大手の三井不動産や三菱地所などを中心に、就職・転職先として人気の高いデベロッパー。ここでは第二新卒のデベロッパーへの転職可否や転職のポイントについて、大手を中心に分かりやすくまとめています。
第二新卒のデベロッパーへの転職ポイント
第二新卒でもデベロッパーへの転職は可能ですが、「どこでも転職できる」という訳ではありません。以下のポイントを参考に、応募先や応募のタイミングを検討しましょう。
- 大手は「現職で実績のある人物」を採用する傾向がある
- 企業によっては応募資格で「最低就業年数」を定めている
- 専門職を中心に、資格や実務経験を求められることが多い
- 業界未経験であれば、営業職や事務職が狙い目
大手各社の中途採用の傾向
大手デベロッパーの中途採用では、「総合職での一括採用」と「職種別採用」のケースがあります。総合職中心で採用している企業は最低就業年数を定めていることも多く、第二新卒での転職はかなりの難関です。
今回は大手各社の中途採用の傾向を、売上高ランキング順にご紹介します。
三井不動産
- 募集職種は総合職と技術職(DX推進)の2種類
- 総合職の応募資格は「就業経験満4年以上」(目安)
- 業界経験は不問
デベロッパーの中で断トツの売上トップを誇る三井不動産。社員の平均年収は1200万円を超えており、就職・転職先として非常に人気が高いです。東京ミッドタウンやコレド室町、柏の葉スマートシティをはじめとする大規模な開発を数多く担っています。
採用は総合職と技術職に絞られており、どちらも業界未経験での応募が可能です。ただし総合職の応募資格の欄には「就業経験満4年以上」と記載があります。応募資格は絶対条件ではないものの、高い能力とそれを裏打ちする現職での実績が重要と考えられます。
三井不動産株式会社 海外事業部 中田敏文氏
(五井不動産に転職したのは)人々の生活に大きなインパクトを与える仕事がしたいと思ったからです。もともと、新卒の就職活動でも興味を持っていました。実際、三井不動産の事業内容を調べてみて、街を変えていくのは単純に面白そうだったので、素直にやってみたいという気持ちで入社を決めました。
我々はオフィス、住宅、商業施設、ホテル、物流施設と様々な用途で不動産事業を行っていますし、エリア全体の街づくりや複合再開発なども含まれます。(中略)一つひとつが新規事業のようなものですし、企画、営業、ファイナンス、マーケティングと経営のいろんな要素が詰まっていて、奥深いんです。
- 本社所在地:東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
- 売上高(2021年度):2兆1008億7000万円
- 平均年収(2021年度):1273万8000円
飯田グループHD
- 採用はグループ企業ごとに行っている
- 募集職種は企業ごとに異なるが、基本的に職種を細かく分けて募集
- 最低就業年数を指定していない職種がほとんど
飯田グループHDは、2013年に不動産会社6社が経営統合して設立されました。三井不動産や後述の三菱地所、東急不動産HDなどと異なり、マンション分譲事業と戸建事業が中心です。
採用はグループ企業ごとに行っており、基本的に「営業」「土木管理」「経理管理」など職種ごとに細かく募集をしています。専門職を中心に資格や実務経験を求められるケースも多いですが、営業職などは資格や経験をあまり問われません。また応募資格における実務経験の条件は、あっても「1年以上」が多いです。
- 本社所在地:東京都武蔵野市西久保一丁目2番11号
- 売上高(2021年度):1兆3869億9100万円
- 平均年収(2021年度):782万8000円
三菱地所
- 募集職種は総合職、業務職、DX・IT/専任職の3種類
- 総合職3年以上、業務職4年以上、DX・IT/専任職3年以上の就業年数が必要
- 総合職と業務職は最長就業年数13年以内の応募に限られる
- 応募条件に業界経験の記載はなし
デベロッパーの中では三井不動産と並んで人気の高い三菱地所。平均年収は三井不動産と同様に1200万円を超えています。
オフィスビル事業を中心に、都市開発やリゾート施設の開発なども手掛けています。
