転職エージェントを使うメリットは? 求職者の体験談から探る利用価値
2022/12/14
#“転職エージェント”は必要か
#良いエージェントの選び方
#編集部オリジナル特集

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転職エージェントを利用した求職者たちは、その経験についてどう感じているのだろうか。特集「“転職エージェント”は必要か」の初回で登場した真壁哲也さん(仮名)のように苦々しい経験をした人もいれば、丁寧に支援をしてもらい、よい転職ができたという人もいるだろう。

同特集の第6回にあたるこの記事では、転職エージェントを利用したことがあるLiigaユーザーの、エージェントに関する経験談を取り上げる。彼らの生々しい声を基に、「求職者が転職エージェントに求めるもの」を探った。【南部香織】



 

エージェントを使うのは「多くの求人情報を得るため」。メールだけの支援もOKな“効率重視”派

「実はそのエージェントには、会ったことがないんですよ、電話をしたこともなくて」

こう話すのは、ある事業会社の経営企画部で働くAさんだ。現在のところ、転職回数は2回。事業会社から戦略コンサルティングファーム、そして今の会社へと転職している。

Aさんのいう「そのエージェント」とは、コンサルティングファームから現職へ移った、2回目の転職で支援してくれた人のことだ。

「直接会って相談しながらのサポートもできるし、メールだけで応募書類の添削、求人情報の紹介、選考対策などを進めることもできるといってくれて。私は後者を選びました」

つまり、そのエージェントは最初にAさんが求める転職支援のスタイルを確認し、それに合わせてサポートしてくれたのだ。初めて連絡をとった後、Aさんの元には希望条件に合う企業の現況や採用される人の傾向、面接対策などが、一覧になって送られてきた。

さらにそのエージェントは、コンサル出身者のアピールポイントを教えてくれ、企業ごとに応募書類を添削してくれた上、対応も速かったという。

「内定を得た後は給与交渉もしてくれました」とAさんは満足げに話す。Aさんがエージェントを利用したのは、求人や対策の情報を効率的に得るためだというから、その需要を満たしてくれたのが、高い満足度につながったのだという。

投資銀行出身で、転職回数5回、現在はあるスタートアップのCFO(最高財務責任者)を務めるBさんも、効率を重視する。

「手厚いフォローは期待していないですね」とドライに言い切るBさん。エージェントを使うのは、自分だけでは集めきれないほど多様な求人情報を得るためだという。

「私の場合、やりたい事業があったというよりも、自分の金融スキルによって成長しそうなスタートアップのCFOポジションを探していました。業種にこだわらないので、対象範囲はある程度広くなります。だから、自分では見つけられないような案件をエージェントが提供してくれると、とてもありがたく感じました」というコメントから、Bさんがエージェントに求めるものが見えてくる。 description

選考対策や精神的なフォローなど、“伴走型”の支援を求める人も

とはいえ求職者のすべてが、効率化された対応をエージェントに期待するかというと、そうでもない。次に登場するCさんが求めていたことは、コンサルティングファームへ入るための伴走支援だった。

3回の転職を経験し、現在は戦略コンサルティングファームに勤めるCさんは、これまで主に、同じ“特化型”エージェントを使っている。特化型エージェントとは、特定の業界や職種を中心に求人を紹介するエージェント企業のことだ。

そのエージェント企業のサポートを、Cさんはこう評価する。

「選考対策をものすごく丁寧にしてくれるんです。応募先企業に対する候補者の“見せ方”も上手だと思います」

特に初回転職時に担当してくれた人は、Cさんが志望していた戦略コンサルティングファームの出身者。そのファームの観点で、ケース面接の攻略法から通常の面接の受け答えまで、細かく指導してくれた。しかも企業からの信頼が厚く、「この人が推すこと自体が、“追い風”になりました」とCさんは言い切る。

さらにそのエージェントはCさんに対して、応募先に提出する推薦文を見せながら褒めちぎったり、選考結果を伝えるタイミングも見計らったりなど、モチベーションコントロールに抜かりがなかった。無事、希望通りのファームに転職できたCさんは、2回目の転職もその人に担当してもらった。

エージェントによる伴走型の支援がありがたかったという声は、他のユーザーからもあった。初めての転職で事業会社から総合コンサルティングファームに移ったDさんも、ケース問題のコツや面接での受け答えについて、エージェントがロールプレイング形式で指導してくれたという。

その上、Dさんを担当したエージェントは、人生を通した長期的なキャリア形成を支援したいと言い、別ルートで応募したコンサルティングファームの話をしても応援する姿勢を見せてくれた。現に、選考対策の際、そのファームを受ける時の注意点まで教えてくれた。

結局、別のエージェント企業を介して現在のファームに転職したDさんだが、いまだにそのエージェントとは連絡を取り合っている。Dさんは「次に転職するなら、また担当してもらいたい」と信頼をにじませる。

