はじめに
今回も、現役コンサルタントの方に、ケース問題の解答方法について解説していただきました。ぜひご覧ください。
導入: 本コラムの趣旨
今回のコラムでは、例題から面接官の出題意図を探ることで、問題の重要論点を探っていきます。
ケース面接の中でも、特にフェルミ推定となると、ついつい数値計算にばかり意識が行ってしまいがちです。しかし、長い問題文の場合は、様々な情報や制約が付けられているため、ビジネスケースと同様、論点の把握が必要です。また、面接中に議論する内容も、問題文から抽出したポイントをもとに、強弱をつけないと、有意義な議論にはなりえないでしょう。
これらの場合、ビジネス的視点で物事を見る(ビジネスの当事者になりきって考える)ことが一番重要です。ビジネス的視点に立てば、施策は「どのような目的」「具体的にどのような業務上の検討内容・プロセス」にて展開されるのでしょうか。今回は、この「ビジネス的視点で物事を見る」ことについて、解説します。
今回は、「2種類のよくある見落とし」をメインに解説しつつ、最後に「最終結果の数値の妥当性検討」に関する解説を加え、計3つの内容になります。
ここからは、例題に沿った解説を行います。Liigaコロッセオにて出題された問題を利用しますので、ぜひコロッセオを解いたうえで、本コラムを読んでみてください。今回解説するのは、以下の例題です。
問題を解きたい方はこちら
今回のフェルミ推定は、コスト部分の分析が難しい
まず、上記の例題は、形式的にはフェルミ推定にあたるでしょう。ただし、一般的なフェルミ推定は、売上のような特定の1項目を推定させますが、今回の場合、売上とコストという2項目を推定し、製造費用の回収期間の部分で2項目のバランスを見ているというのが、現実的な解釈かと思います。そのため、少し難易度が高そうです。
さて、今回のフェルミ推定ですが、売上側は簡単そうです。そもそもコーヒーメーカーを無料で提供するので、実質的には「インスタント粉」から発生する売上がほとんどを占めるでしょう。
では、コスト側はどうでしょうか。実はこちらには様々な項目があり、少々難易度が高いです。主に見逃されるのは、以下の2つの視点ですので、それぞれ分けて解説していきたいと思います。
見落とし①: 巡回・メンテナンスに関わるコスト
さて、コーヒーメーカーは、導入すれば終わりではありません。
まず、コーヒーメーカーを利用していれば、メンテナンスが必要になります。たとえば、機器の洗浄(汚れ、カビなど)や、部品の交換などです。一部は顧客にやってもらうことも可能でしょうが、ある程度はメーカー側で負担せざるを得ない業務です
(顧客側が中途半端なメンテナンスを行えば、コーヒーメーカーの耐用年数が短くなり、メーカー側のコスト増にもなりえます。また、部品交換を一般的な顧客に任せるのが酷な、複雑な仕組みのマシンも多いでしょう)
次に、インスタント粉は消耗品なので、当然補充の必要があります。メーカーの担当者が補充のために巡回するコスト(人件費など)が必要でしょう(※ただし、この補充は顧客にやってもらうことも不可能ではありません。しかし、機器のメンテナンスで巡回仕手いるのであれば、その時補充するのが妥当な気もします。)。
(なお、実質的に巡回・メンテナンス費用と関連が高いと思われる項目に、営業費用・営業担当者の人件費がありますが、今回は詳細を割愛します。)
見落とし②: 既存の旧型コーヒーメーカーを置き換えることによる損失
この部分については、残念ながら言及できる方が少ない印象です。
まず、今回のフェルミ推定は、「新商品の展開」に関するものです。ビジネス的な視点(ビジネスの施策推進者の立場)で見たとき、この「新商品の展開」によって達成したいことは、当然のことですが、売上・収益の最大化になるでしょう。
コーヒーメーカーの新商品を開発・導入するにあたって、どうしても新規導入のお客さんばかりに意識が行ってしまいます。しかし、そもそも、新規のお客さんだけに限定する理由はないでしょう。既存のお客さん(自社の旧型コーヒーメーカーを導入済み)への導入検討がなされてもいいはずです。
もし、旧型コーヒーメーカーを新しく置き換えることによって収益がUPするのであれば、ビジネス的な合理性を考えたとき、コーヒーメーカーの置き換えの施策が実施されるでしょう。
