「日本人の多くは自分を安売りしている」米国本社で年収4,000万円を稼いだ元外資系社員が語る、海外で日本人が評価される理由
2020/07/21
#海外で働きたい
#年収1500万以上のリアル

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海外転職や海外勤務に興味はあるものの、言葉の壁や文化の違いなどを理由にためらっている人は多いのではないでしょうか。

東谷雅之さん(仮名)は新卒で外資系企業の日本法人に入社したのち、営業マンとして経験を重ね、30代半ばでアメリカの本社への異動を勝ち取りました。

その後10年間アメリカでの実績を積み上げた結果、本国でもトップセールスとなり、40代中盤で年収は4,000万円以上に。現在は退職し、自分の会社の起業をされています。

今回は東谷さんが日本からアメリカに異動して感じた「日本とアメリカの働き方の違い」「日本人ビジネスマンが海外で通用する理由」についてお聞きしました。

〈Profile〉
東谷雅之(仮名) 元外資系企業 営業職 新卒で外資系企業の日本法人に入社。日本法人での営業職で実績を残し、30代半ばでアメリカの本社に異動。本国でもトップセールスに。現在は退職し起業。


【目次】
・「自分が米国駐在すれば会社にもお客様にも貢献できる!」米国本社の役員に直談判し、勝ち取った米国本社転勤
・「圧倒的なQOLで、年収4,000万円」アメリカと日本の生産性がここまで違う理由
・日本にいた時と大して変わらない役割なのに「就業時間が劇的に削減され、時給ベースで給料は5倍以上に」
・重要なのは英語力より営業スキル「日本人の鍛えられた営業スキルは、間違いなくアメリカでも通用する」

「自分が米国駐在すれば、会社にもお客様にも貢献できる。!」米国本社の役員に直談判し、勝ち取った米国本社転勤

――まずは今までの経歴についてお聞かせください。

東谷:新卒では外資系企業に入社して、法人担当営業職にアサインされました。長期の営業研修がありましたが、業界の知識も限られており、落ちこぼれで落第寸前、なんとか辛うじて卒業できました。 営業として実際に働き始めてからは、自分のスキル不足、何をしたらよいか判らず、出来る事が無いなら少なくとも量だけはこなそうと思い、実行していました。

――具体的にどのくらいの時間働かれていましたか?

東谷:毎週一日は徹夜、平日も毎日だいたい12〜15時間、休日出勤も当たり前の仕事中心の生活でした 。どうすれば担当するお客様のお役に立てるか、そのために自分はどう成長していくべきか、何を勉強すべきかということを四六時中考えていました。お蔭様で、お客様にも恵まれ、鍛えて頂いて数年で結果は出せるようになりました。

後輩や部下ができてくれば、彼らの仕事の面倒を見たり、成長の為の情報交換会をしたり、夜遅くまで飲みに連れていって、意見交換したりと、人材育成にも随分時間と労力を使っていました。

――アメリカに転勤しようと思ったきっかけは何ですか?

東谷:入社した時から漠然とした海外への憧れがあった事と、加えて私が米国で日本のお客様を担当すれば、お客様により役に立てると思ったからです。

営業職になってからは、ずっとグローバル展開をしている大手製薬企業を担当し、国内ではご満足いただいてました。一方で同じお客様から「日本で良好な関係をつくれて、グローバル化を助けてくれると思って付き合っているのに、海外では大体期待に応えてくれていない」というお話をたびたびお聞きしていたのです。

担当していた大手製薬業のお客様は、いずれも海外で50%以上の収益を上げているようなところばかりでした。

そこで、日本のお客様の文化を理解して、自社ローカル営業にお客様の期待を適切に伝える事ができれば、会社の売上げや、日本のお客様にも貢献できるはずだと、と、当時の米国本社の役員が来日中の時に、彼に直談判したのです。

その結果、暫く社内の調整はありましたが、彼の元で修行する機会を日本法人からの駐在員として得る事ができました。

――米国本社の役員に直談判したというのはすごいですね。

東谷:既に、担当するお客様のグローバル化について支援を貰っていて、関係ができていた事と、担当するお客様からも推薦頂けたのが後押しになりましたね(笑)。

こうして同じ会社でアメリカで10年働いたあと、今は会社を辞めて友人の会社を手伝いながら、自分でもアメリカで起業しました。

「圧倒的なQOLで年収4,000万円」アメリカと日本の生産性がここまで違う理由

――アメリカで働くようになって、何か変化はありましたか?

東谷:1日の労働時間が、8時間前後に収まるようになり、圧倒的にプライベートが充実しました。週に一度徹夜、一日12~15時間働いていて、その後飲み会、週末も仕事していた日本とは大違いです。加えて、米国本社でも実績が残せたおかげで年収は最終的に4,000万円を超えました。

――すごいですね。なぜ、そんなに労働時間が短くなったのですか。

東谷:お客様も社内も圧倒的にアメリカの人達は生産性が高いからです。 無駄な仕事はしません。プライベートも犠牲にする事は殆どありません。 限られた時間で成果を出すために、とことん無駄をなくす努力をみんながしています。 例えば、殆ど会社への出社の義務もなく、ホームオフィスでの電話会議が中心です。 お客様も必要なければ基本的には電話会議で、直接Face to Faceで会いにいくのは当たり前ではありませんでした。

そして、ジョブディスクリプションに書かれている自分の仕事と責任以外のことは、一切やる必要がなくなったからです。

そのため私はアメリカに行ってからというもの、後輩育成にほぼ関わることがなくなりました。相談を受ける事はあっても、こちらから率先して後輩育成する事はありません。

――後輩などの人材育成はしなくてよいのですか?

