【J-STAR】活躍できるのは「主体性を持った変わった人」ー 日本の中堅・中小企業を支援するPEファンドの実態 #02
2018/10/17
#ファンドにつながるキャリア
#ファンドで必要なスキルとは

はじめに

Liiga会員の皆様の中には、ファンドで働くことを検討されている方も多いかと思います。ファンドで活躍するためには、どのようなスキル・マインドセットが求められるのでしょうか。

今回は、日本の中堅・中小企業の課題解決と経営支援を行っているプライベートエクイティファンド J-STARで投資担当マネージャーとして、ご活躍されている嶋氏にインタビューを実施しました。

嶋氏は、カリフォルニア大学サンタクルーズ校を卒業された後、三菱東京UFJ銀行からキャリアをスタートされました。その後、同行米国子会社であるMUFG Union Bankに出向し、ポートフォリオマネージャーとして勤務。現在は、J-STARにおいて案件開拓、投資実行、投資先支援、売却活動を担当されています。

後編である今回は、泥臭いファンドビジネスの実情から、求められるスキル・マインドセット、J-STARの採用に関してお伺いしました。

ぜひ、ご覧下さい。

前編はこちら

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J-STARが標榜する「課題解決型投資」

- 現在はJ-STARに転職されてから3年以上経過していると思います。中小企業の支援をする、という当初の目的は達成されていますか。

達成できていると思います。これは課題解決型投資というものを標榜するJ-STARの投資スタイルにも密接にかかわっています

具体的には、何かしらの課題を抱えたお客様に対し、資本と人材の両面を活用して課題解決をすることで会社の価値を向上させてリターンを創出するという投資の手法です。

実際に投資業務に携わり、中小企業の課題を解決することによって、企業を支援することを実感する日々です。

- 課題解決型投資ですね。具体的にはどのような課題がありますか。

業績が芳しくない、成長余地が不明瞭などビジネス的な課題もあれば、後継者がいないなどの事業承継の悩みもあります。他にも、株式や相続についての親族内紛争といった生々しい課題もあります。

どの企業もそれぞれのストーリーがあり、異なる悩みを抱えています。その悩みを紐解いていくのが、今の仕事で最も求められている価値でもあり、やりがいを感じています。

- 三菱東京UFJ銀行時代の中小企業向けの法人営業も非常に楽しいと仰っていましたが、異なる点はありますか。

やはり目的が異なるため、入口の企業評価から異なります。

銀行は返済能力で判断を行い、その企業に幾らまで融資可能なのか判断します。一方で、ファンドが投資をする場合、その企業は今現在どれだけの価値があるのか、将来どれだけの価値になるのか、ということを考え判断します。

この違いに私は当初苦労しましたが、同じ企業に対し違う目線を持つことが出来、良い経験が出来ていると感じています。 

「結局は人間関係が全て」泥臭い仕事も、ファンドの仕事内容

- 現在はどのような業務を担当されているのでしょうか。

現在は投資先企業3社の経営のモニタリングとバリューアップを行っています。また、新規案件のソーシングも同時並行で行っています。

- 複数の業務を兼務されているのですね。

はい。ファンドによっては、一定のタイトルに就いている人間が新規案件のソーシングを行う、などタイトルと業務範囲を定めたルール等がありますが、J-STARの場合は、タイトルによって仕事内容が決められることはありません。

新しい案件を自分で探すことも、デューデリジェンスを行うことも、投資後の関与も、基本的に一気通貫で担当します。

- これらの業務は以前在籍されていた銀行ではご経験されていないですよね。

やはり、仕事内容が異なるため、学ばなければならないことは多いですね。しかし、銀行の仕事の経験でも活きている点はあります。

例えば、投資を行う際は、私たちは基本的にマジョリティ(※)を保有することになるので、その会社のオーナー様を口説く必要があります。その際に、いかに円滑に良好な人間関係を築けるのか、というスキルは非常に大事です。これは、まさに銀行で中小企業向けの法人営業をやっていた際に身に付けたスキルでもあります。

