なぜ中途の戦略コンサルタントは活躍できないのか?現役若手戦略コンサルタントたちの深夜対談 #02
2016/05/31
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#戦略コンサルのプライベートを覗く
#ポスト戦略コンサルの研究

はじめに

前回に続いて、現役の戦略コンサルタントに業界の内情を話していただきました。後編となる今回は、中途入社で活躍できる人、そして戦略コンサルのビジネスモデルの転換についてお話しいただきました。

前回のコラム:コンサル泣かせの「炎上」プロジェクトが発生する原因とは?|現役若手戦略コンサルタントたちの深夜対談 #01

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プロフィール H氏 理系大学院卒業後、外資系戦略ファームのX社に新卒入社。 戦略立案、戦略実行、クライアント先への駐在、海外オフィスでの勤務経験等幅広く経験。 日英を使いこなすバイリンガル。

W氏 理系出身で、大学卒業後、外資系戦略ファームのY社に新卒入社。 様々なセクターで戦略立案に携わる。 業界では数少ない女性コンサルタントであり、激務を日々サバイブ中。

モデレーター:Kweller氏 米国の大学を卒業後、金融機関でストラクチャードファイナンスの業務に携わる。 転職し、現在はM&A業務に従事。 片田舎の高校在学中に危機感を感じたことをきっかけに日本を単身飛び出し、米国に留学した異色の経験を持つ。 数多くの学生や若手社会人から相談を受け、適切なキャリアアドバイスを行っている。

戦略コンサルに中途入社して活躍できる人は多くない

Kweller: 戦略コンサルには、中途で入ってくる方も多いと聞きますが、実際に中途で入ってくる方は活躍できるのでしょうか?

H氏: 私のファームでは中途採用で生き残る人は多くありません。中途で活躍する例で1番多いパターンは、同業からの転職です。あとは、戦略ファーム外からの転職だと、投資銀行等のプロフェッショナルファーム出身者ですね。これもプロフェッショナルファームでの基本動作が身についているからかもしれません。

Kweller氏: 活躍する人、できない人にはそれぞれどういった特徴があるのでしょうか。睡眠時間以外でお願いします(笑)

H氏: 戦略コンサルのbehavior を短期間で習得する人は活躍できて、そうでない人は活躍できません。

behaviorとは、短期間で物事を学び取れるか、フィードバックされたことをすぐに反映できるか、コンサルタントの時間軸で働けるか(一般的に他業種より短い時間で多くのタスクをこなす)、ワークに対し緊張感もって取り組めているか、自分事化してやりきる意識があるかなどです。いきなり最初から全てできる人は中々いないですが、生き残るためには少なくとも前のめりに仕事に取り組んでいるように見られる必要があります。特に最初の内は見え方がとても重要なので。

ポジションが下だとついつい上に巻き取ってもらおうとしてしまう人もいますが、こういった姿勢ではコンサルで活躍することはあり得ません。結局睡眠時間の話になるのですが、必要なときは寝ずにやりきらないといけないですし、出来なくても積極的にコミュニケーションを取って解決方法も模索する等、ワークに対してプロアクティブである必要があります。新卒で戦略コンサルに入るとこういったことが当たり前なんですよね。中途の方にとっては真新しいことかもしれません。

W氏: そう思います。私が見た範囲で活躍しない人だと、前職の空気を引きずる人がいますね。具体的には前の会社のやり方を踏襲し、「このくらいでいいや」となあなあになってしまいコンサルとして必要な基準を満たしていない人が散見されます。Hさんがいっているように、新卒戦コンだと当たり前の基準が高くなっているのでよかったなと思います。

Kweller: 戦略コンサル業界にも社内政治があると聞いたことがありますが、プロジェクトのアサインは社内政治によって決まるのでしょうか? できれば炎上プロジェクトとかは避けたいですよね。