ただし、コーヒーメーカーを置き換える場合には、別のコストが発生します。まず、古いマシンの原価償却が終わっていない場合、旧型コーヒーメーカーの導入費用の残りをコストとして反映する必要があるでしょう。
また、仮に減価償却が終わっていたとしても、旧型コーヒーメーカーがそのまま置かれていた場合に将来発生するはずであった利益がなくなってしまうので、その利益を新型コーヒーメーカーのコストとして反映する必要があるでしょう。
以下、上記2つの見落としについて、より詳細を考えていきます。
見落としを防ぐ考え方:巡回・メンテナンスに関わるコスト(見落とし①)
さて、少なからず、コーヒーメーカー導入場所への巡回やメンテナンスの費用を見落とす方がいますが、どうすれば防げるのでしょう。
これについては、基本的なことですが、現実のビジネスの流れを具体的にイメージするのが、最も手っ取り早いでしょう。そもそもコーヒーメーカーに関わらず、企業側から機械の導入というビジネスの流れを見たとき、「営業・商談」を経て、「機材の導入が決定」したのち、「メンテナンス・アフターサービス」の業務がないというのは考え難いです。
具体的に、消費者として家庭でコーヒーメーカーを利用する立場に立ってみても、飲食物を扱っている機材である以上、洗浄の必要性はすぐに思いつくと思います。そこから、次に洗浄は誰が実施するのかを考えれば、巡回によるメンテナンスを思いつくのは簡単でしょう。
他には、類推も有効です。身近な「マシン」として、自動車はもちろん、エアコンや掃除機であっても、メンテナンスや交換の業務が発生しているのがわかると思います。
いずれにしても、様々な視点から、「巡回・メンテナンス」の視点を思いつくことが可能であり、特に難しい思考(客観的な思考、抽象的な思考)が必要なわけでもありません。
「なんとなく考えている」といった初歩的な次元を脱しており、ある程度具体的なイメージを持って考えるクセが着いていれば、この「巡回やメンテナンスに関するコスト」に気が付くのは、それほど難しくないと思います。
見落としを防ぐ考え方:既存の旧型コーヒーメーカーを置き換えることによる損失(見落とし②)
さて、こちらについては、言及できる方が少ない印象です。(今回の例題だと、問①や問③あたりで気づいていただきたいところです。)
問題文が長いのには意味があり、追加されている要素の抽出が必要
さて、最低限、気が付いていただきたいのは、「なぜ、問題文がこのように長いのか」についてです。そもそも、今回のフェルミ推定の問題は、下記のようにシンプルに出題することができます。
例題をシンプルにしたバージョン
元の例題を分解すると、例えば、「新型コーヒーメーカーを開発」「レギュラーコーヒー並みの味に改善」といった要素が付加されて、問題文が作成されているのがわかります。なぜ、出題者はわざわざこのような要素を入れ、問題文を複雑にしているのでしょうか。以下、上記の2つの要素について、それぞれ考えてみます。
要素①: 「新型コーヒーメーカーを開発」の意味とは
まず、気が付きたいのは、「新型コーヒーメーカー」があるということは、「旧型コーヒーメーカー」も存在するということです。さらに、問題文からすでに旧型のコーヒーメーカーにてビジネスを展開していたことも読み取れます。
ビジネス上の合理性を想像すれば、旧型コーヒーメーカーの置き換えも検討が必要になる
まず、今回のフェルミ推定は、「新商品の展開」に関するものです。ビジネス的な視点(ビジネスの施策推進者の立場)で見たとき、この「新商品の展開」によって達成したいことは、当然のことですが、売上・収益の最大化になるでしょう。それを前提に考えてみます。
今回のテーマは、「新しいコーヒーメーカーの開発」とあるため、どうしても新規導入のお客さんばかりに意識が行ってしまいます。しかし、そもそも、展開先を、新規のお客さんだけに限定する理由はないでしょう。既存のお客さん(自社の旧型コーヒーメーカーを導入済み)への導入検討がなされてもいいはずです。
そもそも、新型コーヒーメーカーは、1日当たりの売上量をUPさせると考えて間違いなないでしょう。長期的な合計で見て、もし、この売上・収益の増加額が、新型コーヒーメーカーの製造費用だけでなく、途中で廃棄した旧型コーヒーメーカーの残コストを加えた額を上回るのであれば、ビジネス的な合理性を考えたとき、コーヒーメーカーの置き換えの施策が実施されるでしょう。
