「キャリア相談は単なる『職種相談』ではない。キャリアとは「人生そのもの」
2018/12/26

はじめに

皆さまは「キャリア」という言葉を聞いた時、どのようなイメージを持たれますか?

転職、職種、業務内容、、、。多くの方は職種や業務にまつわるイメージを思い浮かべたのではないでしょうか。

しかし、キャリアというものは「職種や業務」に限った話ではありません。キャリアというものは「人生そのもの」なのです。

こう語るのは、コンサルティングファームへの転職支援を中心に行っているアサイン・奥井亮氏、ベンチャー・スタートアップ企業を中心に転職支援を行っているプロコミット・若狭健二氏のお二人。

この度、Liigaを代表する2人のエージェントが若手キャリアに関する対談を行いました。

キャリアを考えるうえでの前提やキャリア形成の進め方、また転職活動の意義についてプロフェッショナルな視点からお伝えします。

〈Profile〉
写真左/若狭健二(わかさ・けんじ)
株式会社プロコミット キャリアコンサルタント。若手ハイキャリアの転職を支援。
大学を卒業後三菱UFJモルガンスタンレー証券へ新卒入社。株式アナリストとして製造業からマクロ経済のリサーチを担当する。その後はバークレイズ証券に転職しIT・エンタメ業界のリサーチを経験した後プロコミットに入社。ビズリーチ社主催「ヘッドハンター・サミット」にて2017年、年間最優秀賞である、「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

写真右/奥井亮(おくい・りょう)
株式会社アサイン キャリアコンサルタント。2017年度 Liiga実績No.1エージェント。
総合コンサルティングファームにて大手金融・インフラ・エネルギー業界の支援業務に従事。その後、事業会社を経て株式会社アサインを共同設立し、若手の転職を手掛ける。 特に外資コンサルティングファームを中心にキャリアアップ転職を経験。 キャリア形成や面接対策に加え、転職後もなりたい姿に向かうために候補者と併走していく転職支援方法が特徴。

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「キャリア」は職種の話に限られない。キャリア支援のプロが語るキャリアの定義とは

- キャリア相談のプロフェッショナルであるお二人にお越し頂きました。お二人はキャリアをどのようなものだと捉えていらっしゃいますか。

奥井:キャリアとは「厳しくもあり、自由である」と考えています。

「キャリア」は人生を通じて積み上げていかないといけないですよね。

20代の方は現職の「業界」か「職種」のどちらかによる転職が出来ますが、30代以降であれば経験や実績に基づくその人の「実力」によるため、キャリアの選択肢はより制限されます。

着実に計画的に設計して進めなければならない、後からでは取り返しがつかない、という意味で非常に厳しいものです。

一方でキャリアは自由度が高いものです。例えば若狭さんは日系証券会社から外資証券会社、更に人材業界へと領域を移してご活躍されています。私もコンサルティングファームを経て、転職エージェントを起業しています。

このように個々人によって変化に富み、自由なものです。

若狭:「キャリア」というと、皆さん「職種」や「業務内容」の話になりがちですよね。転職エージェントへのキャリア相談が良い例です。

しかしキャリアは本来、職種や業務内容に限らない、人生そのもののことを指します。

人生において「自分が何を得るために、それまでに何を積み重ねたいのか」という選択の連続で積み重なっていくものです。

奥井:その人の「生き方」のようなものでしょうか。

若狭:そうですね。人生を自分なりに生きるときに、どういう選択をするのか、それが僕にとっての「キャリア」です。

-候補者がエージェントに相談をする時は、単なる「職種相談」になりがちですよね。なぜ生き方ではなく、職種の相談になってしまうのでしょうか。

奥井:それはエージェントの発信力不足に責任があるのではないでしょうか。そもそも若手の社会人の方がキャリア形成の方法を知らないのは当然です。

経験も浅く、情報が多くはない若手は、どのようなキャリアを歩むべきかわからないまま、転職活動に臨んでしまうことが多いです。その結果、転職先を相対評価で見ることしかできず、企業の社格や周囲からの評判、キラキラした職種を希望するといったことになりがちです。

