撃しました。

  1. 歯医者や点滴と称して2〜3時間ランチ前後にお出かけ
  2. 家族構成を虚偽して無数の叔父叔母を作り上げ、「家族の事情」によって半日休暇を取得
  3. (ある程度年次が上であれば)顧客訪問と偽ってお出かけ
  4. 徹夜したのち、シャワーを浴びる程で午前中2〜3時間お出かけ

基本的に転職活動は雰囲気でバレやすいので、もしバレたくないのであれば、誰にも何も言わずしれっと外出し、「どこ行ってたの?」と聞かれたら、 「あ、すみません。お昼の食事と合わせて処方箋をもらってきました」白い袋パサッ という念入りな対策をしておくといいと思います。

なお、転職活動がばれると、案件やインサイダー情報の漏洩防止の観点からも上司が機敏になり、結構その後の対策が面倒になるかと思いますので、やるのであればご丁寧にどうぞ。

④戦略コンサルの価値はコモディティ化してきている

戦略コンサルにおける若手の主たる業務は、企業戦略についてA3の方眼紙を相手にうんうん悩んだり、CEOやCOOに向かってプレゼンをすることではありません。リサーチと、そのおまとめ作業です。

毎日のお友達はGoogle先生と企業のIR資料、Microsoft ExcelとPower Pointが毎日デスクトップやラップトップを占領し、100ページにグラフをまとめたのちに上司に「MECEじゃないネ!」とドヤ顔されることが、Junior Consultantの最初に直面する現実です。

上記にもまして、今市場は、戦略コンサルが企業の経営戦略のコンサルティングサービスで大きく稼げるという状況ではなくなったことをご認識ください。

今、コンサルティングに関するノウハウが「元マッキンゼー」「元BCG」といった肩書きを提げたOBたちによって書籍化され、市場にノウハウが出回る世の中になりました。(「外資系コンサルの資料作成術」や「外資系コンサルのリサーチ技法」なんかが、一世を風靡しています。実際、私も買ってデスクの脇に置いてあります。

また、戦略コンサル出身者はMBAを提げて事業会社やPEファンドに移籍し、彼ら・彼女らが学んだことをクライアントたる企業の内部に伝達しているわけです。

「もうロジカルシンキングやクリティカルシンキングのノウハウ自体が価値を持っていた昔と違って、もはや情報の非対称性から儲けられなくなってきたからなぁ」と大手ファームの方も警鐘を鳴らしています。

戦略コンサルは次第に世界に散らばる各情報リソースを洗い、数百万円のレポートにまとめあげて販売、そして時折そうしたデータを持って経営陣の背中をぐっと押す何かの「提言」を別チャージにてやってあげる、という方向にシフトしつつあるようです。

そもそも転職するときに他人と比べる時点でナンセンスではあるのですが、しばしばMcKやBCG、Bain&Companyのような大手外資系ファームとそれ以外のファームへの転職を比べて、「同じ戦略コンサルだし、勝負は何を考えるかなんだから、会社は関係ないよ!」と豪語する人がいます。

しかし、私個人の考えですが、残念ながら実際のところ有名なファームに入るほうがプラスに働くことは多くなります。ファームのサービス良し悪しはあるにせよ、前者が圧倒的に世界で評価されてきた歴史があるのは事実であり、もしそのファームに入ったとすればその後のキャリアには美しいハクはつきます。

前回のコラムでも書きましたが、投資銀行に入った後に、戦略コンサルやMBA留学を経てPEへ、という考え方は、市場の王道になっています。王道とは、経歴を聞いたときに「ああ、なるほどね」と納得されるキャリアという意味で、決して良し悪しの問題ではありません。

ただ、市場ではこうしたイメージを持って転職活動を行っている方が多くいらっしゃるので、別に大学院を出てから外資系投資銀行に行き、戦略コンサルに行って社費でMBA取ったらさすがに差別化できるだろうといえば実際そんなことはなさそうですので、ご注意ください。

おわりに

上記内容についてや、他にご質問事項があれば、ばこばこ筆者のオカメまで聞いてください。

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コラム作成者
Liiga編集部
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