プロダクトマネージャーを目指す上でIT系資格があれば、昇進や転職で知識・技能の証明になります。また資格取得で得た知識は、実際の業務でも役立ちます。
ここでは6つのIT系国家資格について難易度や合格率、学習時間の目安をご紹介します。
プロダクトマネージャーに資格は必要?
プロダクトマージャ―(PdM)になるのに、必要な資格はありません。素養と実力があれば、誰でもその職に就くことは可能です。
ただしプロダクトマネージャーとして活躍するには、幅広い知識と技能が必要です。その上で、資格取得は有用と言えます。また、資格が昇進や転職の場面で役立つ可能性も充分にあります。
プロダクトマネージャーのおすすめ資格一覧
プロダクトマネージャーを目指す人におすすめの資格を、以下に一覧でまとめました。いずれもIT系の国家資格です。
番号 | 資格(試験)の名称 | ITスキル水準 難易度 |
合格率 | 学習時間の目安 |
---|---|---|---|---|
① | ITパスポート試験 | レベル1 初心者向け |
約50% | 150時間 |
② | 基本情報技術者試験 | レベル2 初心者向け |
約40~45% | 200時間 |
③ | 応用情報技術者試験 | レベル3 中級者向け |
約20~25% | 200~500時間 |
④ | ITストラテジスト試験 | レベル4 中級者向け |
約15% | 200時間 |
⑤ | システムアーキテクト試験 | レベル4 中級者向け |
約15% | 100~200時間 |
⑥ | プロジェクトマネージャ試験 | レベル4 中級者向け |
約12~15% | 50~300時間 |
最終的に取得をお勧めしたいのは、④〜⑥の資格です。
ただし「IT系の知識が全くない」という場合は、まず①や②の資格取得から目指すと良いでしょう。
ITスキル水準とは
ITスキル水準(ITSS:IT Skill Standard)とは、IT関連サービスの提供に必要な能力を明確化・体系化した指標です。経済産業省によって策定され、現在は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって管理されています。
レベルは1〜7まであり、レベル4以上の資格を有していると特に評価されやすいです。
そもそもプロダクトマネージャーとは
プロダクトマネージャー(PdM)とは、プロダクトに対する全体責任や最終決定権を持つ仕事です。
戦略や投資判断などの上流工程からブランド管理やプロモーションなどの下流工程までを管理し、担当するプロダクトの利益の最大化を目指します。
「プロダクト」は、従来は形ある商品・製品を指す言葉でした。しかし最近ではサブスクリプションサービスやソフトウェアなど、「形のないもの」もプロダクトとして扱われます。
プロダクトマネージャーはIT業界に多い職種で、こうした形のない商品を扱うことが多いです。
求められる知識やスキル
先にご紹介したように、プロダクトマネージャーはプロダクトの企画から運用、品質改善まで全体的な管理を行います。そのため、以下のように様々な知識とスキルが必要です。
《必要な知識》
- マーケティング知識
- マネジメント知識
- プロダクトに関する技術的な知識
- UXデザインに関する知識など
《必要なスキル》
- 理解力・思考力・課題解決能力
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力など
知識では、特にIT系の知識が重要と言えます。現状としてプロダクトマネージャーはIT業界に多い職種であり、管理するプロダクトが「システム」や「ソフトウェア」であることが多いからです。
IT業界以外でも、現在は殆どの企業でウェブマーケティングを取り入れています。そのためプロダクトマネージャーを目指すのであれば、最低限のIT知識を身に付けておきましょう。
プロダクトマネージャーの仕事や必要なスキルの詳細は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
【関連記事】プロダクトマネージャーとは?仕事内容、年収、必要なスキルなど
社内で関連の経験を積むことも重要
プロダクトマネージャーを目指すのであれば、知識の習得だけでなく、業務に関連した経験を積むことも重要です。例えば以下のような経験があると、人事異動や転職においても有利に働きやすいです。
- 市場調査やデータ分析
- プロダクト開発
- UX/UIデザイン
- プロジェクトマネジメント
- 経営企画
プロダクトマネージャーは、マーケティングやCRM、エンジニアなど様々なキャリアから目指すことができます。だからこそ、まずは「自分の部署で携われる関連業務はないか」「関連業務に携わることができ、かつ異動しやすい部署はないか」など、自社内で経験を積むことを検討してみましょう。
おすすめ資格一覧(6選)の詳細
プロダクトマネージャーを目指す人におすすめの資格として、ここではIT知識・技能を証明できる6つの国家資格をご紹介します。
①ITパスポート試験