H氏: 炎上プロジェクトに配属されるかどうかは正直運ですが、社内政治というか、社内営業はあります。

マネージャー以上の人とうまく関係が構築できていればプロジェクトの配属はある程度コントロールできます。そのため、媚を売るわけではないですが、自分のことを様々な機会を通じてアピールしていくことは、コンサルタントとしては必要な素養だと考えます。もっとも、自分の価値をあげるのはプロジェクトで活躍してバリューを出すことです。

W氏: 派閥は大なり小なりあるため、社内政治に近いようなものはあります。

しかし、プロジェクトを経るごとにどのコンサルタントにも「色」がついていくので、どういった業界、どういった分野に強いかが見極められるようになります。特に最初のプロジェクトは、担当者のその後の印象に大きな影響をもたらすので、はじめから結果を出すことが重要です。

Kweller: ローテーションという話を聞きますが、「色」がついてしまうとローテーションできないのでしょうか?

H氏: 特定のプラクティス(業界等の領域)だけやる人はいます。そういう人は上の人に気に入られているので、そのプラクティスばかりやりがちです。

しかし、一人前のコンサルタントとして多く活躍するには、どのプラクティスに対してもある程度対応できる必要があるので、個人的にはローテーションしたほうがよいと思います。特定のプラクティスに囲われるとそれ以外のプロジェクトができなくなるリスクがあるので。

W氏: ローテーションはしたほうがいいですよね。必要とされる能力やお客さんの特性もプラクティスによって大きく違うので、広く勉強になります。コンサルタントとしての成長を考えるなら、若いうちはローテーションをすべきです。

戦略コンサルの仕事によってクライアントの担当者が出世することが喜び

Kweller: ピュア戦略と呼ばれるものがしたくて戦略コンサルファームに入る人が多いと思うのですが、実際には戦略案件って数多くあるのでしょうか? いわゆる業務コンサルもしていかないと会社として生き残れないのでは。

H氏: 業界内では有名ですが、某社はビジネスモデルを転換しています。戦略案件が世の中にそれほどないので、オペレーション的な案件も行い、これまでは手を出さなかった案件を獲得するようになっています。そのため、人を多く採用してそういったプロジェクトにアサインしているという現状があります。

ピュア戦略にこだわる必要はないので、会社の経営としてはいい選択だと思います。戦略からオペレーティブまでやれないと儲からないし、何より結果が出たとは言えないんですよ。戦略的な案件ばかりとっていると聞くと、聞こえはいいかもしれないですが、マネジメント層のお勉強資料で終わってしまうことも実際にはありました。

W氏: 実際に企業が変わるためには、実行支援までやらないといけないですよね。私も同じように提案したことがありましたけど、結局マネジメント層が動かず、提案がほとんど無意味に終わってしまいました。そもそも提案自体が良くなかったのかもしれないですが、戦略のみの提供になると内部の事情などで結局、動いてくれないクライアントさんもいるのです。

H氏 そうですね。「これは変えないといけない」という思いで、コンサルファームとクライアントのマネジメント層とで厚い信頼がうまれ、オペレーションまでやるフェーズに入れることもあります。こうしてはじめて会社が変わりはじめます。

ですので、ある程度は1つの会社に長期で関わっていくのがいいと思います。これは私もやってみるまでは気づかなかったことでした。

W氏: オペレーションって軽く見られがちだけど、実際は戦略より頭を使うこともあるし、インパクトもそれなりにありますしね。

H氏: 実は1年近く同じクライアントを担当して、戦略とオペレーションのどちらも担当したときのことですが、やっているときは正直つまらないと思ってたんです。でも、おもしろかったのが、カウンターパート(クライアント側の担当者)の多くの人が出世したんです。

カウンターパートが出世するというのは、プロジェクトの評価としてはクリティカルだという気がしています。実際、そのプロジェクトの成果が認められていたようでしたので、これほどコンサル冥利に尽きることはないと思いました。

私は、こうした経験から昔とは考えが変わって、提案を最後まで実行することってすごく大事だと思っています。

W氏: 実行してもらうのが大変。実行を継続してもらうのが大変。実行したんだけど途中でやめてしまうこともありました。意志や、やる気がそこまで強くない人たちを動さないといけないこともあるし、自社にはいない年齢が高い方にどうやったら動いてもらえるかは悩ましいです。これができていなかったから、お客さんが途中で実行するのをやめてしまったのかなと反省しています。

Kweller氏: お二人が働いているコンサルはどちらも、官公庁からのプロジェクトが多いと聞きます。官公庁はやはり儲かる領域なのでしょうか?

