MBA留学で会ったすごい奴とは?ミライセルフCEO表氏インタビュー #02
2016/05/19
#起業する
#海外大MBAに行く

はじめに

モルガン・スタンレー証券に就職し、外資系投資銀行の最前線で働いていた表氏。そんな時に出会った、ベンチャーキャピタリスト・原丈人氏の著書が、彼に大きな影響を与えます。原氏と街中で偶然出会うという運命的な体験からMBA留学、そして起業までの経緯を語っていただきました。

前回のコラム:モルガン・スタンレーで意識していたこととは?|ミライセルフCEO表氏インタビュー(1)

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PROFILE 株式会社ミライセルフ CEO 表 孝憲 (おもて たかのり)

京都大学法学部を卒業後、新卒でモルガン・スタンレー証券に入社。 UCバークレーでのMBA留学を経て、株式会社ミライセルフをシリコンバレーにて設立。現在は“企業と人のミスマッチを無くすマッチング型採用プラットフォーム”『mitsucari』を展開中。

青山の街にて、「原丈人氏」との偶然の出会い。

-MBAに行こうと考えるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。

直感的に仕事が楽しくなくなってきたと感じ始めたのが、最初のきっかけだったように思います。

仕事自体は上手くいっていましたが、リーマン・ショックなどの影響もあって、社内の尊敬していた人や優秀な人たちがパラパラと会社を辞めだしていましたし、レギュレーションなどをはじめ、金融業界自体が窮屈になってきているようにも感じていました。

そんな折、友人と宮崎県に旅行に行きました。ネタみたいな話に聞こえるかもしれませんが、その旅行中、レンタカーで走っている時に友人が流していた、長渕剛さんの『Myself』という曲を聴いたことが転機になりました。

”「夢は何ですか?」と聞かれる事が この世で一番怖く思えた”という歌詞だったのですが、それを聞いて、「自分は今、後輩から『夢は何ですか?』と聞かれたら、恥ずかしいな」と思ったんです。

だって「金融の世界で出世して、債権本部長や東京支店長になりたいのか?」と問われると、そうは思えなかったから。

仕事も上手くいっているし、リクルーティングを任せてもらえるまでにはなったけど、「でも今やっていることは、全然違う」と気付いてしまいました。

そこから、「じゃあ何が違うのか」、「今、自分の夢とは何だ?」と自問自答しはじめ、就活時代に読み込んだ『絶対内定』の著者である杉村太郎さんが設立した『我究館』社会人コースを受けるなど、自分探しを再度始めたわけです。

-新たな道として最初に考えたのが、MBAだったのですか?

いえ、「これまで資本主義のど真ん中にいたのだから、思いきり逆の方向にいってはどうか」という考えから、最初はハーバード・ケネディスクールなどの公共政策大学院を検討していました。

ちょうど「社会起業家」という存在を知った頃で、「ビジネスと社会、両方やるなんてすごい」と思い、TOEFLの勉強を始めたのですが、一方で、公共政策大学院について知れば知るほど「実はこれも違うのでは?」と感じる自分もいて、いろいろと模索していましたね。

そんなことをやっているうち、ある程度点数が取れたのでTOEFLの受験準備をしていたのですが、そのタイミングで、原丈人さんの本に出会いました。原さんはビジネスサイドとソーシャルサイドからさまざまな組織を自分で作り、ベンチャーキャピタルの仕事をしている方です。

多様なことを次々と実現させている彼の著作に強い感銘を受け、当時出版されていた3冊もすべて一気に読みきり、動画を閲覧するほど心酔していました。

そうしたら、なんと偶然、青山の街で原さんに会えたんです! 「絶対に原さんだ!」と思ったので、追いかけて声を掛けたらやっぱりご本人で。ちょうどその時、原さんの著書を持っていたのでお見せしたらとても喜んでくださり、名刺交換をしてくださいました。

その日の夜に「今日はありがとうございました」とお礼のメールを書いたところ、次の日に「サンフランシスコでイベントがあるので手伝いに来ませんか」とだけ書かれたメールが届いて。

休暇など考えることはたくさんありましたが、とりあえず後まわしにして、すぐに「行きます」と返信しました。2011年の10月か11月のことでした。

-イベントからは、良い影響を受けられましたか?