転職エージェントの難点は「自分と合う人に出会えるかわからない不確実性」

今回話を聞いたLiigaユーザーは、複数回の転職を経験した人が多い。また複数社のエージェントに相談をした人がほとんどだ。そして中には、あまりよくない経験をした人もいる。

実は前出のA さんは、1回目の転職時のエージェント企業には、もう頼まないと決めている。一体なぜだろうか。

「当時私は、まだ第二新卒のようなもので、大したスキルもなかったからか、選考を受けたくないと言っているのに、志望外のコンサルティングファームを受けるよう、ぐいぐい推してきたんです」

つまり、当時のAさんの経歴から、志望先よりも入りやすい企業を薦めてきたということらしい。その後、志望するファームの選考を受けて落ちてしまうと、暗にAさんの対策が悪かったからではないか、と言い、落ち込む気分に追い打ちをかけてきたという。

現スタートアップCFOのBさんにも、後味の悪い経験がある。何度も電話をかけてきて、特定の案件を強く勧めてくるエージェントがいたのだ。

「非常に高年収の案件でしたね。他の条件が合わなくて断りましたが、しばらくしてその企業が大量にレイオフしたんです」

そのエージェントにとっては、成功報酬を得るためにBさんが入社してくれればよく、その後のBさんのキャリアをきちんと考えたわけではない、ということだったのかもしれない。

そのほか、クレームというほどではないが、「現職と違う業界を志望した時に難色を示された。業界変更も含めて、一緒にキャリアを考えてほしかったのに……」「なぜ選考に落ちたのか、次に生かせるようはっきり言ってほしかった」といった声もある。

「どのエージェント企業を選ぶかではなく、“誰”に相談するかが重要なのだと思います」と、Aさんはいう。

「転職支援は、個人の力量によるところが大きいと感じました。得意領域も違うでしょうし、エージェントが合わなかったら、かえって志望企業に転職しにくくなるかもしれない。自分と合う人に出会えるかわからない不確実性が、エージェントを使うデメリットですかね」

こうしたエージェント業の属人性の高さを指摘する声は、他のユーザーからも聞いた。「どうしても1社1担当になってしまいますよね。合わないからって担当者を変えてほしいとは言いづらいですし……」(転職回数3回の人事コンサルタント)

また、「その担当エージェントがよい人でも、エージェント企業によって持っている案件が違う点には気をつけないといけないでしょうね」(前出のCさん)といった問題もある。実際Cさんの場合、相談したエージェントは優秀だったが、その人が所属する企業はコンサル業界の案件をあまり持っておらず、頼れないことがあったという。 description

スカウトや知人経由といった転職方法もある中、エージェントに何を求めるべきか

今回話を聞いたLiigaユーザーには、「次に転職するならエージェントを使いますか?」という共通質問を投げかけてみた。

多くの人がその時にどういった転職先を望んでいるか次第、と前置きしつつも、エージェントと他の方法を併用する、と答えた。例えば、まずは信頼関係ができているエージェントに声を掛けて、希望する案件を持っているかを確かめたり、転職マーケットの状況や自分の市場価値などを探ったりするといった進め方だ。

また、エージェントに相談しつつ、入りたい会社や興味のある会社に知人がいれば、その知人に話をしてみるという回答もあった。事実、日系大手企業から外資系IT企業に転職したあるユーザーは、友人からの紹介で転職し、職場環境や人間関係に事前に聞いた話と齟齬がなく、非常に満足しているという。

少し前で触れたCさんは、特化型エージェントを主に使ってきた過去を振り返りつつ「今度転職するなら、スカウトや知人経由を検討すると思います」と先を見据える。なぜなら、次は事業会社へ移る可能性が高いと考えているからだ。特化型エージェントに頼るより、時間に制限を設けず長い目でスカウトや知人の紹介などの案件を見ていったほうが、面白い出会いが期待できるという。

すでにスカウト経由の転職も経験しているCさんは、そのメリットとデメリットをこう考える。

「スカウトの場合、最初から相手が好意的なので、内定をもらえる確率が高くなる気がします。条件交渉もしやすかったですね。ただスカウトは、規模が小さく、知名度も低い企業から受けることが多かったですね。人気企業から受けることは少ないので、基本的には新たな出会いを得るためのツールだと思っています」

このほか、「経験を積み年収が高くなってきた自分がエージェントを経由すると、エージェントフィー(成功報酬)が高くなって採用のハードルがあがるのでは……」と懸念して自己応募を前提に考える人もいた。

Liigaユーザーの体験談から判断するに、求職者が転職エージェントの力を借りるメリットは十分ありそうだ。ただし、常に期待通りの経験ができるとは限らない。

求人検索や比較検討の代行なのか、丁寧な選考対策やアドバイスなのか、長期的なキャリア支援なのか……。自分が求めるものをクリアにしつつ、それに合ったエージェントを探すこと、そして足りない部分は他の方法で補うといった考え方が、必要なのかもしれない。 description


コラム作成者
Liiga編集部
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