プロダクトマネージャー(PM)は、UX(ユーザー体験)、エンジニアリング、ビジネスなど幅広い領域に関わりつつ重責を負います。この職種は、近年IT業界を中心に注目度が高まっていますが、企業によって担う役目が微妙に異なり、業務の範囲も広いことから、理解が難しいと感じる人も多いかもしれません。
今回は、Liigaの姉妹サービス・外資就活ドットコムが発信する特集「一流のプロダクトマネージャー」(全9回)の内容を基に、PMについて紹介します。
メルカリのPMが感じる、プロダクトマネジメントの難しさ
メルカリの米国法人でPMを務める栗林フリッツ幹雄さんは、PMを「他者から信頼を得る力、要は人としての魅力みたいなものも求められる仕事」と評します。PMは、エンジニアやデザイナーほどの専門性がない中で彼らをリードして、プロダクトを成功に導かなければならないからです。
注目が集まる立場であるものの、周りのプロフェッショナルがいないと仕事が成り立たないため、栗林さんはPMを「オーケストラの指揮者みたいな存在」と例えます。
エンジニアやデザイナーをリスペクトしつつも、時には反論もしながらリードしなければいけない点が、難しいようです。
栗林さんへのインタビューは、特集「一流のプロダクトマネージャー」第1回で読むことができます。
シリコンバレーを渡り歩いてたどり着いた、PMの本質
Meta(旧Facebook)の本社やAnchorFreeでPMを担うなど、10年以上シリコンバレーのTech系企業に勤めてきた河根拓文さんは、PMの本質的な部分は「ユーザーに他社が提供できない価値をもたらした上で、事業体が収益を得られるように導いていく。そのために、やるべきことは全てやる」こととしています。
河根さんはPMとして、以下の4つに時間を割くことが多いそうです。
・UXの設計と実現のための要件出し ・市場で勝つための戦略の構築と伝達 ・市場のトレンドや競合の動向など外部環境の理解 ・業務プロセスの作成や役割分担の決定といったチームマネジメント業務
「例えば、戦略が不十分ならそれを考えますし、リソースに制約があるなら最適な配分を検討します」という彼の言葉から、プロダクトの成功のためにあらゆる役目を担っていることがうかがえます。
河根さんへのインタビューは、特集「一流のプロダクトマネージャー」第2回で読むことができます。
PMの悩みどころ3選
Amazonの本社などでPMを経験してきたゆうさん(*1)は、PMが悩みがちなこととして「なんでも任される」「板挟みになる」「権限はないのに責任がのしかかる」ことを挙げています。
*1 ハンドルネーム
PMの仕事内容は多岐にわたり、業務範囲があいまいな面もあるため、やる人がいない仕事などはPMに回ってくることが多いようです。加えて、経営陣やユーザーなど異なるステークホルダーの間で板挟みになることもあると、ゆうさんは述べます。
またPMは職種であり職階ではないため、人事権を持たないことも多く、それによる難しさもあるようです。
ゆうさんの寄稿記事は、特集「一流のプロダクトマネージャー」第3回で読むことができます。
メガベンチャーとスタートアップのPMは、どう違う!?
新卒入社したメルカリと、stand.fmというスタートアップでPMを務めた中島功之祐さんは、2021年にAnyReachを創業しました。
メルカリ時代とstand.fm時代のPMの違いについて、中島さんは次のように述べています。
「在籍当時のメルカリにはPMが数多くいて、さまざまなタイプのPMを見て学ぶことができ、ロールモデルを探せました。それに、しっかりと教えてもらえたので、新しいメンバーにものごとを教える時などにも経験が生きています」
「stand.fmは資金が潤沢ではなく、プロダクトのグロースもまだまだだったので、一機能のプロダクトマネジメントに携わっていたメルカリ時代とは、脳を使う範囲が全然違いました。たとえば、stand.fmの場合、魅力的なコンテンツを発信するインフルエンサーを呼び込めれば、新機能を開発しなくても数字が伸びるんです(*2)。プロダクトを成長させるために全方位的に動くことの大切さを学べました」
*2 stand.fmは、タレントなどのインフルエンサーが音声配信を行う同名のプラットフォームを運営
中島さんはこれら2つの経験を生かしつつ、AnyReachを成長させています。
中島さんへのインタビューは、特集「一流のプロダクトマネージャー」第5回で読むことができます。
PMに必要なマインドセットとスキルセット
かつてメルカリやエクサウィザーズに所属し、現在はWeb3系スタートアップのGaudiyでPMを務める宮田大督さんは、基本的にどの企業でもPMが求められるマインドセットは同じだと述べています。
そのマインドセットとは、プロダクトマネジメントの先にある「アウトカム」(=成果)を絶えず意識すること。機能などを形にする「アウトプット」の行為で満足しないことが、大事だといいます。
一方、求められるスキルセットは事業のフェーズによって異なるようです。宮田さんいわく「0→1」フェーズで生きるのは、仮説検証を繰り返し数少ない正解を見つける力で、「10→100」フェーズで必要なのは多くの施策を実行して成長を加速させる力。Gaudiyでは、「0→1」フェーズのプロダクトマネジメントに向き合っているといいます。
宮田さんへのインタビューは、特集「一流のプロダクトマネージャー」第6回で読むことができます。
外資就活ドットコムの特集「一流のプロダクトマネージャー」を基に、PMの仕事内容などについて記しました。この特集には上記の記事に加え、Google出身でTHECOOのPMを経験した星川隼一さん、LINEヤフーの新卒6年目でPMを務める寶野結斗さんへのインタビューなども盛り込んでいます。PMという注目の職種に興味を抱く人にとって、参考になるはずです。