「コンサルティングは虚業ではない」。KPMGコンサルティングのパートナーが語るコンサルタントを極める覚悟と教訓
2020/12/22
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コンサルティングは「虚業」であるという話を聞いたことがあるだろうか。確かに、コンサルタントは事業会社の「実業」を支える“黒子”の役割に徹することもある。ゆえに、自分がビジネスの当事者でありたいという理由で、事業会社への転職を決意するコンサルタントも少なくない。しかし「コンサルティングは虚業ではない」と力強く語るのは、KPMGコンサルティング株式会社の執行役員パートナー・山根慶太氏だ。そこに見え隠れする覚悟とキャリアの変遷で得た教訓を深く掘り下げる。

〈Profile〉
山根慶太(やまね・けいた)
KPMGコンサルティング株式会社 執行役員 セクター部門 TMT Japan リーダー、パートナー。
外資系コンサルティングファームを経て2014年に入社。現在、Technology、Media、Telecommunication(TMT)部門の責任者。通信、ハイテク、エンターテインメント業界を中心に、新規ビジネス立ち上げ、DX支援、Data&Analytics活用サポート、CRMなど、事業戦略およびオペレーション改革に関する幅広いプロジェクトに携わる。

コンサルタントの必須スキル「ストレス耐性」は経験で身につく

――コンサルティング業界に転職しようと思ったきっかけを教えてください。

山根:自分から応募したわけではなく、ヘッドハンターに誘われて、コンサルティング業界に足を踏み入れました。しかし結果として、20年以上この業界に籍を置いています。

その理由の1つは、コンサルティングの世界では「成果主義」が重んじられるということです。すなわち結果を出すほど給与に反映される。非常にシンプルです。コンサルタントになりたいという人は、私も含め、成長して結果を残したいというアグレッシブな考えを持つ人が多いと思います。今も昔も結果に応じて報酬が支払われるという仕組みは、コンサルティング業界の魅力の1つだと考えています。

――今と昔でコンサルタントの働き方に変化はあると思いますか。

山根:非常に変化していると捉えています。私がコンサルタントに転職した頃は「パワハラ……何それ?」という時代でした。

例えば、あるヘルスケア企業の業務改革プロジェクトに配属されたときは、右も左もわからない状況で、上司から「改善のテーマを洗い出しておいて」と言われて、解決策が見出せずに困ることがしばしばありました。

その後、自分なりにポイントとなる部分を延々と考えて、下書きを紙に書いて上司に提出したのですが、上司は「何を言っているのかわからない」の一言。どの部分ができていないのかフィードバックしてくれない。オフィスの屋上で休憩しながら「何がいけないのか?」と、ひたすら考え続けました。

今ではどのコンサルティングファームもシステム化されたフォロー体制があります。ただ、我々世代のコンサルタントは、このようなことを経験しながら、必死に働き続けました。 description

――そのような厳しい経験も、後から振り返れば役に立っていると実感しますか。

山根:今思えば、物事を「構造的に考える力」が身につきました。当時は「事実(ファクト)」と「意見(オピニオン)」の切り分けもできず、考えが全く整理されていませんでした。今となっては、クライアントのビジネスにおける課題を構造化して整理した上で、ボトルネックを明確にして打ち手を考える、という「ロジカルシンキング」の訓練だったと納得することができます。

――それに比べると今の若い人には少し繊細な印象を持ちますか。

山根:若い人だから繊細、という印象は特にありません。確かに「ストレス耐性」はコンサルタントに不可欠な資質の1つです。またクライアントとの折衝だけでなく社内メンバーによる何重ものレビューや評価に対しても、精神力の強さを問われるかもしれません。

ただし、ストレス耐性は、さまざまな経験をする中で身につけることができる能力だと考えています。いわゆるランナーズハイのようなストレス環境下で目標を達成した後の爽快感、高揚感が欲しくてまた厳しい目標に挑むことの繰り返しで鍛えられるものだと思います。実際、パートナーレベルになる人は、鍛えられて良い意味で「鈍感力が高い」方が多い印象です。

コンサルタントの世界はプロジェクト単位で動くので、多少ストレスがかかる現場でもその間は向き合って乗り切る覚悟は必要ですね。

経験を重ねるうちに見えてきたマネジャーとパートナーの違い

――マネジャーとパートナーの視座の違いについて教えてください。

山根:マネジャーは、現場を見ます。プロジェクトを管理して、さまざまな課題に対して具体的な解決策を考えて、メンバーに仕事をお願いして、計画通りに物事を進めていくことがゴールになります。

一方、パートナーは複数のアカウントやプロジェクトを鳥瞰(ちょうかん)する視座が必要になります。また、営業や提案の活動を通じて、市場、クライアントの課題やニーズに直接触れることで、より大局的な視点で物事を考えます。

もう一つパートナーの重要な役目として「メンバーが働きやすい環境を作る」ことがあります。そのためには、メンバー一人ひとりが求めていることに向き合って、可能な限りそれに応えることが大切です。

――メンバー一人ひとりに寄り添うコミュニケーションは、どの時点から意識されたのでしょうか。

山根:シニアマネジャーの頃ですね。個人的には、コンサルタントは「マネジャーになるまでは勉強」だと考えています。マネジャーになって初めて、クライアントからもメンバーからも一目置かれるようになります。プロジェクトをリードする楽しさを経験できるのも、マネジャーになってからですね。

そしてシニアマネジャーになると、だんだん余裕も出てきて、メンバー一人ひとりをケアしながら、いざとなれば自分でリカバリーすることが可能になります。シニアマネジャー以降は「一匹狼」では務まりませんね。コンサルタントとしてよりステップアップしていくために、社員同士のコミュニケーションとコラボレーションが求められます。

