アサイン代表・小瀬村氏がゼロから解説する #02「キャリア戦略の描き方(理論編)」
2018/08/23
#キャリア戦略概論
#良いエージェントの選び方

はじめに

先日、コンサルティングファームへの転職支援を得意とする株式会社アサイン代表取締役・小瀬村卓実氏に、キャリア戦略セミナーを開催いただきました。セミナーの概要をコラムとして以下の3に分けてお伝えしております。

第1回:「キャリア戦略の必要性を知り、内容を理解する」 第2回:「キャリア戦略の描き方(理論編)」 第3回:「キャリア戦略の描き方(実例編)」

前回のテーマは「キャリア戦略の必要性を知り、内容を理解する」でした。キャリア戦略セミナー第2回となる本コラムでは、実際に「キャリア戦略の描き方(理論編)」をご説明いただいております。

ぜひご覧下さい。

第1回はこちら 第3回はこちら

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③キャリア戦略の描き方

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ここからは実際の「キャリア戦略の描き方」をご説明します。キャリア戦略を描くためには大きく3つのステップを踏む必要があります。1つ目が価値観の明確化、2つ目が価値観とキャリアの紐づけ、3つ目がスタイルの確立です。

価値観というものは明確化してキーワードに起こしてみても、どうしても抽象的になります。少しふわっとするところがあるので、それをキャリアプランと紐づけなければなりません。これが「価値観とキャリアとの紐づけ」が意味することです。その後、最終的には実績を残して活躍していかなければならないので、自分の戦い方、勝ち方という自分なりの「スタイルの確立」を行わなければなりません。この3つのステップを元にご説明していきたいと思います。

1.価値観の明確化

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Liiga会員の中でも、価値観の明確化という作業を行ったことがないという方も多いのではないでしょうか。この機会にやり方を説明させていただきます。価値観を明確にするにはキャリアカウンセリングの実施、キャリアの関連書籍の活用、親しい人へのヒアリングの3つの方法があります。この3つに、ぜひとも取り組んでください。

この3つ全てに取り組んでみて、自分の過去の経験や考え方を洗い出してみるとなんとなく共通した要素が出てきます。それがご自身の価値観のキーワードとして使えるようになるのでこの3つ全てに取り組めたら価値観を明確化することに関しては問題ありません。上図の右側に記載しているのが、具体例です。価値観を明確化する3つの方法についてイメージが湧くようご説明していきたいと思います。

キャリアカウンセリング

我々の会社ではキャリアカウンセリングはその方の趣味に紐づいて分析することが多いですね。私の趣味はウイイレ(サッカーのTVゲーム)、ポーカー、麻雀、バスケットボールの4つです。一見、ただ羅列されているだけのように見えますが、キャリアカウンセリングができる人間が見ると特徴があることがわかります。

1つは、これらの趣味の要素として「勝ち負け」があることですね。私はウイイレはやりますが、RPGはやりません。ゲームの中でも明確に対戦相手がいて、相手を打ち負かすという仕組みになっているとモチベーションが上がります。ポーカーや麻雀やバスケットボールも同じように勝ち負けがはっきりしている趣味です。そこは自分の中のキーワードとして出ています。

もう1つの特徴として「指揮側に回ることが好き」ということも考えられます。ウイイレだと監督としてサッカー選手を動かし、ポーカーや麻雀だとプレイヤーとして自分のカードや牌を動かします。バスケットボールに関しても、私はポイントガードというポジションだったのですが、そのポジションの別名はコート上の監督でした。私は指揮側に回って何かに取り組むことが全体的に好きな人間なのです。指揮側のポジションで勝ち負けがあるものをする、ということが私が長く続けてきた趣味や好きなことの特徴として挙げることができます。

キャリア書籍の活用

2つ目はキャリア書籍の活用です。キャリア書籍は様々な種類がありますが、おすすめはストレングスファインダー(※)です。この書籍をやることによって自分の価値観や強みを上から順番に洗い出すことができます。私の場合は、上から、目標志向、競争性、活発性、達成意欲、分析志向などのワードがずっと続いていきます。

