イベントレポート/ScanX宮谷氏が語る、海外・国内スタートアップでのキャリア形成【すごいベンチャー100選出】
2022/02/09
#海外で働きたい #総合商社から飛び出す戦略

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株式会社ハウテレビジョンは2022年1月22、23日に大規模オンラインイベント「Liiga PITCH」を開催しました。23日の特別トークセッションには、2021年に東洋経済の「すごいベンチャー100」に選出されたScanX代表取締役の宮谷聡氏が登壇しました。

なぜプロフェッショナルファームや大企業ではなく、スタートアップへの転職の選択をしたのか、またその経験を生かして創業したScanXのカルチャーについて、弊社取締役の佐々木が質問する形で、ざっくばらんにお話しいただきました。

本記事では当日の様子を、ダイジェストでお伝えします。

〈登壇者〉
宮谷聡(みやたに・さとし)写真左
スキャン・エックス株式会社 CEO兼エンジニア

佐々木康太朗(ささき・こうたろう)写真右
株式会社ハウテレビジョン取締役


 


 

3Dで建設業界の生産性向上を。すごいベンチャー100に選出されたScanXのサービスとは

佐々木:さっそくですが、ScanXとはなんぞや、というところからお話しいただけますか。

宮谷:ScanX代表の宮谷と申します。東大院の航空宇宙工学科を卒業し、フランスの大学院に進学しました。半年ほど、エアバスという航空機メーカーでインターンをしており、フライトテストエンジニアとして、実際に開発した飛行機を飛ばしてテストする仕事をしていました。

このころから海外で働きたいという志向が高まっていましたが、一旦帰国して2017年に三菱商事に入社しました。その際も航空宇宙というバックグラウンドがあったため、民間航空事業部に配属されました。その後半年で退職し、以降はずっとスタートアップです。

日本のスタートアップにいた時期もありますが、直近3年はほぼ海外で、シリコンバレーやイスラエルのスタートアップにいました。日本に戻ってきてScanXを起業したのが2年前になります。

日本の大企業、海外の大企業や国内外のスタートアップを経験し、それらのカルチャーがわかる点ではユニークなキャリアを歩んできたと思います。

ScanXは設立から2年経ち、従業員は20名ほどいます。1年前は5名ほどでしたが、「すごいベンチャー100」に選出されたことをきっかけに色々な優秀な方々がアプライ(応募)して下さり、現在は外コン・外銀・総合商社の方などバラエティに富むメンバーです。

事業内容としては、建設業界向けの3Dのプラットフォームを提供しています。ざっくり背景を説明すると、日本の人口減少を受け、建設業者数も減っています。しかし五輪や東日本大震災や万博などによって建設投資額は伸びてきています。明らかに、資金に対して人が足りていないことが、この国の社会課題だと思っています。

そんな中でどのように生産性をあげるかを考えた時、建設業界には紙文化で、業務が2Dに縛られているとよく言われています。そこで現在、国をあげて3Dデータを活用することを進めています。

3Dデータは、ドローンやiPhoneを使うと簡単に作れます。他にも多くの現場で使われている建設機材などでも3Dデータが作成できます。こういった3Dデータはもともと存在していたのですが、VRやARのソフトのライセンスの価格が高騰していることと、性能の良いパソコンがないと解析できないという問題がありました。

そこで、誰でも3Dデータを使えるようにしようというのが事業の主なコンセプトで、サブスクでブラウザがあるだけで利用できる、というサービスがScanXです。

ユーザーは建設会社の方や、測量会社、建設コンサルや自治体の皆様です。

エアバス、日本の大企業を経て始まった、スタートアップのキャリア

佐々木:宮谷さんのキャリアにご興味を持たれている方もいらっしゃると思うので、そこの話をしながら、なぜScanXを立ち上げたのか、を深めていければと思います。

最初はエアバスにいかれたというところで、これは学校のプログラムなどがあったのですか。

宮谷:フランスの大学院には、「スタージュ」という企業インターンを最低半年経験し、論文を執筆するというプログラムがありました。ちょうど学校の隣がエアバスでした。

佐々木:拝見した資料に、この時に「フランス人の働き方に衝撃を受ける」とありますが。

宮谷:そうですね。フランスでは週37時間労働と決まっていて、みんな残業しないのです。月曜と木曜は1時間余分に働いて、金曜日は昼ごはんでワインを飲み初めて、金曜の14時くらいには帰るという働き方でした。毎週プレミアムフライデーと言う形です。

佐々木:写真を見る限り、いろんな国籍の方がいらっしゃって。

宮谷:150以上の国籍の方々がいて、ヨーロッパだけでなく、色々な所から集まっていたので、とても新鮮でした。

佐々木:今のScanXも、ダイバーシティを意識されているのですか。

宮谷:はい。社内公用語を英語にしましたし、エンジニアは海外経験のある日本人が多いです。ダイバーシティはシリコンバレーカルチャーがあって、面白い雰囲気になっています。