たとえフェルミ推定にみえたとしても、ケース面接では、なんとなく数値を置いて計算するといった、数値遊びをするのではなく、やはり上記のように、ビジネス的視点を踏まえた回答を行うことが必要です。
「新規導入」ではなく「置き換え」の場合、別の「負担や損失」が発生する
ただし、コーヒーメーカーを置き換える場合には、別の負担や損失(この先は、いったんコストと呼びます)が発生します。まず、旧型コーヒーメーカーの原価償却が終わっていない場合、この旧型の導入費用の残りを”コスト”として反映する必要があるでしょう。
また、仮に減価償却が終わっていたとしても、旧型コーヒーマシンがそのまま置かれていた場合に将来発生するはずであった利益がなくなってしまうので、その利益を新型コーヒーメーカーの”コスト”に反映する必要があるかもしれません。
今回のフェルミ推定には、2パターンの計算式が必要になる
これらの議論を踏まえたとき、どのようにフェルミ推定を実施すべきでしょうか。まず、当然ですが、「新規導入の場合の回収期間の推定」は、ベースになるものであり、必須でしょう。
一方で、「置き換え」の場合については、実際の計算を行うか否かは、面接時間によるでしょう。しかし、面接官は詳細な計算を求めていなくても、一つの視点として提示することを期待している可能性は十分にあります。そのため、まずは「置き換えの施策もあり、その場合は計算方法が異なる」という考え方や、その計算式を提示しておくのが望ましいでしょう。
要素②: 「レギュラーコーヒー並みの味に改善」の意味とは
さて、問④では、コーヒーの販売量を計算するにあたって、フェルミ推定するうえで考慮すべきことを質問しました。
このとき、ゼロから数値を積み上げで考えることは、もちろん方法の1つです。大雑把なイメージとしては、以下の3つのステップで考慮することになるでしょう。(この後の解説で何度か言及します)
・Step1: コーヒーメーカーが導入されるオフィスの社員数を仮定 ・Step2: 一人当たりのコーヒー需要量を推定(コーヒーを飲む人の割合。飲む頻度・量) ・Step3: 最終的に、競合ではなく、自社が導入したコーヒーメーカーを選択する割合(競合: 自販機コーヒー、カフェのテイクアウト、CVSコーヒー、その他SMやCVSで購入した缶コーヒー など) ※これら3つのステップの数値の掛け算が、コーヒーの販売量となります
しかし、販売量を決める1つの大きな要素である味について言及した「レギュラーコーヒー並みの味に改善」という問題文の内容を利用できていない解答は、何か重要なことを見落としている可能性が高いです。それについて、以下で考えてみましょう。
旧型コーヒーマシンの展開実績や結果があるのに、ゼロから売上を積み立てて予測するのは非合理的
ビジネスの当事者の立場で考えれば、この新型の導入可否を決定するうえで、もちろん新型コーヒーメーカーの売上予測をしたいと考えると思います。しかし、今回の場合、いきなりゼロベースで売り上げを積み上げ始めるとは思えないです
(せっかく、旧型の売上実績を持っているので、旧型のデータや知見を無視して予測するのは、非合理的です)。
まずは「旧型と比較して、どれだけ売上が伸びるか」といった検討プロセスを経て、新型の売上予測を実施するしょう。
「味の改善」は、どの部分に効果を及ぼすのか
さて、今回の例題では、旧型コーヒーメーカーのビジネスがすでに存在します。これが、新型コーヒーメーカーだと、どこに変化を及ぼすのでしょうか。
まず、新規導入か置き換えかに関わらず、当然ですが旧型コーヒーメーカーより新型コーヒーメーカーの方が、高い売上が見込める必要があります(わざわざ研究開発費を投じていますし、味が改善している以上、単純な製造原価も上がっている可能性が高いです)。
特に、コーヒーメーカーは、オフィス内という圧倒的に利便性が高い・アクセスの良い位置にあり、無料でもあります。「価格」と「利便性」で最も優っており、普段過ごしている場所の最も身近にあることから、消費者がコーヒーを飲みたいと思ったとき、最初の候補に出てくる選択肢と考えられます。しかし、それでも購入されないとなると、原因の大半は、「味」にあると想定できるでしょう。
