LayerX代表取締役CTO・松本勇気のキャリア戦略論。コードが書けないところから最速でキャッチアップするには

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キャリアを築く上で常に課題となるのが、スキル、収入、タイミングなど数ある要素の中で、何を重要視すべきかということだ。ITエンジニアにおいても、それは同様だ。そのようなときに参考になるのが、先達の考え方や経験だろう。

エンジニアやデータサイエンティスト志望の大学生に向けたオンライン就職イベント「外資就活Terminal」の基調講演第3回に登場したのは、学生時代からベンチャー企業でエンジニアとして働き、若くしてGunosy、DMM.com、LayerXでCTO(最高技術責任者)を務めてきた松本勇気氏だ。

松本氏は自身の経験に基づいて、エンジニアを志した理由、CTOを務める中で苦労したこと、キャリアを考える際に重視していることについて語った。

後半では、学生からの質問にも答えた。「注目している企業や技術は」「コンサルとエンジニアならどちらがお勧めか」「就職先を選ぶに当たって、ミスマッチやブラック企業を避けるためには、どこを見ればいいのか」など等身大の質問が並んだ。

聞き手は、外資就活Terminalを主催するハウテレビジョンの大里健祐CTO。【南部香織】
◇本記事は、2021年7月8日開催の外資就活Terminal基調講演の一部を編集したものです。

〈Profile〉
松本勇気(まつもと・ゆうき)
株式会社LayerX 代表取締役CTO。
東京大学工学部在学時の2013年に、アルバイトとして株式会社Gunosyに入社。その後正社員となり、2015年よりCTOとして技術組織全体を統括。また株式会社LayerXの前身となるブロックチェーン研究開発チームを立ち上げる。2018年より合同会社DMM.com CTOに就任し技術組織改革を推進。大規模ウェブサービスの構築をはじめ、機械学習、ブロックチェーン、マネジメント、人事、経営管理、事業改善、行政支援などを幅広く経験。2019年日本CTO協会理事に就任。2021年3月より現職。
大里健祐(おおさと・けんすけ)
株式会社ハウテレビジョン CTO開発部長。
受託システム開発の現場などで経験を積んだ後、2015年10月ハウテレビジョンに入社。外資就活ドットコムの開発に携わり、モバイルアプリの刷新やGo、ReactNativeの導入などをリードしてきた。2020年3月よりCTO。



コードが書けないのにCTO。寝るとき以外はコードを書いてキャッチアップした

大里:本日司会進行を務めます、外資就活ドットコムの開発・運営をしている株式会社ハウテレビジョン・CTOの大里と申します。本日のゲストスピ―カーは、株式会社LayerXの代表取締役CTOの松本勇気さんです。

松本:はい、よろしくお願い致します。本日は、私のこれまでの経歴やキャリアの中で、どういったことを考えてきたのかということ、またその上で、現在LayerXで何をやって、何を考えているのかについてお話しさせてください。皆さんからの質問は、ガンガンいただければうれしいです。

私は平成元年生まれで、今32歳です。2008年に大学へ入学して、卒業したのは2013年です。休学して起業したので、それがキャリアのスタートになります。その後、Gunosy、DMM.com、そして現在のLayerXという順番でキャリアを歩みました。まずはこの流れについて、お話しさせていただきたいと思います。

鹿児島県の片田舎に生まれて、バックグラウンドとしてはソフトウェアエンジニアなんて周囲に全くいない環境で育ちました。実家の裏庭から外を眺めると、民家なんて無くて芋畑と茶畑しか見えません。当時はコンピューターを使っている人もあまりいませんでした。そういう訳で、大学に関する情報も十分に無く、取りあえず1位を目指すという短絡的なモチベーションだけで勉強を頑張り、東大の理科一類に進学したというわけです。

大学に入学してからも、コーディングをバリバリやっていたなんてことはなくて、アルバイト先のイタリアンレストランでピザを延ばして、合気道のサークルに行って、授業に行って……という普通の学生でした。その時はエンジニアになるとはあまり思っていなくて、外資系コンサルティングファームに行こうぐらいに考えていた気がします。

