経営戦略とは?定義、種類、フレームワーク、戦術や事業戦略との違い
2022/11/05

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経営戦略とは、企業が経営目的・目標を達成するための方針や計画のことを指します。経営戦術や事業戦略と混同されがちですが別のものなので、違いを確認しましょう。また経営戦略にも種類があるので、よく使われるフレームワークや事例とあわせてご紹介します。

経営戦略とは

経営戦略とは、企業が掲げている経営理念・ビジョン・目的や目標を達成するため、進むべき方向を定めたものです。

「どこを目指すのか」という方向性だけでなく、「そのために経営資源(ヒト・モノ・カネ)をどう使うのか」「どう実行していくのか」といったHOWの部分まで含むことが多いです。

自社の経営理念や経営資源だけでなく、世の中の変化や競合の動きといった外部要因にも目を向け、「内部・外部の要因を踏まえた上で自分たちはどう動くのか」を決定します。

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経営理念や長期戦略に基づいて策定される

経営戦略は、企業の理念・ビジョン・目的や目標達成のために存在します。そのため経営理念に基づいて策定されるのが一般的です。

例えばトヨタ自動車の場合、企業のミッションとして「わたしたちは、幸せを量産する」を、またビジョンとして「可動性を社会の可能性に変える」を掲げています。このミッションやビジョンを達成するために、その時々に合わせて立てられるのが戦略です。

クルマが希少な時代なら「規模を生かして低コストなクルマを作る」といった戦略が一つの選択肢でしょう。競争が激しい時代なら「様々な人のニーズに合わせられるように、全ジャンルのクルマを作る」や「より良いクルマを安く作るために車種を絞る」といった戦略が考えられます。

現代なら「今後は電気自動車の時代だから全車種をEVとする」や「電気自動車も水素もハイブリッドも全て網羅して消費者が選べるようにする」といった選択肢の中から、理念やビジョンの実現に繋がり、かつ実現可能な戦略を立てていきます。

また経営戦略にも様々な期間があり、長期では5~10年スパン、中期では3~5年スパンの戦略が一般的です。長期戦略で「いつまでに、何を、どうやって」達成するのかを決めたら、長期戦略で定めた目標を達成するための中期や短期の戦略を立てていきます。

全社戦略(経営戦略)に基づいて事業戦略や機能戦略が決まる

経営に関わる戦略にも、全社戦略、事業戦略、機能戦略など様々なレベルがあります。全社戦略のみを経営戦略と呼ぶケースもあれば、事業戦略や機能戦略も含めて全てを経営戦略と呼ぶこともあります。

事業戦略や機能別戦略は、全社戦略(経営戦略)に基づいて決まります。

例えばハイブリッドカー事業の戦略は、その会社がハイブリッドカー事業をどう位置付けているのかによって変わります。「これから成長させていきたい」と思っているのであれば積極的に投資をして技術開発を進めるでしょう。これ以上の成長は見込めないと判断している場合は、売上を維持しつつコストを下げてゆっくり撤退していく戦略もあるでしょう。

こうして事業戦略が決まれば、それに基づいて物流や開発といった機能別戦略を立てていきます。機能戦略は、時に事業の枠を超えて策定されることもあります。

Q&A 経営戦術とはどう違うの?

戦略は「比較的長い時間軸での方向性を示す方針」なのに対し、戦術は「戦略を実現するための、局所的で短い時間軸での手段・対応策(アクション)」を指します。

経営戦略を立てる時には戦術も一緒に考えるケースも少なくないですが、あくまで戦略実現のための戦術という位置づけです。

経営戦略の重要性

経営戦略は、その企業がこれから進むべき方向性を定めています。方向性を間違うと、企業は経営理念や目標を達成できないばかりか、場合によっては倒産してしまう可能性もあります。

戦略が変われば、ヒト・モノ・カネといった、企業の経営資源の使い方も変わります。

例えば飲料メーカーの場合、大手であるコカ・コーラに負けないように同じジャンルでより良い商品を出すことを目指すのか、コカ・コーラが目を向けないような小さな市場を囲い込むことを目指すのかによって、人員配置も投資も大きく変わってくるでしょう。

また社会が従来よりも大きく変化していることも、経営戦略の重要性が増している一因です。日本は少子高齢化や人口減少が進んでおり、デジタル環境も変化しています。

今までの成功パターンが通じなくなる可能性が高いからこそ、現状を正しく把握し、適切な戦略を立て、必要に応じて見直していく必要があります。

経営戦略策定のステップとフレームワーク

社長が「この商品を売りたい」と考えても、なかなか思い通りにならないのが経営です。市場のニーズがなければ商品は売れません。競合の動きも考えなくてはならないでしょう。自分たちの強みがないところで勝負をするのは簡単ではありません。

だからこそ、以下のようなステップで経営戦略を考えるのが一般的です。

  • ステップ① 外部環境分析
  • ステップ② 内部環境分析
  • ステップ③ 競争優位の源泉を決定

こうした分析をする際には、フレームワークを使うと「何を考えればよいのか」が分かりやすくなります。フレームワークにも様々な種類がありますが、絶対に押さえておくべき4種類をご紹介します。

PEST分析

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外部環境を分析する時に使われるフレームワークで、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字をとったのがPEST分析です。

