トークセッション【外資系投資銀行→起業】若手社会人に必要な姿勢とマインドセットとは
2022/01/29
#起業する
#若手社会人のマインドセット

description Liigaユーザーの中には、将来的な起業を視野に入れつつビジネスの世界で研鑽を積んでいる方も少なくありません。そこでLiigaではオンラインイベント「Liiga PITCH」で、外資系金融機関で働いていた経験を持つミツカリの代表とスパルタ英会話代表という、2人の起業家をお招きしたトークセッションを開催しました。
かつては表孝憲さんが先輩、小茂鳥雅史さんが後輩という関係でしたが、現在は起業家という同じ立ち位置で、それぞれの目指すビジョンに向かって事業を成長させている2人。キャリアを考えるポイントや起業前の経験で役立ったこと、さらには起業する上で必要となるマインドセットにも範囲を広げ、熱く語っていただきました。

〈登壇者〉
表孝憲(おもて・たかのり)写真左
株式会社ミツカリ 代表取締役CEO

小茂鳥雅史(こもとり・まさふみ)写真右
株式会社スパルタ英会話 / 株式会社We & 代表取締役
NPO法人JAPANボランティア協会 理事長



外資系証券会社の先輩と後輩。二人がそれぞれ起業に至るまで

小茂鳥:本日はよろしくお願いします。それでは表さんから自己紹介をお願いします。

:はい。私は株式会社ミツカリという、HRテック系のサービスを作っています。自分の人生のミッションとして「自分はこの道で生きるを10,000人つくる」を掲げています。いろんな人たちをディスカバーする、つまりカバーを外すのが好きです。ですから今日キャリアに関連してお話しできるのはとてもうれしいです。
私は大学を出てからモルガン・スタンレーで働き、採用のリーダーなども務め、その後留学を経て、今のミツカリになる会社を立ち上げました。現在、サービスは約4,000社にお使いいただき、会社は7年目です。
統計とかデータ分析とかエクセルとか全く分からない中で(証券会社に)飛び込んだ後、自分はキャリアの変遷にものすごい興味があるんだなと気付き、MBA留学中にキャリアの領域で起業しました。また、あまりにも自分ができなかったデータ分析の分野については、できない気持ちがわかるので、それを教えたらじんわり広がり、講師業もやっている縁で、も出しました。
趣味は読書とベンチプレスで、今は挙がらないですが最高170キロ挙げました。今日の登壇者2人ともゴリゴリなんですけど、聴いていただけたらと思います。

小茂鳥:ありがとうございます。僕にとって表さんは元々モルガン・スタンレー時代の上司で、表さんの真横に座っていました。「コモ」「表さん」で呼んだ方が生き生きと話せるので、今日はそのように呼ばせてください。それでは僕も自己紹介しますね。
僕はモルガン・スタンレーを経て、NPOやスパルタ英会話という教室を立ち上げました。理念は「《夢はかなう》の実現」で、会社としては英会話教室だけでなく、マーケティングの会社、留学の会社、保育園への英語講師派遣の会社、上場を目指している不動産のプラットフォームの会社などをしています。
英会話教室の起業について言うと、TOEIC400点でモルガン・スタンレーに入らせてもらえた所との関係が大いにあります。同期が世界に何千人いる中で、2人くらいしか英語しゃべれない人はいないのですが、僕は本当に英語がしゃべれなかったのです。表さんは英語はしゃべれてましたよね。

:一生懸命しゃべっている感じだったけど、コモよりはしゃべれたね。

小茂鳥:僕は一生懸命になってもしゃべれなかったんです。そんな自分が今、よく英会話教室の社長をやっているなとは思いますが、そういう経験を踏まえて教えています。
あとは大学1年で起業も経験しました。ちなみにベンチプレスの記録は110キロです。
今日はどんどん質問していただければそれにお答えする時間にしたいです。今日は前半は「攻め」、つまり起業や転職経験を積むことはどういうことなのか、後半は「守り」、つまりどういったマインドセットがいいかについて話したいです。

