【転職者向け】ケーススタディの例題と解き方のポイントを解説
2022/05/06
#戦略コンサルのケース面接対策

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ケーススタディとは就職面接の際に志望者の思考力や考え方の柔軟性を試すために出題される問題の一種です。この記事ではケーススタディの例題と考え方のポイント、対策の進め方を解説します。

ケーススタディとは

ケーススタディとは、特定の状況や事例をもとに、様々な分析や解決策を検討していくことで、課題の背後に潜む法則や原理を探る研究手法です。元々は、大学院の授業や研究などで使われていた手法ですが、現在ではコンサルティングファームや投資銀行などの採用面接で使われることもあります。

ケーススタディを使った面接のことを「ケース面接」と呼ぶこともあります。

採用面接でケーススタディが使われる理由

ケーススタディを使用する目的は企業によってまちまちですが、共通しているのは、志望者の論理的思考力や考え方の柔軟性などを見ていることです。

例えば、コンサルティングファームには様々なクライアントから自社では解決できない問題が数多く寄せられます。

コンサルタントには依頼者の相談相手として、複雑な問題を正確に理解し、解決策を提示する能力が求められるため、面接を通じて志望者の論理的思考力や考え方の柔軟性を確認しておきたいという意図があります。

また、ケーススタディには志望者のコミュニケーション能力を確認する意図もあります。会話のキャッチボールをしていくなかで咄嗟の切り返しや言葉遣いを見ることで、クライアントのカウンターパートとして相応しいかを見られていることも押さえておきましょう。

ときには、面接官が仮説の間違いを次々に指摘していくことで、志望者の修正力や粘り強さを確かめることもあります。

ケーススタディの例題と回答例

ここからはLiigaのコロッセオで実際に出題されている問題を例に回答の仕方を解説します。
Liiga コロッセオ | 若手プロフェッショナルのキャリア支援

例題

現在日本は世界一の洋傘消費国です。

日本洋傘振興協議会によると、年間の洋傘消費量はおよそ1.3億本にも上り、その60%超がコンビニなどで購入できるビニール傘とのことです。この消費量を減らし、環境によいアンブレラライフを送るためにはどういった施策が考えられるでしょうか。

考え方の手順

一般的な施策提案のケースなので、「課題特定」と「施策提案」の2つのステップを踏みました。

「課題特定」に関しては、年齢などの属性ベースや要因ベースなどがありますが、今回は特定の属性に偏って問題が発生しているとは考えにくいので要因をベースにしています。

「施策提案」に関しては、要因をさらに細かい変数に分解して行くところからスタートしています。ただし、コントロール可能な変数を抽出した段階では、どの変数が一番効きそうなのかが判然としないので、それぞれについてイメージを膨らませながら施策を出し、その評価をすることで施策を決定しています。

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回答例

回答:使用済み傘を安価で販売できる制度を作る

まず、今回は日本の洋傘消費量を減らすための施策を考えるので、実行主体は日本政府であると仮置きします。

洋傘の消費量が多い原因

次に、そもそもなぜ、洋傘の消費量が多いのかという点について考えます。
傘を買う際のパターンには、大きく分けて

  • 事前に買うことが分かっているパターン
  • 何らかの要因で突発的に買わなければならないパターン

が考えられます。

前者の場合は、持っていた傘が古くなったから、あるいは違う柄が欲しくなったからという場合が当てはまります。後者の場合は、傘を家に忘れたから、あるいは傘が風雨で突然壊れたからという場合が当てはまります。


洋傘消費量の60%がコンビニで購入できるビニール傘であること、一般的にビニール傘は普通の傘と比べて耐久性が低く、見た目も良くないことを考えると、わざわざビニール傘を事前に購入する人が多いとは考えにくく、ビニール傘を選ぶ人は後者の方が多いと考えられます。

簡単に計算してみても、一般的な傘の耐用年数が3~4年であることを踏まえると、1年で「事前に買うことが分かっているパターン」で消費される傘は3000万~5000万本くらいであり、やはり「何らかの要因で突発的に買わなければならないパターン」の方が多そうです。また、そもそも前者での洋傘消費量を減らすことは、傘を一本も持っていない人が現れるような状況となるので、現実的に考えにくいです。