佐々木:フランスの就活は大変すぎた、とも書かれていますね。

宮谷:当時はフランスのテロの関係でEU以外の人がビザを取るのが難しかったです。日本に帰って急いで2社就活し、三菱商事に新卒で入社しました。

佐々木:新卒入社当時、いかがでしたか。

宮谷:フランスで働いているときはフラットで、基本的にみんなフレンドリーでした。一方、日本の大企業では、年次を意識することに驚きました。フランスは通年採用なのでいつ入ったのかは関係なく、1月に入社する人もいれば、ポジションが空いたから入ってきたという人もいたので。

海外のスタートアップでのキャリアで痛感した、スピード感と起業家マインド

佐々木:その後、スタートアップでのキャリアが始まりますが、シリコンバレーの会社ではどのような経験をしましたか。

宮谷:業界では有名なVC(ベンチャーキャピタル)がお金を入れていた会社でした。ただ、120億円を溶かして操業停止する、というシリコンバレーの洗礼を受けたのです。

佐々木:ええっ。その半年の中で、学びや生かせることがありましたか。

宮谷:会社がつぶれるということが、シリコンバレーだと普通にあることですね。社員は一斉解雇されますが、その後Linkedinやヘッドハンターから連絡が来る、というカルチャーでした。次の会社も2週間くらいで決まりますし、当時のCROは500件くらいオファーが来ていたので、シリコンバレーの新陳代謝はすごい。そのスピード感は日本にはないですよね。

佐々木:僕も前職でシリコンバレーに何度かお邪魔したことがありましたが、街をあげて起業家の人たちがカフェでコミュニケーションを取ったりしていますものね。

宮谷:同じ会社にいたら戦友みたいになりますし、みんながGAFAなどに転職していたので、そのネットワークは今も役に立っていると思いますね。その中で次に選んだ会社が、イスラエルのスタートアップでした。

佐々木:イスラエル独特のカルチャーはありましたか。

宮谷:起業するきっかけにもなったのですが、彼らには本当に戦場に立つ兵役があります。ですからイスラエルには、仲間を失ったり、相手の命を奪ったりする経験を持っている人たちがいました。

日本だと、何か失敗したらどうしようという考え方をしますが、彼らのマインドセットとしては、リスクと思う水準は命だ、という気概がとても印象的でした。その気概を持って創業する起業家たちのマインドは違うな、と思いましたね。

「多様性」のカルチャーを生かし、アクセルを踏むフェーズへ

佐々木:海外で起業家マインドを目の当たりにし、起業への思いが強くなった宮谷さんにとって、実際に起業したからこそ味わえたことはありますか。

宮谷:ベンチャーへの関わり方として「創業者」と「メンバー」がありますが、創業者になるとベンチャーの面白さや醍醐味を存分に味わえると思います。

ですから、いろんな大変なこともありましたが、資金調達もできて、アクセルを踏もうというフェーズに来ている今、調達の仕組みもわかるし、プロダクトをゼロから作る面白さも味わえています。このように知的好奇心を満たしながら行動できるのは、起業したからこそ経験できたことですね。

佐々木:そうですよね。やったことないことをやっている時のアドレナリンの出方って、創業すると分かるのかもしれないですね。ScanXについて、採用とカルチャーについて伺えますか。

宮谷:組織が拡大してきている中、CxOとして一緒に組織をみていただける方、マネージャークラスで、一緒にプロダクトのロードマップの作成・実行し、エンジニアと形にしていくところまでやれる方を募集しています。また、新しい製品をリリースするところでマーケテイングも行う方向なので、ScanXのレピュテーションを海外に対して広めていけるような人も探しています。

弊社のカルチャーとして一番ハイライトしたいところが、多様性です。現状は国籍で言うと日本とかフィリピンが多いですが、国籍に限らず海外在住歴が長い方が多いのが特長です。アメリカにいましたとか、イギリスの中高で生活した、夫がマレーシア人です、といった方々ですね。

日本のスタートアップは日本人だけしかいないことが多いと思うのですが、自分の経験上、ダイバーシティに富んでいることが好きだったので、ScanXは積極的に海外の人材を採用しています。

年齢は、40%が30代以下です。佐々木さんに一つお伺いしたいのですが、これって創業者の年齢によって、若い人が創業者だとメンバーも若い人が多いのでしょうか。

佐々木:それもあると思いますが、とはいっても、創業者が32歳くらいだと35歳くらいまでの人を採りたがって50歳くらいの人をあまり採らないので、(そういう面でScanXは)ダイバーシティに富んでいると思います。

宮谷:ありがとうございます。

ワークライフバランスに関しては、かなり気をつけているところではあります。スタートアップはごりごり残業するというイメージを持たれている方が多いのですが、基本的にはONOFFのメリハリがしっかりしているのが特徴です。

あと、待遇に関しては、SO(ストックオプション)の付与は積極的にやります。アメリカやイスラエルがそのスタンスだったので、踏襲しています。また、マンツーマンの英会話のレッスンをつけているのもユニークだと思います。

佐々木:今日はありがとうございました。

コラム作成者
Liiga編集部
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