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小茂鳥さん

起業のきっかけは対照的。「違和感」「チャレンジするわくわく」

小茂鳥:さっそくですが、そもそも表さんって、なぜ起業しようと思ったのでしょうか。

:新卒で就職して一生懸命働き、うまくいっていたのですが、「ここで偉くなって、自分が本当になりたい人、ロールモデルみたいな人っているのか」と自分の心に問いかけた時、「完全にこの人だ」がいない、と気づいたのがきっかけですね。
長渕剛の「Myself」という歌に、夢は何ですかと聞かれるのがこの世で一番怖く思えた、という趣旨の歌詞があります。ある程度働いて成果を出し、面接官として学生に「夢は何」なんて聞く立場だった自分でしたが、本当に歌詞が刺さって。今やっていることはもしかしたら違うのか、と考え始めました。
自分のキャリア、人生を洗っていくと、面接とか採用に変態的なパッションがあると気づいて、やっぱりやるならキャリアの領域だと思いました。最初のきっかけは違和感で、違和感に正直に向き合って、確認することを繰り返していて。僕はリスクを取るのは苦手なんですが、「ここまで考えてキャリアが好きだったら、キャリアの観点で何か事業を作ろう」と。
大枠のドメインが決まれば、後はちょっとロジックの戦いで、チャンスや興味を整理して事業を始めた、というのが起業のストーリーです。

小茂鳥違和感があったから考え始め、チャレンジした、という流れだったのですね。
僕は違和感とは逆で、チャレンジとかわくわくする気持ちが勝って起業しました。「起業した」とか「社長になる」という話を聞いている瞬間に僕に浮かぶのはリスクではなく、「何それ、面白そう。とりあえずやってみよう」という感情で、すぐ動いてチャレンジしてしまう性格です。
さっそく視聴者から質問が来ていますね。「以前、別の外資系投資銀行出身のマザーハウスの山崎さんのインタビューで、売上が2億から10億に伸ばした時に経験が銀行時代の生きたという話をしていましたが、お二人はどういう時に前職の経験が生きてきましたか」ということです。

:僕は、資金調達の場面で生きました。これまでベンチャーキャピタルから3回投資を受けていますが、僕の経歴は「ちゃんとやる奴だろう」という証明になっていますね。
あとは、「社長がやることは資源の再分配」なんて言われても、最初はたくさん営業をしないといけない。お客様がどういう課題を抱えているか、どう心揺さぶられるかを考えますが、そういうことは会社員時代に頭を絞ってやっているという、営業経験がすごく生きましたね。 コモはどうですか。

小茂鳥:マザーハウスの山崎さんがおっしゃっている(売上)2億から10億の過程ってどんな過程かを想像すると、おそらく組織化していく過程だと思います。
一番最初の起業した瞬間ってネームバリューや営業が生きてきますが、10億円にする組織について思い返すと、(元々自分が)通勤していた会社の組織がどういう風になっていたかを思い返しながら組織を作っていくと思います。

:やはり、会社時代の経験って大事ですね。

起業につきまとう不確実性。減らすためには行動を重ねよ

小茂鳥:また質問をいただきましたね。「違和感があり起業したいというマインドの状態から、起業という行動までにはギャップがあると感じますが、お二人はそのように感じましたか。そのギャップを埋めるためのアドバイスをいただけますか」

:これはブログで書いたこともある話題ですので、デザインシンキングの手法について触れながら説明します。

description ▲図 https://note.com/takanori_omote/n/n58a690d1aa66 より
分からないことがある段階から、不確実性を時間の経過とともに減らしていくのが大事、そういうきちっとしたトライアルをするのがデザインシンキングです。これはキャリアを考える時でも同じで、(サービスなどを考える時)「なんとなくおかしい」「本当に自分はやりたいのか」という超・不確実な状態から考えますよね。
自分も、資本主義の会社しか行っていないからNPOやってみよう、と思って2週間くらい会社を休んでバングラディシュにある組織に行ったり、起業家に話を聞いたり、そういうたくさんのABテストを繰り返していきました。これは結果的に不確実性を減らす行動でした。
悩んでしまうと、ぐるぐる考えが回って起業を先に進められないのですが、不確実性を減らすために行動をしていくのが良かったと思っています。コモはどうですか。