H氏: 実は官公庁系のプロジェクトはほとんどやっていません。単価が安く見合わなくなったのでしなくなりました。確かに昔は多くやっていましたが。

W氏: うちもそうです。利益率でみたときに官公庁は悪い部類に入るのでほとんどしません。

H氏: ただ、官公庁と関わりを持つことは大事なので、出向という形でコンサルタントが入っていくことはあります。直接的にはお金は生まないけど、特定の分野で規制緩和が起こったときに民間企業が入ってきます。中央官庁出向時に民間企業とコネクションができていると、案件獲得につながっていくわけです。だから官公庁との付き合いは欠かせないです。

MBA取得者は、意図的にポジションを下げて入社する

Kweller氏: 実は、私はMBA留学を考えていて、留学後はコンサルとしてのキャリアも考えています。MBAを経て転職している人も多いと思いますが、実際、彼らは活躍できているのでしょうか?

H氏: 日本のコンサル業界においては、MBAがなくても出世に響くわけではないです。

他業界からきて活躍できるかどうかの観点でみると、MBAをとっている人のほうが生き残る確率が高い傾向にあります。ただ、近年では、MBAで入社するときに、本来入れるポジションの1つ下のポジションで入社する人が中にはいます。例えば、アナリストとアソシエイトだと評価基準が全然違うので、まずは慣れるためにポジションを下げて入った方が結果的に生き残りやすくなるというわけです。これは日本オフィスだけの特徴みたいです。

Kweller氏: 日本オフィスに関しての言及がありましたけど、海外オフィスは実際どうなんでしょうか? 海外オフィスに長期滞在していたと聞きましたが。

H氏: アジアのとある国にいたのですが、とにかくすごかったです。働いている人の半数がアイビーリーグもしくはUKの大学(院)を出ている人たちで、とにかくグローバル化が進んでいるという印象でした。価値観も違って、日本に閉じこもっていることに焦りを感じました。当然彼らは優秀です。

W氏: それはありますね。博士号を海外のトップ大学でとった人がそこらへんに当たり前のようにいて、日本だけが異質だということに気づかされました。日本が恵まれていることの裏返しになるとは思うのですが。

Kweller: 最後に、戦略コンサルに転職したい人に何かメッセージはありますか?

H氏: コンサルに来る目的をはっきりさせたほうがいいですね。

なんとなく憧れで来てもいいけど、それほど甘くはないのが現実です。中途で入るとクビになるリスクは大きいし、福利厚生を考えると給料も特段高いわけではないし、家族と過ごす時間も圧倒的に減ります。だからそれなりに目的と覚悟をもって戦略コンサル業界に来てほしいです。

W氏: 現在、事業会社の所属ならば、コンサル業界への転職は20代のうちにすべきだと思います。生き残る確率が変わってきます。新しいことを吸収する力や体力が全然違ってきます。もちろんこれは人にもよりますので、あくまで傾向ということでお考えいただけると。

Kweller: 本日はお忙しい中、長時間どうもありがとうございました。

W氏: ありがとうございました。もう朝になってしまったので出社しないといけないです(笑)

おわりに

いかがでしたでしょうか? 戦略コンサルの裏事情が少しはご理解いただけたのではないでしょうか。戦略コンサルにおける社内政治、プロジェクトの種類、MBA、海外オフィスの情報などは、普段なかなか外部からはわからないので、入社希望の方は面接時に聞いてみるのもよろしいかと思います。

コラム作成者
Liiga編集部
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