採用職種は3種類に限られています。業務職は、主にバックオフィスでのサポート業務を担う職種です。それぞれ最低就業年数の指定があり、且つ総合職と業務職では最長就業年数も定められているため、現職で実績を積みながらも、タイミングを見計らって応募することが重要です。
三菱地所株式会社 新事業創造部 宮阪恭一氏
(転職した当初は)都市開発事業部という、オフィスビルの開発部門に配属されました。都心部を中心に土地を取得し、オフィスビルなどの収益用不動産を開発した上で最終的にはそれを不動産投資マーケットで売却するところまでを担当する部署ですが、私は主に土地の取得や、そこでどういった建物を開発するかの商品企画を担当していました。
前職では、証券化された不動産を買う側にいたので、その経験を活かすこともできたかと思います。
- 本社所在地:東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
- 売上高(2021年度):1兆3494億8900万円
- 平均年収(2021年度):1264万7559円
東急不動産HD
- 採用はグループ企業ごとに行っている
- 東急不動産の場合、募集職種は総合職と業務職の2種類
- 東急不動産の総合職の応募年齢は26~39歳程度が目安(社会人歴5~15年目程度)
- 2023年9月現在、東急不動産の業務職は募集なし
- 東急リバブルでは営業職や事業開発職など多職種の募集あり
- 東急リバブルは実務経験の条件があっても「1年以上」など期間が短い
鉄道系デベロッパーの東急不動産HD。渋谷エリアを中心に都市開発や商業施設の開発を行っています。東急グループの一員として、東急電鉄などと協力して開発できるのが強みです。
採用はグループ企業がそれぞれに行っていますが、ここでは東急不動産と東急リバブルの特徴を解説します。
東急不動産は、総合職と業務職のみの採用です。2022年度の中途採用者はそれぞれ10人を超えていましたが、2023年9月18日時点の情報では、総合職の募集人数が年間3〜5名程度です。また目安ながらも、三井不動産や三菱地所以上に長い社会人経験が求められています。
東急リバブルは多職種での募集があり、未経験で応募できるものもあります。また業界経験が必要な場合も「1年以上」のケースが多く、期間が短いです。
- 本社所在地:東京都渋谷区玄坂1-21-1 渋谷ソラスタ
- 売上高(2021年度):9890億4900万円
- 平均年収(2021年度):1057万9000円
オープンハウスグループ
- 中途採用は営業職、建設職、専門職に大別
- 営業職は業界経験等不問
- 建設職や専門職でも未経験で応募可能な職種あり
- 第二新卒も歓迎する傾向
デベロッパー業界で近年急成長しているのが、住宅事業を中心に手掛けるオープンハウスグループ。都市部の限られた土地を購入し、格安の分譲住宅を販売しています。
総合職を中心に採用する三井不動産や三菱地所と異なり、オープンハウスでは営業職を採用の軸としています。未経験も歓迎しており、大手の中では第二新卒でも採用の可能性が高い企業です。
企業サイトには「実力主義」との記載もあり、実績を上げるほど着実に年収が上がります。ただし平均勤続年数は3.7年とかなり短めです。
- 本社所在地:東京都千代田区丸の内2丁目7番2号 JPタワー20F(総合受付)・21F
- 売上高(2022年9月期):9526億8600万円
- 平均年収(2022年9月期):697万8364円
住友不動産
- 採用は営業職・技術職・スタッフ職に大別
- 各職種の中で「戸建営業」「マンション営業」など細分化して採用
- 営業職を中心に、業界経験等は不問の場合が多い
住友不動産は東京都心部のオフィスビルの賃貸事業や、分譲マンション事業を中心としています。都内に保有するオフィスビルの数やマンションの供給戸数は非常に多いです。また大手デベロッパーの中でも、高い営業利益率を誇ります。
中途採用では最低就業年数や業界経験などの条件が少なく、第二新卒でも比較的応募しやすい企業と言えます。特に戸建営業は高卒者の応募も可能であり、門戸がかなり広いようです。
- 本社所在地:東京都新宿区西新宿2丁目4番1号(新宿NSビル)
- 売上高(2021年度):9394億3000万円
- 平均年収(2021年度):667万4625万円
野村不動産HD
