世界の誰もが知っている企業群といえばGAFA。転職・就職先として日本国内でも大人気です。 しかし、GAFAはその好待遇だけではなく、入社難易度の高さや、要求される仕事のレベルの高さでも有名です。
今回は、GAFAの日本法人に新卒で就職された山岡さん(仮名)に、「GAFAの厳しさ」「給与事情」「GAFAの特殊な文化や仕組み」そして「GAFAの選考で求められるスキル」について、赤裸々に語っていただきます。
・「入社した半分はすぐ辞める。生き残れば年収1,000万円はすぐ超える」。厳しいがその分年収も高い、GAFAの社員の実態
・「パワーポイントは一切使わない」「情報共有はすべて社内wikiで済ませる」GAFAの特徴的な文化と制度とは?
・「半年で1回しか出社していない」「GAFAはアメリカファースト。日本は後回しにされがち」GAFAの独特なカルチャー
・面接対策をしなくてもGAFAには受かる。評価されたのは「ロジカルな分析力」と「自主性」
「入社した半分はすぐ辞める。生き残れば年収1,000万円はすぐ超える」。厳しいがその分年収も高い、GAFAの社員の実態
――山岡さんは新卒からGAFAの日本支社に入社されていますが、現在の年収はいくらくらいでしょうか。
山岡:諸々含めて年収は総額1,500万円くらいですね。そのうちの約半分は我が社のRSU(制限付き株式)でもらっています。ですから、株価が上がると、ボーナスみたいに収入が増えることになります。
――やはり年収は非常に高いのですね。
山岡:そうですね。ですがその分厳しいのも確かで、うまく昇進ができずに職場を去っていく社員も数多くいます。
――どういう点が厳しいのですか。
山岡:配属された部署ですぐ活躍する「適応能力」が求められる点ですね。
過去の経験値だけでは評価されません。配属された部署にすぐフィットする能力が求められます。具体的には、「新しいことを学ぶ姿勢」や「プライドにとらわれず人に教えを請う姿勢」などがポイントですね。
新卒の場合は中途よりは比較的育てる前提で採用していますが、それでも大まかには一緒です。自分で自分を育成することが求められます。GAFAは自分でキャリアを積み上げて、なるべく早く「即戦力」になることを新入社員に要求するんです。
それができれば、トントン拍子でジョブレベルが上がっていきます。できなければ、ずっと新卒入社時のジョブレベルのままです。
――新卒入社で辞めていく社員はどれくらいいますか。
山岡:半分は早いうちに辞めていきますね。
――解雇される人もいるのでしょうか。
山岡:自主退職を選ぶ方はいます。ただ、最後尾でも走るのをやめずについていけば、会社から切られることはありません。そのあたりは例えばコンサルティングファームなどとはカルチャーが違う気もします。
「パワーポイントは一切使わない」「情報共有はすべて社内wikiで済ませる」GAFAの特徴的な文化と制度とは?
――GAFAの特徴的な文化などはありましたか。
山岡:2つあります。「パワーポイントを一切使わないこと」と「社内wikipediaの存在」ですね。
――プレゼン時にもパワーポイントを使わないのですか。
山岡:一切使いません。うちでは口頭での説明は最小限に抑えて、ただ読むだけで伝わるテキストメインの文書を作るよう求められます。
会議の冒頭にはその文書を読み込む時間が10~15分程度設けられます。その後、プレゼンをする人が説明をする時間はなく、会議出席者とのQ&Aが始まります。
さらに言うと、基本的には、Qに対するAは4種類に分類して回答することが求められます。「イエス」「ノー」「数字で説明」「今は答えを持っていない」……それ以外の答えは許されていないんです。
――なぜ、そんな極端なルールが設けられているのでしょうか。
山岡:ロジカルな思考が必要とされる環境を作ることで、ものごとをそういうふうに考えられる人材を選別したり育成したりする意図があるのでしょう。
パワポを使ったプレゼンはその場の口上でごまかせます。内容が同じでも、話し手次第でよい企画に思えることもあれば、ダメな企画に感じられることもあります。
ところが、すべてをテキストで伝えるとなると、漏れのないロジカルな文書を作らなければなりません。ただやはり、完璧なものを作るのは難しくて、社内でもちゃんとした文書を作れる人は10~20%くらいしかいないのが実態ですね。
――なるほど。では、「社内wikipedia」とはなんでしょうか。
山岡:社内の情報を、ナレッジバンクとして集約し、グローバルで社員の誰もがアクセスできるプラットフォームですね。
自分のチームの情報やプロジェクトの情報をオンラインでパブリッシュして、誰もが簡単にアクセスできるようにしています。
――それによって、どんなメリットが生まれるのでしょう。
山岡:一つは、会社にとって資産となるプロジェクト情報や取り組みの結果が、個人のフォルダで埋没することが防げます。
また、毎度同じ様な情報をメールや口頭で相手に説明する必要がなくなります。
たとえば、プロジェクトAの情報をパブリッシュしておけば、派生型のプロジェクトBが発生した場合、「wikiを見てください」とチャットツールなどで伝えるだけで、新入社員ともすぐに情報を共有できます。
