Big4 FASと中小FASの違いとは?FAS(ファイナンシャル アドバイザリー サービス)業務内容を徹底解明
2016/08/06
#総合コンサルの仕事内容

はじめに

近年、ファイナンシャル アドバイザリー サービス(以下FAS)業界へ転職する人、また新卒で就職する人が増えております。特にBig4と呼ばれる、会計系の4社(EY、デロイト、PwC、KPMG)系列のFASではマーケットの賑わいもあり、大量に採用を行っております。

FASはM&Aや事業再生といった分野で活躍している業界ですが、その実態についてわからない方も多いのではないでしょうか。また、未経験の方も採用しており、実情を知る機会がないまま就職してしまう場合も多いと思います。

そこで今回は、長年実務に携わってきたD氏にインタビューを行いました。入門的な内容になっておりますので、FASに馴染みのない方、必見です。

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まずは基本的な仕事内容を知ろう

―本日はよろしくお願いします。現在はベンチャー企業で管理部の業務についているということですが、これまでの経歴をうかがってもよろしいでしょうか。

簡単な経歴を説明すると、理系学部を卒業後、エンジニアとして数年働き、その後公認会計士に転じました。

4大監査法人に就職後、同系列のFASに転職をしました。その後、中小の会計系コンサルティング会社で、事業再生、M&A戦略や事業戦略といった経営よりの仕事を経験してきました。現在は、ベンチャー企業の管理部でIPOに向けた業務を行っています。

-FASについてご解説いただきたいと思います。具体的にどういった仕事があるのでしょうか?

専門的に分けるとかなり多岐にわたるのですが、所属していたBig4系の会社の業務をもとに主要なものをあげると、以下の6つがあります。

1. M&Aアドバイザリー
2. デューディリジェンス
3. 事業再生アドバイザリー
4. バリュエーション
5. PMI(Post Merger Integration)
6. フォレンジック

―各業務の内容は、どのようなものでしょうか

それぞれの業務について、簡単に説明したいと思います。

1.M&Aアドバイザリー

M&Aアドバイザリーは、投資銀行のIBDで馴染みのある方が多いと思いますが、基本的に行う業務は同じです。大手の投資銀行では、最低でも100億円以上のディールしか扱わないことが一般的ですが、Big4のFASでは投資銀行より規模の小さい案件が中心となります。

Big4も100億円以上のディールを扱おうと思えばもちろんできるのですが、投資銀行は営業力がすさまじいため大きい案件を獲得し、結果的にすみわけができているというわけです。私から見ると投資銀行は金の亡者というイメージが強いですね(笑)。

その他、投資銀行がほぼ参入していない事業領域として、税務的要件が強く関わってくる同族会社内M&Aがあります。非上場企業等で、複数子会社を有し、節税用の資産運用会社を持っている場合や、子息等への相続を意識した組織になっている会社のM&Aは税務に関する知識が必要なため、会計系ファームのFASが強みを有します。これはBig4よりも税務業務を得意とする中小のFASが得意としていますね。

2.デューディリジェンス

続いて、デューディリジェンス(以下DD)ですが、DDにはいくつか種類があります。

有名なのが、財務DDと法務DDです。ほかにはビジネスDDや人事労務DDといった領域があります。

財務DDとは、公認会計士の監査業務に近いものがあり、買収にあたって、買収先企業のPLやBSをチェックして財務上問題がないかを確認します。

こちらは監査業務に近いこともあり、公認会計士の方が多く所属しています。私自身もそうでしたが、会計士出身の方が活躍している領域になります。

法務DDは、文字通り、契約書を中心に法務上のリスクがないかをチェックする業務で、弁護士に依頼することがほとんどであり、人事労務DDは社会保険労務士に依頼することが多いです。

ビジネスDDですが、こちらは逆に事業会社出身の方が重宝されるDD領域です。該当事業のビジネスモデル含め、ビジネスの価値を算定するわけですから事業会社でバリバリ経験があり、「事業の理解」ができる方が活躍します。特にM&Aの場合、複数の事業が一緒になった時のシナジー効果を発想できる人であれば、社内でそれなりの地位を築けるでしょう。よって、FASに事業会社出身の人が転職して活躍するのはこういった業務があるのも一つ要因です。

3.事業再生アドバイザリー

事業再生は経営難に陥った会社を、経営戦略や財務的な観点から再生に導く仕事です。Big4が行う事業再生アドバイザリー業務は、不要な資産や事業を売却するなどして資金繰りを改善させる、財務的アドバイザリーが中心になります。

ただ中小のFASの中には、財務アドバイザリーに加えて、再生会社の中に人材を送り込むいわゆるハンズオンを行っているところがあります。ハンズオン業務は、経営戦略の立案や社内の仕組化等の業務を行うため、FASから事業会社に転職した時に非常に力を発揮できます。業績的に下向きのクライアントが多いため報酬が得にくくまた時間もかかることから、Big4や収益重視のコンサル会社は敬遠する領域といえるでしょう。