【資格概要】
- 社会人全般に必要なITの基礎知識を証明できる資格
- 出題形式:四肢択一式
- 試験時間:120分
- 合格率:約50%
- 学習時間の目安:150時間
ITパスポートは、「ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべきITに関する基礎的な知識」を証明する資格です。ITに関する知識だけでなく、企業活動や法務、経営戦略マネジメント、プロジェクトマネジメントなど幅広い分野に関する基礎知識が問われます。
ITパスポート自体は、「プロダクトマネージャーへの昇進や転職で役立つ資格」とは言えません。しかしIT知識ゼロの状態から学習するのであれば、基礎を身に付ける上で有用な資格です。試験はCBT方式で随時実施されています。
②基本情報技術者試験
【資格概要】
- ITエンジニアに必要な基礎的な知識・技能を証明できる資格
- 出題形式:四肢択一式、多肢択一式
- 試験時間:計190分(2部構成)
- 合格率:約40~45%
- 学習時間の目安:200時間
基礎情報技術者試験は、エンジニアを対象にした国家試験です。ITを活用した戦略立案、システムの企画・要件定義、設計・開発・運用に関する知識を身に付けることができます。またプログラミングの基礎問題なども含まれ、ITパスポート試験より専門的かつ実践的な内容です。
2023年度からCBT方式での試験となり、試験時間や問題数が改定されました。これにより合格率は上昇傾向にあります。試験は科目Aと科目Bに分けられており、科目Bではアルゴリズムとプログラミングを中心とした実践的内容が問われます。
③応用情報技術者試験
【資格概要】
- 「ワンランク上のITエンジニア」であることを証明できる資格
- 出題形式:四肢択一式、記述式
- 試験時間:計300分(2部構成)
- 合格率:約20~25%
- 学習時間の目安:200~500時間
基本情報技術者試験よりも一歩進んだ、応用的な知識や技能を問う試験です。「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野から出題され、取得すれば「ワンランク上のITエンジニア」としての証明になります。
基本情報技術者試験に合格した上で資格取得に臨む人が多く、この場合の学習時間の目安は200時間ほどです。試験は春と秋の年2回実施されています。
④ITストラテジスト試験
【資格概要】
- ITを活かした事業・業務改善や戦略立案を行う高度な知識・技能を証明できる資格
- 出題形式:四肢択一式、記述式、論述式
- 試験時間:計300分(4部構成)
- 合格率:約15%
- 学習時間の目安:200時間
ITストラテジスト試験は、ITを活用した「戦略・計画(strategy)」立案や企画の提案・推進に必要な知識と技能を問う試験です。CIOやCTO、ITコンサルタントを目指す人などに受験が推奨されており、IT知識だけでなく経営戦略に関する深い知識も求められます。また近年は、DXに関する出題も多いです。
情報処理技術者試験の中でも「最も難度の高い試験の一つ」と言われ、合格率も低いです。しかし、この資格を取得していればプロダクトマネージャーを目指す上で大きな強みになります。
試験は年に一度、4月に実施されます。論述式の問題もあるので、国語力も鍛えましょう。
システムアーキテクト試験
【資格概要】
- システム開発の上流工程を主導するための高度な知識・技能を証明できる資格
- 出題形式:四肢択一式、記述式、論述式
- 試験時間:計300分(4部構成)
- 合格率:約15%
- 学習時間の目安:100~200時間
システムアーキテクト試験は、システム開発の要件を定義し、システム設計を担うための知識・技能を問う試験です。アーキテクト(architect)は英語で「建築家、設計者」を意味します。システム開発の中でも上流工程に携わるために重要な資格です。
ITストラテジストと同じく情報処理技術者試験の中で「最も難度が高い」と言われる試験の一つであり、経営戦略に関する内容も問われます。また論述式の問題がある点も、ITストラテジスト試験と共通しています。試験は年に一度、4月に実施されます。
⑥プロジェクトマネージャ試験
【資格概要】
- プロジェクト管理に必要な知識や実践能力を証明できる資格
- 出題形式:四肢択一式、記述式、論述式
- 試験時間:計300分(4部構成)
- 合格率:約15%
- 学習時間の目安:50~300時間
プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクト管理に必要な知識・技能とともに、システム企画や開発技術などのIT知識、法務知識などが問われる試験です。
プロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーは別物ですが、マネジメントを担う点は共通しています。また業務の中でプロジェクトマネージャーと協働する機会も多いので、その業務内容を知る上でも取得をお勧めします。
