大手メーカーから外資系コンサルタントへ。激務にくらいついた2年―私はこうしてコンサル業界へ転職した
2016/09/20
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はじめに

未経験でコンサル業界に飛び込む人は近年増えつつあります。今回は日系メーカーの営業職からITコンサルに転職したK氏にインタビューを行いました。ぜひご覧ください。

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【目次】
・刺激のなかったメーカー営業。激務友人に焦る
・入社1ヶ月でクビ宣告?!深夜3時までバリュー出しに苦闘
・コンサルタントに転職してポータブルスキルが身についた

刺激のなかったメーカー営業。激務友人に焦る

ーーKさんの簡単な経歴、転職を考えたきっかけを教えていただいてよろしいでしょうか?

K氏:私立大学の文系学部を卒業後、化学メーカーに新卒で就職をし、4年ほどルート営業を担当していました。精密機械をクライアントの購買部や資材調達部といったところに売ることがメイン業務になります。

お客さまに褒められたり、認められたりするのは喜びでしたが、毎日19時に帰れるような環境で、とにかく暇でした。営業と言っても厳しいノルマが課されているわけではなく、目標を超えたからといってインセンティブがあるわけでもありません。

20代も後半にさしかかり、もっと刺激的なキャリアを歩みたいと思い、転職をぼんやりと意識することに。メーカー時代は、専門的なスキルが身についていた実感はありません。また大学時代の友人がとにかく激務だということを言っていたので、正直焦りもありました。もしかしたら彼らは単純作業で激務だったのかもしれませんが、「労働時間が短い=成長できていない」という短絡的な思いもあり、もっと働ける環境で、スピーディーに仕事を進める経験がしたいと考えました。

ーーもしメーカーに残っていた場合、キャリアパスはどうなっていくのでしょうか?

K氏:私のいた会社だと3年目で主任、マネジャークラスは30代後半、50代になって部長という感じでした。マネジャークラスまではほぼ横並びで出世できるので、出世競争にガツガツしている人もあまりいませんでした。一方、大量採用の会社ではなかったので、全員が役員になれるチャンスはあったものの、管理職までの昇進に時間がかかってしまう点が、自分にとっては不満でした。

ーー転職活動はどのような形で行ったのですか?

K氏:まず大手の転職エージェントに会い、一通りやり方を教わった上、履歴書の添削も行ってもらいました。その後、どういった会社がいいか考えはじめた矢先、たまたまホームページで目にしたコンサルティングファームに中途採用の募集が掲載されていたので、ホームページから直接エントリーしました。性格的にきちんと対策をするタイプだったので、入念に調べて選考に臨みました。

ーーなぜコンサルティング業界を受けたのですか?

もともとコンサル業界に興味はあったのですが、学生時代に受けそびれてしまったのです。転職のときに、改めてコンサル業界を調べたら、若いうちから大きなプロジェクトができ、成長スピードが早そうだったため、受けてみたくなりました。

ーー選考はいかがでしたか?

K氏:通常の面接とケース面接がありました。大学では英語系を専攻しており、留学経験もあったため、英語に関しては問題ないと判断されていたようで、それについての課題はありませんでした。ケース面接はあまり自信がなかったため、市販の本を読んで対策を行いました。「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」といったお題が書いてある本を一冊読んで対策をしました。

ケース面接のできは正直全く自信がなかったです。しかしメーカーでの経験と、 持ち前の細やかなコミュニケーション対応力を評価されて、無事面接は合格。実質、選考を受けたのはいま働いている外資コンサル1社だけだったので、1社目で受かってラッキーでした。年収も200万円ほど前職より上がり金銭的にも満足のいく形で転職活動を終了させることができました。当時は、コンサルティングファーム業界全体で採用を強化しており、比較的簡単に面接が通ったような気がします。

ーー多くの方が通るということは、コンサルとして活躍できない方もいるのでしょうか?

K氏:います。事業会社から来た人に往々にして見られるのが、エクセルやパワーポイントといったOAスキルの欠如です。ピボットテーブルや簡単なif関数のレベルでつまずいて仕事にならない人もいました。ここらへん猛烈なスピードでこなせることは、コンサルとして働く上での基本的条件となります。

このような基本的素養を上司が教えてくれるわけはなく、自ら学べない人はドロップアウトしていきました。また、指示待ち系の人も活躍できないことが多かったです。簡単な指示は上司から出るものの、細かい内容は自ら考えて行動していかなければいけないので、できない人はコンサルとしての適性がないとみなされ、会社を去っていきました。

入社1ヶ月でクビ宣告?!深夜3時までバリュー出しに苦闘

ーー転職されてみて、ギャップはありましたか?

K氏:大きかったですね。転職前はどのインダストリーでもよいと思っていたので、何でもやりますというスタンスでしたが、入社してみるとIT関連のプロジェクトを任されることになったのですね。前職メーカーとは業界が大きく異なるため、さすがに面食らいました。

ーーそれはとても大変ですね。

K氏:覚悟はしていたのですが、想像以上の激務で最初の10ヶ月は土日も働いていました。不明なことだらけだったので、IT用語の学習をはじめ必死で案件に食らいつき、死にものぐるいで頑張りました。もともとワークライフバランスは気にしないタイプでしたが、体力的にも精神的にも苦しい時期が続きました。

そういった中、少しずつ自分の力がついていったのか、お客さまに対してバリューを出していけるのを実感するようになります。サプライチェーン関係のプロジェクトにアサインされたときは、メーカーで得た経験とコンサルで身についた能力をかけあわせることで、独自の価値を出せるようになりました。最初からバックグラウンドを活かした業務をしていたら、現在のレベルには到達していなかったと思います。絶妙なプロジェクトアサインをしてくれた会社には感謝ですね。

2年目以降は業務スピードも上がったことで、遅くとも22時には帰宅しており、また土日に働くことは減少しました。コンサルタントとして着実に成長できている実感を持てています。

ーーITコンサルタントというのは具体的にどういうことをするのでしょうか?

