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コンサルティングファームでは、プロジェクトごとに最適なチームメンバーをアサインすることが大前提だ。メンバー構成が、プロジェクト成功の鍵を握っているといっても過言ではないだろう。
通常は、プロジェクトの運営に責任を持つプロジェクトマネージャーが1人という体制だが、異なるチームのディレクター2人による異色のチーム構成でプロジェクトに臨んだことのあるPwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)の鈴木貞一郎氏と駒井祐太氏に、話を聞いた。彼らはいかにしてチームを機能させ、プロジェクトを成功へと導いたのだろうか。
2人のコラボレーションに対する思いや、PwCコンサルティングが部門の垣根を越えてどのようなソリューションを提供できるのか、またその秘訣(ひけつ)とは。
経歴の異なる2人のディレクター。それぞれのバックグラウンド
――どんなきっかけで、PwCコンサルティングに入社したのですか。
鈴木:私はPwCコンサルティングが3社目です。新卒で入社した会社は建設業界で、ERP(統合基幹業務システム)導入のための開発や、外交販売を主に担当していました。2社目の情報・通信会社では、コンサルタントとして、自社ソリューションを活用したコンサルティング業務に携わっていました。
PwCコンサルティングに入社したのは2010年のことです。それまでは、自社のソリューションを商品として販売することがミッションでしたが、そのソリューションや技術といった商品だけに頼らずコンサルティングをしてみたいという思いが強くなり、転職を決めました。 鈴木氏
駒井:私は2006年にPwCコンサルティングの前身となるコンサルティングファームに新卒で入社しました。大学時代には生物情報学を学んでいて、ゲノム解析などの生物系やプログラミング、さらには数学の研究を行っていました。さまざまな専門性のある人が集まる環境だったこともあり、就職してからも多様な人と一緒に働きたいと考え、コンサル業界を選択しました。
PwCコンサルティングには長く在籍していますが、人を大切にするフラットな社風がとても気に入っています。
――現在は、どのようなプロジェクトを担当していますか。
鈴木:入社当時は金融業界のクライアントを担当する金融サービス事業部に所属していました。数年前から並行して社内の新卒向け研修を担当するようになり、その過程で人に関する仕事をしたいと考え、2020年度は社内での人材育成や人事領域に集中して業務に取り組みました。
現在はその経験を踏まえて、組織人事コンサルを行うPeople Transformation(ピープルトランスフォーメーション)チームへ移り、人事コンサルタントとして業務にあたっています。
駒井:コンサルティングの領域を業界別のインダストリーと機能別のソリューションに分けたとき、私はソリューション側として、財務経理や経営企画といった領域のコンサルティングをしています。近年は主にこれらの領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)による経営改善のサポートを行っています。
DXにしても、今は世界の変化のスピードが速い。国内だけで対応することが難しくなっているのが現実です。PwC Japanグループではグローバルネットワークと連携を取りながらスピード感をもってクライアントをご支援しています。
「ファイナンス×人事」のコラボレーションで取り組んだプロジェクト
――おふたりが一緒に取り組まれたプロジェクトの一例について教えてください。
鈴木:DXを進めて昔ながらの「経理部」の姿から脱却したい、社員がキャリアパスを描けるようにしたいという希望をお持ちのクライアントが増えています。この2つの課題を抱えるクライアントに、私たちはファイナンスと人事という両面でアプローチし、今いるメンバーを経理のスペシャリストにする育成をお手伝いしたことがあります。
――ディレクター2人体制でプロジェクトに関わるのはなぜでしょうか。
駒井:「これはファイナンスのソリューションだけでは解決できないのではないか」と感じたのがきっかけです。
「経理部として目指す姿を決めること」にとどまらずに実効性のある育成計画を定着させるためには、アドバイザー的な立場ではなくメンバーとして人事コンサルタントを専門とする鈴木さんに入ってもらったほうが、プロジェクトはうまく進むだろうと思いました。そこでディレクター2人でのプロジェクト関与という体制がスタートしました。
鈴木:PwCコンサルティングにおいて、インダストリーとソリューションにそれぞれ所属するメンバーによるプロジェクト組成は珍しくありませんが、ソリューションのメンバー同士でチームを組むのは、これまで少なかったかもしれません。異なる領域の情報は、そのメンバーから知見を得たり、アドバイザー的に関わってもらったりしてプロジェクトを進めることも可能ですしね。
ただ、私たちの部門間で掛け算をしていこうという動きは、ここ数年でも活発化していました。駒井さんのチームとのコラボレーションは、有意義な体験となりました。
チームのコラボレーションは、PwCコンサルティング内にも新たな経験をもたらした
――おふたりでチームを組み、どのような施策を打たれるのですか。
駒井:ファイナンスと人事の両面で課題解決が必要な案件の場合、まずクライアント内での経理機能の在り方を固め、そこで業務にあたる経理人材の育成に取り組みます。プロジェクトの前半は、財務まわりの効率化やDXによる経営改善のサポートをする私たちがクライアントとともにメンバーを経理のスペシャリストにするということで突き詰め、後半はピープルトランスフォーメーションの鈴木さんのチームが、経理人材をどのように育てるかという2段構えで進めます。
経理部は、バックオフィスのイメージが強いですが、経営においては非常に重要な機能を果たしています。車の運転に例えると、スピードメーターなどのダッシュボードのような役割を担っていて、車を安全に運転するためには欠かせない機能です。
