「元コンサルは最強のBizDevになれる」。AIベンチャー社長がコンサル在籍者に伝えたいこと
2020/10/15
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2016年の設立(*)以来、介護、医療、金融、HR、ロボット、カメラなど多分野にAI(人工知能)を適用し、事業を拡大しているエクサウィザーズ。石山洸社長と春田真会長がForbes JAPAN「日本の起業家ランキング2020」で2位に選ばれるなど、存在感が高まっている。

そんな同社が力を注ぐことの1つが、コンサルティングファーム出身者の採用だ。AIベンチャーがなぜコンサル系人材を求めるのか。そして、コンサルでは得られない成長機会、やりがい、キャリアパスとはどういったものなのか。多くのコンサル出身者を採用し、部下に持つ石山社長に聞いた。 *当初の社名はエクサインテリジェンス。2017年10月にデジタルセンセーション株式会社と合併、社名をエクサウィザーズに変更

〈Profile〉
石山 洸(いしやま・こう)
株式会社エクサウィザーズ 代表取締役社長
東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程修了。2006年4月、株式会社リクルートに入社。同社のDXを推進した後、AI研究所を設立し、初代所長に就任。2017年3月、静岡大学発ベンチャーのデジタルセンセーション株式会社取締役COOに就任。2017年10月の合併を機に、現職就任。静岡大学客員教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員准教授。

日本に足りないBizDev人材…状況打破の可能性を秘める元コンサルタント

――コンサル出身者を積極的に採用している理由をお聞かせください。

石山:エクサウィザーズは社会課題をAIで解決することを目的として作られた会社です。既に介護分野の課題に対応する「CareWiz」や、高性能2眼レンズ搭載のエッジAIカメラ「ミルキューブ」といったプロダクトを世に送り出しています。

しかし、まだ日本には社会課題がたくさん残っています。それに対応できる技術はあるのですが、課題解決を実現するプロダクトは少ないのが現状です。

なぜかというと、課題と技術を橋渡しするBizDev(Business Development=事業開発)の人材が不足しているからなんです。例えばiPhoneには日本発の部品が数多く採用された一方で、日系メーカーがiPhoneを生み出せなかったのは、BizDevの力が弱かったからだとされています。

有能なBizDevとなり、そうした状況を打破する可能性を秘めているのが、コンサル出身者だと感じています。クライアントの課題をAIを使って解決するには、ビジネスとテクノロジーをつなぎ合わせる必要があります。それにはファクトベースの分析と戦略立案の力、そして実行力が不可欠なんです。

新卒などでコンサルに入った若手は、3~4年のハードワークの中でそれらのスキルを身に付けています。

当社が20代後半から30代前半のコンサル出身者を積極的に採用しているのは、このためです。現在40人ほどが、BizDev担当として所属しています。 description

営業、開発の経験がなくてもプロダクトを作る。「非コンサル的」な力が磨かれる環境

――いつごろからコンサル出身者を採り始めたのでしょうか。

石山:2017~2018年あたりですね。始めは立て続けに4人の元コンサルタントが入社しました。全員まだ20代でしたが、1人には社長室長、他の3人にはそれぞれ医療、金融、HR分野の新規事業責任者になってもらったんです。

確かに彼らには、営業やプロダクト作りの経験がありませんでしたが、すぐに事業責任者として成長してくれました。

なぜできたかというと、当社には元ディー・エヌ・エー会長の春田真会長や元JT副社長の新貝康司社外取締役など、事業作りや組織作りのプロがいるので、鍛えられるんですね。コンサル出身の若手ももちろん優秀ですが、百戦錬磨のベテランにはかなわない部分がどうしてもあります。それが刺激になって、ものすごく伸びるんです。地頭が良く意欲も高いので、成長スピードが速いですね。

――コンサル出身だからこそできたプロダクトなどはあるのでしょうか。

石山:あります。あくまで一例ですが、福岡銀行と協力して作った「口座見守りサービス」がそうです。銀行口座とアプリを接続することでATMや公共料金の支払いデータをAIが分析し、高齢者の方の「お金遣いの変化」を親子で共有することができます。今、詐欺被害や認知症などにより、高齢者の方が誤ったお金の遣い方をしてしまうことが社会課題になっていますが、これがあれば遠方に住む子ども世代も安心です。地銀としてもこのサービスを提供することで、高齢者の方にも安心して口座を使っていただけるようになります。

サービス開発の背景にも触れると、地方銀行の持つ課題を深掘りしていく中で生まれたものです。

課題設定・解決の力とテクノロジーへの理解があるコンサル出身者が、エンジニアたちと密に連携したからこそ、生まれたサービスといえます。

今紹介したのは金融の事例ですが、他の領域でも同様にコンサル出身者がBizDevとして、事業開発を行っています。

「正確さ」を追い求めるだけではダメ。コンサル出身者が成熟社会で価値を出す方法

――コンサル出身者がエクサウィザーズに来て苦労することなどはあるのでしょうか。

石山:時に「rightness(正確さ)」を追求し過ぎてしてしまうことでしょうか。社会が成熟しきった現在、企業は新しい付加価値、そしてそれに基づく「richness(豊かさ)」の創出を求められます。rightnessだけでは足りないんです。