非常に効率よく、情報のシェアができるのです。ただ、その一方で、デメリットもあります。
――どのようなデメリットですか。
山岡:ページが作りかけだと、不十分だったり間違っていたりする情報が残ってしまうおそれがあるのです。
本家本元のWikipediaの場合には、誰かが指摘してくれますが、社内にそんな番人はいないので、不完全な情報が残ってしまうことはありますね。
――情報を公開するのであれば、情報の精度も高める努力が必要、ということですね。
山岡:そうなのですが、私の会社ではそこまで高い精度は求められません。むしろ、スピード感を求められるので、100点を取りにいく努力は不要だ、と考えられがちです。
――GAFAではよく、細かな数字を大切にするので、資料を作る際などは小数点第2位まで出す必要がある、などと聞きますが。
山岡:私が知る限りでは、それは都市伝説だと思います。
必ずしも33.98という数字を毎度出す必要はなく、場合によっては34という記載でいいので、なぜその数字になったのか、というロジックをきちんと説明できる能力が重視されています。
「半年で1回しか出社していない」「GAFAはアメリカファースト。日本は後回しにされがち」GAFAの独特なカルチャー
――GAFAで働く感想を教えてください。
山岡:「外資系らしいドライさ」と「会社の理念の強さ」を強く感じましたね。
――ドライさとは、具体的にどういった点から感じるのでしょうか。
山岡:みんな「仕事は仕事」と割り切っていて、「仕事が終わったら家族の時間」と考えている人が多いです。
歓送迎会や新年会、忘年会はチームによってはありますが、仕事終わりに飲みに行ったり、仲良しの上司とつるんだりすることはあまりありません。
――オンオフの切り替えがはっきりしていて、働きやすそうですね。
山岡:そうですね。個人のライフスタイルを非常に大切にしてくれる会社なので、とても働きやすいですよ。
フルフレックス制なので、来る時間も帰る時間もバラバラです。だから大事なミーティングは全員がいそうな時間を狙って調整しています。
新型コロナウイルスが流行してからはもうずっとリモートワークですね。僕もこの6カ月、1回しか出社していません。それも机を片付けに行っただけです(笑)。
――では、「会社の理念の強さ」とは、どういうことでしょうか。
山岡:弊社では、企業理念をとても強く社員に刷り込むのです。
この会社に入ってくる人は、企業理念に共感できる人なんだと思います。また、このような考え方でやってきたからこそここまで会社として成功したのでしょうし、そこは弊社の誇るべき点だと思います。
――山岡さんは日本支社で働いているわけですが、アメリカ本社でも働けるとしたら、どちらを希望しますか。
山岡:アメリカ本社です。これはもう、即答できます。
――理由を教えてください。
山岡:新しい取り組みが導入されるのは、どうしてもアメリカが最初だからです。これは、市場規模が違うので、仕方がない面もあるのですが。
私の会社の場合、アメリカ市場は全売り上げの50~60%を占めます。日本市場は5~6%にすぎないので、どうしても後回しにされてしまうのです。
トランプ米大統領ではありませんが、GAFAもアメリカファーストです。現地にいる同僚の話を聞いていると、日本とアメリカでは最大で3~4年程度の「時差」があると感じています。
――日本の側で新しい取り組みを提案してもダメなのですか?
山岡:多くの場合は、ダメですね。日本のためにそんなリソースを割けない、ということになります。
ですから、我々が主導権を持っていたら、こんなこともあんなこともできるのに、と夢見ることは少なくありません。
面接対策をしなくてもGAFAには受かる。評価されたのは「ロジカルな分析力」と「自主性」
――GAFAの選考はかなり厳しいとうかがっていますが、山岡さんはご自身のどんな特徴が評価されたと感じていますか。
山岡:「ロジカルな分析力」と「自主性」だと思っています。
「ロジカルな分析力」については、私は大学で数学を専攻し、現実の問題をビッグデータを用いて解決する方法を学んでいたので、その点を面接でアピールしていました。もっとも、私がGAFAの面接を受けた当時はまだ、このようなビッグデータ的な考え方は誰もが知っている様なトピックにまで浸透してなかったですが。
また、「自主性」については、大学時代に経験したことがよいアピールポイントになりました。
――どのような経験ですか。
山岡:私は大学時代から友人と不動産に関わるビジネスを手がけ、かなり大きな収益をあげたことがあったのです。
そういう話をしたことで「入社させたら、自分でなにか新しいことをやってくれるのではないか」と面接官に思わせることができたのだと思います。
――面接対策は特にしなかったのでしょうか。
山岡:特にしていませんね。
強いて言えば、ぶっつけ本番で、ありのままを話すのが私の面接対策でした(笑)。
面接官の方も積極的に自身のことを知ろうと深堀してくれるので、楽しく面接を行えた印象が今でも残ってます。