コンサル泣かせの「炎上」プロジェクトが発生する原因とは?現役若手戦略コンサルタントたちの深夜対談 #01
2020/10/20
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はじめに

戦略コンサルティング業界は、新卒入社時から中途採用に至るまで、トップ層から根強い人気のある業界です。一方で、内部のコンサルタントたちから見た実態はどのようなものなのでしょうか? 3-5年目の若手戦略コンサルタントの方に対談形式で答えていただきました。

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〈Profile〉
H氏
若手外資系コンサルタント
理系大学院卒業後、外資系戦略ファームのX社に新卒入社。 戦略立案、戦略実行、クライアント先への駐在、海外オフィスでの勤務経験等幅広く経験。 日英を使いこなすバイリンガル。
W氏
若手外資系コンサルタント
理系出身で、大学卒業後、外資系戦略ファームのY社に新卒入社。 様々なセクターで戦略立案に携わる。 業界では数少ない女性コンサルタントであり、激務を日々サバイブ中。
モデレーター:Kweller氏
米国の大学を卒業後、金融機関でストラクチャードファイナンスの業務に携わる。 転職し、現在はM&A業務に従事。 片田舎の高校在学中に危機感を感じたことをきっかけに日本を単身飛び出し、米国に留学した異色の経験を持つ。 数多くの学生や若手社会人から相談を受け、適切なキャリアアドバイスを行っている。


プロジェクト炎上の根源はパートナーである。

Kweller: 本日は平日のさなかにお時間を頂戴いたしましてありがとうございます。すでに日付が変わってしまっていますが、どうぞよろしくお願いします。本サイトの読者には、コンサルへの転職に興味をもっている層も多いので、実情を詳しく話してもらいたいと思います。

早速ですが、普段仕事が終わるのは日付が変わって終電がなくなる時刻になってしまうのでしょうか?

H氏: コンサルタントにありきたりな答えですが、帰る時間はプロジェクトによります。私は、大体0時を過ぎることがほとんどです。土日は休みになることも多く、土日もずっと働くプロジェクトは炎上プロジェクトであることが多いですね。

W氏: 私も0時過ぎることがありますが、最近は労働時間的にはバランスが良いプロジェクトなので21時に退社している状態が数週間続いています。もちろん炎上プロジェクトだと死ぬ思いで働きますが。

Kweller: お二人から「炎上」という言葉が出てきましたが、どういう状態が「炎上」と呼ばれるのでしょうか?

H氏: 3つあります。

1つ目は、単純に仕事量が多い場合です。厳密にいうと、納期に対して、タスク量を1日あたりに換算したときに、とてもじゃないが終わらなさそうなタスク量になっているときです。

2つ目は、1つ目に近いですが、クライアントの追加オーダーを何でも引き受けてしまうときです。納期の延長(同時にフィーも増額)等うまく調整できれば良いですが、納期は変わらず単にオーダーのみが増えた場合は、当初の想定より忙しいプロジェクトになってしまいます。一般的にはシニア層がうまく調整しますが、新規のクライアント等、投資的な意味でコミットしようとした場合、稀にこのようなケースになります。

3つ目は、やっているプロジェクトの解決策が見つからないことです。後者の場合は、マネージャーやプリンシパルクラスもわかっていないため、コンサルタントが全員頭を抱えることになり、極度に疲弊してしまいます。

W氏: 私も同じです。付け加えると、該当プロジェクトの専門領域に経験がほとんどないマネージャーが担当になっているのを見ると、炎上しそうだなというのはあります。

また、プロジェクトに入る前から、明らかに仕事量に対して人が少なく、納期が短いことが目に見えてわかっている場合があります。そういったときは覚悟を決めて、プロジェクトに突入しています。

Kweller: 炎上プロジェクトの話はよく聞くのですが、なぜ、「炎上」状態が発生しているのでしょうか。W氏がおっしゃるように、プロジェクトの開始前から炎上しそうだとわかっているなら、人員を増やしたり、納期を伸ばしたりする対策をとって、コンサルタントを苦しみから解放してあげられるのではないでしょうか。

H氏: これは若手のコントロール外になるのですが、そもそも営業の仕方に問題があります。ファームにもよりますが、パートナークラスが営業をして案件を獲得してきます。営業のうまいパートナーは、高値かつ、社内の想定よりも長い納期で案件を獲得できます。