- 採用は総合職(G)と総合職(S)に大別
- 上記2種類の中で、それぞれ細かい職種やポストごとに募集を行っている
- 応募資格は職種・ポストごとに様々
- 営業職は業界経験不問だが、専門職は英語力や実務経験を求める場合が多数
野村不動産はマンション分譲を中心に手掛けているデベロッパーですが、オフィスビルや商業施設、ホテルなど幅広い事業を担っています。
採用は2種類の「総合職」をベースとしているものの、実際は職種やポストを細分化して募集しているため、入社後に担う業務をイメージしやすいです。ただし応募資格に業界経験や「〇〇に関する5年以上の実務経験」など細かい規定を設けている職種も多くあります。
営業職であれば、業界経験や職種経験の条件がないため応募しやすいです。
- 本社所在地:新宿区西新宿1丁目26番2号
- 売上高(2021年度):6550億4900万円
- 平均年収(2021年度):1017万7382万円
ヒューリック
- 2023年9月18日現在、中途採用は行っていない
ヒューリックは、上場企業全体で見ても非常に高年収の企業です。2022年12月期の平均年収は1900万円を超えています。これは一つに「若手社員は出向が多く、出向から戻って来る頃にはベテランとなって年収も高くなっているため」と言われています。
残念ながら、2023年9月現在は中途採用を行っていません。また新卒採用でも、採用人数は10名と非常に少ないです。
- 本社所在地:東京都中央区日本橋大伝馬町7番3号
- 売上高(2022年12月期):5234億2400万円
- 平均年収(2022年12月期):1904万2394円
東京建物
- 2023年9月18日現在、中途採用は行っていない
デベロッパーの中では非常に古い歴史を持つ東京建物。東京都を中心にオフィスビル事業やマンション事業を手掛けています。
企業サイトには新卒採用情報しか掲載しておらず、中途採用の情報はありません。
- 本社所在地:東京都中央区八重洲一丁目4番16号 東京建物八重洲ビル
- 売上高(2022年12月期):3499億4000万円
- 平均年収(2022年12月期):1009万6000円
森ビル
- 採用は5種類の職群に分かれている
- 「アート職群」は実務経験不要
- 「アドミニストレーション職群」は社会人経験1年以上で応募可
- その他の職群は実務経験を求められるケースが多い
最新の売上高ランキングでは10位ながらも、「デベロッパー大手6社」に数えられる森ビル。六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズなど「ヒルズ」の名称がつく複合都市の開発を多く担っており、また美術館などの芸術・文化施設も多数手掛けています。
採用は「ビルマネジメント職群」「リテール職群」「サービス職群」「アドミニストレーション職群」「アート職群」の5つに分かれています。このうちアート職群は実務経験や最低就業年数の記載がありません。また事務・スタッフ業務や営業などの支援を行うアドミニストレーション職群は、社会人経験1年以上で応募できるため、第二新卒でも応募しやすいです。
それぞれの職群に細かい応募条件が設定されているため、詳しくは採用情報を見て、自分に合う職種があるか検討してみましょう。
- 本社所在地:東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー
- 売上高(2021年度)2454億600万円
- 平均年収(2021年度)878万4000円
グループ会社などの採用情報もチェックして
ここまで大手デベロッパーの中途採用の特徴をご紹介しましたが、大手の場合は採用条件が厳しかったり、そもそも中途採用を行っていなかったりします。しかし、こうした場合もグループ会社などであれば、採用のチャンスがあることも多いです。
例えば「三井不動産のグループ会社で中途採用を狙う」「東京建物のグループ会社に応募する」といった選択肢がありますので、各企業のウェブサイトを確認してみましょう。
なお以下の記事では、大手デベロッパーの売上高の内訳や平均勤続年数などをご紹介しています。
【関連記事】大手デベロッパー11社一覧(売上高、平均年収、勤続年数、特徴)