4.バリュエーション

会社の事業価値や株式価値などを算定する業務です。これはポジションによっては当該作業のみしかしないこともあるため、バリュエーション職人を目指してスキルアップしたい人や内向きの作業が好きな人にフィットするような気がします。

一方で、会社のビジネスの現場を深く理解することは難しいため、最大のカギとなる事業計画を作成する能力を持っていないなど、事業会社を目指したい人には難もあります。

5.PMI(Post Merger Integration)

事業の買収が終わった後に、システム統合や、事業戦略の実行のため管理体制の構築から文書の作成といった泥臭い部分を行う業務になります。これは前述のハンズオンに非常に似ている業務のため、Big4ではほとんどやっていないのが現状ですが、経験できれば後に事業会社で活躍するキャリアパスが描きやすくなります。

6.フォレンジック

フォレンジックに関して私自身は経験がないのですが、おおまかに説明すると不正調査を目的にハードディスク等の中身をチェックするといった警察がやるような仕事をしています。Big4の場合、その中でも会計や財務を基礎にした不正調査になると思います。通常のFAS業務からはやや距離があるイメージがあり、他のFASメンバーからは何をやっているのかイマイチ理解されていない部署になるかと思います。

中小ファームはFA業務全体を経験できるが、給与はBig4の方が良い

―いわゆる大手であるBig4と中小のファームで働くことはどういった違いがあるのでしょうか?

ビジネスの形態としてBig4はFA業務が分業体制となっており、一部分しか担当しません。例えば、財務DDだったら財務DDばっかり、バリュエーションだったらひたすらバリュエーション。もちろん、ほかの領域も挑戦できる可能性はありますが、部門移動もしくは案件へ引っ張ってくるパートナーとの人間関係が必要になります。

一方、中小のファームだとFA領域を一貫して担当できる可能性が高いです。そのため一通りの経験を積むことができるので、独立を考えている場合や事業会社の経営企画、CEO、CFOなどをキャリアパスとして考えている場合は、中小ファームで経験を積むことをおススメしたいです。

転職する際も同業のBig4をぐるぐる回る形になり同じ業務ばかりしているので経験年数が長い方でも意外にFA業務全体の流れを理解していない方がいます。

またこれはBig4に限らない話ですが、FAS部門内での業務担当は、はじめの2~3年は提案資料や成果物作成のためのパワポ・エクセルつくりが中心となります。その後案件を取仕切る立場になって、スキルや経験が一気に広がります。したがって短くても5年は勤めないと事業会社で役に立つスキルは身につかないと考えて良いと思います。

しかし、給与は大手であるBig4のほうがいいので、安定して高い給与が欲しい場合はBig4を選ぶべきです。といいながらも投資銀行に比べたら給与は高くないです。マネージャーで、1000万代前半~という感じなのでお金だけ求めていたら投資銀行にいたほうがいいです。ビジネスとしても先に述べたとおり大型案件ばかり投資銀行はやっているので高い給与を払える仕組みになっています。

―公認会計士は多くFASに転職しているイメージですが、簡単にできるものなのでしょうか?

4大監査法人ですと、基本的に系列のFASに移りやすいため転職する方は多くいらっしゃいます。しかしながら、これまでの監査業務とは当然異なるので、最初のポジションは下がっての転職となるイメージです。

―これまで様々な業務について解説していただきましたがどの業務領域で力を伸ばしていったらよいのでしょうか。

先ほど少し触れましたが、事業再生でのハンズオンやM&AにおけるPMIは事業会社で経営戦略や内部の仕組みをつくりあげる力がつきます。

事業再生する対象の会社はお金がない会社ばかりですので、ビジネスとして成り立たせるには非常にシビアなクライアントです。そしてその中で再生して結果を出すまでに地獄のような日々を送らないといけません。リストラを主導しなければいけない場合もあり、胃がキリキリする場面に多く遭遇できます。会社が生きるか死ぬか瀬戸際の中で事業再生を担い、結果を出すことは並大抵の努力ではできません。

そのため、事業再生でのハンズオンやM&AのPMIを経験できるFASを探してみることをおススメいたします。例えば、有名なところでいくとリヴァンプや経営共創基盤等があげられます。キャリア志向とマッチし、自信のある方は挑んでみてもいいと思います。

―FASに転職するにあたって何か資格や必要な準備はありますか?

絶対に必要な資格は特にないですが、FAS業務の多くは決算書類を分析する事から始まるため、簿記1,2級くらいはとっておいても損はないと思います。

―どうもありがとうございました。

ありがとうございました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。入門的な内容でしたがFASの業態を知ることがうかがい知ることができたのではないでしょうか。

もし興味のある方は、下記のリンクからエージェントとコンタクトをとることもできますのでご確認ください。

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コラム作成者
Liiga編集部
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