「コンサルに転職した途端、ロジハラ地獄」コンサルで総合商社の働き方が全く通用しなかった理由
2020/10/20
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description バリバリの商社マンがコンサルティングファームに転職したらいったいどうなるのか? 元伊藤忠商事の営業担当だった相川さん(仮名)は、総合商社→コンサル転職の成功者の一人です。しかし、そんな彼は「コンサルは商社と真逆のロジハラ地獄だった......」と総合商社→コンサル転職の大変さを語りました。

今回の取材では相川さんに「総合商社とコンサルティングファームの違い」「商社マンが転職成功するためのポイント・注意点」について伺いました。

<Profile>
相川裕太(仮名)
外資系コンサルティングファーム コンサルタント
東京の大学を卒業後、新卒で伊藤忠商事に入社。鉄鋼部門で6年にわたり営業担当として活躍した後、外資系コンサルティングファームに転職。コンサルへの転職で苦労する元商社マンが多い中、着実に成績を伸ばし、年収アップを実現している。
※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門等を代表するものではありません。


【目次】
・「俺、頭を使ってなかったんだな……」。「コンサルって楽しそう」で転職した途端、毎日ロジハラの餌食に
・「転職した理由は、商社だと家族と全く会えないから」コンサルの方が商社より家庭を大切にできる意外な理由
・「30代前半で年収1,500万円弱。生涯年収は同じくらい高い」「働く人のキャラは真逆」総合商社とコンサルの違いとは?
・商社マンの強みは「コミュ力」「専門性」「泥臭いリサーチ力」

「俺、頭を使ってなかったんだな……」。「コンサルって楽しそう」で転職した途端、毎日ロジハラの餌食に

――まずお聞きしたいのですが、商社マンはコンサルに転職して活躍できますか?

相川:私は難しいと思います。なぜなら商社とコンサルファームでは求められるスキルがまったく違うからです。

商社マンにロジックはあまり求められませんが、コンサルにとってはロジックがすべてです。

相反する業種なので「楽しそう」という感覚だけで商社マンが転職すると、強烈な”ロジハラ”を受けるケースが少なくありません。

――ロジハラとは、どんなことをされるのですか?

相川:理詰めによる「能力の全否定」ですね。

商社マンの仕事は、仮に失敗しても為替や原材料価格の高騰などの外的要因を理由に“言い逃れ”することができます。

ところがコンサルではそういった言い訳をすると、「リサーチ不足」「適切な観点から分析できていなかったせい」などと、一刀両断されてしまい、能力を全否定されます。

これはかなりきついですよ。

――商社マンの強みはコンサルファームでも十分に生かせそうですが、そうではないのですか?

相川:確かに強みはありますが、働き方の違いが大きなハンデになります。分析が好きで得意だと思っていた私ですら「俺って頭を使っていなかったんだ」と最初にリサーチ業務をやったときに気づかされました。

――難しい仕事だったんですか?

相川:いいえ。新卒1年目でも任されるような基本的な仕事です。ある企業がやっているビジネスがどんなもので、どういう方向を目指しているのか、という情報をまとめるだけでした。

自分の中ではできたつもりだったのですが、上司に資料を提出すると、できていない部分を山ほど指摘されましたね。

伊藤忠商事時代なら「次は気合いで頑張ります!」と言えば「よし! 許す!」と言われて、精神論が通用する面もあったんでけどね(苦笑)。

――商社だとロジックが通っていなくても、気合でごまかせるんですね。

相川:そうです。なぜなら商社はロジックよりも、「この人はいっぱいお酒を飲んでくれるから」や「出張で楽しいところに連れてってくれるから」の方が大事だったりすることもありますから。

ただコンサルの仕事は違います。「売り上げを上げるのにはどうすればいいのでしょう?」という質問に対して「頑張ればなんとかなります!」は、当然ながら絶対NGです。

原因やその要素、改善点をきちんと説明することを求められます。

――本当に180度カルチャーが違うんですね。

相川:そうですね。商社からコンサルに行く人は多いのですが、最初はみんなかなり苦労しているはずです。これからコンサルを目指す商社マンの人は、求められるスキルの違いをよく理解したうえで行動に移すべきだと思います。

「転職した理由は、商社だと家族と全く会えないから」コンサルの方が商社より家庭を大切にできる意外な理由

――コンサルに転職しようと考えた直接の理由は何ですか?

相川:家族との時間を持ちたかった、というのが大きな理由でしたね。

――コンサルも激務なため、あまり家庭を重視できないイメージがありますが。

相川:たしかにコンサルも残業はすごいのですが、ほぼ毎日家には帰れます。ただ海外出張が多い商社マンは物理的に家族と会えないんですよ。

たとえば、海外のお客さんと月曜日に打ち合わせをするとなると、日曜日には家を出て日本を発ちます。あれこれ仕事があって、金曜日まで海外にいたら「夕方の飛行機で帰ります」とは言えません。

――「ご飯でも」とか「飲みに行きましょう」というのが自然な流れですよね。

相川:はい。そうなると、土曜日の朝の便に乗ることになり、帰宅は土曜日の昼過ぎとか夕方。翌週も日曜日から海外に、というスケジュールのせいで、1週間まるまる家族と過ごす時間がとれないこともありました。

子供が生まれたら、本当に寂しいだろうな、と思ったのが転職の動機としては大きかったですね。

――激務の中、転職活動の時間を作るのは大変だったのでは?