※出資比率が当該企業の発行済株式の50%を超える投資。

- ファンドでも人間関係の構築は非常に大事なのですか。

そういった意味ではバリューアップやモニタリングなどでも一緒です。勿論、専門知識を投資先に提供するといった支援を行うことも可能ですが、ファンドでの仕事は華やかなものだけではなく、ドロドロとした泥臭いものも多いので、人間関係を構築出来ていなければ、スムーズに進めることが困難になります。

官僚やメガバンク出身の方はその点が非常に得意だな、と思いますね。

- 「泥臭い仕事」ですか。その泥臭さ印象づけるような案件はありますか。

昨年の8月に弊社が投資した事業承継の案件は、まだ継続中ですが、印象に残っています。

その企業は年間売上が十数億円ありましたが、家族で経営していたため、本社もなければ社員もほとんどいない、組織がほぼ存在しない会社でした。

そのため、投資後は組織をゼロから作るところからはじめました。私と弊社パートナーの2人でオフィスを借りて、キャビネットを通販で買って組み立て、それを壁に置く、、。本当にゼロから立ち上げるところから始めたのです。まさに手触り感満載の案件でした。

その後、組織を拡大し、従業員数も増えましたが、最初はネットバンクも通っていないため、給与計算を私が1人でエクセルで行い、銀行に振り込んだりしていました。(笑)

- 本当に会社をゼロから創業されたのですね。ファンドの仕事の泥臭さが、エピソードを聞くだけでも伝わってきます。

会社や組織をゼロから立ち上げて、本当の意味でチームビルディングの経験を得ることができたのは、非常に良い経験でした。

現段階で自分が経営者になることは考えていないですが、仮に会社を創業するようなことがあった場合には、この経験は非常に活きると思います。

常にアンテナを高く張ること。気づくことでこそ、人は成長できる

- 案件のソーシングから会社の立ち上げ、企業のバリューアップなど、様々な仕事をご担当されてきたことと思います。多岐に渡る仕事の中で心がけていることはありますか。

「常にアンテナを高く張ること」を心がけています。外から新しい情報を持ってくるといったこともそうですが、投資先でそれぞれの部署がどういったことを考えているのか、誰々と誰々のコミュニケーションが上手くいっているのか、等の社内的なこともそうです。

また、外の世界で今どういうプレイヤーが周りにいて、それぞれの会社がどのようなことを提案しようとしているのか、そこに勝つためにはどうすればよいのか、等の社外のことも常に考えるようにしています。

- 常に何かしらのに気づきを得るということですね。

日々、仕事に取り組む中で新しい気づきのチャンスはたくさんあると思います。1つの気づきを得て、それを消化する事で自分の成長に繋がると思っていますし、仕事に対する貢献度も上がると思います。ただ、その成長は、まず気づかないと始まりません。そういった意味では、常にアンテナを張っていることが非常に重要です。

- ファンドという職業上、経営する立場で物事を考えることが多いと思います。社内外にアンテナを高く張ることは一層重要な気がします。

そうですね。しかし、経営をお手伝いする立場にいる中で「裏方に徹すること」も同時に大事にしています。実際にビジネスを進めるのは、投資先の社長であり、役員であり、従業員の皆さまであるわけです。

そのため、彼らが頑張りやすいような環境を裏側で整えてあげること、皆さんが存分に活躍できるように裏方っぽくいることも非常に重要です。

- 日々の仕事、ファンドとしてのスタンスなど、嶋さんならではの考え方があるのですね。

J-STARでは、何をするのが正しい、誰の言うことが正しい、と言われることはありません。その代わり常日頃から言われるのが、「自分が正しいと思ったことをやりなさい」ということです。

そのため、自分なりに判断基準を持って、日々の仕事に取り組んでいます。

「キャリアはドリフトである」希望通りに進むことの方が少ない

- 海外大学→メガバンク→PEファンド、という異色のキャリアを歩まれてきた嶋さんです。次に検討されているキャリアはありますか。

まだ次のキャリアについては特に考えていません。当面は今の仕事を続けていたいなと思っています。

私はキャリアを考える中で「キャリアはドリフトである」という考え方を非常に大事にしています。キャリアというものは川を下っていくように、ある程度、身を任せて流されるしかない。そして流された上で、その時に自分が良いと思う方へ進むということがいいという考え方です。

