「戦略コンサル・外銀出身者でも、内定は一握り」外資系PEファンドの中の人が語る、PEファンドに受かる人・落ちる人
2019/10/25
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投資銀行や戦略コンサルティングファーム出身者のネクストキャリアとして人気のPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)。しかし、PEファンドの選考難易度は高く、投資銀行や戦略コンサル出身者でもオファーをもらうのは至難のわざです。

そこで今回は、20代で投資銀行から外資系PEファンドへの転職に成功した東さん(仮名)に、「PEファンドに受かる人・落ちる人の特徴」や「PEファンドの選考内容や選考のポイント」について詳しくお聞きしました。



【目次】
・PEファンドは、戦略コンサル・投資銀行出身者でも狭き門
・若すぎても、歳を取りすぎてもダメ。スイートスポットは30歳前後
・キャリアで劣るジュニアクラスは「心意気」で勝負せよ
・選考内容は、四季報を渡して「あなたはこの会社に投資しますか?」
・PEファンドに強い転職エージェントを探せ

PEファンドは、戦略コンサル・投資銀行出身者でも狭き門

ーー現在のご経歴について教えていただけますか。

東さん:私は3年前に投資銀行から外資系PEファンドに移ってきました。現在はアソシエイトとしてソーシングから投資検討、バリューアップと一連の業務に従事しております。

ーーPEファンドには、主にどのようなバックグラウンドの方が入社していますか。

東さん:私の主観ですが、そもそもPEファンドの仕事は、投資銀行と戦略コンサル、両方のスキルを必要とする仕事です。そのため新しく採用する方は、投資銀行か戦略コンサルどちらかの出身であり、かつ、両方の仕事をこなせる「素養」があることが必須ではないかと思います。

よく投資銀行と戦略コンサルどちらからだと入りやすいかという質問を受けますが、どちらにいると必ず入れるという「絶対解」はないというのが個人的な印象ですね。

ーー戦略コンサル・投資銀行出身者以外で採用される人はいるのでしょうか。

東さん:私は実際にお目にかかったことはありませんね。

ーー戦略コンサル・投資銀行の中でもトップ企業にいる方でないとPEファンドには中々入れないイメージがありますが、実際はどうでしょうか。

東さん:確かに、実際に選考に残る方は、MBB(McKinsey・BCG・Bain)や、外銀のトップティア(Goldman・Morgan Stanley・JP Morgan・BofA)の出身者が多いですね。

その理由は、PEファンドは全社員合わせても数人から最大数十人程度の少数精鋭の組織だからです。もし、たった1人の採用でも失敗するとインパクトが大きいので、慎重になっているのだと思います。やはり新卒で厳しい選考を突破してトップ企業に入れたということは、その実力が証明されています。そのため、それ以外の方はレジュメや面接でふるいにかけられてしまっているのでしょう。

ーートップ企業以外に今いる方は、どうすればよいですか。

東さん:もちろんトップ企業出身者でなくても、入社できる可能性はゼロではなく、面接の中で挽回可能です。外資のPEファンドでも、トップ企業以外の出身者の方は、何人か知っています。ただ、競争率の高さから最初のES(レジュメ)で落ちる可能性が高いので、ESが勝負です。

若すぎても、歳を取りすぎてもダメ。スイートスポットは30歳前後

ーーESの選考倍率はどれくらいですか。

東さん:かなりESで落ちる、と考えてよいと思います。また、若ければ若いほど、落ちると考えていいと思います。PEファンド・アソシエイトの同じ椅子を、30歳VPクラスの方と争っているからです。当然、アナリストなどのジュニアクラスの方ほど合格率は下がるのではというのが個人的な感覚です。

ーー入社する上で年齢の目安などはありますか。

東さん:特に年齢制限は設けていないですが、28歳~32歳くらいがスイートスポットな印象です。これより上になると業界未経験者が入社するのは難しくなるのではないでしょうか。現在投資銀行にいる方ですと、アソシエイトからジュニアVPぐらいのクラスにいる人が対象になるイメージです。