じゃあなぜ今こんな道にいるかというと、大学のOB会がきっかけです。OBとの交流を通して、起業という選択肢が面白いと思いました。

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そこから初めて、学生起業に乗り出すわけですけど、それまで全くプログラミングはしたことがありませんでした。知人に誘われて最初にやったのが、AR(拡張現実)とSNS機能を組み合わせたサービスです。Google マップの位置情報と時間軸を組み合わせて、自分の人生のイベントを記録するサービスで、過去にも未来にも投稿できるという、少々コンセプチュアルなものでした。

そこで初めて、CTOという形を取りました。無謀ですよね、コードも書けないのに。分からないので、本当に寝るとき以外はずっとコードを書いていました。世の中にあるコードをとにかく触りながら、一生懸命キャッチアップしていったという感じですね。このサービスは大失敗してしまうんですが。その後3つのことをほぼ同時期に取り組んでいきます。

一つ目がLabitという会社で、時間割のアプリの開発。そこではiOSとRubyを使って、サービスを出しました。今はリクルートさんに事業を譲渡しています。二つ目が人材系事業をやっていた会社のお手伝い、三つ目がウェブサービスの開発を個人で受託したことです。

個人で受託したことで、プログラミングの技術を身に付けておけば自立できるという実感を得ました。そのことで、積極的にリスクを取っていくという、投資的な意思決定もできるようになりました。「失敗しても、最悪自分で稼げばいいや」と思えますから。この辺りからエンジニアのキャリアに振り切っていくことになります。

組織づくりで大事なのは、リーダーの意思、ビジョン、健全な組織であり続ける仕組み

松本:その後、創業2カ月くらいのGunosyにアルバイトで入社しました。入社した2013年1月は、僕は大学4年生でちょうど卒論を書く時期だったので、よく冗談で「左手で卒論、右手でコード」と言いながら、両方こなしていましたね。

当時としては非常に珍しかったのですが、僕のいたチームのメンバーは、ほとんどがデータサイエンティストだったんです。なので、ウェブアプリケーション、iOSアプリケーション、Androidが得意な人がいなくて、自分で全部やることにしました。

2013年3月には社員になり、勉強しながらやっていくうちに、プロダクト全体が見られるようになったので、2014年にプロダクト統括の執行役員になりました。2013~14年ごろは3カ月ごとにアプリをメジャーアップデートしていて、ほぼ違うサービスになっているような状況でした。その開発を、僕一人で回しているような時もあったくらいです。

そんな中で会社は急速に成長して、2015年に創業2年半で上場することになります。実はここでエンジニアが大量に辞めることに。組織を整えるのが追い付いていなくて、崩壊してしまったんです。僕がCTOを拝命したのは、そんな時でした。

組織改善のためにCTOになったんですが、本当に大失敗の連続でした。いろんな人たちから恨まれたり、経営陣と現場との間で板挟みになったり、かなり苦労しました。この辺りは他メディアで何度も話しているので割愛しますが、良かったら読んでみてください。

当時、僕はチーム内でも相当年下で、社内でも下から何番目かくらいの若造でした。そういった状況の中、スピード上場を支えた強い経営陣にいろんなことを指摘されて、ボコボコにされながらも、組織づくりを行った経験は非常に学びになりました。

その後、2016年には組織改善の結果も出てきて、新規事業担当にもなり、現在KDDIさんとの共同事業になっているニュースパスの事業リリース、LayerXの前身にもなっているブロックチェーンのR&Dチームの立ち上げ、売り上げを上げるためのパーソナライズアルゴリズムの刷新など、大きなインパクトを残すことができました。

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そして2018年10月に、DMM.comへ移ります。当時、そろそろGunosyのCTOの職を辞そうと思い、いろんな可能性を考えていました。その中で一つテーマとして考えていたのが、日本の課題を解決するということです。このままだと日本はまずいなと思っていたので。

大事なのは、生産性をソフトウェアでどう改善できるか、そのためには組織をどう変えるかだと考えていました。でもいきなり、大企業の組織改革ができるわけではありません。少しずつ実績を積まなければと思っていたところに振ってきたのが、そのチャンスでした。

