ママのMBA(2) HBS史上初の完全オンライン授業の実情は? MBA生活、激動の1年間

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前回、ハーバードビジネススクール(HBS)から合格通知が来たというところまで書きました。2019年3月に合格通知をもらい、ビザや保育園確保の問題に直面しながらも、無事8月に入学することができました。そこから早1年。今回は、この1年間のリアルなHBS生活をお話ししたいと思います。

〈Profile〉
坂井華奈子(さかい・かなこ)
東京大学経済学部経営学科卒業。外資系コンサルティングファームの東京支社に入社後、主にヘルスケア・消費財関連のプロジェクトに従事。入社3年目に第1子を出産。その後2年間の育休中にMBA受験をし、現在夫とともにハーバードビジネススクール(HBS)に在学中。子持ち夫婦でのHBS学生は他にいない中、育児・勉学・キャリアについて日々思いを巡らせている。ビジネスにおける女性の活躍促進に関する熱い気持ちを発信中。2020年9月より、女性向けメンターマッチングサービスを開始。
▶女性向けメンターマッチングサービス【rolemy】: https://www.rolemy.jp/
▶Twitter:@KanamamaH
▶Blog:kanamom.com

※記事の内容は全て個人の見解であり、所属する組織・部門等を代表するものではありません。


【目次】
・MBAは2年間の夏休み?
・コロナによる授業オンライン化。留学の意味はあるの?
・2年目はより「自分らしく」
・まとめ

MBAは2年間の夏休み?

「MBAは2年間の夏休みだから、とにかく楽しんで」

こんな言葉をMBA卒業生から言われる方は多いのではないか。また、MBAというと勉強はある程度やりつつも、パーティーざんまいでとにかく人とのネットワークを作ることがメインというイメージを持たれている方も多いと思う。私もそう思っていた一人で、そこまで大変だとは予想していなかった。

その甘い考えは、オリエンテーションの1週間が終わった翌週から粉々に砕かれることになった。HBSはレクチャー型ではなくケースメソッドを採用している。実際の事例をもとに、自らの考えを述べるというものだ。そのため、日々、約10~20ページのケースを2~3授業分読み、その上で授業中に発言できるように準備せねばならず、3ケースある日は予習だけで少なくとも6時間は使っていた。

マーケティングやリーダーシップの授業など定性的な側面が強い授業に関しては、比較的準備は楽だったものの、特に金融のバックグラウンドがない私にとってはファイナンスや会計の授業の準備には多くの時間を要した。

そこまで時間をかけて何を準備するのかと不思議に思われる方も多いかもしれない。具体的には、ケースを読んだ後、各ケースに準備されている3~5つの質問に対しての自分の考えをまとめておくことが必要となる。

例えば、ファイナンスの授業の場合、「この会社のバリュエーションはいくらか?」「あなただったらこの買収のオファーを受け取るか否か? またその理由は?」といった質問。マーケティングの授業の場合は、「この企業が強いブランドを確立できた理由は何か?」「10年前のバリュープロポジションは何か? またそれは近年どう変化したか?」「ブランドイメージを立て直すには何をするべきか?」などといった質問が並ぶ。

しっかり準備せずとも、ケースを読むだけ読み、あとは授業中の議論の流れに合わせて発言できるネーティブの学生は多い。しかし、ネーティブとまではいえない私の英語力ではやはりそれはかなりハードルが高く、より準備に時間をかける必要があった。

また勉強だけに専念すればよいのならば、時間的に大きな負担にはならないが、HBSでは勉学以外の要素も非常に多い。例えば自分の興味に合わせて入会するクラブのイベントやネットワーキングイベントに加え、さまざまな企業のマネジメント層の方をゲストに招いた「Fireside Chat(座談会)」、大規模なカンファレンスなどが予定されている。もちろんどれも参加必須ではないものの、「せっかくきたのだから」という気持ちが勝り、忙しいのにどんどん予定を入れてしまう。

さらにHBSでは「セクション」と呼ばれる90人強のクラスのつながりが大事だと強調されているため、セクションによるイベントも多い。パーティー、旅行などに加え、「My Take」と呼ばれる自分の人生について話す会や、事前に決められたトピック(例えばジェンダー問題、環境問題など)について議論する「Continuous Conversation」など真面目なイベントも実施される。 description セクションによるイベントの様子(写真:著者提供)

余談だがMy Takeは各学生の色々な経験を聞き、お互いを以前よりも深く知ることができるので個人的にとても好きなイベントだった。私自身も、My Takeで自分の経験を45分くらいにわたって話すという経験をした。それは自分自身の人生の振り返りになった上、あまり人に話していなかったことも含めて人前で話すという「show your vulnerability」を実践するいい機会にもなった。

上記の学校関連のイベントに加え、私の場合は育児もあるため、日々のスケジュールはとにかく詰まっており、優先順位付けを明確にし、何をやって何はやらないのかを意識的に決めていく必要があった。入学初日に、「①Social②Academic③Sleepのうち、2つを優先させ1つは犠牲にしないとHBSでの生活は成り立たない」と教授が言っていたが、初めの1カ月でそのことを痛いほど思い知らされることになった。

コロナによる授業オンライン化。留学の意味はあるの?