先にお話ししたように、時代の変化のスピードが速い現代は、1メートル先も見えない霧の中をスーパーカーで走っているようなもの。ダッシュボードの役割もさらに高度化する必要がありますよね。つまり、ファイナンスの立場から経営へもっと働き掛ける必要が出てきます。
さらに、ステークホルダーの目も厳しくなっていますし、ESG(環境・社会・企業統治)経営などの新たな価値構造も考えなければならない。会社をどう動かせば企業価値が上がっていくのかを考えるのも、経理の重要な役割になってきます。
これまでのように、数字を管理するだけではなく、数字からより良い意思決定を促せる経理部こそが、グローバルでも戦える経理のスペシャリストであると私たちは感じています。 駒井氏
――プロジェクト内にディレクターが2人いることで得られるメリットや、デメリットになることはありますか。
鈴木:単なる知見提供だけでなく、ハード面よりもソフト面から人材育成に関われるのは効果的で、大きなメリットがあると感じています。
新しいシステムの導入時や社内の仕組みを変える際は、クライアントの社員の方にご理解いただけるよう研修を開催しますが、研修は目的を理解できていないとすぐに内容を忘れてしまい、意味を失ってしまうものでもあります。
そうならないためには、トップダウンによる強制ではなく、ミドルクラスやさらに下のメンバーが経営陣の意思決定に理解を示し、目指す姿に共感できることが重要です。
プロジェクトによっては、週ごとの意見交換会などでコミュニケーションを多くとることもあります。初めはここまでやる必要があるのかと疑問の声が上がることもありますが、次第に社員の皆さんのなかでも「自分ごと化」が進み、同じ方向を向けるようになることが多いです。これは、単なる研修のノウハウ提供だけでは実現できないことでしょう。
駒井:デメリットというものはありませんが、コラボレーションにあたり苦労した面でいうと、お互いマネジメントのスタイルが違うため、そのすり合わせには少し時間をかけました。
鈴木:確かに。私は“人”寄りで、駒井さんは“情報”を大切にするタイプですよね。スケジュールの立て方にしても、私が状況に合わせて変更するタイプなら、駒井さんは予定を立てて入念に遂行するタイプで、そういったスタイルの違いに最初は気を遣い合うような場面もありました。
しかし、時間がたってお互いの呼吸がわかってくると、ダブルスを組んで試合をしているような感じになって。「この場合は駒井さんお願い」と、フォローし合えるようになったと思います。
プロジェクトメンバーもお互いのチームを混合していたので、私のチームメンバーは「駒井さんのレビューを受けられる」と、新鮮な経験ができて喜んでいましたよ。
コラボレーションプロジェクトで見える、さらなるビジネスの可能性
――今後、このようなコラボレーションプロジェクトは増えていくと思いますか。
鈴木:実際にコラボレーションした結果、これからもやるべきだと感じました。特に私はピープルトランスフォーメーションとして人事領域にいるので、どの業界のクライアントにとっても切り離せない部分なんですね。
人事領域とさまざまな領域がコラボレーションできればもっとビジネスは拡大するだろうと考えていたので、駒井さんとコラボレーションした経験は良い試金石になりました。
駒井:DXでもそうですが、最終的に“人”という文脈に論点が落ちてくることは少なくないですよね。デジタル化するにも、結局それを扱う人を育てないとうまく運用できません。
それから、鈴木さんとのコラボレーションで良かったなと感じたのは「スピード」ですね。通常は、クライアントに「社で検討します」と伝えて持ち帰り、鈴木さんのような別領域のスペシャリストにアドバイスを求めて、次のアポイントでクライアントに伝える。
このような流れですが、協働することで全てが“その場で”動かすことができます。これはクライアントのスピード感を持った課題解決に大きく貢献できているのではないかと思います。
――最後に、ご自身のキャリアで実現したいことや挑戦したいことはありますか。
鈴木:私は数年前から社内の新卒研修を担当し、2020年度には人事業務に集中的に取り組みました。そんな経験もあって、携わるプロジェクトでも「人に育ってほしい」という思いが強いです。メンバーが自走できるチームをつくりたいなとは常々考えていますが、そのプロジェクトを通して、人が成長するのを見たいと考えています。
加えて、コーチングやマインドフルネスの勉強もしていて、人材育成をライフワークにしたいです。
長期的な目標は、はっきり描いていませんが、「鈴木さんと一緒にいて、新しいチャレンジへのモチベーションが上がりました」とメンバーに言ってもらえるような存在でありたいなと思っています。
一方で、人事領域に課題を抱えている企業というのも本当に多い。DX人材や、リーダー人材など、あらゆる人材の育て方に悩んでいる企業の力になりたいという思いもあります。自分の「人を育てる」という志向と、企業のニーズが重なっている部分では、役に立てる場面も多くなるだろうと感じています。
駒井:私も、正直にいうと、遠い将来のことは考えていないんです。新しいことにどんどん挑戦したいので、将来像を限定しないようにしています。
その中で感じているのは、これまでベストプラクティスを売り続けてきたコンサル業界も大きく変わり始めているということです。ERPもDXもそうですが、何かがはやってコモディティー化してしまってからでは利益を得ることが難しくなります。
私が目指したいのは、「はやる前」、もっというと「生まれる前」のサービスをいち早くキャッチして自分のコンサルティングに取り入れることです。
そのために必要なのは、情報に対応する力と、そこから「こんなことができるんじゃないか」と想像してサービスを生み出すクリエーティブな力。チームのメンバーにも情報感度を高めるよう、常に伝えています。誰よりも早くよりよいサービスをクライアントに提供できるように、今後もPwCのネットワークを活用し、さまざまなコラボレーションでさらなるビジネスの可能性を追求していきたいですね。 鈴木氏(写真左)と駒井氏