コーヒーメーカーのこのような特性を鑑みると、新型コーヒーメーカーが味を改善したことは、販売量に大きなインパクトを与えそうです。
さて、これらのことを抑えたうえで、「レギュラーコーヒー並みの味に改善」することによって、どういうロジックで、高い売上が見込めるのか、上記の3つのステップで考えてみると、「Step3: 自社のコーヒーメーカーを選択する割合」、つまり競合から需要を奪い取る部分が、最も有効だと考えられます。
理由はいくつかあります。まず、当たり前ですが、コーヒーの味を改善しても、「社員数」は増えません。一方、「需要量」については、「潜在的な需要」を含めるか否かで変化しますが、増加するとしても「コーヒーは飲みたいが、外まで買いに行くのは面倒だし、古いコーヒーメーカーのまずいコーヒーを飲むくらいなら、飲まない方がマシ」といった方になります。
また、「自販機がオフィスにある」「昼食でオフィスの外に出ている」などの状況であれば、他の形態のコーヒーを購入する機会も十分にあるため、「需要量」に対するインパクトは限定的かと思います。
一方、今まで同様、一番身近にあり、利便性や値段で優っているのに加え、味が競合と同等になれば、基本的に競合を選択する理由はなくなるため、一部競合からは、かなりの顧客が新型コーヒーメーカーに流れてくるでしょう。
数値を計算するとき、論点を抑えた計算ロジックを組む
以上の様に、「レギュラーコーヒー並みの味に改善」という部分は、「自社のコーヒーメーカーを選択する割合」という競合視点の部分に最も効いてきます。まず、当然そのことについて言及があってしかるべきです。
そして、議論に費やす時間や労力のバランスも重要です。今回の場合、わざわざ「レギュラーコーヒー並みの味に改善」と問題文に明示されている以上、面接官が競合比較についてじっくり考え方を見たいと考えている可能性は高いです。そのため、他の2ステップと比較して、この「自社のコーヒーメーカーを選択する割合」の部分にて、十分な議論を実施すべきでしょう。
具体的な議論内容としては、まず当然ですが、自社選択率なので、まず競合比較が重要になります。ということは、競合の洗い出しがまず必要でしょう。今回の場合、どこまで広く考えるかによりますが、「自販機コーヒー、カフェのテイクアウト、CVSコーヒー、その他SMやCVSで購入した缶コーヒー」など、様々な競合が想定されます。
次に、自社のコーヒーメーカーとこれらの競合の強みと弱みを比較検討する必要があります。自社については、新型と旧型の両方のコーヒーマシンを比較対象に入れる必要があるでしょう。それらを踏まえると、旧型から新型になることで、どの競合から顧客を奪うことができるか(どの程度の割合の顧客を奪えそうか)、想定できるはずです。そうなれば、最後に現状の競合の売上規模を出せば、売上増加額が計算できることになります。
フェルミ推定もビジネスケースも、論点特定の重要性や、論点の中身に大きな違いはない
以上の様に、形式的にはフェルミ推定ではあるものの、問題文の要素である「レギュラーコーヒー並みの味に改善」という条件を考えると、ケース問題に近いと言えます。例えば、「売上向上のケース問題における、打ち手のインパクト測定のステップ」が近いでしょう。
また、ケース問題を定量的に実施すれば、「客数と客単価のどちらに施策を打つべきか」といった形で、それぞれの数値を意識しながら打ち手を考えるはずです。今回のフェルミ推定は、ケース問題に置き換えると、打ち手が先に提示されており、その妥当性を検証するバージョンとも言えそうです。
いずれにしても、数値の計算だけではなく、どう考えるか(視点、論点など)が重要ですので、ケース問題と同等の心構えやアプローチで実施するのが望ましいです。
フェルミ推定の解答の妥当性検証
最終的にフェルミ推定によって算出された耐用年数の妥当性を、どう判断すべきでしょうか。
まず、当然ですが、機械には耐用年数があります。おそらく現実的には、数年程度でコストを回収できない(収支がプラスにならない)のであれば、導入は困難でしょう。「何年までであれば、事業として成り立つか」という年数をまず初めに提示・議論し、そのあとに、計算結果がそれに見合っているかを比較する必要があります。 さて、それに加えて、今回の場合、重要な視点が2つあると想定されます。