ーーなぜ、そのような年齢の目安を設けているのですか。ミドルクラスとしての採用はないのですか。

東さん:一般的にはPEファンドは、若いクラスから入社していただき長期的に「内部昇格」して活躍してもらう、という組織戦略を描いているからではないでしょうか。

PEファンドのビジネスは案件の組成から投資後のバリューアップまで含めると数年単位でコミットすることになりますし、何といっても一般的なファンドの運用期間期間の目安である10年はいないとキャリーも出なかったりしますので、非常に長期的なコミットが大事となる息の長いビジネスかと思います。

まずファンドレイズしてから約5年間は、ソーシング(投資先の発掘)と投資実行(及びバリューアップ)に専念することになります。さらにその後、約5年間かけてバリューアップ/Exitに専念することで、ようやく投資を回収をすることができます。つまり、この約10年間の長期にわたりコミットし経験を蓄積していくことで将来的にはファンドのシニアとなっていく様な人材を採用することが、どのPEファンドも一番理にかなっていると捉えているのではないでしょうか。

キャリアで劣るジュニアクラスは「心意気」で勝負せよ

ーー投資銀行の経験年数が短い方が、長い方に対し、面接で逆転するときはどんなときでしょうか。

東さん:経験年数はイコール技術なので、経験年数が長いことは明確なアドバンテージですが、「心意気」があるかどうかがポイントではないかと思います。「心意気」がある人とは、なぜPEファンドに入りたいのか、理由が明確である方です。加えて、「PEファンドとしてのビジネスの要諦は押さえている」という点も非常に重要かと思います。

ーーその意味するところを詳しく教えていただけないでしょうか。

東さん:PEファンドの面接で時々、例えば「自分の好きに経営をしたい」「社会的な意義がある」といった志望動機を語る方がいます。これは典型的な落ちる方のパターンではないかと思います。

「投資をして、資本の力で投資先を好きに経営したい」と思っている方がいますが、それは大きな間違いです。現実には投資した後も、何をやるにしても投資先の経営陣・従業員の方とパートナーとしてビジネスを作り上げていかないと大きな成果は望めません。一人よがりでは何も成し遂げられません。

また、確かにPEファンドのビジネスは社会的な意義も十分にあるビジネスだと私も信じていますが、それはファンドのビジネスの要諦をしっかりと押さえた上での発言であることが重要なのではないかと思っています。あくまでもファンドに投資をしてくれたリミテッド・パートナー(LP)が我々の一番のクライアントであり、彼らからお金を預かり運用し満足いただけるリターンを返す必要があります。そのためには、何でもかんでも投資できる訳ではなく、満足いただけるリターンを得られる投資先を見出しセレクティブに投資することになるという点は忘れてはならないポイントです。

社会的な意義はありますが、それはPEファンドのビジネスが「お金を集める・十分なリターンを上げる」の繰り返しで成り立っている、という理解をしておくことが必要かと思います。

ーーPEファンドが採用する時は、どういうタイミングなのでしょうか。

東さん:主に退職によりヘッドカウントが空いたタイミングか、ファンドレイズのタイミングではないかと思います。

例えば資金100億の1号ファンドを10人で運用しているファンドがあったとします。大体5~10件ぐらいのポートフォリオが積みあがるでしょうか。ここで200億の2号ファンドを立ち上げたとすると、既存のポートフォリオの管理に加えて、新たなファンドの運用開始にもう少し人員が必要になるかと思います。AUMが拡大していますので、マネジメント・フィーも増加し新たな人員の採用の余裕が出てくるので採用枠が生まれるといった感じかと思います。