世の中の大きな流れを明らかにし、それが自社に与える影響を分析するためのフレームワークです。企業がコントロールできないようなマクロ要因を整理できるため、特に長期の経営戦略を立てる時には重要な観点です。

5フォース分析

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5フォース分析は業界や市場を分析する時に使うフレームワークです。PEST分析よりもカバー範囲は狭いですが、深く外部環境を分析することができます。

直接の競合である業界内に加えて、既存の買い手・売り手といった業界の関係性、今後の新規参入や代替品といったライバルになりうる存在も分析に含めているのが特徴です。

3C分析

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内部環境と外部環境を同時に分析するフレームワークの一つが3C分析です。外部環境をさらに顧客(Customer)と競合(Competitor)に分けているのが特徴です。

比較的わかりやすく、かつ外部環境と内部環境の両方を考えることができるので、利用されることが多いフレームワークです。全社戦略だけでなく事業戦略でも使うことができます。

SWOT分析

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内部環境と外部環境を同時に分析するフレームワークの中でも、ポジティブな内容とネガティブな内容に分けて洗い出すのがSWOT分析です。そのため、攻めだけでなく守りの戦略にも目を向けることができます。
先述の3Cと組み合わせて使われることも多いです。

経営戦略の主な種類

経営戦略は細分化すると切りがないほど種類がありますが、よく選ばれる戦略の例としては以下のようなものがあります。

  • 差別化戦略
  • 多角化戦略
  • 集中戦略

それぞれの戦略を、具体例と共にご紹介します。

差別化戦略の例 ~バルミューダ

差別化戦略は自社よりも圧倒的に強いプレイヤーが市場にいる場合に、差別化するポイントを作ることで正面対決を避ける戦略です。
価格、商品性など差別化のポイントは様々で、業界の中でシェアの少ない企業が選ぶことが多い戦略です。

バルミューダが販売する家電市場には、パナソニック、ソニー、シャープなど強力な競合企業が数多く存在します。その市場の中でバルミューダは「高価格だがデザイン性が極めて高い商品」を製造・販売することで、既存製品との差別化に成功しています。

多角化戦略の例 ~富士フイルム

多角化戦略とは、様々な市場の獲得を目指し多様な事業を展開する戦略です。一般には別業界に属する事業を複数持つことを指します。

様々な事業を持つことで、大きな社会変革が起こった時でも事業のどれかは生き残る可能性が高いため、リスクヘッジになります。他方で、ヒト・モノ・カネという経営資源を分散させなければならないので、事業領域の選択や投資判断が難しいです。

そんな多角化に成功した企業の一つが富士フイルムです。富士フイルムでは、元々はカメラやフィルムといった領域に事業が集中していましたが、デジタルカメラの台頭などをきっかけに戦略を大きく見直しました。

現在は化粧品などのヘルスケア事業、レンズなどの光学デバイスや素材事業も手掛けています。

富士フイルムでは、ただ多角化をするのではなく、これまで培った技術を活かせる事業を選んでいるのも特徴です。例えばスキンケアやヘルスケアで使われるコラーゲンは、実はフィルムの主成分でもあります。

集中戦略の例 ~スズキ

集中戦略とは、特定の商品や市場に経営資源を集中させる戦略です。一つの業界の中でも特に何かに絞ることで、効率的に経営資源を使うことができます。

自動車メーカーには、トヨタやホンダのように、「どんな車種でも生産している」というメーカーがあります。そんな中、スズキは軽自動車とコンパクトカーに集中するという戦略をとっています。

そうすることで、例えば必要な部品や設備の種類を絞ることができ、またノウハウも溜めやすいので、経営資源の効率化に繋がります。また「軽自動車といえばスズキ」というイメージも作りやすいため、ブランディングやマーケティングもしやすくなります。

経営戦略の理解は社会変化の把握から

経営戦略を理解するには、幅広い知識が必要です。

「なぜこの戦略を選んだのか」を理解するには、「他にどんな可能性があったのか」「外部環境や内部環境をどう捉えるべきなのか」を理解している必要があるからです。

自分で戦略を立案する場合、更に深い知見や思考力が求められます。

特にPEST分析で使うようなマクロな社会変化は、絶えずアンテナを張っていなければ気付けないことも多いでしょう。また競合他社や他の業界の戦略を知ることが、戦略のヒントになることも多いです。海外の事例も知っていれば、戦略の質も更に上がります。

Liigaでも経営者のインタビューや企業の戦略をコラムとして紹介しています。経営者の目から見た世の中の変化は戦略立案にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。

経営戦略の策定を仕事にすることも

経営戦略や事業戦略を立てることを仕事にしているのが、「コンサルタント」と呼ばれる人たちです。プロジェクト形式で様々な企業の戦略立案に携わるため、考え方やノウハウを短期間に身に着けることができる仕事です。

経営戦略を立てられるようになれば、自分で事業を立ち上げたり、他の企業に転職したりと、その後のキャリアの選択肢も幅が広がります。

Liigaでは、未経験や第二新卒で応募できるコンサルティングファームやシンクタンクの求人を多数紹介しています。経営者のコラムも読めるので、コンサルタントになることを目指す人も、自社の経営戦略を理解したい人もぜひ役立ててください。

コラム作成者
Liiga編集部
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