以上のことから、この問題において解決すべき問題は「何らかの要因で突発的に買わなければならないパターン」にあるということが推測できます。

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傘の本数を減らす施策

最後に「何らかの要因で突発的に買わなければならないパターン」で消費される傘の本数を減らす施策を考えていきます。

上述のとおり、「何らかの要因で突発的に買わなければならないパターン」の代表例としては傘を家に忘れたから、あるいは傘が風雨で突然壊れたからという場合が考えられます。

これらで消費される傘の本数を表す式は

  • 前者:人口×傘を忘れる可能性×忘れた場合一件ごとの傘の消費本数×年間降雨日数
  • 後者:人口×傘を持っていく可能性×傘が壊れる可能性×壊れた場合一件ごとの傘の消費本数×年間降雨日数

となります。

上記の式のなかでコントロール可能な変数を抜き出してみると、傘を忘れる(持っていく)可能性、傘が壊れる可能性、そして忘れた場合・壊れた場合一件ごとの傘の消費本数あたりが考えられそうです。

下記ではこれらについてそれぞれ施策を出し、その実現性とインパクトを考えていきます。

まず、傘を忘れる(持っていく)可能性を改善する施策に関しては、雨が降る可能性がある日には、テレビやスマホ等で傘が必要だと常にアラートを出すよう義務付ける、といったものが考えられます。実現性に関しては、字幕で映したり、プッシュ通知をおくればいいだけなのでかなり高そうです。

一方、インパクトを考えると、そもそも普段傘を忘れるような人はテレビやスマホを見る習慣、もしくは時間がないために雨が降るという情報を仕入れられていない可能性が高そうなので、何かしらでアラートを出したところで気づかない事が大いにありえそうです。そのため、この施策のインパクトは怪しいでしょう。

次に、傘が壊れる可能性を改善する施策に関しては、販売する傘自体の剛性を一定以上に規制するといったものが考えられます。実現性に関しては、販売側が素材を変えるだけで済むので、開発費などはかかりますが、実現自体は可能であるといえるでしょう。

ただし、傘の価格帯が上がってしまうであろうこの施策が一般的な理解を得られるかは怪しいところです。またインパクトを考えると、そもそも、突発的に傘が壊れる可能性があまり高くなさそうなことから、実現しても消費本数の激減にはつながらないといえそうです。

最後に、忘れた場合・壊れた場合一件ごとの傘の消費本数を改善する施策に関しては、使用済み傘を安価で販売できる制度を作るといったものが考えられます。

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これは、一度使用したが家に他の傘があるため必要ないといった場合や忘れ物として傘が出てきた場合に回収して、そのまま安価で販売できるという制度です。実現性に関しては、忘れ物の扱いをどうするかという問題はあるものの、基本的には不要な傘を回収するだけなので高いといえます。

またインパクトを考えると、傘を突発的に買わなければならない人の多くは一度使えればよかったり、出来るだけ安価であったりしてほしいはずなので、その需要にマッチしており、多くの人が使用済み傘を購入してくれるであろうことから、こちらも高いといえます。

以上より、今回の提案施策としては使用済み傘を安価で販売できる制度を作るというものを採用したいと思います。

具体的に実施するならば、晴れて傘がいらなくなったときに傘をおいていける回収ボックスを設置する、自治体で不要傘の回収を行う、購入傘にデポジットをつけて回収時にそれを返却する、といった推進施策もあるでしょう。

ケース面接の前に準備しておくべきこと

ケース面接の準備では、回答の前提となる知識と企業ごとの出題傾向を押さえたうえで練習問題をこなしていくことが大切です。

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回答の前提となる知識を押さえること

ケーススタディには、問題を解く際に前提知識が必要なものもあります。例えば、「日本全国の公衆電話の数を求めよ」「一人の人が生涯で会話する人数を求めよ」といった問題を解く際には、日本の人口や世帯人数をもとに推論を重ねて答えを導くことになります。