そして、その企業へ転職するためには、どのようなスキルを身につければよいのか、という攻略法に焦点を当ててエージェントへ相談にくるので「この仕事に就くにはどうしたらいいか」というように職種に限定した相談になってしまうのだと思います。

しかし、キャリア形成というものは本来「職種」だけで選択を行うものではありません。自分の人生における目標や理想、自分がなりたい姿から逆算して進むべき道を考える作業です。

この考え方が市場に浸透しておらず、職種やスキルなど表面的な相談に終始してしまうのです。キャリア形成の方法を最も理解しているのは、転職エージェントですので、本来エージェントが発信するべきものなのです。

若狭:確かに、若手の社会人の方は「自分が何を求めているのか」が分からない状態では、転職エージェントの元へ相談に行って「どの職種、どの業種へ転職するか」という表面的な話をするしかありません。

30代の社会人であれば「自分がやりたいこと、できること」が見えてくるので、面談の際も、過去を深く掘り下げて価値観を探っていく必要は少ないのですが、若手の場合は、そこすら固まっていない状態なのです。

奥井:業務が候補者への案件紹介のみであるのなら、転職エージェントは必要ないですよね。自動化されたマッチングサイトで十分事足ります。

私も過去に転職しようと思ったときに転職エージェントの方とお会いしたのですが、面談の内容に違和感を感じることがありました。

具体的には、面談が始まって10分程お話しした後に、転職エージェントの方が案件の紙束を持ってきて「ここの会社なら行けますよ」と言いながら案件の紹介をされたことです。

仮に「自分がやりたいこと、できること」がある程度理解されている30代の候補者であれば、その面談方法でも問題ないかもしれませんが、20代の若手相手であれば、その方の価値観や自分がなりたい姿を見極めながら慎重にキャリア形成を進めていく必要があります。

「新天地に挑む熱意」があればキャリアは変えられる

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-キャリアを悩んでいる方の中には、自分がなりたい姿と今までの経歴との乖離が大きいという場合もあると思います。その場合、どういった点が重要になるのでしょうか。

若狭:20代の方なら、ポテンシャルがあれば基本的にキャリアチェンジできると思っています。理由としては企業側も20代の若手に即戦力を求めているわけではありません。どちらかというと、今後その人の実力が伸びる可能性を見たい、という気持ちが強いためです。

そうすると過去の経験と自分が目指す方向が違ったとしても、やりたいという想いがあるのであれば、実現することが可能です。これが、20代後半や30代に差し掛かってくると過去の経験の軸が出来てしまうので、その軸を使って転職した方が活躍できるイメージは湧きやすく、企業側からも求められます。

もちろん、全くの新天地に挑むとなれば、年収が下がることもあります。しかし、それを跳ね返すほどの熱意があるのであれば、僕も応援したいと思っています。そこまでの想いを持ってないのであれば、転職しない方がよいかもしれません。

「自分の過去の経験の強み」と「新天地に挑む熱意」。そのバランス次第だと思います。

奥井:仰る通り、キャリアに対する熱量は本当に大事なことだと思います。

ただ熱意の他に、ベースとして素直さと謙虚さを持ち合わせていることも大事です。

特にLiiga会員は経歴が良い方が多く、自信に満ち溢れている方が多いですね。前提として自信を持つことは非常に大事です。しかし、過去の経験や経歴からの自信ではなく、自分のキャリアを豊かにするためのアドバイスを謙虚に受け止め、転職活動を進めていくことが必要です。

また、「本当に自分がやっていきたいことは何なのか」素直に向き合う姿勢が大切になります。

事実、転職エージェントや他者から言われたことを素直に受け止める方は、転職活動に成功していますし、あまり聞く耳を持てない方は、転職活動もうまくいかないことが多いです。

