「自分だけのために働くのは“卒業”しよう」。元マッキンゼーの起業家は社会のために“働き続ける”

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特集「あなたはいつまで働くのか」、最終回は災害復興・地方創生活動に携わる藤沢烈さんに話を聞いた。学生時代から社会事業、NPOに興味があり、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社したのも、ビジネスの基礎を知りNPO活動に生かすためだったという。マッキンゼーを退職後は、東日本大震災をはじめとする災害からの復興に尽力してきた。「可能な限りいつまでも働きたい」と言い切る藤沢さんの情熱の源はどこにあるのかを探った。【南部香織】

〈Profile〉
藤沢烈(ふじさわ・れつ)
一般社団法人RCF 代表理事。 1975年京都府生まれ。2001年に一橋大学社会学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。03年に退社後は独立し、NPO・社会事業などに特化したコンサルティング会社を経営。東日本大震災後、RCF復興支援チーム(現・一般社団法人RCF)を設立し、災害復興に関する情報分析や事業創造に取り組む。現在は、全国での復興事業および地方創生事業を、行政や企業など多様なセクターとの連携を通じ展開している。著書に『社会のために働く 未来の仕事とリーダーが生まれる現場』(講談社)、『人生100年時代の国家戦略』(東洋経済新報社)がある。




 

NPOをつくって社会のために働く。そのためにマッキンゼーに入った

――社会事業に興味を持ったきっかけを教えてください。

藤沢:大学1年生のときに起きた阪神大震災がきっかけです。メディアを通して被害の状況を目の当たりにし、社会のもろさを実感しました。私たちの生活を支えている経済も社会の安定の上に成り立っているので、社会をつくる側の人間も必要です。だったら私がその役目をしよう、社会的な取り組みをしていこうと考え始めました。

――新卒ではマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社しています。

藤沢:学生の時に休学して、社会的活動をする人たちが集まるバーを経営していました。ですが、金銭的な事情で続けられなくなってつぶしてしまったんです。もちろんNPO活動はお金を稼ぐことが目的ではないのですが、一方でお金が回らないと続かないということに気づきました。

そんなときにマッキンゼーをたまたま知って、ここでビジネスの勉強をしようと思ったわけです。採用面接のときも、将来、非営利の仕事をするためにビジネスを研究したいということを伝えました。

――その後、2年でやめていますね。

藤沢:計画通りNPOに関わって活動していましたが、当初はそれだけでは生計を立てられなかったので、同時にベンチャーを支援する仕事もしていました。その後、2011年に東日本大震災が発生し、RCF復興支援チームを設立しました。

最初は200万円だけ使って、できる限りのところまで支援しようと思っていたのですが、キリンやリクルートなど大企業からの仕事の依頼がどんどん来ました。日本財団から1,000万円を助成していただいたり、UBSなど外資系企業からの依頼をいただいたり、途切れることなく仕事が続いて今に至っています。今は、東日本大震災だけではなく、全国の災害や社会課題に対して、継続的にサポートをしています。

――藤沢さんが代表を務める一般社団法人RCFでは、自分たちを「社会事業コーディネーター」と位置づけています。具体的にどういった仕事をするのでしょう。

藤沢:3段階に分かれていまして、1つ目は「社会化」。社会課題が何なのかを認識する段階です。そもそも社会課題として扱われないと企業や行政から支援してもらえないからです。例えば、家を失った方々にとっての課題は、もう一度家を建てるだけではなく、地域のつながりを復活させるというところまでになります。

次が「事業化」。課題を認識したら、それを発信して行政に施策にしてもらったり、企業にも支援してもらったりする。あるいは海外の事例を日本に応用するなど、実際に解決するように動きます。 最後が「制度化」。事業化で作った課題解決の仕組みを他の地域にも普及させます。その一貫した流れを行うのが、社会事業コーディネーターの役割です。

――終わりがない仕事にも聞こえます。

藤沢:「どこまでやるか」は難しい問題ですね。社会課題がなくなるということはないので、ひとつの区切りとして、私たちが直接関わらなくても、その地域の行政や団体が住民の皆さんを支え続けられるような枠組みをつくるところまでを目指しています。 description

自分の哲学を持ち本当に社会のためになると思っているから、全くつらくない

――先ほど、社会課題がなくなることはないとおっしゃいました。では藤沢さんはいつまで働こうと考えていますか。

藤沢:もうそれはずっとですね。「いつまで」働くといった感覚はないんです。できる限り、一生、倒れるまで仕事をしたいですね。

例えば75歳くらいの私の知人は体力を考えながら、自分の価値を発揮しています。そのように私も工夫しながら続けたいと思っています。

――一度でも、社会事業をやめたいと思ったことはないのでしょうか。

藤沢:ないです。複数の課題があるときに、どちらかを優先させることはあります。ただ社会課題に取り組むこと自体をやめようと思ったことはありません。

――例えば、支援先の方々に言いたいことがなかなか伝わらないなど、苦労はあるわけですよね。

藤沢:それはもちろんあります。日々そんなことだらけです。

復興地域の例でいえば、住民の方々は元通りになることを一番望んでいることが多いです。もちろんその気持ちは大事にしたいですが、日本は今、人口減少が進んでいるので、変わらざるを得ないことがあります。そういうときに、変化を促すわけですが、やはりそんなことは求めていないというような反発が起こる場合はあります。