競争性や活発性は先ほどご説明した勝ち負けがある環境に非常に近いものです。この書籍を活用することで、自分の価値観や強みを単語として表現することができるのです。

(※)米国ギャラップ社の開発したオンライン「才能診断」ツール。177個の質問に答えることで、自分の才能(=強みの元)が導き出されます。

親しい人へのヒアリング

続いて親しい人へのヒアリングです。例えば、私の両親に自分がどのような性格を持った人間なのかということをヒアリングをすると「目標がないとダメな人間だよ。目標があるときは頑張る人だよね。」と言われたことがあります。また、妻からは「勝つことが好きだよね」という言葉をもらいました。

このように誰しも、自分では気づいていないけど他の人とは異なる価値観を持っています。自分ではなかなか気づけていないということが価値観を捉える難しさでもあり、面白さでもあります。大事なことはこの3つの要素を俯瞰した時にどういったキーワードが出てくるのか、しっかりと定義することです。

2.キャリアとの紐づけ

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私の場合、価値観のキーワードは、勝ち負けがはっきりしていること、目標が明確であること、指揮側のポジションで何かに取り組めることでした。この3つの要素がそろっていると、私は活き活きと働くことができます。それを皆さんの分も見つけていきたいのですが、ここで見つけた価値観を、キャリアプランにどう紐づけるのか、という点が非常に重要です。

ここはぜひエージェントを活用してください。業種や職種などを考慮するとキャリアプランは途方もない数になっていきますが、我々エージェントはこういうことを1つずつ理解した上でその価値観に合うようなキャリアプランを提示することが可能です。ある程度、価値観の特定ができた時には、ぜひエージェントと2人3脚でキャリアプランを練っていただきたいと思います。

ただ、人材エージェントによって面談の内容は様々です。そのため、皆様がエージェントと共にキャリアプランを考える中で、大事にしていただきたいことをチェック項目として3つほどご紹介させていただきます。

✓具体的な職種特性まで踏まえる

1つ目は、「具体的な職種特性まで踏まえて検討を行うこと」です。 例えば、「人が好きで、人の笑顔を見ることが好き」という価値観の方がいらっしゃったときに「個人営業の仕事であれば、その価値観を満たせるのではないか」とご安直に考えてしまう方が多いです。

ただ、個人営業と言っても証券営業、不動産営業、もしくは我々のような人材エージェントなど様々な仕事があります。種類がある個人営業の仕事の中には、お客さんにとって必ずしも得にはならない提案をしなければならない仕事もあります。先ほど述べた方のように、人に感情移入する力が高いは、ミスマッチを起こしてしまう可能性が高いかもしれません。

そういった具体的な職種特性まで踏まえて検討することが非常に重要です。

✓中長期のキャリアプランを意識する

続いて、キャリアプランを考える際は「中長期のキャリアプランを意識すること」が重要です。例えば営業の仕事を行うことになっても、その後、営業のスーパープレイヤーとして数字を残し続けるのか、または、営業企画側に回ってマネジメントを行うのか、その先の転職まで意識して考えることが必要です。

✓面接や転職後の実体験を取りに行く

最後に、「面接や転職後の実体験を取りに行くこと」の重要性をお伝えします。

これは「エージェントの知見を頼ってください」と先ほど申し上げたことに矛盾することでもあるのですが、キャリアにおいて面接や転職後の実体験を何よりも重視することが重要です。結局自分で感じたことや、現職で取り組んでいて面白いと感じることが、自分にとって最も確実な情報なので、そこに紐づいてキャリアを考えてほしいのです。

例えば私の場合だと「目標に向かって、指揮側に回って、勝ち負けにこだわることが好き」という価値観は、起業する前から、なんとなく起業家と親和性があるように感じていました。しかし、実際に起業をした際には、上記の価値観を満たすような経験は得られず、最初はプレイヤーとして1人でガンガンに営業するしかなく、イメージとのギャップがあり、苦労した経験があります。

このような初期のイメージと実際の仕事とのギャップは、なかなか取り組んでみないとわからないことでもあります。そのため、ご自身の実体験に基づいてキャリアの判断を行うことをお勧めしています。