ー 素直さと謙虚さを持たせるために大事なことは何でしょうか。

奥井:これは担当する転職エージェントの実力が大事であると考えています。

人は自身が認める人、信頼できる人であると思えば、素直に話そうとします。そのため、単に案件を紹介する業者になるのではなく、転職者と向き合い、市場価値や今後の可能性など伝えるべきことはきちんと伝えて、共にキャリアを考えるパートナーになることが非常に大事だと考えています。

ー パートナーである転職エージェントと共にキャリアを考える、ということですね。

若狭:企業の選考に進むことで、考え方や今後のキャリアを捉え方が変わる方も多いですね。

どんなに優秀な方でも、企業の選考に進んでみると自分より優秀な人にたくさん会うことになります。多くの候補者は自分より優秀な方と会うと、価値観が変わり、非常に素直になるケースが多いです。

時には面接で、面接官に打ちのめされて帰ってくることもあると思います。それでも素直さを持ち合わせていれば、諦めずに挑戦し続け、最終的に転職活動を成功される方が多いです。

奥井:仰る通りだと思います。素直な方が転職後も活躍していることが多いです。企業の面接等を通して、自分の市場価値、世界の広さを知って頂くことが必要になりますね。

会社のブランドに振り回されてはいけない

- Liiga会員のような若手のキャリアに携わる中で、他の候補者と異なる点はありますか。

若狭:Liiga会員の方は優秀な分、どこの企業へも転職できるポテンシャルがあります。一方で「その企業は本当に行きたいところなのか」と疑念を抱くことはありますね。

「会社のブランドに振り回されているのではないか」、と。

転職をされた後に、「やっぱり自分が目指すべき道はここではなかった」となってしまうと、時間が非常にもったいないです。

奥井:私も同じことを感じますね。20代で2回以上転職するとその後のキャリアの選択肢が狭まってしまう可能性が高いので、最初の転職時の判断を会社のブランドを元に決めてしまうのは本当に危険だと思います。

Liigaにいらっしゃる方は、現在社会人になられてから1社か2社目の会社に在籍している方が多いと思うので、今後のキャリアの方向性が決まってくる時期だと思います。この時期にブランドなど安易な理由で転職先を選んでしまうと危険です。

-転職先はブランドだけで選んではいけない、ということですね。実際に転職する際はどのような軸・価値観を元に検討すればよいのでしょうか。

奥井:価値観は人によって何でもよいと思っています。

価値観を考える上で、良い・悪い、ということはなく、その人自体が思っていることをそのまま伝えてもらえればいいのです。

転職の軸としては業務内容・年収・ブランド・ワークライフバランスの4つで整理し優先度をつけると分かり易いですね。

若狭:そうですよね。

大きいことから小さいことまで、様々な軸を仰っていただける方がいますが、優先順位を決めてしまうと、大事なことは実はそんなに多くはありません。

加えて全てを叶えることができる案件はほとんどありませんので、転職活動を行う前に優先順位を決めることが重要です。

仮説・検証という言葉を僕はよく使いますが、転職活動における判断軸を決めておき、その軸に沿った企業の方々とお会いしつつ、自分の本当に合うのかどうか、という点を確かめていくのです。

そしてその軸は、最初に1人で作るより、転職エージェントと対話しながら作っていくことをお勧めします。そうすれば軸を作成した後、その仮説を検証できる案件をご紹介するので、その企業の方々にお会いしていけばいいのです。

そこで実際に企業の方に会ってみて「自分が思っていたイメージと違いました」という結論が出たのであれば、その企業と自分の考えのどこが違うのか、そもそもの軸の優先順位が違うのか、対話しながら修正をかけていきます。

特に現在の転職市場はいくらでも案件はあるので、優秀な方ほど、自分の中の軸をきちんと考えていく必要があります。

若手だからこそ、転職エージェントの介在価値は高い

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- きちんと優先順位を決めて転職するべき企業を絞っていかなければなりませんね。基準の整理をする上で、どのような工夫をされていますか。

