【レゾナンス】PEファンドもポテンシャル採用を実施。キャリア支援のプロが語るPEファンド転職の今 #03
2018/12/17
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はじめに

レゾナンスインタビューコラム、第3弾です。

Liiga会員の皆様の中には、コンサルティングファーム・金融機関などのプロフェッショナルファームの中でも、M&AアドバイザリーやPEファンドへの転職を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本コラムでは、前田氏のご紹介領域であるM&AアドバイザリーやPEファンドへの転職事情について人材エージェントの視点からお話しいただきました。

ぜひご覧ください。

「日本IBM→野村証券→起業」前田氏の経歴についてお話しいただいた1作目はこちら 起業後についてお話しいただいた前作はこちら

本記事に登場いただいた前田氏にご相談したい方はこちらのボタンからご連絡ください。

PEファンドも多様性を求める時代。ポテンシャル採用も実施

―前田さんは、現在PEファンドへの転職を志望する候補者の転職支援に非常に力を入れていると伺いました。PEファンドは採用活動を活発化しているのでしょうか?

PEファンドへの転職志望者が増えている現状もありますが、最近ではPEファンド側も採用枠を増やしている印象です。

ひと昔前までは、PEファンドが採用する人材と言えば、外資系投資銀行や戦略コンサルティングファームに勤務されて専門スキルを培ってきた人材が大半を占めていました。

しかし、最近ではPEファンドも経験が浅い若手の採用も積極的に行っている様子です。

―若手に採用枠を拡大し始めたのはどうしてでしょうか?

私の仮説ですが、テクノロジーや消費者トレンドの変化が激しい現代の時代背景が理由として大きいのではないでしょうか。特に近年はInstagramやTikTokなど若者から波形するビジネスが急増している通り、どの分野、どの年齢層から次のビジネスが波形してくるか、読めない時代になってきました。

どの組織・企業でも、様々な変化が起こりうるこの時代に対応するために、多様な人材を社内に揃えておく必要があります。

実際にPEファンドに勤めている方に採用の話を聞いたところ、「採用する人材は新卒や若手のポテンシャル採用でもいい。組織の多様性が硬直化してしまうことがリスクである。」と仰っていました。

ポテンシャルを見て採用する場合、「スペックが高く、吸収意欲が非常に高い人であること」が条件であるようです。

―従来はスキルや経験重視で採用を実施されていることが多いと伺っていたので、意外です。

そうですね。とはいえ、ポテンシャル採用を実施するようになったものの、依然として書類審査を通過できる方はわずかです。

例えば投資銀行のコーポレートファインナンスに在籍していた人材は財務諸表を扱えること、財務モデリングを熟知していること等、具体的な経験があるということは非常に有利ですが。

その経験がない方は、その経験を積むことができるプロフェッショナルファームへまず転職するか、他の分野のポテンシャルを示すことが重要になります。

―なるほど。では、スキル・経験以外でPEファンドへ転職される方の特徴はありますか。

根性がある方々が多いです。

例えばPEファンドの前職で米系投資銀行に在籍されていた方は、朝まで飲んでから仕事に行くような方々が多いですね。(笑)

PEファンドという組織での仕事上、タフさが求められる場面が多いので、根性があるかどうかは重視されるのではないでしょうか。

―非常にタフな働き方をされるということですね。それでもなお、PEファンドへ転職を志望される方が絶えません。

転職にも様々な理由がありますが、最も多い理由はやはり「事業における主体性を高めるため」だと思います。

大手の金融機関でマクロな視点で経済に関わり、様々な企業へアドバイスを行うよりも、ミクロな視点で事業に携わり、実際に事業の舵取りを担っていきたいという想いを持った方々が転職している傾向があります。

特に、PEファンドで働くこと自体も大きなリスクを伴いますが、起業することに比べてリスクを抑えることが出来ます。

もし、具体的に事業化させたいアイディアなどがある方は起業することを選択した方がよいかもしれませんが、自分が主体となって事業を推進する経験を積んでいきたいと思っている方などは、PEファンドで経験を積むことが合理的な判断です。

―起業したいが、事業化させたいアイディアをまだ持っていない方が多いということですね。

そうですね。反対に「思いついたらとりあえずやるタイプ」の生き急いでいる僕みたいな人はすぐに起業したりしますけど(笑)。

ただ起業する場合は2、3年泥水を飲まないといけない経験に苛まれる可能性が高いです。泥水は成長スピードを上げてくれるもので、免疫が非常につきますが、リスクが大きく精神的にも体力的にも厳しい過程を踏むことになります。

