「スクラム採用」で日本企業の意思決定のあり方を変える。HERP代表が語るHR Techの進化系
2020/01/31
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「採用から日本の意思決定を変える」。こう語るのは、今、HRテック業界において異彩を放っているHERP代表の庄田一郎氏だ。同社の武器は、現場メンバー主導型の採用方式「スクラム採用」と、その導入を支援する採用管理プラットフォーム「HERP HIRE」。庄田氏に起業に至るストーリーとプロダクト誕生秘話、そして日本のHRの未来について語ってもらった。

〈Profile〉
庄田 一郎(しょうだ・いちろう)
株式会社HERP 代表取締役CEO
京都大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。SUUMOの営業を経て、株式会社リクルートホールディングスへ出向し、エンジニア新卒採用を担当。2015年、採用広報責任者として株式会社エウレカに入社。2016年、カップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」のプロダクトオーナーとして事業開発に従事。2017年、株式会社HERPを設立し代表取締役CEOに就任。自身の採用担当経験をベースに、社員主導型スクラム採用*の推進を支援する採用プラットフォーム「HERP HIRE」を開発・提供している。
※スクラム採用=株式会社HERPが提唱する社員主導型の採用方式

“自分が欲しいサービスを作る”ところからすべてが始まった

――どうしてHERPを立ち上げたのでしょうか、起業に至った経緯を教えてください。

庄田:実はリクルート時代に経験した苦労が原点となっています。当時エンジニアの新卒採用に携わっており、非常に多くの採用候補の学生と会い、その記録を日々エクセルに入力していました。面談だけでなく夕食まで候補者と共にすることも多く、その後オフィスに戻って深夜2時、3時まで黙々と入力するわけです。「この非効率的な業務をどうにかできないか…」と思っていました。

さらに、リクルートの次に入社したエウレカでは私1人で採用を担当していたので、リクルート時代にはやらなくてよかったことまでも自分でこなさなければなりませんでした。例えば、求人票の作成や採用候補者情報の入力のほか、イベントの設営なども含まれます。これらをすべて効率化することを目指し、起業に踏み切りました。要するに、最初は“自分が欲しいサービスを作る”ことが目標でした。

決断したのは、2016年末頃ですね。ちょうどその時期、大学時代からの親友で現COOの徳永(遼氏)も転職を検討していて、相談を受けていました。彼はUI/UX設計などが得意で、当時は大企業への転職を考えていたようです。にもかかわらず、なぜか急に私が作ろうとしていたプロダクトについて「詳しく教えてほしい」と言い出したのです。

電話で少しだけビジネスプランについて話したら「俺もそういうのにちょっと興味がある」と乗り出してきました。その時点では彼を巻き込むつもりはなかったのですが、それから週1回ほどのペースで気軽に顔を合わせ、事業プランの話をするようになりました。

2人でアイデアを出し合い事業計画の骨格ができた頃、「やっぱり大企業への転職はせず、一緒に事業をやりたい」と徳永が言ってくれました。正直驚きましたが、同時に心強さを感じ、背中を押されました。

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その後、リクルート時代に出会い親交のあった優秀なエンジニアたちに積極的に声をかけていきました。「例えば、こういうものや、こういうものを作ろうとしているんだけど、どう思う?」という風に意見を聞いて回る感じですね。そのうちの数名が「技術的にはすぐに開発可能ですよ」と興味を示してくれました。

さらにエウレカ時代に採用活動をサポートしてくれたメンバーたちも巻き込み、計7-8名が集まりました。ミーティングを重ねてアイデアを具現化し、サービスの原型を作った上で起業しました。

日本のHRは100年近く変わっていない

――「採用支援を通じて、日本の採用を強くする」をビジョンに掲げています。そこに込めた想いとは。

庄田:日本のHR関連サービスが取り組んでいるのは、候補者情報を集めることと売ることの2点に尽きます。この100年くらい何も変わっていません。どれだけ効率的に候補者情報を集めるか、そしてそれをどう販売するか。私が採用を担当していた時から、売り手と採用担当者のあいだに情報の非対称性があると思っていました。成果を保証せず、成果について言及しないほうが採用媒体として売れるわけです。これはフェアとは言えません。

