転職エージェントは求職者ではなく企業の代理人。その収益構造とは
2022/12/09
#良いエージェントの選び方
#“転職エージェント”は必要か
#編集部オリジナル特集

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求職者の経験やスキルを踏まえ求人を紹介し、企業とのやりとりを代行してくれる転職エージェント。丁寧に選考対策を行ってくれたり、今後のキャリアについてアドバイスしてくれたりする場合もあり、彼らを頼りたくなるのは自然なことだろう。

一方で、彼らのビジネスモデルを理解しておかないと、よい関係が築けなかったり、ミスマッチな企業に入社してしまったりしかねない。

特集「“転職エージェント”は必要か」第3回では、転職エージェントの行動原理を理解し、納得のいく転職活動の助けにしてもらえるよう、彼らがどこからフィーを得ているのか、エージェント企業の組織構造はどうなっているのかなどをまとめた。【南部香織】



 

企業の求める条件とマッチする人材を探し、紹介するのが転職エージェント

転職エージェントは、「エージェント」の名の通り「代理人」である。誰の代理かというと、「人材を採用したい企業」だ。

つまり、顧客企業の代理となって採用活動の一端を担うことが、彼らの役目となる。

一般的に中途採用の場合、新卒の一括採用とは異なり、募集する職種、職位、業務内容などが多岐にわたることが多い。ゆえに企業の人事が、求める人材に自社の募集案件を周知し、応募してもらい、スクリーニングするのには手間がかかる。エージェントはそういった採用関連の業務を、一部代行しているのである。

具体的な流れはこうだ。

まず顧客企業から依頼を受けたエージェントが、求める人材像をヒアリングする。続いてその条件に合う人材を、自社のデータベースに登録されている求職者から探し出す。求人を紹介して応募に至るなら、内定を得られるようサポートするわけだ。

エージェントによっては、企業のビジョンやフェーズを聞いた上で、企業側に「こういう人材がいたほうがいいのではないか」と提案する場合もあるという。

こうした構図を踏まえるとある意味当然だが、エージェントが得る対価は顧客企業から支払われる。一方、求職者はどれだけ相談しても無料だ。

対価は、紹介した人材が入社したタイミングで発生するのが一般的。いわゆる、成功報酬型のビジネスモデルとなる。

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エージェントの成功報酬は転職者の年収3割前後が一般的。需要の高い職種ならそれ以上のことも

「利益率のいいビジネスだと思います。コストは社員の人件費、オフィス代が主で、それ以外で強いて言うなら広告・宣伝費くらいですから」

かつてエージェント企業で働いていたAさんは、こう打ち明ける。

少し前に成功報酬型と書いたが、その報酬はどれほどなのか。多くの場合、転職した人の入社時年収の30〜35%が、エージェント側に支払われる成功報酬となる。例えば、求職者が年収600万円で転職した場合、料率30%の契約なら180万円がエージェント企業の取り分になる。

ただ料率に法的な制約はないので、希少な人材や需要が高い職種に対しては、35%以上の料率が設定される場合もある。

つまり、料率が同じならより高年収の、年収が同じなら料率がより大きい案件の入社が決まったほうが、エージェントの収益は多くなる。

また、求職者が入社して初めて報酬が発生するため、相談者の転職意欲の高低はエージェントのモチベーションを左右しやすい。上で触れた元エージェントのAさんも「本気で転職する気がなさそうな人に時間をかけるのは、費用対効果が低いと思うときもありましたね」と明かす。

とはいえ、収益だけがエージェントのモチベーションというわけではない。

A さんは「収益のためだけに働くというのは限界があります。よい人を企業に紹介できた、そのことで事業の成長に貢献できた、私のアドバイスで求職者が進路を真剣に考えてくれたなど、介在価値にやりがいを見出していました」といったコメントも残している。

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片手型か両手型か。エージェントの運営形態によって転職希望者へのサポート内容に違いが

無数にあるエージェント企業だが、その運営形態次第で、転職希望者へのサポート内容には違いが出る。では運営形態の違いとは何か。

一般的にエージェント企業内では、顧客企業とやりとりする人をRA(リクルーティングアドバイザー)、求職者の相談を受ける人をCA(キャリアアドバイザー)と呼ぶ。そしてエージェント企業には、RAとCAを1人が兼任する企業(=両手型)と、分業する企業(=片手型)の2タイプが存在するのだ。

大手のエージェント企業は社員数が多く、また多数の企業の求人を扱うため、効率化を目的に片手型を採用する傾向にある。一方、中堅・中小の事業者では両手型が主流だ。特に中小は社員数が少ないため、分業が成り立ちにくいというのが現実的なところだろう。ただその分、企業側と相談者、双方の情報を1人のエージェントが得ることによって、精度の高いサポートをしやすいともいえる。

元エージェントのAさんが勤めていたのは、両手型の企業だった。「片手型のほうが効率はいいと思いますが、両手型は自分が顧客から聞いた情報を、そのまま転職支援に生かせるというメリットがありましたね」(Aさん)という。

たしかに、片手型のCAが得る求人の情報はRAから共有されたもので、CAと紹介先企業の直接のつながりはない。両手型のほうが、企業のカルチャーなど、重要だが言語化されにくい情報が相談者に伝わる可能性は高い。

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運営形態に加えて、エージェント企業を選ぶ上で大事なもう一つのポイントが「どんな業界・職種を得意としているか」だ。特に中堅・中小事業者には、特定領域に強い「特化型エージェント」が多い。

例えば、コンサルティングファームや投資銀行、PEファンドなどを志望する場合は選考対策が重要になるため、プロフェッショナルファームへの転職支援に長けた特化型エージェントが力を発揮する。また、特化型エージェントは一般に流通していない独自の求人を持っていることもあるため、その意味でも利用価値があるといえる。

片や一般的な大手の場合は、特定領域に偏らない多様な求人案件を扱うことが多い。転職先について強い希望がない、さまざまな業界の求人を見たいといった場合は、大手を利用するといいかもしれない。

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求職者側にとって転職を支援してくれるパートナーである、転職エージェント。だが、企業側のニーズに応える存在でもあることは、頭に入れておきたい。

エージェントにとって、どういったことがメリットになるのかを知っておけば、転職相談の精度は高まるはずだ。エージェントを深く理解し戦略的に活用することは、納得のいく転職への近道になる。


コラム作成者
Liiga編集部
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