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一つの分野だけでなく、複数の異なる分野に精通する人材は希少といえる。今回は「金融」と「PMI」(M&A後の統合効果を最大化するための統合業務)という専門性の高い分野を横断して活躍する2人に話を伺った。「金融×PMI」という領域では、金融バックグラウンドが非常に重要だという。金融機関での経験を生かして、さらなるキャリアアップを望む人に、金融機関向けPMIならではの魅力を伝える。
金融機関向けPMIならではの「攻め」と「守り」
――金融機関向けPMIと事業会社向けPMIにはどのような違いがありますか。
竹井:両者の主な違いは、3点あると考えています。
1点目は、金融機関向けPMIでは「金融当局」の監督下で業務を進める必要があることです。事業会社向けPMIでは、独占禁止法をクリアできるかどうかが重要なハードルになるケースが多いのですが、金融機関を対象とするディールでは、それに加え、当局の厳格な金融規制に準拠してM&Aプロセスを進める必要があります。
2点目は、金融機関のオペレーションは独特の性質を持ち複雑といえますので、PMI対応時には、このオペレーションの理解がまず必要となります。金融機関での勤務経験があれば、その知見を生かせる場面が多々あるでしょう。
3点目は、金融機関向けPMIのディールの相手(カウンター)は、金融機関に入社後いくつもの部署をローテーションで経験し、各部署での実績を認められた後に経営企画部門などに配属され、M&Aや組織再編を担当されている方が多いことです。当然ながら、当社側もそのような”やり手”の方に対応できる人間が必要になってきます。
このように、金融機関向けPMIでの業務は、少し独特な性質を持っています。ですから、事業会社向けPMIに携わっていた人が、金融機関向けPMIの案件にアサインされる場合、その相違点を事前に知っておくと、よいスタートを切れるかと思います。
――中嶋さんは新卒でメガバンクに入社されています。メガバンクでの業務とPwCアドバイザリーでの業務を比べて、どのような違いを感じていますか。
中嶋:前職では、金融機関ということで、行内規定を厳守し正確に業務を遂行する「守り」が重要でした。現在は、M&Aアドバイザリーという業務の性質上、日々変化する状況に柔軟に対応しながら、クライアントやディール固有の課題を、タイムリーに最適解へと導くことが求められ、実行力、業務推進力、強いリーダーシップでの「攻め」の部分が重要視されていると考えています。
ただし、金融機関をクライアントとする以上、コンプライアンス、リスク管理、内部監査などの「守り」における重要論点を押さえることも不可欠です。「攻め」と「守り」をバランスよく両立させながら、アドバイザーとしてクライアントへの付加価値を最大化させることを目指し、日々業務に向き合っています。
――今まで経験された金融機関向けPMIの案件で、最も難しさを感じたのはどのようなときですか。また、それをどのように乗り越えられたのでしょうか。
竹井:これまで、どの案件でも、それぞれ固有の難しさを感じましたが、「金融機関は社会におけるインフラである」という点は、共通していつも難しいと感じる部分です。事業を展開している地域や顧客に混乱を絶対に起こさない形でPMIや組織再編を進める必要があります。
例えば、拠点を縮小するような案件の場合、雇用の見直しが行われることもあります。人員削減という選択がなされれば、対象となった従業員は、早く次の仕事を見つけたいと思うでしょう。一方、自分を担当してくれていた従業員が突然いなくなってしまうと顧客は困ってしまうので、雇い主である金融機関から見れば、拠点縮小の実行時点までは従業員に業務を継続してもらう必要があり、そのような場合、どのように従業員をつなぎ止めるかが論点になります。
また、拠点を縮小するということは、それまで取引していた顧客に迷惑を掛ける可能性もあります。いつもお金を借りていた銀行から借りられなくなってしまう、ということは顧客によっては大問題になり得ます。そのため、顧客にどのように説明を行うかも論点になってきます。
実際、こうした問題を解決に導くために、私たちはしっかりした「リテンションプラン」や「コミュニケーションプラン」を作り込み、クライアントと徹底的に話し合って綿密な計画を作成し、実行に移すようにしています。
中嶋:プロジェクトマネージャーとして関与した金融機関の企業買収に対するPMI案件では、買い手と売り手、両者のバランスをとる難しさを経験しました。売り手となる対象会社は、統合に抵抗や不安を感じることもあり、統合方針についての交渉時など、センシティブになる局面は少なくありません。利害の相違がある中で、対象会社の要望をくみ取りながら、買い手側のアドバイザーとしてクライアントに満足していただける形で統合を推進することが求められます。
私の場合、プロジェクト期間中は対象会社に常駐し、解消すべき課題や懸念事項について各関係者と時間を惜しまずに日々議論することで信頼関係を築きました。クライアントが当初もくろんだ事業価値を実現させるため、双方の主張を理解した上で橋渡し的な役割を果たすことを常に意識しました。
最終的には、二者間で円満な関係を築け、無事にプロジェクトを完了することができ、私にとって大きな成功体験の一つとなりました。
「金融×PMI」を成功させるために大切なコミュニケーション力と学習意欲
――金融機関向けPMIで活躍するにはどのような資質が求められますか。
中嶋:「コミュニケーション力」ですね。PMIのフェーズではアドバイザーとして多くのステークホルダーを巻き込みながらダイナミックに統合を推進する必要があるため、高いコミュニケーション力が不可欠です。さらに、金融機関での勤務経験があると、クライアント側の内部事情や要望を具体的にイメージすることができます。これは、プロジェクトを円滑に遂行する上で重要な要素だと考えています。私自身メガバンクでの経験が当社の業務で生かされていると感じることが多々あります。