新たに入社されたい方は、新規のファンドレイズのタイミングを狙うと良いのではないでしょうか。

選考内容は、四季報を渡して「あなたはこの会社に投資しますか?」

ーー選考ステップはどれくらいあるのでしょうか。

東さん:大体は下記のステップで選考が進むのではないでしょうか。

1)若手(シニアアソシエイトくらい)面接 2)VP・ディレクター面接 3)MD面接

大体5~6回の個人面接を行っていると思います。また、「モデリングテスト」も中盤の面接で一緒に課しています。

ーー「モデリングテスト」とは何でしょうか。

東さん:候補者にある投資案件のケースと前提条件、そしてPCをお渡しし、そのケースにおける財務モデルを作成してもらうテストです。LBO(レバレッジド・バイアウト)モデルの理解を問うのが一般的です。回答するには、財務三表を理解した上で、体系的なLBOの知識が必要です。何も準備していないと乗り切れません。タイミングとしては、選考プロセスの中盤くらいに課されることが多いでしょうか。

ーー個人面接では主にどのようなことを聞かれるのでしょうか。

東さん:最近は、候補者に『会社四季報』のある企業のページを渡して、「この会社に投資するか、しないか」を10分ぐらい考えさせてから答えさせる、というケースもありました。

ーーこの四季報を使った面接では何を見ているのでしょうか。

東さん:四季報のケースでは、一言でいうと「投資センス」を見ています。

例えば、大株主がExitする可能性があるかという点は重要なポイントです。上場会社であっても大株主が一定程度の株式を持っている場合はこの大株主の意向でTOBの成否が決まることも多いですので非常に重要です。四季報の株主構成をパッと見て大株主が存在するときはExitの意向によってはバイアウトできるかもしれないなと頭に入れておきます。

また、ざっくりと頭の中でバリュエーションを行いデットとエクイティははいくら必要で、5年間でFCFがいくら出てデットはこれだけ返済できて、Exit時は・・・といった様なシミュレーションを行い、最終的にリターンはいくらぐらい得ることができそうだといった様な感覚を持っておくと良いかと思います。

金融的な感覚に組み合わせて、対象企業のビジネスの成長ドライバーやダウンサイドのリスクなどのビジネス的な着眼点も非常に重要です。

PEファンドに強い転職エージェントを探せ

ーーPEファンドに転職するなら、どのルートで応募すべきでしょうか。

東さん:基本的には「PEファンドに強いエージェント経由」が王道では無いでしょうか。

ーーエージェントはどちらがオススメでしょうか。

東さん:私が接触した限りだと、コンコードエグゼクティブグループや、アンテロープキャリアコンサルティングは案件が多い印象がありますね。Liigaに登録されていらっしゃるヘッド・ハンターの皆さんは非常に優秀な方が多い印象ですので、機能を活用してコンタクトされるのも良いかもしれません。

面倒くさがらずに一度各社の話を聞いてみるといいかもしれません。そうすると同じ会社の求人でも、どの選考ステップから始まるか各エージェントによって差が出てきます。例えばXXXエージェント経由だと人事から選考がスタートするが、〇〇〇エージェント経由だと部門のヘッドから選考がスタートするなどの差です。

ーーPEファンドへの転職を目指す方にアドバイスをお願いします。

東さん:2つあります。まずは、「一度やったら必死でやってみる」という姿勢が大事です。

「ここに3年いたら辞めます」という腰掛けのスタンスでは、真剣味が生まれないため、顧客から相談されません。得られる成長も少ないでしょう。目の前にある仕事を一つ一つ必死でやった先に、PEファンドへの転職のお誘いのような「運」がめぐってくると思います。

もう1つは抽象的になりますが「言われたことだけをやっていてはダメ」ということです。

例えば投資銀行出身者がPEファンドに入社した場合、モデリングなど作業ができるのは当たり前です。それはあくまでベーシックスキル。価値を出すには、自分で能動的に考えることが不可欠です。PEファンドの仕事では、時代の動きを捉えていける思考が重要です。最終的には読み切ることは難しいですが、常にこれからの時代の動きと照らし合わせながら有望そうな投資テーマは何かを考え続ける思考やスタンスが求められる仕事なので、思考停止だと厳しいです。

今、投資銀行にいる方は、日々上司から仕事を頼まれる際に、「そのオーダーにどのような背景や意図があるか」「どうすればよい提案ができるか」を、指示されなくても能動的に考え行動していくスタンスでいることが必要ではないでしょうか。

コラム作成者
Liiga編集部
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