そういう過程を踏んで起業する勇気がある人は、起業すればいいと思います。ただ、いきなりリスクを全面に背負うのは厳しいという方は、PEファンドに行って雇用が効いている状態で、ハンズオン型で企業の経営を立て直す経験は理にかなっていると思います。

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PEファンドは疑似的な家族のようなもの

―ポテンシャル採用でPEファンドが採用したケースはありますか。

2年前に新卒の女性がPEファンドに内定をいただいた実例があります。この子は結局入社しなかったのですが、入社1年目にして年収900万円+ボーナス半年分のオファーをいただいたそうです。

―新卒で900万以上はすごいですね。どのような方だったのですか。

新卒であるため、他の社会人と比較して金融の知識や経験を持っているわけではなかったのですが、非常に明るくて物腰が柔らかい子でした。それに加えて学習意欲や社交性が非常に高いことも会話している中で分かりました。

一般的にファンド組織は少人数で構成され、働いている人には疑似的な家族のような感覚を持つことも多いです。それゆえ、スキル・経験だけでなく、組織の中で他の人とどれだけ上手く関係性を築けるのか、が非常に重要です。

この子の場合は、驚く程に人間性の部分が大きく評価されました。

新卒採用時には、他にももっと地頭が良い子や知識を持っている子も選考に進んでいたのですが、ほとんどが落とされてしまったようです。

―PEファンドからの内定を辞退したのですよね。その女性は結局どこに就職したのですか?

某メーカーのファイナンス部門です。

理由としては新卒でPEファンドに入ってしまうと、その後のキャリアが思い描けないと考えたためです。

PEファンドは1年目から年収も高くワークライフバランスも良いため、キャリアの終着点としては最適でも、その後のキャリアを考える人は多くはありません。

一方で彼女は企業選びの中で「どこの会社へも転職できるスキルを積むこと」を軸としていましたので、物足りなさや成長機会が足りないと判断したのだと思います。

非常に面白い事例でしたね。私なら絶対行きますけど(笑)

―将来を考えた上での選択だったわけですね。

もちろん新卒でPEファンドへ入社することも、スキル・経験を積むうえでは非常に良い選択肢だと思います。

しかし様々な仕事がしたいと思って企業を探しているのに「一生この仕事だよ」と言われたら悩みますよね。

そういう例があるので、若手の社会人に関してもいきなり終着点を狙うという話よりは、現在のスキルからどういったキャリアプランの可能性があるか考えたほうが現実的です。

私も面談する際は、候補者の方の現状のキャリアを把握したうえで「いま一塁にいるのであれば、まず二塁に行きましょうか」といった、戦略的なキャリアプランを提案することが多いです。

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PEファンドと並行した人気職種、M&A領域に行く人材とは

―近年では、企業の事業拡大手段としてM&Aがメジャーとなってきました。LiigaでもM&A領域の職種への転職を志望する方は非常に多いですが、全員が全員、現時点でM&A関連の経験があるわけではありません。

M&Aに携わる会社は大きく、事業会社側のM&A部門と専業で企業を支援するM&Aアドバイザリー企業の2種類に分かれます。

事業会社で働く場合は、経験をもとにM&A案件をとってくることが多いので、殆ど経験がない方は転職することは難しいのが現状です。

一方、日本M&AセンターやGCAサヴィアンなどの専業M&Aアドバイザリー企業は、経験がなくとも転職できる可能性はあります。

業務としては基本的にプロジェクトワークの進めることであったり、物事の因果関係をみながら整理していくことであったりするため、総合的に最低の金融知識や地頭があれば、転職できなくはないのです。

特にPEファンドに転職することと比較したら、圧倒的に転職できる可能性は高いでしょう。

―未経験でもチャンスはあるということですね。ちなみにM&Aアドバイザリー企業の求人の数は増えてきているのでしょうか。

M&Aの案件の増加に伴って求人の数も増えてきています。理由としては、日本国内の市場がシュリンクする中、日系企業が海外企業のM&Aを通じて海外進出を図ることが増えていると考えられます。

また、日銀の金融緩和も後押ししてファンドの資金調達環境もかなり良いこともM&Aの案件が増えていることの要因でしょう。

―求人数が増えている中で採用枠も広がっているかと思いますが、企業はどういった人材を求めているのでしょうか。

求められる人材についてはPEファンドもM&Aアドバイザリー企業も似ていて、真面目で体力のある人が多い印象です。

例えば、新卒で投資銀行に入社する方は東大出身の方が多かったりします。根性や論理思考力が高いのが特徴的です。

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必要な知識は「前田塾」で教え込んだ。未経験・異業種からのPEファンド

―これまで多くの方と面談してきた前田さんですが、印象に残っている候補者はいらっしゃいますか。

3年前に慶應義塾大学出身の27歳の女性が、電力会社の営業からPEファンドへ転職しました。

―電力会社とPEファンドでは、業界も職種も必要な知識も全く異なりますね。

仰る通りです。元々、地頭や社交性の高さは群を抜いていたのですが、知識や経験は不足していたので、私が運営している社会人向けの塾「前田塾」で必要な知識や概念はご教示しました。

―前田塾ですね。どのような内容なのでしょうか?