小茂鳥:「起業するぞ」と「起業したい」にはギャップがありますよね。皆さん、「起業」と言われるとまずは大きなハードルについて考えると思います。例えば会社を立ち上げるには何から始めるか、人を採用するにはどうするか、資本金は500万円なければいけないのか、などがあります。
ただ、今、表さんがおっしゃったように、起業する時にはじめは人に聞いてみて、それでちょっと不確実性がなくなったらインタビューしてみる、とか。そういう風にステップを進めていくことが大切だと思っています。
僕も一番最初、英会話スクールではなく英会話サークルを作ったんです。10人とか20人とかで英会話学ぼうぜ、というサークルを半年くらいやっていて。そこに来た人から「もっと学びたいと」と言われて(会社を)作ったというところでした。
起業という行動のもっと手前に、何かやりたいことがあるからとりあえずセミナーを聞きに行ってみるとか、統計の本を読んでみるとか、そういう行動っていっぱいあると思います。たくさんの行動をしていると、だいぶ違和感がなくなってくるのではないでしょうか。

アメリカで目の当たりにした「履歴書を作りに行く」キャリア形成の姿勢

小茂鳥:表さんは色々な行動を重ねる中で、起業に生きた経験って何だったと思いますか。

:結局は、たくさんの真剣な行動を振り返って整理する、という行為こそ一番役に立つと思っています。皆さん、外にアイディアを取りに行こうと思うけど、実は自分の内にしかないから、まずは振り返りが大事です。コーチングに近い考えですね。
また、留学の経験の中では実は授業が生きています。「座学の勉強なんて大したことない、MBAはネットワークが重要」と言われることも間違いありませんが、一方で素晴らしい授業もあります。
その中の1つを挙げると、「アントレプレナーシップ」という、起業論のドストレートな授業がありました。分かりやすい例で言えば、固定費を変動費化するとか、売れると分かってから商品にすれば儲かる、とか。売れてから作るとか、リスクをどうマネージするかについてなど、「これが起業だ」ということを教えてくれました。
フォーマットに沿った講義だけでなく、パッションのあるベンチャーキャピタリストが登壇することもあり、精神論も混ざって僕の人生を押してくれた授業でした。また、たくさんの人に会ってどういう人に心が震えるか、という経験もよかったですね。
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表さん

:コモはどうなの。

小茂鳥:表さんが仰った通り、人にとにかく会って心を震わされる経験と、自分に置き換えて自己分析することは必要だと思っています。
僕は大学1年の時にすでに起業していたのですが、僕もアントレプレナーシップの授業がありましたね。表さんと同じように、起業家が話をしてくれたのですが、「起業ってこんなに面白そうなんだ」と思ってスッと(起業へと)動いてしまいました。

:すごいね。それはそれで才能ですね。

小茂鳥:僕と表さん、意外と両極ですね。
表さんに質問が来ています。「留学に行く前に転職しておけばよかった、という思いなどはありますか」

:アメリカでは2013年〜15年のころのキャリア論で「転職先として成長しているスタートアップに入るのがよい」と言われていましたが、それは納得感がありました。
超・拡大している組織にいると、まずニーズがマーケットにいるということがどういうことかがわかる。入社して半年後に部下が10人いる状況もあるので、急いでキャッチアップしないといけない。そこで得られる経験は、まさに先ほどの質問にあったように、高速に将来(起業家として)やる経験を得られる。ファンドとかコンサル業でも、高速でそういう経験ができるなら、そもそも留学には行かなくても全然いいのではないかとも思います。

小茂鳥:メガベンチャーとか伸びているところとかはいいですよね。今の僕は、コンサルはいいな、と思うこともあります。深く考えるのが苦手なのもありますし、資料作りもうまくなるし。そういう経験があれば、プロダクトをリリースするまでのスピード感は速くなるんだろうなと思いますね。

:時代の変化が速くなる中、いくつかのパターンを自分の中に経験しておくのは大切ですね。アメリカでは転職の時、「このピースが足りないからここに来た。5年後こういうビジョンがあるから、この経験がこの時期に入っているといいな」と自身のキャリアを客観視し、履歴書を作りに行く人たちがいました。
皆さんもLinkedInとかを見て「この人になりたい」という人がいたら、この年代でここまでやっているという経歴を参考に、そこから逆算してやることを決められます。1社でも色々な経験ができればいいですが、そうでなければ(経験のために)転職するのはいいのではないでしょうか。
会社員であれば異動などの機会で、うまく会社を使うこと。そうやって主体的になると、実は会社側が喜ぶことも多いはずです。

小茂鳥:確かに、会社であれば部署同士のコミュニケーションをはかるだけでも、将来起業して100人の組織を運営する際の部署間コミュニケーションを考えるヒントになりますね。「履歴書を作りに行く」は、人事系の表さんならではの表現だとも思いました。