アプローチショットを打つことの重要性

とはいえ、実際に仕事に取り組んでみた際、価値観とその仕事の実体験があまりにも異なってしまった場合は、その後の転職に苦労します。

そのため、我々エージェントとしては、なるべく価値観が近い職種へのアプローチショットを打つことを意識しています。

例えば、転職エージェント業が本来的には合っていたのに、何かの間違えで証券の営業職に転職した方がいたとします。別の業種の仕事ではありますが、証券の営業職からエージェント業へ移れるかというと、同じ個人営業の職種ですので若いうちであれば移ることはできるのです。

このように若いうちは、大外しさえしなければ入社してしまった後でもキャリアの修正は可能です。大事なことは価値観が近い職種へのアプローチショットを打つということと、面接や選考の途中に感じたことをきちんと素直に捉えてみてキャリアプランを修正していくことでしょう。

上記のような方法がキャリア選択の進め方として非常に大事です。さて、ここまでキャリアの考え方という点に念頭を置いて話を進めてきたので、具体的に我々がキャリアプランを描いた場合、どういった形になるのか、ケーススタディを交えてご説明していきたいと思います。(編集部注:第3回にてご紹介します。)

3.スタイルの確立

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最後にスタイルの話をさせていただきたいと思います。長期的なキャリアを検討していくに当たって「価値観を強みとして育てること」と、「ロールモデルを発掘すること」のこの2つことを意識して日々の業務にあたっていただくことをお勧めしたいです。

価値観を強みとして育てること

その人の価値観というのは、その人の強みに直結する場合が非常に多い傾向があります。例えば「人が物凄く好き」という価値観を持っていらっしゃる方は、生きている中で様々な方とコミュニケーションをとって生きてきているので、自然とコミュニケーションがうまくなるのです。

私の目標志向という価値観を例に考えてみます。目標を達成するまでのプロセスを分解して行動することを意識していました。小さいころからバスケットボールのポイントガードをやっていましたが、勝つときにはどういう要素が満たされれば勝てるのか、相手の何番を抑えて、速攻がどれくらい出て、などを分解して人に指示をして、いかに勝ちにいくかということを、小学生から大学生まで続けてきたのです。それこそ社会人歴など全然比にならないくらい長い期間を行ってきたため、自分の強みとして染みついています。

私のファーストキャリアのコンサルティングファームでも同じことを行っていました。コンサルタントとしてイシューの分解を行い、それを分解してコンサルタントとしてクライアントを動かしていく。目標を分解して、それを伝えて動いてもらうという私の強みは社会人になってから鍛えたものではなくて今までの人生を通じて磨きあげたものです。このような強みは、それぞれ中身は違うものの誰にでもあり、他人の真似できない能力です。

Liiga会員の皆さんはハイエンドの方が多く、全体的な能力値は非常に高いのでスパイダーチャートを書くと、10点中8点のものばかりなのではないでしょうか。

しかし実際は誰しも10点に収まらず、5千点とか1万点とか、そんな強みを持っていて、そういうものを活かしてキャリアを歩んでいかないと、他の人には残せない実績ってなかなか出せないと思うんですよね。

そのため、自分の価値観を強みとして育てていくということが40年間のキャリアにおいて非常に重要なキーワードとして覚えていただきたいと思います。

ロールモデルを発掘すること

もう1つはロールモデルを発掘するというものですね。色々な方を見ていますが、私個人の話でいうとアマゾンの創業者のジェフベゾスをロールモデルとして考えています。

彼はピザ2枚チームという考え方を持っています。基本的な事業については相談に乗って動かすというマネジメントスタイルを持つ一方で、本当に重要な案件だけはピザ2枚で全員が満腹になるような少人数体制での精鋭チームを組み、ベゾス自身も直接関わり事業を動かすというやり方です。

このやり方は結構自分にはまっているなと思います。目標を分解して、このようなことをやってください、と日々色々な人にコミュニケーションを取りながら本当に大事な活動については自分で直接動く。私が現在、経営者としてそのように動いているところですが、ロールモデルを発掘してその人からどんどん学んでいく、ということが大事なことです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。第2回では、実際のキャリア戦略の描き方を語っていただきました。自分の価値観を理解することが何よりも大事なようです。

第3回は、「キャリア戦略の描き方(実例編)」です。小瀬村氏が実際に支援された候補者の方のケーススタディを元にキャリア戦略についてさらいに詳しくご説明いただきました。

ご期待ください。

第3回はこちら

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。
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アサイン
小瀬村 卓実