当時のDMM.comは、グループ全体で3000人規模ぐらい、エンジニアがグループ全体で1,000人超くらいの組織で、僕に来たのはCTOとしてその組織改革を進めてほしいというオファー。でもCTOというポジションにこだわらず、人事や経営管理も担当しました。

この時は、自分の考える最高の方法を体系化して、それを全力で推し進めました。具体的には、DMM Tech Visionという組織のビジョンと向かう先を明確に定義して、それにひも付いたバリューを作る。さらにそのバリューにひも付いた戦略を作り、その進捗を逐次社内に共有できる透明性を向上させるなど、総合的に取り組んでいきました。

その土台の上で、小さな成功をたくさん積み上げていって、チーム全体の考え方を変えていく。一人一人が何も言わなくても同じ方向を向ける組織を、少しずつつくっていきました。

この時、エンジニアリングとは別に、大規模な経営の仕組みづくりを経験したことも自分を成長させてくれたと思います。Gunosy時代のデータサイエンスやKPIを見てきた経験を生かし、50以上の事業の数字を見ながら、推進か撤退かを判断するための経営管理の仕組みを築いていきました。

ただ最終的に一番大事なことは、リーダーの意思とビジョン、そして健全な組織であり続ける仕組みをつくることだと気付きました。組織というのは、その時のフェーズに合わせた最適な人がリーダーであるべきで、これを維持する仕組み、つまりガバナンスの設計が大事なんです。

そして、コロナ禍でデジタル化の機運が高まったことをきっかけに、LayerXへ移ることになります。僕はデジタル化で生産性を上げるのは、10年スパンで取り組むべきテーマだと思っていたのですが、ここにきて一気に波が来たわけです。それに貢献するのに一番良い場所として、LayerXを選びました。

資本、時間、体力。キャリア戦略には、これらのリソースをどこに割くのかが重要

松本:ここからは、僕がキャリア選定で重要視していることについて、お話ししたいと思います。僕らが持っているリソースというのは、資本、時間、体力の三つだけだと思うんです。これらのリソースをリスク算定しながら、自分が想定するリターンを得られる適切なところに割り当てるのが、キャリア戦略だと考えています。

当初は資本、つまりお金がないでしょうから、時間を何に割くかが重要です。その時に自分の意思だけではなく、市場環境や需要も意識します。例えば、技術者として優秀になりたいとしたら、その技術の方向性や評価、未来の需要などを考えた上で、一番良い場を選び、そこにドンと時間をかける。だんだん資本ができてきたら、さらに効率を上げるためにリソースを配分し直すということを、僕はずっとやってきました。

それから僕は、科学や技術をずっと重要視しています。テクノロジーが人間の世界を変えていくということは、今後もまだまだ続くと思っているので、ソフトウェアとそれ以外の世界の掛け算という観点で、科学や技術にはずっと注目していきたいです。

最後に、家族は大切にしてほしい。自分だけでキャリアを歩めると思っているとしたら、それは傲慢だと思います。支えてくれている仲間、家族を大事にしましょう。家族やパートナーとのディスカッションが、仕事にも良い影響を与えることもありますしね。

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デジタル化で日本の生産性を上げることがミッション。学ぶことに積極的な人と働きたい

松本:ここでLayerXの事業内容について、簡単にご説明したいと思います。まず、我々の目的は全ての経済活動をデジタル化することです。

その上で、大事にしている行動指針をご紹介します。「Be Animal」は動物的に、野性的にといいますか、重要だと思ってることがあったらさっさとやろう、大胆にいこうということ。「Bet Technology」は技術を大事にしよう。「Fact Base」は事実に基づいて意思決定をしよう。

それから「Trustful Team」は、仲間を大切にするということ。仲間のことを信頼する。ただ、ぬるま湯ではなくて、駄目なことを駄目と言う。それをちゃんと信じてもらえるように、透明性の高いコミュニケーションを築いていこう。最後に「徳」。これは長期的な視点で社会発展に寄与できるような会社であり続けよう、明日の売り上げよりも、1年後、10年後の社会の発展にちゃんと貢献し続けようということです。