相川:幸い、会社の外に出て行く営業の仕事だったので、お客さんに会いに行くふりをして、面接を受けにいったりしてました。外出しない財務経理などの人は大変だろうと思います。

今の方がリモートワークが普及しているので、やりやすいかもしれませんね。

――就職先の情報はどうやって集めていたのでしょう?

相川:基本は人からの紹介です。転職サイトにも登録していましたが、大量の情報が送られてくるので、どういう基準でどこを選べばいいのか、誰を信頼すればいいのか、わからなくなってきたのでそうしました。

――面接の対策も、紹介者に聞いたのでしょうか?

相川:実は対策らしきものは一切しませんでしたね。ケース面接の対策本などを使うと、思考が一辺倒に偏ってしまう気がしたので。

「30代前半で年収1,500万円弱。生涯年収は同じくらい高い」「働く人のキャラは真逆」総合商社とコンサルの違いとは?

――商社からコンサルに実際に転職してみてどうでしたか? まず、収入のお話からお願いします。

相川:商社もコンサルも高給なのは間違いないです。

ただ、商社が能力や成績にかかわらず年次が上がると給与が増えるのに対して、コンサルは成績を伸ばせる人がどんどん給料が上がる実力社会です。仕事ができる人に限っていえば、同年代でなら商社より年収は上回ります。

――相川さんが勤めるコンサルの年収はいくらですか?

相川:平均的なラインは30歳くらいで年収1000万円で、優秀な方だと30代前半で2000万以上稼ぐ方もいますね。私はコンサルに入社してから毎年200万円くらいずつ増え、30代前半の今は年収1,500万円弱まできました。総合商社の同期より少し多いはずです。

――できる人だと、商社よりコンサルの方が年収はよいのですね。

相川:そうですね。ただ生涯収入を比べてどちらの方が多いと言い切るのは難しいですね。

まず商社には退職金がありますが、コンサルにはありません。さらに海外出張の手当は圧倒的に商社の方がしっかり出ます。ですから、海外駐在があると、商社マンはさほど苦労せずに稼ぐことができます。

――商社とコンサルでは働いている人の性質も違いますか?

相川:真逆です。商社は人に好かれてなんぼなので、“パリピ”が多い体育会系の世界です。先輩が後輩の面倒をみたり、子供が生まれたら出産祝いをくれたり、といった濃い人間関係があります。その分、無理矢理飲みに連れて行かれたりもしますが。

温かい人が多いので、人に関しては正直、商社の方が私は好きです。すごく仲良くなった人も多く、前職の同期とは今でも飲みに行ったりします。コンサルにはそういった付き合いは一切ありません。

――本当に全くないのですか?

相川:そもそも、上の人間が下を飲みに誘うことが禁止されていますからね。女性と2人でタクシーに乗るのもNG。セクハラ認定されてしまいます。

一方で商社は人の接触については甘いですね。飲み会では先輩の両脇に女性を配置したり、お客さんをご招待した席に事務職の女の子を呼んで、お酌をしてもらったり、というのも、いまだにごく普通にあります。

商社マンの強みは「コミュ力」「専門性」「泥臭いリサーチ力」

――コンサルに転職して役に立った商社時代のスキルはありますか?

相川:正直あまりないのですが、「コミュ力」「専門性」「泥臭いリサーチ力」はコンサルよりも商社マンの方が上だと思います。

――それぞれどんなスキルなのですか? ぜひ詳しく教えてください。

相川:まずコンサルの人はコミュニケーションがあまり上手ではありません。なにか話をするときにも、課題解決が癖になっているんです。

「恋人にフラれたんです」という話題でも「問題は3つありますね」という分析から平気で話し始めます。だから、話はあまり面白くないし顧客対応は下手ですね(苦笑)。プレゼンでアイスブレイクもしませんし、ビールの注ぎ方も知りません。

食事の時、最初に「嫌いなものはありますか?」と尋ねたり、たばこを取り出した相手に灰皿を渡したり、といった気配りができるのは商社マンならではの強みでしょう。

――では、「専門性」については?

相川:自分が扱っていた分野については商社マンの方がコンサルよりもはるかに深く広い知識を持っている、ということです。

たいていのことはネットで調べられる時代ですが、それでも、現場に行かないと触れられない貴重な情報は数多くあります。私であれば鉄鋼ですね。

またコンサルの人は「泥臭いリサーチ」も苦手です。

――コンサルタントでも泥臭いリサーチでは商社マンに負けるのですね。

相川:コンサルの人も「泥臭くリサーチをかけています」と言うのですが、商社マンからするとぜんぜん泥臭さが足りませんね。

たとえば「コンビニは設置してある監視カメラを実際に使っているのか」という情報が必要になった時、コンサルの人はインタビュー会社を通じてヒアリングをかけようとしていました。1時間10万円くらいの費用がかかるのに......。

――相川さんはどうされたのですか?

相川:オフィス街のコンビニに行って、店長さんに名刺を見せて直接話を聞きました。10分で終わりました。こういうフットワークの軽さは商社マンならではですね。

――他の商社マンが苦戦する中、相川さんがコンサルで毎年昇進・年収アップを実現した成功要因はなんですか。

相川:もともと、考えることが得意だったからだと思っています。考えるのが好きというだけでなく、考える力には自信もあったので、コンサルを選びました。

やりたいことはなにか、ではなく、できることはなんなのかを考えて判断することが大切です。私のように考えることが得意な人にとってはコンサルは非常に楽しい仕事ですよ。

コラム作成者
Liiga編集部
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