イベントレポート/AIベンチャーで挑戦する 「テクノロジー×ビジネス」による産業変革
2022/03/25
#ポスト戦略コンサルの研究 #ポスト総合コンサルのキャリア

description AIの開発・導入にとどまらず、中長期的な視点に立ったビジネスコンサルティングを強みとするAIベンチャー、Laboro.AI。AI産業が真のイノベーションを起こすフェーズに入っていく中、事業を成長させるのは「テクノロジーとビジネスの双方のスキル・能力を保有したプロフェッショナル人材」だと言います。

本レポートでは、BCGなどを経て同社を起業した椎橋徹夫代表取締役CEOと、富士通、PwCを経て同社にジョインした藤井謙太郎執行役員によるポストコンサル向けセミナーの様子を、ダイジェストでお伝えします。

〈登壇者〉
椎橋徹夫(しいはし・てつお)
株式会社Laboro.AI 代表取締役CEO

藤井謙太郎(ふじい・けんたろう)
株式会社Laboro.AI 執行役員



コンサル出身の2人がLaboro.AIに参画するまで

藤井:本日は、現役コンサルタントの方の次のキャリア向けて、コンサルや事業会社以外の選択肢をお伝えできればと思っています。まずは登壇者の自己紹介をさせていただきます。

椎橋:Laboro.AIの代表取締役の椎橋と申します。大学時代は理系で物理や数学を学んでいたのですが、新卒でBCGに入社しました。7年ほど戦略系のプロジェクトをやっていましたが、デジタルやデータなどのサイエンティフィックなアプローチを特に担当していました。その後(東京大学の)松尾研究室に移り、産学連携の仕組みを作るなどスタートアップの創業に携わり、2016年に弊社を立ち上げました。

藤井:私は新卒で富士通に入社しまして、いわゆるSEをしていました。その後PwCに転職し、金融系の経営管理分野のプロジェクトに携わっています。2019年、Laboro.AIに入社して現在に至ります。

椎橋と同じくコンサルティングファーム出身ですが、総合系ファームであり、SEも経験しております。

椎橋:私自身もコンサルのバックグラウンドがありますので、本日はポストコンサルのキャリアとして、その経験やケイパビリティを生かしつつ、技術を軸に次のチャレンジをするキャリアに関してお話しします。

テクノロジーとビジネスをつなぎ、世の中に新しい価値を生む

藤井:まずは弊社の説明をさせていただきます。現在5期目で、従業員は34名で規模を拡大させています。

テクノロジーはイノベーションを起こすために重要ですが、そのテクノロジーとビジネスと繋ぐ点に弊社の強みがあります。また、弊社のミッションである「全ての産業の新たな姿を作る」の実現には、「テクノロジーとビジネスをつなぐ新たなプロフェッショナル人材の構築」が必要と考えています。その中で、各産業のイノベーターと出会って繋いでいき、変革を起こしていくというビジョンを持っています。

様々な企業様で「テクノロジーとビジネスの両刀」を重視しているとお聞きしますが、弊社は、組織で対応するのではなく両方の知見を有すことで繋ぐ人材が重要と考えています。特にAIはビジネスが生み出すデータが不可欠のためその傾向がより強いといえます。

事業コンセプトは、ファームのようなプロフェッショナルサービスと、先端技術を融合したハイブリッドモデルを設け、10年先を見据えたトップイノベーションテーマに取り組んでいます。

組織形態は、「テクノロジーとビジネスをつなぐ」の実現のためにシンプルにしています。プロジェクトに関わる職種は「機械学習エンジニア」「ソリューションデザイナ」の2つのみになります。同様の企業における一般的な組織は、営業、コンサルティング、PM、データサイエンティストなどロール別に人材を配置し、ばらばらに存在していますが、弊社では1人が多彩な範囲を担う人材を重視しています。

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次に、弊社の競合プレーヤーと優位性についてお話しします。