中小デベロッパーの中途採用の傾向
中小デベロッパーは職種ごとに細かく人材を募集するのが一般的です。以下で、採用傾向についてポイントを押さえて解説します。
大手と比べて最低就業年数の縛りは少ない
大手デベロッパーの中途採用では、新卒採用と同様に総合職採用を中心としている企業も多く、最低就業年数を設けるなど「現職で実績のある人物」を選ぶ傾向が見られます。 これに対して中小デベロッパーは募集職種を業務ごとに分けており、年齢に関係なく「各業務の専門性に合った人物」を採用する傾向が強いです。
専門職は経験や資格が必要な場合も多い
中小デベロッパーであっても、用地取得や不動産管理などでは専門知識が必要です。そのため業務内容によって資格を求められるケースも少なくありません。
また専門職以外の職種でも宅建士(宅地建物取引士)などの資格を求められたり、「経理経験者」「人事・総務の経験のある者」など職種経験を求められたりするケースがあります。
未経験なら狙い目は営業職や事務職
第二新卒で不動産業界や募集職種での業務経験がない場合は、営業職や事務職が狙い目です。これらの職種は未経験を歓迎しているケースが多いです。しかし、中には「ハウスメーカーでの営業経験がある方」といった条件を求められる場合もあります。 以下の記事では未経験でのデベロッパー転職のポイントを解説していますので、併せて参考にしてください。 【関連記事】未経験でデベロッパーに転職する方法は?傾向と対策、企業選びのポイント
デベロッパーの選考方法とポイント
デベロッパーの転職試験における一般的な流れは、以下の通りです。
- エントリー
- 書類選考
- 適性検査(1~2種類)
- 面接(2~3回)
※デベロッパーによっては、適性検査と1次面接が前後します。
大手デベロッパーの場合は高学歴の応募者が多く、書類選考だけでもかなりの競争倍率です。 中途採用の場合、適性検査は新卒採用ほど重視されない傾向がありますが、大手を受験するなら7〜8割以上の高得点を狙いましょう。
面接でのポイント
面接では一般的な企業面接と同様の内容を聞かれることが多く、業種ならではの特徴はほとんどありません。よく聞かれやすい質問は、以下の通りです。
- 不動産業界に興味を持った理由
- デベロッパーの中でもなぜ自社を志望するのか
- 好きな建物や物件
- 仕事への考え方や将来像
- 自分自身について
大手デベロッパーの場合は、その企業が手掛けているプロジェクトや建築物について質問をされることがあります。そのため、応募先の企業が実際に都市開発で関わったエリアや建物を見に行くと良いでしょう。
デベロッパー転職に向けた3つのポイント
デベロッパー、特に大手に転職するためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- ポイント①現職での実績を積む
- ポイント②30~35歳までに応募する
- ポイント③不動産資格の取得や英語力の向上を図る
大手デベロッパーの場合、第二新卒のような「若さ」は必ずしも武器になりません。
他方でデベロッパーの中途採用では、応募年齢の上限を30〜35歳程度までに絞っているケースが多々あります。そのため「30歳までに応募する」など明確な目標を立て、それまでに現職での実績を積むようにしてください。
またデベロッパーでは、不動産関係の専門資格や英語力を求められることも多いです。
業界未経験でも、少なくとも宅建士の資格を取得しておくと良いでしょう。英語力はTOEIC800点相当以上の実力があると評価されやすいです。
その他の資格や求められるスキル、求人情報の探し方などは、以下の記事でご紹介しています。
【関連記事】デベロッパーへの転職難易度と中途採用の傾向|求められる人材、資格は?
転職エージェントの活用も欠かせない
デベロッパー、特に大手への転職活動に関しては、転職エージェントの存在も欠かせません。
大手デベロッパーでは、エージェントのみに公開している求人も存在します。また不動産業界を得意としているエージェントであれば、各企業の転職難易度や試験の傾向を把握しています。書類作成の支援もしてもらえるので、非常に心強い存在です。
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