――具体的にはどんな「ギャップ」があるのでしょうか。

石山:例えばですが、コンサルから新たに入ってきた若手が弊社の先輩社員とクライアントを訪問すると、たいていその新人は帰社後すぐに丁寧な議事録を作り送ってくれます。でも、それに対する先輩社員の反応は、「議事録はいらないから次回の提案の中身を考えて」となるんですね。

コンサルティングファームからエクサウィザーズへの転職は、クラシックのオーケストラにいたプロミュージシャンが、ジャズバンドに行って演奏するようなものです。一流の“腕”を発揮するプロであることに変わりはありませんが、異なる世界への適応が求められます。

人によってではありますが、半年ほどで順応していると感じます。

「経営のプロにもプロダクトマネージャーにもなれる」。コンサル→エクサウィザーズで開けるキャリアパス

――コンサル出身者にはどのような人材に育ってほしいと思っていますか。

石山:技術をうまく活用できる最強のBizDevになってほしいと思っています。

先ほど述べたように分析や戦略立案の力はかなり磨かれていると思うので、あとは顧客開発力とデータサイエンスの知識を身に付けてほしいですね。

私自身は新卒でリクルートに入社し、1年目の時は午前中からホットペッパーの飛び込み営業をして、夕方の帰社後は元マッキンゼー・アンド・カンパニーの上司のもとMECEな資料作成を行い、その後はリクルート全社のデータ分析をやっていました。そうやって、図らずも顧客開発力とコンサル的な力、そしてデータ分析の力を同時に鍛えることができたんです。

――コンサル出身者がエクサウィザーズで経験を積むことで、どのようなキャリアパスが開けるのでしょうか。

石山:1つはBizDevを極めて、大企業とのジョイントベンチャーで役員に就くなどの経験をし、経営のプロになるという道ですね。ベンチャー的な経営と大企業的な経営の両方を学べます。その後は、起業やCDO(Chief Digital Officer)をはじめとしたCxOなどのキャリアパスが考えられます。コンサルティングファームだと、大企業とのジョイントベンチャーの役員には、おそらくパートナークラスでないとなれません。当社でなら、うまくいけば20代後半か30代前半でそれを経験できてしまいます。

もう1つはプロダクトマネージャーの道ですね。日本ではまだ明確に定義された職種ではありませんが、GAFAをはじめ、海外企業では優秀な人材が目指す道として認知されています。

我々は、プロダクトとして成長する可能性のあるものは積極的にプロダクト化したいと考えています。エクサウィザーズには優秀なエンジニアやデザイナーもたくさんいるので、プロダクトマネージャーになる機会は多い。これはエクサウィザーズの魅力だと思っています。社内のコンサル出身者では、この方向で成長したいという人が多いですね。 description

若手に求めるのはフィクションを作る力と多面性

――合併から3年を迎えました。今後どのように事業を発展させたいと思っていますか。

石山:日本の高齢化のピークアウトは2040年です。そう考えると2030年頃には超高齢社会の課題は解決している必要があります。つまり我々にとっては今後10年が勝負です。もちろん、ただ課題解決をして終わりではなく、その先にあらゆる世代の生活の質が向上されている社会があることが前提です。

――今後、求める人材像はどのようなものなのでしょうか。

石山:大きく分けると2つあります。

1つ目は、「社会に対して、大きなインパクトを与えるんだ」というマインドを持っていること。今のコンサル出身メンバーは、おそらく起業してある程度まで成長させられる力を持っているでしょう。ただ、自分の見える範囲で満足しないで、社会を変えるんだという気概を持ってほしいと思いますし、これから入るメンバーもそうであってほしいです。

コンサルティングファームだと「Client Interest First」という言葉がありますが、それを重んじすぎるとクライアントの利益にしばられてしまい、社会を変革して大きな利益を生むところまではたどりつかない気がします。プロフェッショナリズムを維持しつつも、既存ルールの制約から解放されたスケールの大きい発想を我々は求めています。

また、顧客目線だけではなく、自分の意図を企画に盛り込む力も要求されます。音楽で例えてみると、NiziプロジェクトのプロデューサーのJ.Y. Parkさんが、オーディション参加者の「スター性」をテストする際に「作曲において一番大切なのは”意図”」と伝えていました。コンサルからスタートアップへの転職は、人が作曲した音楽を奏でることから、自分で作曲することへの転換です。スターになるためには、仕事に自身の意図を込めることが大切になってきます。

2つ目は、自分の中に、ある種の多面性を持っていることですね。例えば、ある人がAとBという側面を持っていて、 別の人がBとCという側面を持っていたとすると、Bが接点になってAとCが結びつくんですね。それが重なると、新しい価値がどんどん生まれていきます。つまり、イノベーションが生まれやすくなるわけです。

最近は早稲田大学の入山章栄教授先生らがこの多面性を理論的に構造化し、ビジネスパーソンに求められる「イントラパーソナルダイバーシティ」として提唱していますね。

今、社会に大きなインパクトを与えるのに必要な能力は、フィクションを作る力とフィクションをノンフィクションに変える力です。コンサル出身の人は後者が強いのですが、前者が弱いと感じます。

ぜひ当社でその力を付けて、大きなフィクションを描いて社会に変革をもたらすビジネスパーソンになってほしいですね。 description

コラム作成者
Liiga編集部
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