竹井:「学習意欲」が非常に大切だと考えています。金融ビジネスは幅広く、その業務は、先ほど申し上げた通り、複雑で難しいです。金融機関の外側にいる私たちは一層常に学び続ける姿勢がないと、金融ビジネスを十分に理解できませんし、アドバイザーとしての価値を提供し続けることができません。
中嶋が述べたように、金融機関での経験は非常にプラスになります。しかし、仮に金融機関の経験がなくても、学習意欲が高ければ活躍できます。実際に私たちのチームにもそのようなメンバーがいます。
――金融機関向けPMIを成功させるために大切なことは何だとお考えですか。
竹井:いくつか重要なポイントがあるとは思いますが、まずは全体感を捉えたスケジュールを作成することをいつも心掛けています。PMIは多くの人が関与しますが、それぞれが「何を」「いつまでに」「どのように」終わらせればよいかについて共通認識を持つために全体スケジュールが必要になります。それがないとプロジェクトメンバーが動き出せません。
――PMIの業務はオンスケジュールで進めることが難しいと聞きます。その点、金融機関向けPMIと事業会社向けPMIだと、スケジュールに対する意識に違いがあるのでしょうか。
竹井:スケジュール通り進めることが難しい点は、両者に差異はありません。ただ、金融機関向けPMIでは想定通りのスケジュールで進まなかった場合に備えて、混乱が生じないようにコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を準備しておくことが多いです。事業会社向けPMIでもこのようなプランを作ることはありますが、金融機関向けPMIは、先程述べたように金融機関の「社会のインフラ」としての役割の影響からより厳密なものを準備します。
中嶋:金融機関向けPMIを成功させるためには、特定されたリスク、課題に対し優先順位付けを行い、所定の時間軸に基づいて対処することが大切です。買い手と対象会社間のあらゆる差異が統合の過程における障害となり得ますが、それら全てを短期間で解消することは現実的に難しいですし、全てを解消せずとも要所を押さえることで、経営管理体制を構築し事業価値の実現に近づけることは可能であると考えます。
――どのような判断基準で優先順位を見極めるのでしょうか。
中嶋:対象会社の「As Is(統合前の現在の姿)」と「To Be(将来のあるべき姿)」を明確化し統合における基本的な方針を決定した上で、主要な領域における論点を整理します。財務経理、法務、コンプラ、人事、IT、オペレーションなど、考慮すべき領域は幅広くありますが、各領域において現状把握を行い、統合基本方針に照らして対象会社の「As Is」を評価することにより「To Be」とのギャップが特定できます。買い手と対象会社間の認識のすり合わせは必要になりますが、特定できたギャップが優先的に取り組むべき重要なリスク、課題と考えられるでしょう。
金融機関のM&Aや組織再編のプロフェッショナルになる好機
――御社の金融機関向けPMIの業務では、どのような経験を得ることができますか。
竹井:当社のFSチーム(金融機関向けコンサルティングチーム)の中心となる業務は、金融機関向けPMIと組織再編です。今後も金融業界の再編は進んでいくでしょう。一方で金融機関は人件費を含めたコスト削減にも取り組まなければなりません。その結果、M&Aや組織再編のような有事対応は外部に頼る比重が大きくなってくると思います。
そのような環境下で、金融機関とリレーションを築くことができている私たちのチームは、M&Aや組織再編のプロフェッショナルになるためのチャンスが豊富にあると考えています。
ここ最近は、クロスボーダー案件も非常に増えています。海外常駐案件もあるため、海外でビジネス経験を積みたい方にとっては非常に魅力的なポイントだと思います。
また、当社では、自分のやりたいことを主張すれば、M&Aに関連したさまざまな成長機会を得ることができます。各チームの垣根を低くし、チーム間の人材異動も容易です。希望すれば「デューデリジェンス(DD)」や「ファイナンシャルアドバイザリー(FA)」などのPMI以外のM&A業務に携わることも可能です。
さらに、近年、暗号資産などのデジタル案件も少しずつ増えてきています。今後、このような最先端の分野に携われる機会が増えていくと予想しています。
――御社のFSチームは、どのような人材を求めていますか。
竹井:金融機関で勤務経験のある方にはぜひ来ていただきたいと思っています。もちろんコンサルタントやアドバイザー経験者も大歓迎ですが、私たちのチームでは必ずしもこの経験がなくてもいいと考えています。これは、私たちのチームの特長といえます。
中嶋:私自身、メガバンクからコンサルタントに転職をしましたが、結果として、現在の業務は合っていると思いますし、金融機関での経験を生かせることにやりがいを感じています。組織風土や業務内容が異なるため、金融機関からコンサルティングファームへの転職は大きな挑戦になると思いますが、私たちFSチームのメンバーが全力でサポートしますので、同じようなバックグラウンドを持つ方にぜひチャレンジしていただければと思います。
竹井:既にPMIコンサルタントやアドバイザーは、業界にたくさんいますが、「金融」と「PMI」の双方を強みとしている人材はなかなかいません。コンサルタントやアドバイザー未経験で、M&Aのキャリアに転向することは通常難しいことですが、私たちは、金融機関での経験がある方であれば、受け入れる体制ができています。自身のキャリアに「希少性」を持たせて価値を上げたい方を、お待ちしています。