こうした前提知識はある程度共通しているため、あらかじめ押さえておくようにしましょう。

なお、これらは大まかな数を押さえておくだけで問題ありません。

ケーススタディを解く際に押さえておくべき知識

  • 世界の総人口 約80億人
  • 日本の総人口 約1億2,300万人
  • 日本の労働力人口 6,860万人
  • 一年間の出生数 77万人
  • 国土面積 約37万8,000平方キロメートル
  • 日本の世帯数 約5,800万世帯
  • 世帯の平均人数 約2.12人
  • 企業の数 約367万社
  • 日本人の平均年収 443万円
  • 全国の市町村の数 1,718市町村

また、メーカーなどでは、自社の売上・販路の拡大といったテーマで出題されることもあります。余裕があれば、メーカーのターゲットに関する数値も押さえておくようにしましょう。

例えば、化粧品メーカーの場合では女性が一年間に化粧品に費やす平均金額や購入頻度、何歳から化粧をする人が多いのかといった数値を事前に調べておくと、答えを出しやすくなります。

出題傾向を押さえること

ケーススタディで出題される問題には「ビジネスケース」と「フェルミ推定」の二種類があります。

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基本的に出題される問題には業界ごとの傾向がありますが、近年ではフェルミ推定とビジネスケースの両方を使って問題を解くケースもあります。事前準備をする際は、どちらの基本も押さえておくようにしましょう。

フェルミ推定とは実際に調べることの難しい数値を、最低限の知識と論理的思考で概算する手法です。

例えば、「全国のマンホールの数」や「一世帯が一年で消費する白米の量」といった数値を実際に調べることは困難ですが、全国の世帯数や世帯の平均人数、平均年齢などから計算式を考え、正解に近い値を導くことはできます。

フェルミ推定とはこのように最低限の知識をもとに論理的な仮説を立てる力を試すもので、総合商社や投資銀行、コンサルティングファームなどでよく出題されます。

対して、ビジネスケースでは、企業の経営・事業課題に対して志望者から提言を行います。

よくあるのは自社の売上やシェアの拡大といったケースですが、コンサルティングファームではクライアントが政府の場合を想定して「ワクチン接種の推進方法」や「少子化の改善方法」といったケースが出題されることもあります。

フェルミ推定と比べると、ビジネスケースでは回答に自由度があるのが特徴ですが、この場合でも企業側に見られていることは、志望者の論理的思考力や考え方の柔軟性であることに変わりはありません。

面接官が見ているのは、提言をするうえでどのようなことを検討したのか、提言に妥当性はあるのかといったことです。

優れたアイデアでも、さしたる根拠のない思い付きでは評価されないので注意しましょう。ビジネスケースはメーカーやコンサルティングファームなどでよく出題されます。

練習問題をこなし、パターンを掴むこと

最低限の前提知識と出題傾向を押さえた後は、練習問題を解いて回答のパターンを掴みましょう。

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ケーススタディには出題される問題と回答にパターンがあり、練習問題をこなすことで回答のコツがわかるようになります。

実際の面接では1問当たりの回答時間は10〜15分と設定されることが多いので、練習でもその時間を目安に問題を解くようにしましょう。

Liigaの「コロッセオ」では、実際に企業で出題された問題に無料で挑戦することができます。コツをつかむための練習に活用してください。
Liiga コロッセオ | 若手プロフェッショナルのキャリア支援

また、解答の視点については以下の記事も参考にしてください。
【解答の視点を学習】回答の方向性が広い、あいまいなケース問題に対するアプローチ

会社によっては回答をホワイトボードにまとめたり、プレゼンテーションをしたりすることが求められることもあります。

その際は回答のまとめ方や話し方も評価の対象となるため、練習の段階でも意識するようにしましょう。

まとめ

ケーススタディとは、特定の状況や事例などをもとに、様々な解決策を検討していくことで課題の原因分析を行う研究手法のことです。

近年では、コンサルティングファームや投資銀行などの採用面接の場でも論理的思考力や考えの柔軟性を図る目的で導入されており、難関企業を志望する学生にとって避けては通れない課題の一つとなっています。

ケーススタディを解く際には、前提となる知識を押さえたうえで志望する企業で出題されやすい問題を重点的に解いていく必要があります。

Liigaでは、過去に実際に企業で出題されたケース問題をまとめた「コロッセオ」というサービスを提供しています。

利用は無料なので、ぜひ、選考対策として活用してください。
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コラム作成者
Liiga編集部
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