東谷:はい、しなくて大丈夫です。なぜなら人材育成は私ではなくマネージャーのジョブディスクリプションに記載されるような仕事だからです。 また、基本的にモバイル・ワークなので、若手社員に接する機会も限られました。

――なぜアメリカではみな短時間で成果出せるのですか?

東谷:生産性ですね。日本は忖度や、「なぜこれをやらなければならないのか」という目的意識のない仕事が多いせいで、無駄な仕事が増えがちです。それらが全てなくなったことで、家族と過ごす時間や自分の趣味に使う時間が増えたので、ワークライフバランスが大幅に改善しました。

日本にいた時と大して変わらない役割なのに就業時間が劇的に削減され、時給ベースで給料は5倍以上に」

――続いて年収ですが、どのように上がったのでしょうか。

東谷:私の今までの年収推移をお伝えすると、下記のようになります。

20代前半:590万円 / 外資系企業 / 新卒就職 20代中盤:700万円 / 外資系企業 / 営業係長に就任 20代後半:850万円 / 外資系企業 / 引き続き営業職 30代前半:1,200万円 / 外資系企業 / 営業課長に 30代中盤:1,200万円 / 外資系企業 / 米国本社に駐在開始 (家賃補助などを除く) 30代後半:2,000万円 / 外資系企業 / 引き続き米国本社勤務 (転籍後、補助は無し) 40代前半:2,800万円 / 外資系企業 / 米国本社で昇進 40代中盤:4,200万円 / 外資系企業 / 米国本社でさらに昇進

――東谷さんの年収は、アメリカに行ってから急速にアップしているように思えます。なぜでしょうか?

東谷:それが私の中の最大の気づきでもあります。

実は、私がビジネスマンとして成長していたのは日本にいた時が殆どで、アメリカに来てからは、言語や文化への対応以外には、それ程成長実感はありません。任される仕事もほぼ変わりません。にもかかわらず、昇進して年収はどんどん高くなっていきました。

つまり、「少なくとも私のケースは、同じ実力で同じ役割を果たす仕事であっても、海外に拠点を移すだけで年収は上げられた」ということです。

――40代で4,000万円というのはすごいですね。

東谷:日本にいた時は、日本の報酬でも十分満足していましたが、アメリカで40代になり一気に年収が上がった時は複雑な気持ちでしたね。

「あれ? 日本にいた時の仕事・役割とそんなに変わらないけど……。なのに、これだけ給料くれるの?」

もちろんうれしいですけど、「今まではなんだったんだ? 買い叩かれてたんだな」と複雑でした。

重要なのは英語力より営業スキル「日本人の鍛えられた営業スキルは、間違いなくアメリカでも通用する。」

――英語環境のアメリカで戦うには勇気がいると感じる方も多いと思います。戦うためのアドバイスはありますか。

東谷:私も当時は退路を断って大きなリスクを取ったつもりでしたが、、、結果的には全くリスクはありませんでした。 日本で鍛えて貰ったお蔭で、言葉や文化への対応の問題はあるものの、仕事では十分な成果をだせました。 また、海外転籍という特殊な経験をしているので、帰りたければいつでも日本にも帰れるとも後々気づきました。「日本で鍛えられた日本人のサラリーマンは、間違いなくアメリカでも競争力を発揮できる」ということです。

――日本で活躍していれば、アメリカでは通用する、と?

東谷:通用します。日本の社会やお客様は、理不尽な事を含め求める基準が大変厳しく、鍛えられる環境です。海外の言葉や文化、礼儀など適用する必要はありますが、仕事の中身では十分通用するスキルは既に身につけています。、そして、日本で実績を残している人たちの多くは、お客様や会社への忠誠心が高く、私生活を犠牲にしてまで一生懸命働きます。営業職でいえば、本来はお客様の社内で解決するべきポリティカルな問題にまで配慮しながら、仕事を進めていきます。

実はアメリカでここまでして仕事に打ち込んでいる人は、ごく少数のエリート層だけです。たいていの人はプライベートを大事にするので、身を粉にして働くようなことはありません。だから、日本人はアメリカで十分競争力を発揮できます。

――英語という「言葉の壁」はありませんでしたか。

東谷:確かに言葉の壁はあります。今でもあります。 ただ、なんとかなります。

私も確かに、今でも言葉の壁を感じています。しかし、アメリカ人にはない自分だけが知るお客様の情報や、お客様のキーマンとの関係などがあれば、多少英語に問題があっても、理解するためにむしろ向こうからこちらの言葉に耳を傾けてくれるものです。 アメリカ人のお客様も、私であればより背景を含めて理解してくれると安心してくれる事も多かったです。

――どうしてなのでしょうか。

東谷:なぜなら、アメリカでの仕事で必要なのは、英語よりも「どう仕事を進めるのかの質」だからです。日本人のお客様中心の営業、営業としての気配りや、お客様のポリティクスを理解しながらの「戦略アプローチ」は、アメリカ人で出来る人は限られます。多くのアメリカ人の営業スタイルは、もっと単純で淡泊だからです。

だから多少英語に問題があっても、僕しか知らない情報やリレーションを元にした提案や戦略アプローチがあるので、むしろ周りの方から僕に積極的に話をしようとしていました。言葉が不自由だからといって、誰も話を聞いてくれないなどということはありません。 アメリカ人も、役に立つ情報であれば、どうにかして手に入れようと努力します。

――日本人の営業スキルを活用すれば、英語のハンディは苦にならないということですね。

東谷:その通りです。だから、日本でしっかりと実績を出しているサラリーマンの人たちは、もっと積極的に海外に出て働くことをおすすめします。いざ出てしまえば、思っている以上に海外で働くということのハードルは低いですよ。

コラム作成者
Liiga編集部
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