企業の採用を効率化していくために、採用媒体の投資対効果を可視化できるプラットフォームが必要だと考えました。現状では採用担当者が投資対効果を考え戦略を立てる段階まで、なかなかたどり着くことができません。投資対効果が可視化できれば、単純な事務作業になりがちな日本企業の採用が改善し、採用マーケットの力学が変わるはずです。

また、問題の根本にあるのは、経営陣が組織の戦略を考え採用方針・人数を決めた上で、人事・採用の部署に実務を任せるというトップダウン型の構造です。人事・採用担当者がひたすら与えられた数字を達成するためだけに全力を注ぐという姿は、健全とは言えません。

そこで私たちはまず採用の文脈で企業の意思決定スタイルを変えようとしています。実現すれば、採用担当者も候補者を受け入れる現場も、候補者本人ももっとハッピーになるはずです。私はHRに思い入れがあるので、HRプロダクトの開発・運営に注力していますが、根本にあるのは、日本の企業のトップダウンマネジメントをすべて変えて組織のあり方を今の時代に合ったスタイルにアップデートしなければいけないという想いです。企業を変えるため、私たちが提唱している手段の1つが「スクラム採用」です。

――「スクラム採用」について詳しく教えてください。

庄田:“現場が意思決定をして採用活動を進める”のが、「スクラム採用」です。経営陣が決めるのは組織のケイパビリティや目標であって、人数ではないと考えています。そのために必要な人材の要件や人物像は、現場メンバーの方が的確に理解しています。経営陣が描いたケイパビリティを持つ組織にするために、どういう人がほしいのかは現場が考えるべきなのです。現場への権限移譲を推し進めるのが「スクラム採用」であり、その最大の利点は、採用のあるべき姿について全メンバーで合意形成できること。「採用の民主化」と私は呼んでいます。

「スクラム採用」を実現するには、各現場があるべき採用の形を主体的に考えるスタンスが必要です。人事・採用部署の人たちは、全社員で行う採用活動のプロジェクトマネジメントを担います。彼らは採用のプロであって、本来、事務作業を担う役割ではありません。採用戦略や採用媒体などに関する専門的な知識を持って、現場の採用活動をサポートする立場に回るわけです。このため、スクラム採用では、実際の面接などさまざまな権限が現場に移譲されます。

現場主導の採用が「スクラム採用」の目指す姿なのですが、そのための管理プラットフォームとして「HERP HIRE」を提供しています。複数の媒体からの応募情報を自動で一元化したり、採用進捗をリアルタイムにフィードバックするなど、現場メンバーが採用に参画できるようにする機能を備えています。

全社員で採用を民主化、スクラム化していくには、採用に関する情報を社内で共有することが必要です。全社の目標や人員があとどれぐらい足りていないのかなどがわからないと、現場も協力できないですよね。「HERP HIRE」は「スクラム採用」を行いたいと検討している企業に一歩前に進んでもらうためのプラットフォームです。経営者と企業を根本から変えることを提案させていただいており、ベンダーとして単にツールを売っているわけではありません。

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HR Techにおける米国との差を痛感。技術の力で日本の採用のパラダイムを変える

――実際に海外に足を運んで、最新のHR情報を取り入れていると聞きました。

庄田:創業当時に参考にしたのは、米国産のアプリケーションがほとんどでした。米国で展開されている数多くの優れたサービスを対象に、それらのトライアルアカウントを設定し、メンバー全員で徹底的に使い込みました。日本はマーケットとして30年は遅れていると感じています。また、私が起業前に採用担当として在籍していたエウレカがNASDAQ上場の米国企業となっていたことから、当時もグループ会社を含む現地の採用担当と情報交換する機会が多くありました。そのため、彼らがどんな観点でHRツールを選定し活用しているかというのも把握していました。その頃から米国におけるHRツールの先進性を意識していました。