試験は毎年秋に行われます。プロジェクトマネージャーとしての実務経験があれば、少ない学習時間でも合格しやすいでしょう。
Q. その他の認定資格を取る必要はある?
アメリカなどでは、民間団体が提供するプロダクトマネージャーの専門資格があります。またGoogleやAmazonも、自社サービスに関するプロダクトマネージャーの認定資格を設けています。
これらの資格を取得すれば、プロダクトマネージャーとして働く上で必要な知識を多く取り入れることができるでしょう。しかし認知度の高さを考えると、今回ご紹介したIT系資格を取得する方が昇進や転職での効果が高いと考えられます。
Q. 仕事と学習を両立するためのポイントは?
プロダクトマネージャーを目指す人の中には、働きながら資格取得を目指す人も多くいるでしょう。仕事と学習の両立は、簡単ではありません。しかし以下の3つのポイントを押さえて取り組むと、計画的に学習を進めやすいです。
- 取得までの具体的なスケジュールを立てる
- 予備日を取りながら、毎日少しずつ学習に取り組む
- 通勤時間などの隙間時間を活用する
学習ポイントの詳細は以下の記事でご紹介していますので、併せてチェックしてみてください。
【関連記事】働きながら取れるオススメ資格一覧|難易度や学習時間の目安付きプロダクトマネージャーを目指す上での注意点
プロダクトマネージャーには多くの知識・技能が必要であり、その点で資格取得はおすすめです。しかし資格は「自分に付加価値を付ける手段」であり、取得したからと言って将来を確約するものではありません。プロダクトマネージャーを目指す上では、業界選びや実務経験も重要です。
業界選びは非常に重要
プロダクトマネージャーを目指すのであれば、まずIT業界に入ることをお勧めします。何度もご紹介しているように、プロダクトマネージャーはIT業界に多い職種であり、他の業界ではこうしたポジションが用意されていないことも多いからです。
「IT業界の経験もプロダクトマネージャーの経験もない」という場合も、諦める必要はありません。まずは他のポジションで転職し、その後経験を積んでプロダクトマネージャーを目指す方法があります。
応募する企業・ポジションに迷ったら、転職エージェントに相談してみても良いでしょう。IT業界に詳しいエージェントなら、プロダクトマネージャー職のある企業の求人を紹介してくれる可能性も高いです。
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実務経験があると理想的
昇進・転職のどちらでプロダクトマネージャーを目指すにしても、資格に加えて実務経験があることが望ましいです。例えば転職の求人では、以下のような経験を応募の必須条件や歓迎条件としているケースが多くあります。
- システムの企画立案や要件定義の経験
- プロダクト開発やシステム開発の経験
- プロジェクトマネージャーとしての勤務経験
- Webディレクターとしての勤務経験
- エンジニアやUI/UXデザイナーとしての勤務経験
また上記の他にも、コンサルティングファームでチームを率いた経験などを評価する企業もあります。
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まずは情報収集と自分の市場価値の確認を
プロダクトマネージャーを目指す上では、資格取得の他にも幅広い知識などを得ることが重要です。また求人で具体的な応募条件を見たり、現在の自分の市場価値を確かめたりすれば、将来に向けた具体的な目標を定めることができます。
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