ビジネスの仕組みは「キャッシュエンジン型」か「スタートアップ型」か

:「退職後、一番最初の事業でスケールを狙っていましたか」という質問も来ていますね。
僕はVCからお金を取ってJカーブ、というタイプですね。でもちょこっと別の事業をやっちゃったこともあります。本業のシステムが売れ出した時に振り返ると、スケールしなかったことも生きてきている感じがします。

小茂鳥:僕はキャッシュエンジン型ですね。英会話教室を今週土曜に開きます、1人3000円で5人来たら1万5000円、みたいなところからでした。スケールについては何十億という英会話教室はあるので、事業が大きくなるのではないか、という思いもありました。
description ▲図 起業におけるキャッシュエンジン型とスタートアップ型

:起業家にとってリスクを取り過ぎるのはだめだけど、とらなすぎるのも同じくらいだめなのではないと思います。何か跳ねるかもしれないしね。

小茂鳥:うまくいっている起業家はファイナンスを一番大切にしていますよね。キャッシュエンジンを片側で持っていて、それを使って別の事業に投資できている人は、長く起業家として活躍していますね。
僕に対しても質問が来ていますね。「ポケトークなど翻訳技術の発達は英会話教室にどのような影響がありますか」
質問ありがとうございます。これは二つの側面があって、まず一つポジティブな側面で言えば、素晴らしい技術の進歩でいいと思っています。それに対して英会話教室がどう動くかと考えると、ポケトークのコミュニケーションが外国人の人がいやに思わないか、という動き方ですね。
とはいえビジネスの最前線にいる人がこの先10年、20年は英語ができないとなめられてしまう状況は変わらないので、ビジネスの最前線にターゲットを絞っていこうと思っています。
ネガティブな側面で言うと、英会話教室の業界の戦いは激化しています。ですので英会話だけの授業をやるのではなく多角化することで、会社全体として乗り越えようと動いています。

マインドセットと習慣が、運を引き寄せる

小茂鳥:次は「守り」の面ですが、表さんは、起業家として必要なマインドセットや習慣はありますか。

:僕は自分を振り返って本を読んだりポッドキャストを聞いたりするインプットをするとアウトプットもできるようになるし、精神衛生上もよくなる。起業家は長い勝負で、自分がつぶれることは一番だめなので、朝にお弁当を作りながらインプットを2倍速でポッドキャスト聞いたり、本を無理やり読んだりというのをしています。

小茂鳥:僕はモーニングルーティーンがあって、この文章(下)を声を出して読んでいます。
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小茂鳥:毎日これを読み上げて、ストレッチして、本を読んで。1日30分くらいですね。

:僕も実は起業家になって感じるのは、結構、運の要素が多いと思っています。自分の潜在意識で決められてしまうことはありますよね。

小茂鳥:スキルの棚卸しはどうやってしていますか。

: これは今と昔では大きな違いがあります。
何かやる時にスキルが必要ですが、そのスキルが「売れそう」とか、「いいアイデア」というのはどうでもよくて、実際に「売れるかどうか」が大事だと思っています。これを確認する方法は以前はなかったですが、YouTubeで見てくれる人がどのくらいいるか、ストアカやnoteなどのサービスで売れるかといった形で可視化できます。
自分の行為が500円でも1円でも、売れたら嬉しいですよね。小さく試してニーズがあるのかを考える、というスキルの棚卸しはおすすめです。そうやって、WillのほうにCanを寄せていく風に考えると良いですね。

小茂鳥:僕の肌感では20人にLINEして、1人買ってくれたらいいサービスだと思っています。意外と「いいね」という返信もありますよ。

:ネットで何かをするのは事業でもコアになるので、そういうのを触りまくるのは大事ではないかと思っています。

小茂鳥:最後に起業や転職を考える方々にメッセージをお願いします。

:真剣なトライをしてどういう風に心が震えるか測る、ということしながら、幸せは何かを追求するのがいいのではと思います。コモはどうですか。

小茂鳥: そうですね。起業や転職も考えること自体も1つの行動になりますし、そこで心が震えたから次はこうしようとプランするのも行動だし、実際にやるのも行動だと思います。
本日はありがとうございました。

コラム作成者
Liiga編集部
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