K氏:業務効率化を主目的としたシステム導入ですね。導入だけなら難しくはないのですが、使うのが人間であることが最大の難点です。利用者には50代、60代のメンバーを始め、ITリテラシーの高くない層が一定以上いるわけで、彼らに向けた仕様設計、UI/UX設計、マニュアル制作にとても悩みました。

一部ではエクセル機能から説明するいけないときがあり、「グループ化とは~という意味です」というレベルまで落とし込んでマニュアルを作ったりしたものです。地味な作業の連続ですね笑

納期がありますので、どこまで改善すべきかについての肌感をつかむまで、時間がかかりました。「もっとあそこは改善できたな~」と思うこともしばしば。納品後、上司が定期的にお客さまのところを訪問していますが、今のところ問題は起きていないようでほっとしています。

ーー1番辛かったことは何でしたか?

K氏:入社1ヶ月目に全くバリューが出せていないと判断され、上司からの面談でクビに近いことを言われたことです。頑張りが足りないのではないかと猛省し、午前3時くらいまで働いて自分のバリューを出すようにしました。労働時間が本質的というわけではないのですが、他メンバーの能力にキャッチアップするのは時間を増やす以外にありません。

また1か月で大体10-20冊の専門書を読み、足りない知識をインプットしました。またクビ宣告をしてきた上司が1か月後に退職し、入ってまもない私に責任が乗ってきたのも辛かったですね。

ーー3時とは非常に遅いですね。チームの方もみなそれくらい働いていたんですか?

K氏:当時、上司のマネジャー含めみんな働いていましたね。倒れるまで働いて、倒れたら少しだけ休んでまた仕事という感じでした。マネジャーは働きすぎて、育児をせず、奥さんが体調を崩してしまうなんてこともあったようです。みな何か、ストレス性の病気になっていました。とても不健康なチームでしたね笑

今はだいぶ改善されてきましたが、人手が足りないときはこういった働き方を余儀なくされたので辛かったです。クライアントの業務効率化するのが仕事ですから、自らの進め方についてはかなり効率化していたはずなのですが、今ふりかえっても限界まで頑張っていたと思うので、リソース考えず案件とりすぎて労働力不足になるような状況は、正直やめてほしいですね。

ーーそのような状況になると、転職を後悔することはありませんでしたか?

K氏:後悔したことは一度もありません。19時に帰るより3時まで働き、それが成果となってお金をもらうことの喜びは、何にも代えがたいものでした。私にとって、この決断は大正解だったと思っています。

コンサルタントに転職してポータブルスキルが身についた

ーーコンサルタントに転職してよかったことはなんでしょうか?

K氏:2つあります。1点目は仕事のバラエティが豊かで、毎度エキサイティングであること。さまざまな業界での多様な案件に携われ、とても困難な課題をチームで解きほぐし、ソリューションにつなげていくことに、知的ドーパミンを感じることができます。2点目は、具体的なスキルが身につくことです。ITプロジェクトを通じて、システムまわりのことは一通り把握できましたし、この知識は他社でも十分通じる知識・スキルだと考えています。

前職メーカーでは、社内でしか通用しない知識ばかり身について、このまま部長や役員を目指して本当に大丈夫だろうかと思ったことがありました。現在のシャープみたく、会社が苦境に陥って放出されたときに、他社で通じるスキルが果たしてあるのだろうかと。

その点、コンサルタントは知識、スキルが身につくので働いていて大きなやり甲斐を感じます。

ーー転職活動を振り返っていかがでしょう?

K氏:間違いなく人生のターニングポイントになったと思います。全く異なる環境に飛び込み、価値を出すということは想像以上に難しかったですが、価値を出そうと毎日工夫し続けることで成長が見えてくるものだと思います。

転職活動のやり方は千差万別だと思いますが、書籍・インターネット等で業界・会社についての知見を得た上で、自らのキャリア仮説をぼんやり考えてみたら、実際に会社を受けにいってみるのもいいと思います。面接を通して会社を理解できると私は思っているので、迷っているなら積極的に第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?私の転職活動はその一歩を踏み出したところからはじまったと思います。

ーー今後のキャリアプランを教えてください。

K氏:まもなくマネジャーに昇格するので、プロジェクトをマネジメントする立場を経験したいです。コンサルタントとして活躍した後については、改めてメーカーに戻りたいと考えています。

よく、コンサルタントの方で、国内製造業を立て直すためにコンサルをしていると言っている方がいますが、私は、その言説に否定的です。メーカー内で事業を作る立場でないと、世界を席巻できるような製品はできないと思っており、私はそれにチャレンジしていきたいと思っています。コンサルタントで身につけた高い視座を持って、再度メーカーでグローバル製品を生み出していきたいと考えています。

おわりに

いかがでしたでしょうか?異業種からの転職での苦労が垣間見えたと思います。しかしながら、努力を重ねることで、これまでには見えなかったものが見えるようになっていくのだと思います。

コラム作成者
Liiga編集部
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