今までのキャリアを振り返っても、必ずしも自分の希望通りに進むことはありませんでした。キャリアの道筋を期待しすぎると、外れた時のショックは大きいものです。多少、心と選択肢に余裕を持たせておくことが大事ですよね。私の現在の人生観はまさにそんな感じです。

ファンドの仕事というものは1つの会社へ投資をしたら、平均して5年間ほど保有することになりますので、途中で放り出すことはできません。長いスパンで取り組まないとできないビジネスです。

そして5年後、10年後になって、その時に自分がどうしたいか、という想いに従うつもりです。

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J STARで活躍できるのは「主体性を持った変わった人」

- ここからは採用の具体的なお話をお伺いしていきます。現在は、どのような採用ポジションの方を募集されているのでしょうか。

J-STARの採用方針としては、時期に関わらず、ご活躍いただけそうな方がいれば常に採用する方針です。職種としては、大きく分けて私と同じ投資を担当するフロント業務と、IRやアドミ業務を行うバックオフィスの業務の2つがあります。

- バックオフィスは具体的にどのような仕事をするのでしょうか。

弊社は海外の投資家とやり取りをすることが多いです。そのため、アドミ・IRのバックオフィスの仕事を希望される方は日本のみならず、世界中の機関投資家とコミュニケーションをとれる必要があります。

また、専門性も必要な上、事務不可の高い業務が多いです。そのため、メガバンク出身の方に来ていただけたら、ご活躍いただけるのではないかと、自分は考えています。

実際、私自身もIRを担当したことがありますが、世界中の機関投資家からの質問に対応をしました。過去の投資について詳しく教えてほしい、この案件が成功した/失敗した理由を教えてほしい、などの質問に対し、上手くコミュニケーションを取らなければなりません。

それ以外にも、機関投資家の方々に集まっていただき、投資先ツアー行ったりもしました。

負荷は高い仕事でしたが、世界中の機関投資家の方々とお話することは非常に刺激的でした。プロの投資家と真正面から仕事をできるというのは非常に面白い環境だと思います。

- 投資担当、バックオフィスの仕事を含めて、J-STARで活躍するために重要なスキルはどのようなものだと思いますか。

ハードスキルに関しては、最低限の素養を持っていらっしゃれば問題ありません。例えば、財務についての知識や多少のエクセルやパワーポイントのスキルなどです。より重要なのは対人コミュニケーションスキルですね。

プラスアルファで、その人しか持っていない強いスキルがあると多様化につながるので、比較的採用に繋がりやすいかもしれません。

- 対人コミュニケーションスキルですか。

弊社は中小企業、中堅企業に投資を行っていますので、必ずしもロジカルに交渉が進むとは限りません。感情的な方や自分より年配の方を相手にしても、うまくコミュニケーションを取れる能力が求められますね。

- 先ほど仰っていらしたように、メガバンクの法人営業の経験などは非常に活かされるのですね。

そうですね。

現在、メガバンクから転職を検討されている方も多いかもしれません。色々な退職理由があると思いますが、もし人間関係の面倒くささを理由で現職を辞めたいと思われている方は、ファンドにはあまり向いていないと思います。

私自身、銀行を辞めた身ですが、銀行特有のカルチャーは結構好きでした。現在、J-STARで仕事をしている中で、似ている場面を多々実感します。

逆に、実現したい目標や、自己実現を目指すためにファンドへ移られるのであれば、活躍の機会は充分にあると思います。

- 一般的に、PEファンドでは、投資銀行やコンサルティングファームご出身の方が多く在籍されているイメージです。J-STARでは、どのような業界出身の方が多いのでしょうか。

投資銀行やコンサルティングファーム出身の方も居ますが、それだけではありません。他のファンドと比較してもJ-STARは多様な人材を採用していると思います。例えば、商社や他の事業会社から転職してきた人もいれば、弁護士もいます。