――コンサルティング業界では似たような職位・業務であっても他のコンサルティングファームに転職することも少なくありません。それに意味はあると思いますか。

山根:結論から言うと、意味は2つあります。1つ目は、1つのコンサルティングファームにいると、特定の文化に染まってしまって視野が狭まるリスクがある。転職することで、自分の視野が広がるというケースはよくある例だと考えています。2つ目は、自分が他のコンサルティングファームでも活躍できるか、自分を試せる機会になります。これによって、自分のスキルの希少性や市場価値をフラットに認識することにもつながります。

自分は、2014年にKPMGコンサルティングに転職してきました。当時のメンバーは、60人くらいです。生まれたばかりの組織だったので、「会社と自分の成長をシンクロさせていきたい」という思いが強く、期待に胸を膨らませました。

個人的には、自分と馬が合うコンサルタントがいるファームに籍を移すことや、チャレンジしたい領域に注力している企業へ転職することなどは、悪くないと思います。もちろん、1つのコンサルティングファームにずっと在籍するキャリアを否定するつもりはまったくありません。人によるかなという印象です。

KPMGコンサルティングの特長は「フェアネス」精神があること

――KPMGコンサルティングの良さは何だと思いますか。

山根:クライアントに対して、常に徹底して誠実であること、つまり「フェアネス」の精神を持っていることだと思います。業績の良し悪しにかかわらず、中長期的に誠実にクライアントとお付き合いをすることを前提に取り組んでいます。

具体的に申し上げると、クライアントが前向きな施策であってもそれが中長期的にマイナスの結果をもたらすのであれば、やらないという判断をすることもためらいません。

クライアントにとって、本当に良い結果をもたらす施策は何かを、常に自分事として考えているのです。

それができるのは、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、会計監査などあらゆる角度から、クライアントと丁寧にコミュニケーションをとれる体制が整っているからだと思います。

また、社内の派閥争いや出身会社の偏りがないところもよい点です。余計なことを考えずに、クライアントへの価値を最大化することに、自分のリソースを全力投入することができます。 description

――KPMGコンサルティングだからこそ得られる成長機会は何ですか。

山根:私は「成長の機会は自分で作る」ものだと考えています。具体的には「目安となる期間を設定する」「クライテリア(KPI)を作成する」「達成できなかった原因を考える」という3つのステップを自らに課すようにすれば、極論どのような環境でも成長機会を作ることは可能になります。これらを基礎にしつつ、弊社ならではの成長機会について考えると、規模が小さい分、さまざまな案件に携われることです。

――山根さんの考える成長とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

山根:あらゆる業界で活躍されている方と関わり知見を養うことで、人間としての厚みをもっと持つことだと考えています。根底にあるのは「人が好き」ということかもしれません。今まで厳しい出来事があってもコンサルタントを続けられたのは、さまざまな人との関わりや支えがあったからだと思います。

一方で、最近は「多様性」が社会から求められています。例えば、データサイエンティストは、チームにいればとても頼もしい存在です。でも、その人が「人が大好き」である必要があるかというと違います。素早く分析しインサイトのアイデアを抽出してくれれば、クライアントとの折衝はチームでサポートすれば良いと思います。結局今は「人材(タレント)の厚みがあるチーム」が強いのです。自分の得意領域を見極めて、その領域を伸ばすことが求められるのかもしれません。

コンサルタントを辞めたいと考えたことは一度もない

――山根さんにとってキャリアの転機となったお仕事はありますか。

山根:シニアマネジャー時代に経験した「通信キャリア系の地域拠点集約プロジェクト」です。この案件を通じて「机上論では正しいけれど進まないことがある」という学びを得ました。

どういうことかというと、通信インフラに与える変化がもたらす社会的な影響や、拠点を集約することによる従業員の雇用など、ビジネスの合理性だけではないさまざまなファクターを考慮しなくてはならなかったのです。骨の折れる仕事でしたが、自分の視野を広げることにもなり、昇進にもつながった印象的な案件です。

――KPMGコンサルティングでうれしかったご経験を聞かせてください。

山根:成功したプロジェクトで、クライアント幹部の方からビデオレターをいただいたのが一番うれしかったです。やはりコンサルタントとしての一番のやりがいは、クライアントから感謝されることです。よくコンサルティングは「虚業」で、自分のビジネスをやりたいから転職あるいは起業するという話を聞きます。

ただ、私はコンサルタントを20年以上続けてきて、コンサルティングを「虚業」だと思ったことは一度もありません。すべてのプロジェクトを「自分事」として、クライアントに対して誠実に向き合ってきました。コンサルティングを「虚業」と考えてしまうのは、コンサルタントとしてのプロフェッショナル意識が足りていないし、コンサルタントとして「浅い」と思います。

――そんなお話を聞くと、コンサルタントを辞めようと考えたことはなさそうな印象を持ちます。

山根:そのとおりで、一度もないですね。「自分の視野をもっと広げたい」「業界・業種の理解を深めたい」「いろいろな方々の課題解決をお手伝いしたい」。やりたいことはまだまだ山ほどあります。

自身の経験を振り返って、コンサルタントとして長く働き続けるためには、常に学び続ける「知的好奇心」が生命線だと感じます。私が管轄するTMT領域のクライアントは国内外のプレゼンスを高めるために、急速に進化をし続けています。そのような方々に、コンサルタントとして提供できる価値とは何か。自問自答を繰り返しながら、答えを探していきたいと思います。 description


コラム作成者
Liiga編集部
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