AIの適用領域は、プロセス改革・新規事業開発・研究開発の3つがあると捉えていますが、弊社が手掛けるのは後者2つが多くなっています。

弊社の競合はコンサルティングファームやSIer、AIベンダーが上げられます。その中で弊社の強みが後者(新規事業開発・研究開発)の2点と言えます。

まずは、コンサルティングファームと異なる強みは、研究開発領域や実行を伴う新規事業領域でのプレゼンスです。コンサルティングファームに研究開発を依頼しないのは当然と言えますが、新規事業では、実現可能性が不明な企画までの対応であり実行をしないということに抵抗があるクライアントからご依頼をいただきます。SIerは主に効率化に注力しており、AIベンダーはSaaSなどを用いて広く展開、もしくは研究委託に注力する企業が多いという特徴がありますが、弊社はクライアントとともにソリューションを作っていく点で毛色が異なります。

また、「人材」に関しても他社との差別化をしています。

これはどういうことかと言いますと、通常、AIコンサルタントのメイン業務は、決められた課題に対してAIをどう使うかを考えることにあります。一方、弊社では、価値/業務設計から入る点が特徴で、一気通貫したサービスを提供する人材を目指しています。最初からすべての知見を有する人材は存在しないので、得意領域を活かしつつAI領域は弊社に入社後にキャッチアップいただいています。例えば、コンサル出身者であれば、戦略ファーム出身者は価値業務設計、総合系ファーム出身者は業務設計から入り、AIのナレッジを深めていくことを目指していただきます。

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中でも今回ご紹介するソリューションデザイナという職種について、詳しくご説明します。

ソリューションデザイナは、事業創造や戦略構築、業務推進やAIに関する技術・設計・実装を行える人材です。

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このソリューションデザイナのロールは3つあります。弊社では、Salesを若い時期から経験できます。案件獲得の段階から自ら議論を進め、プロジェクトを作っていただくという、ファームではパートナーレベルが担う役割になります。

次に、弊社のプロジェクトをご紹介します。

基本的に弊社が行うプロジェクトは「新たな価値創出」が目的であることが多いです。そのため、ご一緒するクライアントは、事業会社などの研究開発部門や企画部門がメインになっています。クライアントの特徴や傾向を挙げると、AIやIoTなどの知識が既にある方が多く、リソース不足という課題を抱えている他、コンサル慣れしている、事業部と研究部門をつなぐ役割を探している、といった点があります。そのため、いつもと違う価値を発揮が期待されているイメージです。「新たな価値創出」のプロジェクトでは、技術開発と企画を並行して行うことが多く、事業部と研究部門の両面とご一緒することが可能であることが求められます。

ここからは、弊社での具体的なプロジェクトタイプをご説明します。タイプとしては、「業務効率化」「新規事業サービス」「構想策定」「新製品/ソリューション」の4パターンがあります。業務効率化は、弊社でも一定割合のプロジェクトとして存在していますが、本日は割愛いたします。

1つ目は、AIのコア技術を活用した新規事業サービスのプロジェクトタイプです。技術開発は、弊社が行いますが、技術のみでは事業にならないため事業企画も行います。また、世に出すためには、フロントサービスが必要のためアプリ等が必要になります。事業企画は、戦略コンサル様、アプリはUXアプリベンダー様に依頼する形をとっていますが、コアとなる技術理解が重要のため、弊社が検討に入ります。弊社が検討に入らない場合、企画倒れで実現できない・アプリ体験がAIと整合しないなどの失敗するケースがあります。

2つ目は、構想策定のようなコンサルティングプロジェクトです。イメージとしては、「ヘルスケア」「物流」など個社や業界を超えて官民でプラットフォームの整備を検討している取り組みです。弊社では行っていないですが「スマートシティ」などがわかりやすいかもしれません。このような取り組みは、後発参画すると局所的な対応にとどまるため、検討に参加する大企業と組んで事業企画を進めています。

3つ目は、弊社で最も多い「新製品/ソリューション」です。例えば、メーカー様におけるリカーリング(継続的に収益を上げる)モデルに転換していきたいといったものがわかりやすい例です。取り組みの例は、新たにセンサーを設置して製品の挙動を予測する、現場の熟練の方が対応している装置の使い方を自動最適化するといったプロジェクトです。このタイプは、対象の製品がある程度決まっているため、企画というよりは技術が重要となるタイプです。