もちろん、米国のツールをそのまま日本に持ってきても、浸透しません。私には日本で採用活動に取り組んできた経験があり、日本企業の採用担当者や候補者の感覚がわかり、先人の事例のインプットもある知。その上で、米国で進んでいる要素を取り入れつつ、日本のみなさんが真に求めているプロダクトを作る。これが私が取り組むべきことです。

――米国と日本の違いはどこにありますか。

庄田:終身雇用かつ一括採用がこれまで続いてきた日本の伝統的なスタイルですが、米国はそうではありません。仕事に対する考え方がそもそも異なりますよね。米国は職種ベースで、日本は人ベース。もともと日本は終身雇用が前提だったので、いまだに転職する人も米国ほど多くはありません。そうした背景から、これまで強力な採用管理システムは必要ありませんでした。一方、米国は企業に所属する人がどんどん入れ替わっていくので、そのニーズに応じて採用管理システムを含むHRツールがどんどん発展していきました。

先ほど述べたように日本のHRマーケットでは、情報の非対称性がとても大きいのが現状です。採用媒体が情報を“囲う”傾向にあるため、採用側の現場の人たちが主体的に考えて採用活動を行う仕組みは、作りにくいと言わざるを得ません。私たちは、インターネットの力、技術の力を使って、日本における採用のパラダイムを変えようとしています。コンセプトを広めていくことと、独自の技術でプロダクトを作っていくこと。この2つに力を入れていきたいと思っています。

人生をかけて本当に意味がある仕事をしたい人と働きたい

――今後のビジョンについて教えてください。

庄田:短期的には、世の中に影響力のある大企業から日本の採用を変えないといけないという想いが強くあります。現在すでに一部でエンジニア採用が行われているなど、大企業においても少しずつ職種ベースの採用に変わっていくと思います。そして、“総合職”のように1つの塊として人を捉える風習はなくなっていくのではないでしょうか。そうなれば、「スクラム採用」の原型も自然と醸成されていくはずです。機能別に採用に取り組む大企業には、私たちのプロダクトを気持ちよく使っていただけると思います。

当社はHR業界の外にいる存在です。プロダクトの説明をする時にもよくお伝えしていますが、私たちは第三者の立場にあります。採用媒体を運営しておらず、人的リソースの提供も行っていません。あくまでも外からマーケットのパラダイムを変えていく立場で、そのためのプラットフォームを開発・提供しているという認識です。

――ビジョンを達成するために、どのような人と働きたいですか。

庄田:日本は豊かな国で、飢え死をするようなことは基本的にはありません。一方で、ハングリー精神が失われています。惰性で仕事をしている人や、自分が生きていることを最大限に感じられていないと自覚している人がたくさんいるはずです。私たちが企業として取り組んでいることは、それとは真逆。「日本を変えにいく」「日本の競争力を高める」「日本の意思決定を変える」と、こんなに小さな会社で偉そうなことを言っていますが、私は生きている意味を感じられる仕事だと思っています。

だから、本当に意味があると思える仕事をしていきたいという人にとっては、すごく良い環境です。全てが用意されている環境という意味ではないので、自律的に価値を作っていける人を求めていますし、そういった方にはとても合うと思います。

人材要件としては3つあります。1つは自律的に課題を捉えて解決できる人。2つ目はオープンでフラットな人間関係を作れる人ですね。私たちのようなSaaS型ビジネスの企業はエンゲージメントがとても大切なので、お客様であるユーザーの方々に愛されることが求められます。アプリケーション上だけで完結するのではなく、人間同士の接点も含めてプロダクトだと考えています。インターネットサービスはお金をかけたらコピーをいくらでも作れるので、競合の優位に立ち続けるには自分たち独自の思想とユーザーの愛が必要です。それを作れる人がいいですね。

3つ目は、自分でモチベーションを担保しながら自ら価値を常に生み出していこうと思える人。ベンチャーでよくある話ですが、事業開発・運営の過程ではフェーズの転換が頻繁にあり、HERPでも一人一人のやるべきことは常に変化をしています。そういった環境の中で、自分のモチベーションのエンジンを持つことができ、なおかつそれが圧倒的に大きい人とぜひ仲間になりたいと思っています。

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コラム作成者
Liiga編集部
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