でも、長い目で見て、課題解決に向かって、1ミリでも前に進めばいいと思ってやっています。「今週は1メートル進むと思ったら50センチだった」ということはいくらでもありますが、それは翌週に到達したっていい。

売り上げなどわかりやすい指標があるわけでもないですし、必ず感謝されるとも限りません。それでも、自分の哲学、世界観を持って、本当に社会のためになると思っている限りは、全くつらくないですし、やめようと思ったこともありません。

――いつまでも働き続けるとしても、加齢による影響を考慮せざるを得ない面もあるのではないでしょうか。

藤沢:確かに、なかなか以前より思い切って新しいことにチャレンジしづらくなっている気はします。変化に対して、後ろ向きにならないようにしなければいけないというのはすごく思います。

それから健康面についてはかなり気を使っています。食事、運動、睡眠は、ものすごく細かく管理しています。20代のときは気にならないと思いますが、30代後半ぐらいから、頭の回転が鈍りやすくなるので、睡眠時間を増やしましたし、食事も変えました。

――加齢に伴い、組織内での自身の役割の変化を意識することはありますか。

藤沢:スタッフも増えましたし、リーダーが全ての業務を行っていては組織が育たないので、大部分は任せるようになりました。ただ本音は全部自分でやりたいです。だから、残りの2割くらいは人に譲らないで自分でやっています。

組織を大きくしたい人はそれではいけないかもしれませんが、私はあまりそういう考えはなく、ずっと現場に関わっていきたいので。

ライスワークよりライフワーク。自分のためだけに働くという段階は早く“卒業”してほしい

――では一般論として人はいつまで働くべきだと思いますか。

藤沢:働くことが生活するための‟ライスワーク”なのか、人生の目的である‟ライフワーク”なのかで違ってくると思います。

外資就活ドットコムやLiigaのユーザーの皆さんは意識が高く、社会に支えられ、恵まれた人も多いと思うので、“食うに困る”人は少ないのではないでしょうか。ならば特に、自分のためだけに働くという段階は早く“卒業”してほしいと思います。社会のために働くという領域に早く到達してほしい。

――そこに到達するのはいつごろが理想ですか。

藤沢:定年後など一般的な引退時期を迎えてから社会貢献するのでは、遅いと感じます。40代のうちには、社会貢献を視野に入れてほしい。例えば、30~40代の2割くらい、もしくはキャリアとキャリアの間の2~3年を社会のために働くという時間に使ってみてほしい。私もマッキンゼーにいたときにNPOの手伝いをしていたので、そんなふうにボランティアとして働くというやり方もあります。

もちろん会社勤めであっても、社会的な思いを持って働いている方もいると思うので、それも一つのあり方です。でももし、自分のキャリアやお金のためだけに働いている人がいるとしたら、それは初めの10年くらいだけでいいのではないでしょうか。 description

仕事を何かの「手段」だと思っていないか。「目的」として頑張れることをやろう

――とはいえ、キャリアのために仕事を選んだり働いたりする若い人は少なくないと思います。

藤沢:私がいま社会事業を仕事にし、キャリアを築いているのは結果にすぎないと思います。自分がやりたいと思うことに突き進んでいって、気づいたらそれがキャリアになっていた。

以前、学生から「藤沢さんはマッキンゼーに入るためにバーを経営していたんですか」という質問をされて衝撃を受けたことがあります。

確かにマッキンゼーは、私の経験を買ってくれた部分はあるでしょう。でも私は採用されるためではなく、やりたいからやった。今も、社会事業も復興支援もやりたいからやっています。でも世の中には、仕事を何かの手段だと思っている人がいる。

そういう人は結局、マッキンゼーには入れない気がするんです。当時、あの会社にいたのは、学生時代に無我夢中で研究をしていたり、自分で会社をつくったりした人たちでしたから。だから、これを読む人たちは、キャリアのためにとか、打算的なことは1回忘れてほしい。「手段」ではなく「目的」として頑張れることを全力でやってほしいと思います。 description


【連載記事一覧】
【特集ページ】あなたはいつまで働くのか(全8回)
(1)生涯現役? それとも早期リタイア? 「キャリアの終わり」を考える
(2)大事なのはいかに幸せに死ぬか―。「一生遊べる」資産保有者が、働く理由
(3)働き続けないと「ださくなる」。食うに困らなくなった人には、世界をもっと変えてほしい
(4)「45歳で区切り」「母のように生涯働く」 VC、コンサル在籍20代が語る“キャリアの終わり”
(5)始まる前に終わりを語る。就活生は「引退」をどう意識しているか
(6)「週5勤務は40代まで」「引退は考えない」 20代IT系ビジネス職のキャリア観
(7)「“もう一つの人生”を送れる」。アーリーリタイアした40代が眺める、会社員時代には見えなかった景色
(8)「自分だけのために働くのは“卒業”しよう」。元マッキンゼーの起業家は社会のために“働き続ける”


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date_range 2020-12-08

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