この3つに共通するのは、「技術開発+α」というロールを担うことです。

皆さんには、コンサルティングや事業会社の企画部門に就くことに少し違和感を覚え、世の中に新しい価値を見出したい、その核として技術を信じている方、手触り感のある価値を生み出したい、ベンチャーという環境でスピーディに成長されたい方に集っていただきたいと思っています。

AIブームは二極化のフェーズへ

椎橋:AIブームと言われて久しいように感じる方がおられるかもしれません。実際にこの技術で事業を展開している我々からすると、3年ほど前がAIのブームでした。一方でそのころを振り返ると、世の中では魔法の技術のように捉えられていました。

今は冷静にツールの一つとして捉えられているフェーズを迎え、これからは、中長期に大きなインパクトを残すという本質で評価される段階に戻っていくと思います。つまり、これからが本番で、産業の中でイノベーションを起こすフェーズに入るのではないでしょうか。

藤井:そうですね。現実的な評価をされる段階に戻ってきていて、これは様々な企業との面談を通じても感じています。その中、将来をかけて本気で投資するか、が問われていると思います。

椎橋:企業の対応も二極化しています。一つは、AIをツールとして取り組むという対応ですが、これは突き詰めると部分的な業務効率化という話になります。一方で、AIを本質的な技術と認識し、長期を見据えてこの技術を軸にしたイノベーションに取り組んでいくという形も増えている。弊社と関わりがあるのは、後者の企業が増えてきている印象です。

藤井:このAI業界に様々なプレーヤーが参入している状況で、AIベンダーが果たすべき役割は何かが問われていると思います。

椎橋:そうですね。中でも実装を手掛けるプレーヤーは増えています。また、コンサルティングファームも参入しています。

この中で我々は「クライアントの要望をどれほど実現できるか」を志向しています。「AIを用いて何を目指していくのか」という適切なゴール設計は、AIに対する深い技術理解と産業理解の両立なくては成しえません。我々に求められているところは、深い知見を基に、クライアントと共に絵を描くことだと思います。

一方で、構想を描くというところはコンサルティングファームも進めています。しかし、長期に渡って伴走して分かってくることも多く、AIベンダーに求められているのは構想と実現をセットで取り組むことだと考えています。

クライアントと共に自分ごととして取り組む。コンサルやSIerにはできない「共創型プロダクトマネージャー」とは

椎橋:弊社が構想策定と実装を両立させていることは先ほど述べた通りです。この中で際立っているのは、あたかも自分たちの事業であるかのように取り組んでいることです。クライアントサービスで、プロジェクトベースで進める形ではあるものの、基本的にはそのスタンスをとっています。

藤井:SEからコンサルを通してこの会社にきた私にとっては、ここが競合との大きな違いだと思っています。率直に言えば、SEのほとんどは決まったことをやり続ける仕事です。コンサルティングファームもパートナーレベルはこういったことをされていますが、ほとんどは高級人材派遣に近いです。転職してからは想像以上に新しい価値を生む難しさとやりがいを感じています。

椎橋:僕もBCG時代を振り返った時に、戦略系も上流とはいえ、それと比べても弊社の方が一人称で物事に取り組んでいます。

藤井:クライアントの姿勢を変えていく、中長期で働くスタンスにある弊社で担えるのは「クライアントと共に進める、共創型プロダクトマネージャー」だとイメージしていただければと思います。コンサルより肌感があり、事業会社よりもものを作る経験ができるというベネフィットかなと思います。

一般的なプロダクトマネージャーは、自社ソリューションやプロダクトを開発するロールですが、外部の企業様と期待値コントロールや組織政治対応を含めて共創するプロジェクトマネージャーは新たな役割と捉えています。

椎橋:コンサルのプロジェクトベースのモデルから発展して、クライアントと一緒にプロダクトを作っていくというところに興味がある方に向いているかなと思います。

本日はありがとうございました。

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。

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