奥井:過去にさかのぼって、長い間続けていることを聞き、その方の価値観、嗜好を踏まえることが多いですね。

例えば、ずっと学級委員をやってきた方は正義感が強い傾向があります。

部活で主将や副将でもなかったけど、長い間レギュラーで試合に出続けていた方は、個人で実力を上げていくこと自体が好きで、プロフェッショナルとしての意識が強いのではないかと感じることができます。

このようにその方の嗜好性や経験から、「何をすることが好きなのか、どのような価値観を持っているのか」ということが見えてくるものです。

若狭さんはどのようなことを聞きますか?

若狭:僕は基本的に現職の話をお聞きしますね。

面談の中で「現在の仕事の何が楽しいのか」をお聞きする中で、候補者の方の感情の起伏を見ています。

話している中で楽しそうに話しているときがあれば、その仕事が好きなんだな、と判断することができますし、苦しそうに話しているときは、あまり好きなことではないのかな、と判断できます。

このように、面談の中でその人の感情の起伏を見た上で、僕が客観的にどのようなことに取り組むのが楽しいのか、その方にアドバイスするのです。

候補者を表面的に理解するだけでは、本質的な転職はできませんから、なるべくその方が潜在的に求めているものを感じ取ろうとしています。

- 職務経験が少ない若手には、特に意味が大きい工夫ですね。

奥井:やはり若手のキャリア支援はやりがいがあると感じています。若手の場合、選択肢が非常に多いので、その人が求めているキャリアを見出し、実際に方向性を提供することができますので転職エージェントの介在価値がより大きくなります。

年齢層が上がってしまうと、現実的な選択肢の中での話になるため、若手ほどの柔軟性はありません。積み上げてきた実力での勝負になっていきますね。

若狭:そうですね。若手のキャリア支援という切り口から申し上げると、その後の人生にも携われます。

例えば、一度転職支援した方が数年後に次のキャリアアップの支援を行う際に再び声をかけていただいたり、新しい会社で自分の部下を採用したいので紹介して欲しい、という依頼が来ることもあります。

これは、キャリア支援の枠組みを超えて、一度支援させていただいた方とその後も交流が続けられることは非常に嬉しいですね。

奥井:私も転職支援をさせていただいた方と2、3ヶ月に1回ほど会うようにしています。これは個人的に気になることなので、趣味に近いのですが、、(笑)。

ただ私としても、候補者の方と併走してキャリアを築いていくことを意識していますので、転職活動中の候補者の方には頻繁にお会いするようにしています。

転職活動をしている際は、転職志望者のモチベーションが上下したりしますが、モチベーションが高く、高いパフォーマンスを発揮できる状態で面接に進んで頂かなければなりません。

精神状態や体調を考慮しながら、高いパフォーマンスが出る状態で転職活動を進めていただくため、適宜フォローしながら伴走していくようにしています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は若手のキャリアについて転職エージェントの対談形式でお送りしております。

転職支援のプロに言わせると「キャリアとは人生そのもの」だそうです。キャリア相談をする際は転職のみならず、人生を通して「なりたい姿」について話ができると、さらに良い面談になるのではないでしょうか。

後編では、実際に若手が転職活動を行う上で知っておくべきことや転職エージェントとの付き合い方を語っていただいています。

ぜひ、ご覧ください。

後編はこちら

本記事に登場いただいたプロコミット若狭氏、アサイン奥井氏にご相談したい方はこちらのボタンからご連絡ください。

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コラム作成者
Liiga編集部
Liigaは、「外資就活ドットコム」の姉妹サイトであり、現役プロフェッショナルのキャリア形成を支援するプラットフォームです。 独自の企画取材を通して、プロフェッショナルが必要とする情報をお伝えします。
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