視点①: 「置き換え」の場合、どの程度古いマシンであれば、置き換えるべきか。
さて、新規導入の是非はすでに判断されていますが、「置き換え」の場合はどうでしょうか。
まず、紙面だと解説が複雑になるため、議論を簡略化させていただきます。仮に、投資回収期間の上限が5年であると仮定しましょう。
新規導入のコスト回収期間が1年などの短い値の場合、置き換えであったとしてもせいぜいその倍(2年)程度かと思われるため、「既存の旧型コーヒーメーカーも、全て順次置き換え」という結論に落ち着く可能性も高いでしょう。
一方、新規導入のコスト回収期間が4年などの場合、置き換えは限定的になりそうです。もちろん、「顧客満足度」や「ブランド・味のイメージ」など長期的な影響項目を考慮する必要があるため、多少収益が下がっても早めに置き換えるという判断もあり得るでしょうが、ある程度、置き換え対象について、条件を付けざるを得ないでしょう(このような長期的な影響項目を、しっかり提示できることも重要です)。
視点②:旧型コーヒーメーカーの耐用年数と、矛盾が発生しないか
こちらも、紙面だと解説が難しいため、いったん解説を簡略化させてください。
例えば、新型コーヒーメーカーの(製造)コストを、旧型コーヒーメーカーの1.2倍だと仮定します。また、「レギュラーコーヒー並みの味に改善」したことによって、売上が大幅増加し、1.5倍になると推定したとしましょう。それによって、製造コストの回収期間が10年と推定され、「回収期間が長すぎるため、ビジネスとして成り立たない」と言われたらどう感じるでしょうか。
(簡略化のため、コストは「コーヒーメーカーの製造費用」のみとして考えてください)
このとき、旧型コーヒーメーカーの収益について、考えを及ぼす必要があります。一応、旧型コーヒーメーカーのビジネスが継続されている以上、収益は「黒字」か、最悪でも「少しだけ赤字」といった可能性が高いでしょう。
しかし、上記の例だと、新型コーヒーメーカーはコスト増加よりも売上(利益)増加のほうが大きいため、回収期間が旧型コーヒーメーカーより小さくなっているはずです(旧型の回収期間は、新型より長い、10年以上となります)。
仮に、視点①の解説と同様、投資回収期間の上限を5年と考えていた場合、旧型コーヒーメーカーは、想定を大きく下回る売上しかあげていないことになります(現実的には、メンテナンスや巡回費用など、売上への依存が小さい様々なコストがあるため、旧型コーヒーメーカーのビジネスは大赤字で進められている可能性が高いことになります)。
こうなると、根本的な前提の数値や計算方法が、少しおかしいような気がしなくもありません。基本的には、どこか前提や計算方法が妥当ではないことを疑い、計算内容を検証したほうが良いでしょう。(もちろん、大赤字のビジネスである可能性がないわけではありません。しかし、その場合は、若干不自然な仮定ではあるので、その仮定自身や、この「視点②」で解説した内容に対して、多少なりとも言及すべきでしょう)
本コラムのまとめ
今回は、面接官の出題意図を探りながら、問題の重要論点を洗い出しつつ、議論のプロセス上の様々なステップにおける考え方について解説しました。
まず、現状を把握するうえで、見落としがちなポイントを確認しました。巡回・メンテナンスのコストは、以前のコラムでも解説した通り、具体的に考えるクセがついていれば、比較的簡単に想起できると思われます。
一方、新規導入ではなく、旧型コーヒーメーカーを置き換える場合の追加負担や損失は、「新商品の展開を検討するときの、ビジネス上の合理性・目的や、具体的な展開業務上の検討内容やプロセス」を考えれば当然必要な視点でした。その意味で、フェルミ推定であっても、通常のケース問題と同様に、ビジネス的視点で、視野を広げることや論点の特定を行うことが必要です。
今回の問題は、要素「新しいコーヒーメーカーを開発」「レギュラーコーヒー並みの味に改善」に気づいており、それを踏まえた考え方をできたか否かが、一つ重要なポイントになりました。これらの2要素は、問題文内に記述されており、「事前知識」「たまたま思いついた」という部分による差は生じにくくなっているため、確実に抑えたいところです。