様々な分野のことを教えていますが、主に財務会計の基礎、ファイナンス理論、保険や投資信託への理解を深める内容に加えて、統計学等のビジネス数学を学び定量評価が出来る人材を育てることができるような構成になっています。

加えて最近では人工知能、特に機械学習の話やブロックチェーン等の暗号理論など、現代社会を生き抜いていくために必要な基礎を一括に詰めています。

―この女性も塾で財務会計やファイナンス理論を理解されたということですね。

そうですね。ただ、元々会計の基本やファイナンスの概念を理解していたこと、また数字が苦手でなかったこと、定量的分析に関してはエクセルも扱えたことも、大きなアドバンテージになりました。

それらの基礎スキルに加えて人間性が加味されて採用に至ったという経緯です。

―転職エージェントとして、候補者の転職支援を行いながら、前田塾のような能力開発の事業も行っていることは非常に珍しいと思います。

そうかもしれません。

元々は、人と人を繋げることに面白みを感じる私の性格上、塾を通じて自分の得意分野を教えることで繋がりを増やしたいという想いがあって始めました。特に忙しい社会人の方が通い続けられる場所、また繋がれる場所作りをしたいという思いが強かったんです。

そのため、繋がりを作るという意味では人材紹介事業に取り組む意味と似ていると思います。

―人との繋がりを作りたい、という想いの延長線上に前田塾があったのですね。

2013年から前田塾を運営していますが、おかげ様で現在5年目で延べ人数2800人という多くの方々に受講して頂いています。

内容はエクセルや会計・ファイナンス、人工知能等を1日〜5日講座や合宿で教えていくものですが、最近はLiiga会員の皆さんのような若手ハイクラス層向けに新しいコース「トップキャリアコース」を新設しました。

具体的にはマッキンゼー、ゴールドマンサックス卒の方々からの話を直接聞けるコースです。キャリアのゴールにいる人材を紹介することで、1人1人のビジネスパーソンの今やるべきことを明確にしたいという狙いがあります。

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ゴールの人と話す機会を設けることでやるべきことが明確になる

―最後にLiiga会員に伝えたいメッセージがあればお伺いしてもよろしいでしょうか。

「経営人材になりたい」と言う方は多いですが、「何故なりたいのか」や「どのくらいの規模の会社を経営するのか」「経営人材になって何がしたいのか」ということを掘り下げている方はあまり多くはありません。

私が面談時に掘り下げるので答えが出せていなくても良いのですが、答えが見えないなりに事前に考えて頂けると、その後のキャリア面談はより良いものになっていくと思います。

憧れを持つことは自分の中のエネルギーにつながるので良いのですが、憧れで終わらせずに、抽象的な想いをより具体的にして、具体と抽象のキャッチボールをしておくことが重要です。

もし面談にいらっしゃるのであれば、ご自身が何をやりたいのかということを深掘りながら、ざっくばらんに話し合えればと思います。

また、個人的に社長の友達が多いこともあり、候補者の方に紹介して話を聞いてみればと勧めることもあります。実際、上場手前の社長の友達が多いので彼らと話すことで気づくこともあるかと思います。

まずゴールの人と話す機会を提供すれば、私と話すよりも必要なものが明確になるかと思いますので、そういった私自身の人脈で彼らを繋ぐことで何か転職の付加価値になるのであれば、気さくに話しに来てください。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

3作目である今回は、PEファンドやM&A領域への転職、またレゾナンスが運営している“前田塾”についてお話いただきました。難関であるPEへの転職事情や、M&A領域への転職にどういう人材が求められるか、実際の転職者のエピソードと共にご紹介しました。

本コラムがキャリア構築を考えている方の一助になれば幸いです。“前田塾”について興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

「前田氏と話してみたい」「キャリアパスについて悩んでいる」方はお気軽にお話いただければと思います。

本記事に登場いただいた前田氏にご相談したい方はこちらのボタンからご連絡ください。

コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。
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