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具体的な事業内容は、大きく分けて三つあります。DX事業と、MDM(三井物産デジタル・アセットマネジメント)事業と、LayerX Labsというものです。一つ目のDX事業は、LayerX インボイスというサービスを中心に、請求書処理とそれにひも付くさまざまな周辺サービスを行っています。

二つ目のMDM事業は、三井物産らパートナー企業と行っているアセットマネジメントです。金融の一分野でビルなどのインフラなどのファイナンスを支援する仕組みをつくっていて、それをデジタル技術、ソフトウェアの力を用いて効率的に回すという取り組みを進めています。三つ目のLayerX Labsは、ブロックチェーンと秘匿化技術の研究開発を行っています。

今、絶賛採用活動中です。LayerXのミッションや行動指針に共感できて、とにかく積極的に学習できる、いわゆる“ラーニングアニマル”を探しています。その上で、コミュニケーションしながらチームに関わっていける方はぜひ。新卒採用も行っています。

コンサルかエンジニアかではなく、何をしたいかで考える

大里:ここからは、学生さんからの質問にお答えいただきます。ではまず、「松本さんが注目されている技術と企業をそれぞれ教えていただきたいです」ということなんですが、いかがでしょうか。

松本:最近は特定の技術にあんまりフォーカスしていません。今は、技術同士の組み合わせがすごく問われる時代になってきているからです。強いて言うなら、アーキテクチャー、システム設計ですかね。 その辺りは、これから需要が高まるでしょう。僕らのサービスは、いろんなシステムの組み合わせの中で進んでいくからです。なので正直、言語なんてどれを使ってもいいと思います。習得しようと思ったら、2週間ぐらいあればなんとかなるので。

大里:注目している企業はいかがですか。

松本:LayerXじゃないですか(笑)。……でも、成長しつつあるスタートアップは、どこも面白いとは思っています。そういった組織に行くと仕事を任されるので。つらいけど、任されるのは勉強になります。

大里:次の質問は外資就活らしいものですが、「コンサルになるか、エンジニアになるか、今だとどちらがお勧めですか」。松本さんは「学生の時、エンジニアの前は外資系コンサルへの就職も考えていた」とおっしゃっていましたが。

松本:今の僕だと、明らかにエンジニアという答えになりますよね。ポジショントークも入ってしまいますが。一番重要なのは、何がしたいかということだと思います。

コンサルに行ったとしても、エンジニアリングは勉強できるし、皆さんがコンサルだと思っているところでも、意外と上流工程の設計をずっとやっていたり、開発まで一緒にやっていたりすることもあるかもしれないですし。とはいえ、長期的に考えるとエンジニアになるのを僕はお勧めしたいですね。

大里:なるほど。実際、僕も「マッキンゼーからオファーが出て、エンジニアになる選択肢と迷っている」という話を最近聞いたことがあって。そんなことあるんだって、ちょっとびっくりしました。

松本:コンサル各社のお話を伺っていると、エンジニアを欲しがっている節もあるので、おそらくこれからどんどん世界が交わってきます。実際に僕らエンジニアも、コードを書く以外の作業の方が今も多いですし。アセットマネジメントなんかをやっていると、事業を理解するところからスタートしますからね。ラベルにこだわらず、何をやりたいかで考えましょう。

大里:では、次の質問です。「私は言語やエディタなど特にこだわりがなく、モダンなものであれば何でも良いと思っており、Twitterなどで言語やエディタ戦争している人たちの気持ちが分かりません。エンジニアとして働く、または成長する上で、技術へのこだわりは必要なのでしょうか」という質問です。この辺りはいかがでしょうか。

松本:言語は何でもいいんですけど、勉強するときの熱量は大事なので、愛があるなら、それは大事にした方がいいと思います。ただ、論争には意味がないでしょうね。例えば、こっちの言語の方が速いと言われても、それで事業が成長できたり、売り上げが伸びたりするとは限らないですから。