J-STARの方針としては多様性を確保したいという考えが強いです。そのため、様々な業界出身者を採用しているのです。

- 多様性が非常に重要なのですね。米系ファンドと比較しても多様な人材を抱えていらっしゃるイメージです。

そうですね。アメリカでは、PEファンドによる投資は事業拡大や事業再生の手段としてコモディティ化しています。そのため、いかに効率良く案件を回していくのかという観点で、その業務が得意な投資銀行やコンサルティングファーム出身者を集めている印象があります。

しかし、日本でPEファンドというと、段々と市民権を得てきましたが、まだ一般的にイメージづいているわけではありません。そのため、投資する企業の方々に対して「なぜファンドなのか」という点から説明するケースが往々にしてあります。投資候補先にメリットを感じて頂く上で、多様な人材がプラスに働く場面もあるのではないでしょうか。

- J-STARで求められるスキルや経験については、お伺いできました。マインド面ではどのような方が向いているのでしょうか。

「中小・中堅企業に投資をしたい」という想いを持った方です。ファンドというのは様々な種類がありますが、ディールの規模によって求められるスキルセットも異なってきます。

中小・中堅規模への投資業務は一言で言うと「面倒くさい」業務です。規模はそこまで大きくないはずなのに、投資をしてからEXITまでの時間や労力は他の大規模なディールと同じです。また、小さい会社の方が経営の浮き沈みが激しく、きちんとした組織がない会社も多いので、投資後も気にしなければならないポイントが山ほどあります。

そのため、規模の大きなファンドと比較して、投資業務の効率は悪いかもしれません。しかし、それでもビジネスが好きだから、等の別の理由で仕事を楽しんで取り組める方に来ていただきたいなど思います。

- 選考フローは面接がメインになってくるのでしょうか。

弊社で書類のスクリーニングをし、採用担当者が一度お会いさせて頂きます。その上で、パートナークラスの人間と会ってもらうというフローになりますね。その中で、状況に応じて食事会が開かれたりすることもあります。

心がけていただきたいこととしては、「なぜファンドに移りたいのか」だけではなく、「なぜJ-STARなのか」という質問に対する回答かと思っています。ファンドの志望理由はきちんと話せる方が多いのですが、J-STARへの志望理由をきちんと話せる方はあまりおらず、優秀な方でも志望動機の部分で見劣りしてしまう場合があります。

後は弊社で働くことのリアリティを持って頂きたいと考えています。例えば、「あなたが来週から働くことになったとして、初日にどんな仕事をするのか」、とか、そもそも「どういう投資」をしたいのか、などのビジョンが固まっていることが大事です。もちろん面接官によって聞く内容もスタンスも異なってきますが。

- 最後になりますが、嶋さんやJ-STARとして、どのような方と一緒に仕事をしたいと考えていらっしゃいますか。

「主体性を持った変わった人」と働きたいです。

弊社はまだ規模も小さいため、しっかりとした研修などありません。研修どころか、周りのメンバーから「これをやって」と仕事を渡されることも稀有です。「自分で仕事を見つけて、自分で正しいと思っていることをひたすらやる」という環境です。そのため、主体性は何より大事です。

後は、視点の多様性を持つ上でバックグラウンドやキャラクター、考え方を含めて変わっている方に来ていただけたらなと思います。既存メンバーと全く違う職歴の方や外国人の方とも是非ご一緒出来ればと考えています。

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おわりに

いかがでしたでしょうか。

2作目である今回は、泥臭いファンドビジネスの実情から、求められるスキル・マインドセット、J-STARの採用に関してお伺いしました。今回のインタビューを通じて、嶋氏が歩んできたキャリアやJ-STARで働く中で持たれている想いが伝わったのではないでしょうか。

本コラムが皆さまのキャリア構築の一助になれば幸いです。

また、J-STARは現在採用活動を行っております。本コラムを読んでご興味がある方はぜひご相談いただければと思います。

J-STARにご興味がある方は、こちらのボタンからご連絡ください。

コラム作成者
Liiga編集部
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