そんな忙しい秋学期を終え、1カ月ほどのんびりと冬休みを過ごした。1月に入ると「中国で新型の肺炎が流行している」というニュースを見るようになったが、アメリカに来ることはないだろうし、普通の風邪とそこまで変わらないだろうと軽い気持ちでいた。HBSの伝統の1つでもある、1年生と2年生の間の夏休みにHBSの学生を日本に連れていく「Japan Trek」の準備をする中でも、夏までには収まるだろうと同期の日本人と話していたくらいだ。

しかし、2月中旬以降になると、特に中国人の学生が新型コロナウイルスの危険性を訴えるようになった。だが、引き続き大人数でのパーティーをしている学生もおり、そのような学生達が「過剰に反応しすぎだろう」という態度を見せることもあって、セクション内でも今までになかった緊張感が走るようになった。

成績の半分が授業中の発言で決まるというシステムのため、3月上旬ごろまではほぼ全員遅刻することなく授業に来ていた。だが、3月中旬の春休み前に事態は変わる。丸1日予定されていた、グループ課題に取り組むストラテジーの特別授業に半分以上の学生が教室に来なかったのだ。

他のMBAスクールが完全オンライン化を進める中、議論中心のケースメソッドで授業を行うHBSはかなり長く教室での授業を続けていたが、この事態を経て、ついにオンライン化に踏み切った。

HBS史上初という完全オンライン授業初日は、「V Day」(Virtual Day)と呼ばれ、オンライン化はアメリカらしく前向きな雰囲気で始まった。 description 2年生の始業式で表示された画面(写真:著者提供)

オンライン授業に切り替わっても、変わらず授業は議論中心のケースメソッドで行われた。Zoomの挙手機能を使い、教授が学生を当て、学生が発言するという形で議論が進む。議論の白熱した雰囲気や、自分が発言している時の他の学生の反応などを感じることができなくなり、物足りなかったのは確かだ。

また、しょせんパソコンに向かって話すため、自分が発言する時の緊張感があまりなく、教室で全員に聞こえるように声を張って発言しなくてはならなかった時に比べ、楽になったことも事実。パソコンや携帯電話の使用が一切禁止だった教室内に比べ、自宅では何でもし放題なので、他のことをする誘惑も増えた。さらに、コロナの影響で保育園が閉鎖され、自宅で3歳の息子の面倒を見ながら授業を受けていたため、その両立はかなり大変だった。

だからといって、オンライン化されたことにより学びが少なくなったかと言われれば、そんなこともない。少なくとも秋の期間、毎日教室で議論してきたクラスメイト達だ。オンライン授業になっても、それぞれの人生経験を踏まえた深い意見は引き続き出ていたし、自分さえしっかり集中しようと思えば、今まで通り授業にもしっかり集中できた。様々なイベントもオンライン化され、今まで時間的に育児と重なり参加できなかったものも、子供と一緒に家から参加できるというプラス面もあった。

もちろんオンライン化されてしまったことに対する落胆の気持ちは大きい。授業料が減額されないことに対し憤りも感じた。しかし、この状況を受け入れた上で、どうしたらHBSでの経験を最大化できるかと気持ちを切り替えたことによって、思ったよりも満足度の高い春学期を過ごせたのではないかと思う。 description オンライン授業中の様子(写真:著者提供)

2年目はより「自分らしく」

そして2020年8月。3カ月の夏休みを経て、ついに2年生が始まった。1年生は全て必修科目だったが、2年生は全て選択科目。授業選択には、学生それぞれの個性が出る。他の学生が何の授業を取るのか、非常に興味深かった。自分自身が学びたい分野の授業を受けるため、1年生の時に比べ、ケースを読むのも楽しくなった。

また、ハーバード大学の他のスクール全てが完全オンライン化に踏み切った中、HBSだけは、教室での対面授業も組み込んだハイブリッド方式を採用した。全授業のうち約3割がハイブリッド形式を取り、その授業ではクラスの3割程度の学生が教室で授業を受ける。誰が教室に行けるかはローテーションで決められている。

先日、久々に教室に入った時は、なんだかとても懐かしい気持ちになり、コロナ前は当たり前だった教室で授業を受けることのありがたさを感じた。実際に教室で授業を受けられる回数は少ない上、クラスには20人ほどしか人がいないためガランとした空気はあるものの、ハイブリッド形式を採用してくれた学校には感謝したい。

多くの先輩方が語っていたように2年目はあっという間に過ぎていくのだろう。限られた時間の中、そして限られた環境の中、いかにこの経験を最大化するかは自分自身にかかっていると日々気持ちの引き締まる思いである。

まとめ

HBSでの生活は想像以上に忙しく、想像以上に大変で、想像以上に自分自身に色々な刺激を与えてくれた。シビアでチャレンジングな環境だったからこそ、そう感じることができるのだと思う。MBA受験を決める前は、本当に行く意味があるのかと迷うこともあったが、1年間経験した今、過去の自分に対して胸を張って「意味があるよ」と言ってあげられる。


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