要は、正しいものを作れればいいということです。ただ、長期的に見れば、良い技術で作られていることは重要なので、そのトレードオフが判断できる程度に広く物事を知りましょうと、いつもアドバイスしています。

大里:ありがとうございます。では、次の質問です。これも新卒ならではの質問ですが、「就職先選びの中で、ミスマッチやブラック企業を避けるために、企業のどういったところを見ればよいでしょうか。説明会や企業ページはきれいなことしか書かれておらず、どの企業も良い企業に見えてしまいます」とのことです。松本さんも、Gunosy、DMM、LayerXと、たくさんの企業を経験されてきたと思いますが、いかがですか。

松本:ミスマッチに関しては難しいですが、相手に嘘がないかを見抜くことに尽きると思っています。例えば、発言に矛盾がないかを見たり、ちょっと際どい質問をして反応を見たりといったことですね。際どいというのは、社員一人一人に別々な答えが出てくるような質問です。

あとは、人事以外の社員とご飯でも行くのが一番手っ取り早いですね。そもそも、良い会社ではエンジニアも一緒に採用活動をしてるんですよ。エンジニアが出てこない会社の時点で、エンジニアに対する考え方が、結構コストセクション的なものになっているんじゃないかという気がします。

例えば、LayerXだったら、僕も一緒にご飯に行くので。だから、採用に対する会社や経営のエネルギーの掛け方は見た方がいいかもしれない。

大里:なるほど。会社の外に開けた対応を取っていて、そこでちゃんと情報を開示してくれるのかということですね。

松本:そうですね。透明性が低い会社には、あまり良いことはないと思います。

大里:ありがとうございます。すごく参考になったと思います。

優秀なエンジニアは、コミュニケーション力が高い上で、最小限の行動を提供する

大里:では、次の質問。「松本さんは、どういったエンジニアを優秀、つまり一緒に働きたいと思いますか」とのことです。多くのエンジニアの方々と一緒にお仕事されてきたと思います。いかがでしょうか。

松本:難しいですね。自分の主観で見た優秀さと、市場から評価される優秀さというのは別ですから。市場の方は、評価者が誰なのかということと、その評価に対してどういうリターンを得たいかによって変わってくるので、一概には言えません。ただ、平均的には課題を解決できることが一番大事なんです。

たくさんコードを書けても、エンジニアリングができても、コミュニケーション力がすごく低くて、人を攻撃するような人だと、僕はそもそも採用しません。僕が評価するのは、ちゃんとコミュニケーションを取れる人。その上で、課題の本質を見いだし、何をやれば解決するのかを考え、適切な最小限の行動を提供してくれるエンジニアです。スピードが速いこともやはり重要ですから。

これは、技術そのものとは違う領域だと思うので、課題解決方法、コードの整理の方法を身に付けていくことが、他のエンジニアと差をつける意味でも大事だと思います。

それからもう一つ。決まったことに文句を言わない。決まる前は全力で文句を言っていいんですよ。でも、後から文句を言うと、自分が未熟だったことを晒すだけだと思うんです。だから、決まったことに対しては全力でコミットすること。結局そういう人って評価されやすいです。そして、評価されると機会を得やすく、その機会によってさらに成長することができます。

大里:なるほど。その点は、LayerXさんの五つのバリューで網羅されていそうですね。「徳」や「Trustful Team」の部分で。では次の質問。「早い段階でGo言語を採用したり、新卒でスタートアップで働くことになったり、CTOになったりするというのは、とても勇気の必要な行動だと思いますが、その勇気の根源は何だとお考えですか」。

松本:失敗しても死なないじゃないですか。それでエンジニアリングができたら、今の時代、皆さんのことをみんな必要としてくれますよ。他に何を恐れることがありますか。

もっと言うと、CTOを務めたり、早い段階でGo言語を使ったりして頑張ってきた人が失敗しても、評価されますよ。これは採用側から見て、そういう意思決定をできる人の方が評価されるので、損がないわけです。

