MBA卒業後の内定辞退!起業へ至った理由とは?ミライセルフCEO表氏インタビュー #03
2016/05/20
#起業する

はじめに

UCバークレーのMBA留学中に出会った多くの方から刺激を受け、起業の道を決意した表氏。彼はどのようにビジネスアイデアを考え、起業へと向かっていったのでしょうか。3部作の完結編です。

前回までのコラム モルガン・スタンレーで意識していたこととは?|ミライセルフCEO表氏インタビュー(1)

MBA留学で会ったすごい奴とは?|ミライセルフCEO表氏インタビュー(2)

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PROFILE 株式会社ミライセルフ CEO 表 孝憲 (おもて たかのり)

京都大学法学部を卒業後、新卒でモルガン・スタンレー証券に入社。 UCバークレーでのMBA留学を経て、株式会社ミライセルフをシリコンバレーにて設立。現在は“企業と人のミスマッチを無くすマッチング型採用プラットフォーム”『mitsucari』を展開中。

出資してくれる投資家が登場。再就職の道を捨て、起業へ。

―起業にあたって、ビジネスアイデアはどのように考えたのでしょうか?

これまで自分自身が「人生とは何か」「何のために働いて、何のために生きているのか」ということを常に考えながら生きてきたこと、以前学生に向けてキャリアについてのイベントを開催していたことなどをふまえて考えているうち、「自分のキャリアに関する話には、もしかしたら特別な力があるのでは」と思ってしまったことが、結果的に現在の事業内容へと繋がった気がしています。

「業界のことや自己分析のことなら誰よりも考えてきた」という自負もありましたし、MBAに出願する際のエッセイで志望職を“ベンチャーキャピタリスト”と書いたのも、「自分がやりたいことを1番明確にわかっている人=起業家を助けたい」という思いからだったので、起業するならキャリア領域にまつわる事業だなと思っていました。さらには、求職者にとって本当にフィットした企業や組織を見つけられるサービスを作ることができればと考えていました。

そこから詳細なサービス内容について考えていくうちに思い出したのが、留学中に受けたMBTIテストのこと。例えばパーティーで出会って10分話すだけで「話がまったく合わないな」と感じる人と、一気に深い話ができてしまう人がいますよね。そして、前述したMBTIのような性格テストの結果が近い人には、圧倒的に後者が多い。「この差が何なのか明確にわかるサービスがあったら面白いのでは」と思ったことが、最初のアプリが生まれるきっかけとなりました。

―アプリはいつごろリリースしたのですか?

2014年10月です。診断テストを受けた人の中から、キャリアの考え方が近くユーザーよりも年上の方3人とマッチングするシステムで、評判も上々でした。しかしマネタイズの方法がわからず、現在ではサービスが存在しているだけの状態になっています。

―資金調達や設立までは、どのように進めたのでしょうか?

最初は、私と井上(ミライセルフCTO 井上真大氏)がそれぞれ数十万円ずつ出しあい設立しました。

ですが、この時点ではまだ「このアイデアで戦っていけるのか」「このまま経営して給料を出していけるのか」といった面での不安があったこともあり、実は就職活動も並行して行っていて、内定も獲得していたんです。

海外の投資家からもまったく評価されない厳しい状況だったのですが、UCバークレーに通う友人が資金調達に成功している姿を見たことで「私も1度は日本の投資家と話しておかないと、きっとあとで後悔するな」と感じ、投資家の方々に事業説明を行うため、MBA卒業前の3月最終週に、春休みを利用して日本に戻りました。

―事業説明の結果はどうなったのでしょうか?

この時の資金調達で面白かったのは、投資家の方々から返ってくる反応が二極化したことです。「あなた達のアイデアは絶対につまらないし、お金も出さない」と言わんばかりにまったく興味を持たない人と、ものすごく評価してくださる人、この2パターンに分かれましたが、かなり早い段階で「事業に関してはまだまだ全然ダメだ、でも君達になら出してもいいよ」と言ってくださった方がいたので、それが自分達への自信となって頑張ることができました。

―起業家として歩む決心を固めたのはいつごろですか?