一方、営業が下手な場合は、安請け合いをしていることが多いようです。受注額が決まってしまうと、それに応じて人員を配置しますが、当然利益を出さないといけないので、受注額が低い場合はそれだけ使用できる人件費も少なく、コンサルタント1人あたりにかかる負担が大きくなるという仕組みです。

そのため納期と受注金額のコントロールは重要です。担当する業界によって利益率が変わってくる場合があるため、アサインされる前に確認しておくことをオススメします。

ただ懐が潤っている業界は予算が多くつく傾向がありますが、そればかり注視していると経験できる業界や会社が偏ってしまいますので、最初は食わず嫌いしないことも個人の成長にとっては重要です。

W氏: 案件をなんでも「ハイ」と言って取ってくるのは問題ですね。案件は選んでほしいです。ただ、新規獲得したお客さんだと予測できないことが多いので、既存のお客さんに比べてしんどいプロジェクトになりがちです。

「仮説出し」が若手のうちからできる戦略ファームに入れ

Kweller: 先ほどH氏が述べていた、プロジェクトの解決策が見つからない場合はどうなるのですか?

H氏: ケースバイケースですが、実際の例としては、行き詰ったプロジェクトに途中から若手アソシエイトの先輩が入ってきて、その方がプロジェクトを成功に導く仮説出しを行って炎上プロジェクトからみんなを救出してあげたということがありました。

コンサルティング業界は、若手のうちから活躍できるといいますが、こういう事例が示すように、マネージャー、パートナーが分からなかったことを若手が解決することもあるので実力のある人にとってはいい業界だと思います。

Kweller: 「仮説出し」と聞くと、マネージャー以上が行う仕事と思っておりましたが、若手でもそういう機会が多くあるのでしょうか。

H氏: ファームと、上司によります。私のファームは比較的、若手でもその機会が与えられるので成長するチャンスがあります。ほとんどの上司からプロジェクトの導入においてもっとも重要な仮説を考える機会が与えられますが、適切な仮説を出すことは何回やってみても難しいです。

聞いた話になりますが、論点設定、課題設定、仮説出し、問題解決のストーリー作成といったコンサルティングの上流部分はほとんど若手に任せないファームもあるようなので、この点は入社前に、若手社員に聞くなどして事前に調べておくべきです。

Kweller: なるほど。仮説を出す練習はコンサルタントが成長するためには必要な経験なので、仮説を考える機会が得られるファームを選ぶべきですね。

ところで先ほど、若手アソシエイトが活躍した事例をH氏が言及していましたが、若手で活躍しているコンサルタントとはどういう方なのでしょう。優秀な人たちが集まるコンサルの中でさらに優秀と呼ばれる人について興味があります。

H氏: 至極当たり前の話ですが、自分の生きている時間を最大限仕事やスキルアップに使っている人は優秀です。そういった意味ではコンサルタントでショートスリーパーや休日でも勉強している人は、さらに優秀になれる確率が高いです。

かつての事例ですが、明け方まで、チームで仮説を考えて、いったん解散して数時間の仮眠をとりました。数時間後、議論を再開したときに、ある先輩は、みんなが寝ている間に、本を読んでインプットを行いさらに仮説を進化させチームメンバーを驚かせていました。その先輩は毎日2,3時間くらいの睡眠で足りるらしく、コンサルタントとして必要な素養をもっていると思わされました。

これは睡眠時間が短い人が優秀というより、もともと優秀な人が、睡眠時間が少なくて済む分、より多くの経験を詰めることで経験値のたまる速度が人よりも早く、ますます優秀になったためです。多く働けば、それだけコンサルとしての力が身につくと思いますので。

ただし、ショートスリーパーは家系的に眠らなくても生きていける体質みたいなので、我々のような普通の人がマネをすべきではないですが。ショートスリーパーでなくとも土日に業務外での勉強を多く積み重ねて優秀なコンサルタントになった人は多くいます。

Kweller: ショートスリーパーは、うらやましいですね。ただこれは先天的な話にもなってしまうので、普通の人でも参考にできる情報が欲しいですね。

おわりに

いかがでしたでしょうか。戦略コンサル業界の「炎上」の構図がご理解いただけたのではないでしょうか。後編では、コンサル中途入社で活躍する人はいるのか、MBAを経て戦略コンサルに行く人たちのその後について話していただきます。

後編:なぜ中途の戦略コンサルタントは活躍できないのか?|現役若手戦略コンサルタントたちの深夜対談(後編)

コラム作成者
Liiga編集部
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