それから、僕はアウトプット駆動で動いています。例えば、1カ月後にこれを発表しますって言っておくんですよ。でも、その時点ではやっていない。そこから必死にキャッチアップして勉強して、発表に間に合わせるわけです。

大里:プレスリリース駆動開発ですね。

松本:そうです。先に逃げられない環境をつくっておくと、前提が変わってしまうので。そうやって自分の限界を超えていくのがいいと思います。

大里:面白い話ですね。では次の質問に行きましょう。「事業の役割として、組織面、プロダクト面、技術面でいろいろなものがあると思いますが、松本さんはCTOの役割をどういったものだと考えられていますか」。

松本:経営することですね。CTOにとっての経営というのは、技術に軸足を置いて、そこに責任を持ちつつ、投資家さんから集まったお金を適切に使い、社員が幸せに働けて、社会にとって良い価値が生まれて、その上で顧客が喜んでいる。しかもそれが、10年、20年たっても続けられる。その環境をつくることが経営者の仕事だと思っています。

これをやり続ける上で、テクノロジーはリスクにもなるし、武器にもなる。ちゃんと技術を武器にするのが、僕の仕事です。それを前提に、組織や技術、いろんなプロダクトのマネジメント能力は、細かいスキルセットとして必要でしょう。

大里:とても良いお話でした。次の質問です。「起業時点までプログラミングの経験がなかったとのことですが、初めはどのようにプログラミングを勉強されていましたか。今はスクールやオンライン講座などの情報量が多過ぎて逆に何からやれば良いのか悩んでいます」という方がいますが、いかがでしょうか。

松本:まずは作ることじゃないかと思います。僕は、プログラミング経験がない状態で、会社を始めたのですが、作るものは決まっていたんです。ですから、作るものに必要なことを必死に調べていったという感じでした。

HTMLやCSSというものがあるのか。でも、これだと何も動かないな。これを表示するためには、サーバーというのがあるのか……みたいな。僕は理論立てて、下から積み上げるのは苦手なんです。本を読むにしても、10冊ぐらい平気で同時進行で読み散らかしていくので。それは目的が先にあるからですね。体系的にやるより、目的に合致したものを探す方が、僕の性に合っています。

今の学生さんによくお勧めしているのが、例えばISUCONとか、AtCoderとか、競プロ系のコンテストでまず勝つことから考えてみてはというもの。いきなりそれに取り組むことだけ決めて、それに必要なことから勉強していけば、ある程度勉強が進むんじゃないでしょうか。

大里:最後の質問です。「今後10年、20年、日本のITの未来に、何を予想しますか」というかなり壮大な質問が来ました。どういった業界や技術が盛り上がっていくのかについて、お考えはいかがでしょうか。

松本:残念ながら、日本国内の低レイヤーの技術は、どんどん衰退している状況にあります。例えばネットワーク技術の深い部分で、データセンター自体を武器にできる環境がどんどんなくなっています。なので、ITの世界といっても、この産業のほとんどは、海外企業のクラウドの上に成り立つという状況なんです。

日本では、いわゆるソフトウェア同士を組み合わせる、配管工ってよく呼ばれたりしますけど、そういった仕事がどんどん増えていくでしょう。組み合わせること自体は、技術的にどんどん簡単になってきているので、僕らは組み合わせること自体よりも、どう組み合わせるかに対してすごくエネルギーを使わなきゃいけなくなってきている。これが進んでいくと、IT業界というよりも全ての業界の大前提としてそもそもソフトウェアがあるという状態になります。

ソフトウェアエンジニアも、専業はどんどん高度になり、かつ減っていって、ソフトウェアエンジニアリング×会計、経理というように、ソフトウェアエンジニアリング×〇〇みたいな人が増えていくんじゃないかなと思っています。

大里:なるほど。

松本:それが、10年先の世界。20年先だと、多分、もうこんな平面的なディスプレイを見ていないと思うんですよ。20年後はもう少し立体的な世界になっているでしょう。プログラミングの世界も、「空間自体をどうプログラムするか」にエネルギーを発揮して、アーティスティックなものを作っていたら、わくわくしますね。


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