この資金調達中に、最初の方以外にも興味を持ってくださる投資家の方が出てきたこともあり、日本に滞在した1週間の終わりごろ、3月末には就職のオファーも全て断り、決心しました。着金していただいているわけではなかったので少し不安な気持ちもありましたが、最終的には投資をいただけたので、ここで決めて良かったと思います。

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スキルやスペック以外でマッチング。採用のあり方を変えるサービス

―現在のサービス内容について、改めてお聞かせいただけますか。

転職希望者と企業で働く社員の方に同じテストを受けていただくことで、転職者のスキルやスペック以外、つまり内面や性質、価値観、人柄などの部分でマッチングを図り、双方にとってより良い転職を行うためのシステムを提供する事業を行っています。

―最初に立ち上げたアプリから現在のシステムが確立されるまで、ビジネスモデルはどのように変遷していったのでしょうか?

『mitsucari』はジョブマッチングプレイスのような形をイメージして始めたのですが、まずは採用に結びつかなくてはいけないと思ったので、企業側には「社内のスーパースターが持っている人間的特徴とマッチした人を採用できる」ということをアピールしました。現在は、採用者を集めるためにはまず企業を集めるべきという考えから、企業側のサービスを拡充しつつ、マーケティングしている状況です。企業側で管理・分析まで簡単にできるツール一式をお貸しできる状態が直近の目標ですね。

―ユーザー(転職者)の方に対しては、今どのように動かれている段階ですか?

正直まだ何もしていないと言っても過言ではない状態なのですが、私達が思った以上に利用してくださる方はいらっしゃいますね。

―口コミなどで広がっているのでしょうか。

SNSやメディアで見て登録してくださった方や、「企業に受けるよう言われて」という方もいらっしゃいます。もちろん企業側で受けた方のデータは、受験者が許可を出して初めて私達の会社にも共有されるという仕組みになっています。

モルガン・スタンレー証券の採用基準とは?

―表さんは井上さん(ミライセルフCTO 井上真大氏 ※Google本社に新卒就職)の採用に関わっていらしたそうですね。

採用の際に面接を担当して、それ以来の付き合いです。

―表さんが面接の際に心がけていたことはありますか?

私というよりもモルガン・スタンレー証券の考え方としてですが、「自分より優秀な人を採ろう」といつも言われていました。どの分野でもいいので、「自分よりも何かすごくできるものを持っている人」を採ることを、ひとつの基準としていました。

―採用担当として多くの学生を見てきた経験から、実際に見た中で「この子は伸びるな」と感じた学生の共通点や特徴があれば、ぜひお伺いしたいのですが。

1つは「自分の持っていない他人の能力や資質を正当に評価できるかどうか」です。自分の実力では理解できないものに対して、好奇心をもって評価できるかということです。

もう1つは明確さですね。自分の本当にやりたいことに対する深さと明確さを持っているかどうかです。少し話せば、それが一般的な言葉なのか、さらに深掘りした一層下の言葉なのか、それを生み出した根本的原因まで考えているか、ある程度わかるものだと思います。

深掘りのレイヤーが深い人のほうが、面接は通りやすいですよね。しかし、その方が必ずハイパフォーマーになるかと言われると、実はそんなことはないかもしれません。「人を完璧にジャッジする能力」は、面接官時代の私も含めて、人間はなかなか持てないものだと思うので、こうした部分を我々のサービスで助けていければと思っています。

おわりに

3回にわたって、ミライセルフ代表・表氏のインタビューを掲載いたしました。アメフト一色の学生時代を経て、モルガン・スタンレー証券からMBA留学。そして、シリコンバレーでの起業と、どのタイミングでも全力で立ち向かっている姿が印象的でした。「常にバッターボックスに立っていると思え」という言葉が、まさにその姿勢を表していて象徴的であると思います。

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コラム作成者
Liiga編集部
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