会場の雰囲気にも、イベントを通して出会うたくさんの人にも、完全にインスパイアされました。イベントのテーマは毎回変わるのですが、その時は、マイクロファイナンスや、彼らが提唱している公益資本主義の有識者を迎え、1日がかりでテーマに沿って見識を深めていくような内容で、滞在中はずっとそのお手伝いをしていました。

原さんからの学びもたくさんありました。まずイベント中も朝早くから深夜まで働くハードワーカーであることに驚きましたし、純粋にすごいなと思いました。

特に印象的だったのは、どうやって投資先を決めるのかと尋ねたときに仰っていた「100%自分が好きかどうかだけだ」という言葉。

「そのマーケットの市場規模だとかを気にするやつのことを信じる必要はない」とも仰っていました。その考えで実際に投資の世界で結果を出して活躍されているので、さすがだなと。

このイベントでソーシャルビジネスの領域に触れたことや、たくさんの方にお会いして影響を受けたことで、改めて「やっぱりビジネスも大事だな」と考えるようになりました。

-最終的な答えを出すために、どのような行動をとったのでしょうか。

「どうして自分は答えを決められないのか」と考えるうち、「NPOやNGOで実際に働いたことがないからだ」と気付いたので、原さんが運営するアライアンス・フォーラム財団関連のプログラムに参加して、バングラデシュに2週間滞在することにしました。

実際に行ってみた結果、心から「NPOやNGOは僕がやれるフィールドじゃない」と感じましたね。牛の飼育方法を研究してその技術を持ち帰ろうとしていたJICAの方なんて、もう私とは目の輝きが全然違っていました。

「自分がやるべきはNGO・NPOではなくビジネス領域だ」と感じ、MBAに行くことを決めました。実際に参加したからこそ自分のやりたいことを見極められた、良い経験だったと思います。

睡眠時間4時間で、5時間の勉強時間を捻出する日々

-MBAの留学先候補はいくつかあったのですか?

シリコンバレーに近い西海岸の学校に行こうと決めていたので、受験校はスタンフォードかUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)を考えていました。

-仕事をしながらの勉強は大変だったのでは?

GMATとTOEFLの対策を行っていたのですが、その期間は相当ハードでしたね。平日は仕事を20時に終えたあと深夜1時半まで勉強して、朝6時には起床。週末も1日10時間は勉強するような生活を、半年ほど過ごしました。

-受験結果はいかがでしたか?

スタンフォードとUCバークレーを受けて、結果第1志望だったスタンフォードには落ちてしまったのですが、UCバークレーには合格できたので、留学先に決めました。

-そうなると会社を辞めることになると思うのですが、どのように話されたのでしょう。

推薦状などの関係で、事前に受験を知っている方は少人数いらっしゃいました。同僚には合格してから話したのですが、みんな「すごく勉強したんだろうし、頑張ってこい!」と納得して送り出してくれて、とてもありがたかったです。

留学中、熱弁する起業家に刺激を受ける

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-留学中の生活はいかがでしたか?

勉強はハードでしたが、メリハリのある毎日でした。仕事や付き合いに割いていた時間が無くなり、勉強と家族のみの生活になったことによって、日本にいる時よりも家族と過ごす時間が持てましたね。

-率直な感想として、行って良かったですか?

もちろん、本当に行って良かったと思っています。

スタンフォードのエッセイの質問にもあった「あなたにとって人生でもっとも大切なものは何ですか?」という質問に対する明確な答えがMBAに行ったことで見つかりましたし、ありとあらゆる人種・職種の方々が集う環境の中で自分のやりたいことをしっかりと考えられたからこそ、その後の道筋が見えたのだと思います。

-留学後は就職ではなく起業の道を選ばれていますが、そこに至る経緯について聞かせてください。

最初は原さんの影響もあって、投資家になることを考えていましたが、留学中いろいろな人のエキサイティングな話を聞くうち、ベンチャーキャピタルや投資家ではなく、起業への思いが湧きあがってきました。

留学中に話した方のなかで印象深かった人が2人いるのですが、そのうちの1人は授業中に教室で熱弁を奮っていた方です。

データからグラフ、またその逆の変換を1クリックで出来る商品について話していたのですが、私は正直「確かにすごいけど、そこまでかな?」と思う気持ちもありました。だけど彼は「この商品はすごいものだ」と完全に信じて話すわけです。その熱量と猛進する姿勢には、圧倒されました。

もう1人はMBAではなくバークレーのコースに通っていた日本人の方。彼は私よりも半年早く資金調達を行っていたのですが、彼との話に触発された部分はとても大きかったと思います。

……とはいえ、迷いがまったくなかったわけではありません。ちょうど2人目の子供が産まれようとしていたタイミングでもあったので、「もし資金調達ができなかったら、その時は起業を辞めて違う道を行こう」と考えていました。

おわりに

大変な努力の末渡ったアメリカ・UCバークレーでのMBA留学での体験に刺激を受け、 ついに起業を決意した表氏。

次回は、起業と今後の展望、そしてキャリアを積み重ねるうえで大切なことについて、お話しいただきます。   続き: MBA卒業後の内定辞退!起業へ至った理由とは?|ミライセルフCEO表氏インタビュー(3)

コラム作成者
Liiga編集部
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